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FIELD REPORT

インプラント治療の術前・術中・術後に大きな貢献を果たす精確かつ安全な CT 確定診断

福岡市早良区相浦歯科クリニック院長 相浦 隆

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目 次

平成16年に福岡歯科大学医科歯科総合病院歯周病科に入局し、歯周病治療を中心に外来治療から訪問歯科まで広範な分野で経験を積みました。退局後は福岡県内の開業医に約6年間勤務しましたが、その間に日本臨床インプラント研究会に入会し、多勢の著名な先生方から低侵襲かつスピーディなインプラント治療の手技を体得し、3年前に生まれ故郷で開業しました。
なじみ深い町の皆さんの口腔健康の維持に貢献できることが私の喜びです。インフォームドコンセントとメンテナンスを徹底し、患者さんの意志と権利を尊重しながら、カンファレンスによる情報共有やスタッフ間のコミュニケーションを深めるように努めています。
さて、診療のデジタル化は歯科臨床の世界を一変させていますが、とりわけCT(3DパノラマX線装置)の進化には目を見張らさせられます。臨床家にとっては、非侵襲な画像診断によって感染源を特定して感染巣を除去し、健全歯質の保存を図ること、一貫したMIのコンセプトに基づいて治療を実践できること、そこにCTの有用性や付加価値があると考えています。
現在はインプラント治療を主体に、歯周病治療から埋没智歯の抜歯、根管治療まで治療領域に関わらず使用頻度は高いですが、コントラスト分解能のすぐれた鮮明・精細な3D断層画像が得られますので、パノラマX線では判別しづらい歯周組織・骨構造の把握、病変・病巣の正確な原因究明、適確な診断・評価が行えるとともに、撮像時間の短縮、検査効率・検査精度の向上のほか、被曝線量の低減などに、CT所見の大きなアドバンテージを感じています。
症例1は他院でインプラント治療を受け、メンテナンスが十分でなかったために不適合を訴えて来院された患者さんのケースですが、初診時にCTで患部を撮像後、インフォームドコンセントを進めながら、治療計画を提示して、撤去・再植立しました。CT所見による適切な画像診断が功を奏して、予後はきわめて良好に推移しています。
症例2は、根管が閉鎖していた患者さんの根管長をルートZXで測定した時、異物感があったためCT撮影を行いました。CT所見で根尖部に病巣とともにリーマー破折片らしきものを発見できたために、異物除去を行ったケースです。湾曲した狭窄根管の根尖部の病変や異物はパノラマX線のみでは発見が困難だということを認識させられた一例です。
これらの症例以外でも、たとえば、ソケットリフトにGBRを併用したケースでは、インプラント体を初期固定できなかったために、CT所見で上顎洞を注意深く確認した上で、副鼻腔のシュナイダー膜を貫通しないように確実に施術することができました。
その他、顎部の神経に接近している下顎埋没智歯の症例も手がけています。下顎埋没智歯の場合は、顎骨と歯根の癒着があったり、正常に萌出せず埋伏したまま横向きに生えていますので、プラークが残存しやすく、う蝕や歯周病による疼痛を発症したり、不正咬合の原因になるリスクがあるために、CT画像診断は欠かせません。
このように、さまざまな診断治療を重ねてきましたが、インプラント治療、歯周病治療、根管治療を問わず、術前・術中・術後の精確かつ安全な確定診断には、CT所見による高感度・高解像度の3D画像が必須であるという事実に日々、気づかされています。
患者さんにとって安全なX線照射線量で局所からフルマウスまで歪みがない高品質画像のパノラマ撮影や3D撮影ができるだけでなく、多彩な画像処理を行えば多角的な観察・評価や予知診断ができます。たとえ難症例などに直面しても、確信をもって治療に専念できますから、その信頼性は絶大ですね。

  • 図1 ベラビューエポックス3D。
    図1 ベラビューエポックス3D。パノラマ撮影もかねた複合型CT撮影機。3Dへの画像処理能力が早く術中確認もスピーディにできる。
  • 症例1 図2 初診時パノラマX線写真。
    図2 初診時パノラマX線写真。67にインプラント除去による骨の透過像が認められる。
  • 図3 ベラビューエポックスによる術前診断とシミュレーション。
    図3 ベラビューエポックスによる術前診断とシミュレーション。6はインプラント除去による透過像が認められるため、近心側に埋入することを決定した。 
  • 図4 術前診断で決めていた部位にフィクスチャーを2本埋入した。
    図4 術前診断で決めていた部位にフィクスチャーを2本埋入した。6は予定通り近心側に埋入したので初期固定をえることができた。
  • 図5 術後パノラマ写真。
    図5 術後パノラマ写真。予定通りの位置に埋入できていることを確認し、6はやや近心側に埋入していることも確認できた。
  • 図6 約3ヵ月後、上部構造を装着したもの。
    図6 約3ヵ月後、上部構造を装着したもの。現在は定期的にメンテナンスで来院し、インプラント性歯周炎の予防に努めている。
  • 症例2 図7 6 近心根に根尖病巣を疑う透過像が認められる。
    図7 6近心根に根尖病巣を疑う透過像が認められる。根管充填が根尖部まで緊密になされていないために根尖病巣を形成したと思われる。この後は通例に従って、除冠後に感染根管処置を行った。
  • 図8 来院を重ねて根管拡大、形成を行ったがリーマー使用時の手指感覚や電気的根管長測定器などの異音がしたために、デンタル撮影を行ったところ、パノラマ時には認められなかったリーマー破折片らしきものが写ったために、CT撮影を行い確認した。 
    図8 来院を重ねて根管拡大、形成を行ったがリーマー使用時の手指感覚や電気的根管長測定器などの異音がしたために、デンタル撮影を行ったところ、パノラマ時には認められなかったリーマー破折片らしきものが写ったために、CT撮影を行い確認した。 
  • 図9 パノラマスカウト画像でCT撮影部位を位置づけした。
    図9 パノラマスカウト画像でCT撮影部位を位置づけした。
  • 図10 図8で認められたリーマー破折片をCT画像でも確認することができた。
    図10 図8で認められたリーマー破折片をCT画像でも確認することができた。
  • 図11 数回の根管貼薬と超音波器具を繰り返し使用して破折片を除去し、水酸化カルシウム製剤を充填。根管の湾曲に沿ってカルシウム製剤が充填され、根管孔よりも溢出しているのが確認できる。
    図11 数回の根管貼薬と超音波器具を繰り返し使用して破折片を除去し、水酸化カルシウム製剤を充填。根管の湾曲に沿ってカルシウム製剤が充填され、根管孔よりも溢出しているのが確認できる。現在も根管貼薬で通院中で、近日中に最終的な根管充填を予定。 

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