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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
インプラント治療におけるボーンジェクト・コーケンティッシュガイド・テルダーミス・テルプラグの臨床報告
エムデンタルクリニック 原田 聡

■はじめに

インプラント治療を様々な患者に適応するため多様な骨造成法が開発されている。現在のインプラント治療において、骨造成法は無くてはならないものであり、長期経過も良好な症例が数多く報告されている。また、歯科用CTの普及により、より確実に施術できる環境が整いつつある。
それに伴い、様々な骨移植材・メンブレンが臨床応用されている。骨移植材・メンブレンに求められる選択基準は、下記の3つが重要となる。
1)生体親和性
2)操作性ならびに量的な制限がないこと
3)長期経過ならびに安全性
また、近年のインプラント治療においては、審美性も重要視される。
今回、ボーンジェクト・コーケンティッシュガイド・テルダーミス・テルプラグを使用した多くのインプラント治療において、これら全ての項目に関して良好な結果を得ることができたので報告する。

■ボーンジェクト・コーケンティッシュガイド・テルダーミス・テルプラグの特性

1)ボーンジェクト(図1)
牛骨由来の天然ヒドロキシアパタイト(True BoneCeramic)とアテロコラーゲン溶液を3:2で混合した非吸収性骨補填材である。しかし組成上、時間の経過と共に吸収されるため、長期的な吸収性とも考えられる。
牛骨由来ではあるが、BSE(牛海綿状脳症)に関しては、有機物除去後の無機成分を1100℃にて焼成しているため問題はない。
また、一般的な骨補填材は乾燥状態のため、血液・生理食塩水等で混合する必要があるが、ボーンジェクトはアテロコラーゲン溶液と混合済み且つカートリッジに充填されているため、術野への挿入も容易で操作性に優れている。
2〜10℃での冷蔵保存が必要であるが、体温でゲル化する性質のため、使用する1時間前位に常温下に保管しておくと使用時の操作性の向上が図られる。

2)コーケンティッシュガイド
コーケンティッシュガイドは牛の真皮のコラーゲンを酵素処理し精製したアテロコラーゲンと牛腱由来不溶性コラーゲンを9:1で混合した液を凍結乾燥させ、ジイソシアン酸ヘキサメチレンにて化学架橋処理した吸収性コラーゲン膜である。
細胞・組織適合性等の生体適合性に優れ、生体内吸収性である。埋入後3週から6週まで生体内で膜構造を維持する。形状への加工成形性が良く、口腔内での操作性にも優れており、プラークコントロールを含めた術後の手術部位の管理も容易である。
BSE感染に関しては、牛の真皮と腱はBSE感染の危険がない部位に分類されており安全である。

3)テルダーミス・テルプラグ(図2、3)
テルダーミス・テルプラグは、抗原性の少ないアテロコラーゲンで、創面ならびに粘膜欠損部に貼付することで母床からの細胞侵入により真皮様組織(肉芽様組織)を構築する特長をもつ。
この特長を応用して減張切開を行わない骨造成時のティッシュマネージメントが可能になった。ソケットリフト時、シュナイダー膜保護のためにテルダーミス・テルプラグを使用ことでより確実にオペを行うことができるとの報告もある。
また、抜歯時に骨造成の必要性が考えられる場合、テルプラグを使用すると、骨造成を行わずインプラント埋入が可能な場合もあり、テルプラグの使用により術者・患者ともにオペ時の負担が軽減できる。

  • 図1 ボーンジェクトを押し出したところ。
    図1 ボーンジェクトを押し出したところ。
  • 図2 テルダーミス。
    図2 テルダーミス。
  • 図3 テルプラグ。
    図3 テルプラグ。

■症例1

20歳代女性。上顎左側中切歯にインプラントオペを行うこととなった(図4、5)。しかし、頰側骨吸収は著しく(図6、7)、骨造成の必要性を患者に説明し同意を得た。骨補填材にはボーンジェクト、メンブレンとしてコーケンティッシュガイドを用いた。
骨造成量が多くインプラント体支持の確実性を向上させるため、まず粘膜剥離部に対しボーンジェクト・コーケンティッシュガイドを用いて骨造成のみを行った(図8、9)。術後の腫脹・疼痛もほとんどなく経過良好であった(図10)。
骨造成術後9ヵ月にCT撮影等(図11、12)を行いインプラント埋入可能と判断しインプラント埋入を行った。ドリリング時、インプラント埋入に適した硬度も有しており充分な骨造成が確認できた(図13)。
インプラント埋入時、審美面の歯肉形態のためボーンジェクトにて骨形態の修正をはかりテルダーミスにてティッシュマネージメントを行った。
インプラント埋入から6ヵ月経過時(図14、15)にCT撮影等(図16、17)を行い、インプラント体ならびに骨の状態確認をし、補綴処置へと移行した。補綴後の経過も良好で定期的なメンテナンスを行い、プラークコントロールを含めた経過観察を行っている。
今回の症例は、骨造成の量も比較的多く、また前歯部という審美性にも配慮が必要な部位であり、より慎重な作業を要すオペであった。しかしコーケンティッシュガイド・テルダーミスを用いたことで術中のストレスは軽減され、術後の経過も術者・患者ともに満足のいく結果となった。

  • 図4 咬合面観。
    図4 咬合面観。
  • 図5 唇側面観。
    図5 唇側面観。
  • 図6 頰側骨の著しい骨吸収がみられる。
    図6 頰側骨の著しい骨吸収がみられる。
  • 図7 術前CT像。(トロフィーパンプラス)
    図7 術前CT像。(トロフィーパンプラス)
  • 図8 ボーンジェクトによる骨造成。
    図8 ボーンジェクトによる骨造成。
  • 図9 コーケンティッシュガイド試適時。
    図9 コーケンティッシュガイド試適時。
  • 図10 歯肉の経過も良好である。
    図10 歯肉の経過も良好である。
  • 図11 デンタル像。(デントナビ)
    図11 デンタル像。(デントナビ)
  • 図12 CT像。
    図12 CT像。
  • 図13 骨造成が確認できた。
    図13 骨造成が確認できた。
  • 図14 頰側面観。
    図14 頰側面観。
  • 図15 咬合面観。
    図15 咬合面観。
  • 図16 デンタル像。
    図16 デンタル像。
  • 図17 CT像。
    図17 CT像。

■症例2(図18〜20)

50歳代女性。下顎左側第1大臼歯にインプラントオペを行うこととなった。骨補填材にはボーンジェクトを用いた。
骨吸収は垂直的・水平的に存在し、下顎管までの距離も近接しているため、垂直的・水平的骨造成を行った。
また、このような骨造成の場合、通法であれば減張切開の必要性があるが、骨造成部に対して被覆できない開放創を減張切開に代えてテルダーミスを用いて被覆を行った。これにより減張切開時におこりうる腫脹の軽減、オトガイ孔近接時の下唇麻痺の可能性の回避が図られる。
埋入後、術後疼痛、腫脹、麻痺もなく経過良好であった。歯肉ならびに骨の回復を待って上部構造装着を行い、メンテナンスを含めた経過観察を行っているが予後良好である。
今回の症例のように減張切開を行わずオペを行えることは、術者にとってもオペ時間の短縮も含めストレス軽減につながる。また患者の外科的侵襲も軽減でき、結果として成功率の向上につながると考える。よってテルダーミスを用いた骨造成法は、非常に有効な方法と考える。

  • 図18 術中写真。
    図18 術中写真。
  • 図19 術前デンタル写真。
    図19 術前デンタル写真。
  • 図20 上部構造装着後デンタル写真。骨形成がみられる。
    図20 上部構造装着後デンタル写真。骨形成がみられる。

■症例3(図21、22)

70歳代女性。下顎左側第二大臼歯にインプラントオペを行った。頰側骨の部分的吸収がみられたため、ボーンジェクトを用いて骨造成を行った。
この症例に関しても、症例2と同様に、腫脹軽減・オトガイ孔近接時の下唇麻痺の回避のため、減張切開を行わず、テルダーミスを用いた被覆を行った。経過は、歯肉・骨ともに極めて良好で、上部補綴装着後もトラブルもなく順調な経過をたどっている。
この症例に関しても、ボーンジェクト・テルダーミスの操作性ならびに術後経過の良さを感じた。

  • 図21 術前デンタル写真。
    図21 術前デンタル写真。
  • 図22 上部構造装着前デンタル撮影。
    図22 上部構造装着前デンタル撮影。

■症例4(図23、24)

40歳代女性。上顎左側第一大臼歯欠損部にインプラントオペを行った。リフティングドリルを用いてソケットリフトを行い、長さ8ミリのインプラント埋入を行った。骨補填材には、ボーンジェクトを使用した。上顎洞底拳上術においてもボーンジェクトは操作性がよく、予後も良好であると私は考える。

  • 図23 術前デンタル写真。
    図23 術前デンタル写真。
  • 図24 術後デンタル写真。
    図24 術後デンタル写真。

■まとめ

近年、様々な骨補填材が開発され、様々なインプラント法が濫立する中で、エビデンスに基づき且つ術後の腫脹等、患者の負担の少ない治療法を提供することが我々歯科医師の使命と言える。
今回、報告させていただいた『ボーンジェクト・コーケンティッシュガイド・テルダーミス・テルプラグを用いたインプラント治療』は患者の負担を軽減させることのできる治療法の1つである。
また、この治療法は患者だけでなく術者である歯科医師のストレスも軽減させる。私自身はこの方法を臨床応用してからインプラント時のストレスから解放されたといっても過言ではない。ストレスが軽減された環境下でのオペはより集中して行うことができ、成功率の向上にもつながる。
ボーンジェクト・コーケンティッシュガイド・テルダーミス・テルプラグこれらの材料は製品としても優れているが、臨床応用法によってさらなる効果を発揮できる素晴らしい製品と言える。

参考文献
  • 1)阪本貴司:インプラント治療における非吸収性骨補填材ボーンジェクトの有効性. デンタルマガジンNo.134、P54-58、2010.
  • 2)村松利安:ボーンジェクトの再評価〜長期経過症例から〜デンタルマガジンNo.140、P54-58、2012.

デンタルマガジン 150号 AUTUMN