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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Dental Talk
欧米における審美補綴のトレンド
Aki Yoshida/Nondas Vlachopoulos/山田和伸

■目 次

CAD/CAMシステムに代表されるテクノロジーや関連するマテリアルの進化により、審美補綴の手法にも変化をもたらすようになってきている。そこで、第7回日本国際歯科大会に出席するため来日したAki Yoshida先生とNondas Vlachopoulos先生をお迎えし、アメリカやヨーロッパにおける審美補綴のトレンドと、お二人がノリタケポーセレンを永年使い続ける理由について、山田和伸先生が伺った。

■ノリタケポーセレンを永年使う理由

Gnathos Dental Studio:アメリカ Aki Yoshida
Gnathos Dental Studio:アメリカ
Aki Yoshida
山田Aki先生はよく日本に帰ってきて講演されていますが、Nondas先生は初来日ということで、日本の印象はいかがですか?
Nondas忙しくてそれほどゆっくり拝見できていませんが、東京、横浜を見る限りとてもいい街だと感じました。また、日本の方々はとても礼儀正しく親切で、今回の国際歯科大会の技工シンポジウムでも組織委員の方々はとてもいい仕事をしてくださって感謝しています。
山田Nondas先生はギリシャを拠点にされていますので、ヨーロッパの事情について、一方、Aki先生はアメリカが主なフィールドですから、アメリカの事情について伺いたいと思います。まず、お二人はクラレノリタケデンタルのインストラクターでノリタケポーセレンを永年お使いとお聞きしていますが、臨床で使うようになってどのくらいになりますか?
Nondas私は18年くらい前から使っています。メーカーから一度試してみてほしいと言われたのがきっかけです。色が暖かくてクラックや破折が少ないなど、とても扱いやすいポーセレンであるうえに、私が当時使っていた製品よりも審美性が高い、というのが第一印象でした。
こうした理由から使い始めたわけですが、実際に使ってみると見た目が良いだけでなく、人工的な冷たい感じもなく天然歯に近い暖かさを再現できることや、透明性が高くきめ細やかな表現が可能であることが、今なお使い続けている大きな要因です。
Aki私も同じ理由からです。それまで色々なポーセレンを使っていましたが、最初に「スーパーポーセレンAAAのラスターポーセレン」を使ったとき、きめ細かさ、表面滑沢性、表面に気泡ができないことなどに驚きました。
その後、自分でラボを経営するようになって特に大事だと感じたのは、破折が少ないことです。このことはビジネスシーンでは致命的な問題になってきますので、安心して使えるということもとても大きな理由です。
山田日本ではノリタケポーセレンを使用されている方が多くいますが、アメリカやヨーロッパにおけるノリタケポーセレンの知名度はいかがでしょうか?
Aki私がノリタケのインストラクターをさせていただくようになった頃とほぼ同時期にアメリカでノリタケポーセレンの販売が始まったのですが、紹介する際には、必ずまずノリタケチャイナ等のテーブルウェアを見せて、「この会社が作っているポーセレンですよ」と言うと、皆さん納得してくださいましたね。
今ではデンタルにおけるノリタケポーセレンの知名度は高く、おそらく知らない人はいないのではないでしょうか。
Nondas私はギリシャを拠点にしていますが、おそらくヨーロッパ全域でもかなり有名だと思います。

  • 左右中切歯、右側側切歯、犬歯のオールセラミック修復を行う。中切歯、側切歯、犬歯の色調ならびに形態のコントラストを考慮して製作する。すべてのキャラクタライズはインターナルライブステインにより付与されている。<写真提供:Aki Yoshida 先生>
    左右中切歯、右側側切歯、犬歯のオールセラミック修復を行う。中切歯、側切歯、犬歯の色調ならびに形態のコントラストを考慮して製作する。すべてのキャラクタライズはインターナルライブステインにより付与されている。<写真提供:Aki Yoshida 先生>

■着実にシェアを広げつつあるジルコニア製品

Aesthetic Lab:ギリシャ Nondas Vlachopoulos
Aesthetic Lab:ギリシャ
Nondas Vlachopoulos
13th Morita dentaltechnician’s Forum 2015に登壇
山田日本では貴金属価格の高騰、そしてCAD/CAMの普及によりジルコニア製品の使用が広まってきています。ヨーロッパ、アメリカではジルコニアあるいはメタルの使用状況はいかがでしょうか?
Nondasメタルと比較した場合、ジルコニアは高額というのが現状ですが、もし同額であれば、全ての症例をジルコニアにシフトしたいと考えています。私はジルコニアが歯科に応用された当初から、メタルよりも気に入って使っています。その理由として、軟組織に対してより健康状態を保てることや、生体親和性も高く、セラミックに近似した特性を持っているからです。
さらにボンディングについても高い適応力をそなえています。もしジルコニアが扱いづらいと感じる方がいらっしゃるとすれば、些細なテクニックミスが原因なのではないでしょうか?
私自身はジルコニアのみで全ての症例をクリアできるのであれば、そちらを望みます。
山田その傾向はNondas先生のラボだけでなくヨーロッパ全体のトレンドと言えるのでしょうか?
Nondasそうですね。ドイツでもジルコニアによる製作がかなり増えていると聞きますし、以前トルコのイスタンブールに行った際にも、ジルコニアの価格が下がったということで、メタル離れが進んでジルコニアが大量に使われるようになっていました。
その他の市場に関しても歯科修復におけるジルコニアのシェアは着実に拡大していると聞き及んでいます。
Akiアメリカも貴金属の価格が高騰していますから、補綴物を製作する場合、金属代だけで技工料金を上回ってしまうケースも出てきていますので、メタル離れがより顕著になっています。
代わりにジルコニアフルカウンツゥアークラウンが急速に普及していますね。私もメタルは今年になって数回しかキャストしていません。

  • 陶材を築盛するためのサポート強化と、多色築盛による審美性を目的とした、独特の3Dデザインを行っている。機能と審美の両面を考慮したフレームを作成している。
    陶材を築盛するためのサポート強化と、多色築盛による審美性を目的とした、独特の3Dデザインを行っている。機能と審美の両面を考慮したフレームを作成している。
    <写真提供:Nondas Vlachopoulos 先生>

■材料とテクニシャンのスキル

カスプデンタルサプライ カナレテクニカルセンター 山田和伸
カスプデンタルサプライ
カナレテクニカルセンター
山田和伸
山田お二人のラボにおいて、ジルコニアの補綴に関してクラレノリタケ製品のトラブルはありますでしょうか。
Nondas全くありません。特にマルチレイヤータイプの「カタナジルコニアML」は世界的に見てもクオリティの高い材料だと思います。
私は従来型のフレームワークをもとに技工製作をしていますので、レイヤリングもやりやすいですし、透明度も高く三次元的な色調表現も可能ですので、より自然に仕上げることができます。
Aki私のラボでは2002年頃からジルコニアを使い始めましたが、寿命という点から考えるとPMFのベニアリングポーセレンよりもジルコニアの方が口腔内の生存率は高いですね。
また、カタナジルコニアを使うようになってからフレームが壊れたことは私の経験では一度もありません。
山田お話を聞いているとパーフェクトな材料のように感じますが…。
Nondasどんなパーフェクトな材料でも、最終的にその善し悪しを決定づけるのはテクニシャンのスキルです。優秀なテクニシャンであれば問題の大半はクリアできます。
Aki先生がおっしゃったようにフレームが壊れるようなことはありませんし、製作の過程でフレームの強度やポーセレン築盛スペースを考慮したフレームの設計が非常に重要です。
山田Nondas先生のポーセレン築盛の基本コンセプトは焼成収縮を均等にしていくということなのでしょうか?
Nondas重要なことは、ポーセレン築盛スペースを均等に確保するということです。そうすることで破折なども少なく審美性を損なうこともありません。現在、築盛スペースを考慮し、どの程度収縮するのかもかなり高い精度で予測できますので、解剖学的に追随するように焼成することが可能です。
またフレームワーク自体も審美性を大きく左右しますから、私はできるだけマルチレイヤータイプの「カタナジルコニアML」を使うようにしています。
Akiということは「カタナジルコニアML」をサブストラクチャーフレームとして使っているということですね。
Nondasその通りです。レイヤリングには「セラビアンZR」を使用しています。
Akiそうですか。今まで「カタナジルコニアML」をフレームに使うという考え方はなかったですね。
山田日本では途中で一度焼成して、インターナルステインテクニックを行うことが多いのですが、このテクニックについてはどう思われますか?
Nondas私は全てのテクニックに敬意を表していますし、色々なテクニックがあっていいと思います。
1つのやり方を全てのケースに適応するというのではなく、ケースバイケースでフレキシブルに対応していくことが重要です。そのためには、“この症例にはどういったテクニックが望ましいか”を常に判断しなければなりません。仮に10通りのテクニックがあるとすれば、それは私にとって10種類の武器を手にすることと同じことを意味します。場合によってはインターナルステインが最も適しているケースもあるでしょうし、ワンベイクのレイヤリングのみで可能なケースもあるでしょう。いずれにしても、精度の高い技工製作を追求する場合、全てのケースにおいてカスタム化が必要になると思います。まさに「No rule(ルールはない)」ということです。
山田Aki先生は、テクニックにおいて使い分けはありますか?
Aki私も以前は全てのケースをワンベイクで築盛を行っていましたね。
その後、ノリタケポーセレンを使うようになってテクニックが変わりました。予測ができてミスの少ない方法、そしてシンプルな術式、それが結果的にクオリティを高めることにもつながると思っています。私は築盛する時間を節約した分、形状や表面性状などに時間を割くことができるようになったと感じています。ですから、シンプルなテクニックでインターナルステインテクニックを使っていますが、以前よりもクオリティは上がっているという自負はありますね。
山田今大会でのAki先生の講演でも、テクニシャン自身のタイムはもちろんですが、患者さんのチェアタイムをいかに短縮するかということをとても強調されていたのが印象的でした。

  • インプラント埋入を行い、上部構造はカタナジルコニア&セラビアンZRにて修復を行った。
    1インプラント埋入を行い、上部構造はカタナジルコニア&セラビアンZRにて修復を行った。
    <写真提供:山田和伸先生>

■今後の審美歯科技工の方向性

山田では今後の審美歯科における技工の方向性について、CAD/CAMやマテリアルは今後どういった流れで進んでいくと思いますか?
また歯科技工に携わる人の将来といったことも含めていかがでしょうか?
Nondasヨーロッパにおける審美歯科技工のレベルはすでにかなり高いと思います。
ただ、もっと作業が簡便になるよう、またシンプルでオートマティックな技工製作を目指してCAD/CAMシステムなどの新しい技術が取り入れられつつあります。こうしたデジタル技術の台頭と同時にマテリアルも年々改良され、近々、透明性の高いジルコニア製品が販売されるという朗報も聞こえてきています。
しかし、最高レベルの審美性を実現するためには、そうしたテクノロジーやマテリアルの進歩だけでは不十分で、やはり高いスキルを持ったテクニシャンの存在が不可欠です。特にレイアリングを得意とする従来技術がさらに貴重になってくるのではないかと感じています。
Akiアメリカでも同じことが言えますね。元々スキルやクオリティには個人差があると思いますが、CAD/CAMの導入によって、より二極化が進んできたようにも感じています。
アメリカではテクニシャンの全体数は減ってきており、特にレイヤリングができる高いスキルを持ったテクニシャンの数が少なくなってきています。ただ、そうしたテクニックを求めるマーケットは確実に存在しますから、高スキルのテクニシャンは今後もっと忙しくなっていくでしょう。
CAD/CAMを使用するにしても技工に関する知識が必要ですし、高度な知識と技術を持ったテクニシャンの存在はいつの時代にも必要になってくるのではないでしょうか。
Nondasそうですね。芸術を作り出す機械はありません。生み出すのはあくまでも人間ですから…。
山田今のお話は、言い換えれば、FactoryとLaboratoryの二極化ということだと思いますが、ただどちらも歯科業界にとっては必要なもので、特に日本の場合は、その傾向が著しいと思います。
Nondasそれは日本だけでなくヨーロッパでも同様です。アートの世界と生産性を追求する世界をうまく組み合わせなければ、良い品質は実現できないと思います。産業界においても独創性という意味でクリエイティブな発想は常に必要になりますから…。
山田われわれテクニシャンが今後直面する課題ですね。
本日は有用なお話をありがとうございました。