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152号 SPRING 目次を見る

RISK MANAGEMENT

快適な環境づくりと安心安全の提供 院内感染防止対策は歯科医院にとっての“強み”になる

青梅市みのりのもり歯科 院長 橋本隆匡

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東京都青梅市みのりのもり歯科 歯科医療には外科的な要素が多分にあり、血液に触れない日はありません。歯肉を切開すればもちろんのこと、エアーをかけただけでも患者さんの血や唾液は飛散し、目に見えないレベルでもそうした飛沫はたくさん飛んでいます。
例えば、肝炎などの病気は体液を通じて感染しやすいことが知られています。ただ、症状として現れるまでには時間がかかるため、仮に歯科治療が原因で感染したとしても、患者さん自身がそれに気がつかないケースがあります。だからといって、歯科医院が院内感染の対策を怠っていいわけではありません。
よく「自分の家族に受けさせたい治療をしましょう」と言われますが、それは治療そのものだけでなく、インフェクションコントロールがきちんとなされた環境づくりも意味するものだと思っています。もし当院の治療が原因で感染症を患う患者さんがいたとしたら、そしてそれが自分の家族だったら、そう考えると消毒や滅菌の施策を怠っていいはずがありません。
当院では患者さんが変わるごとにユニットまわりの清掃を行っています。また、グローブやコップ、チェアのヘッドカバー、ラバーカップ、バフ、排唾管など、使い捨てにできる備品はすべて使い捨てにし、ディスポーザブルを徹底しています。そうした滅菌施策の中でも特に要となるのがウォッシャーディスインフェクターとプレポストバキューム式オートクレーブでしょう。私自身がもともと総合病院の口腔外科に従事していた経緯もあり、消毒や滅菌に対する必要性を強く感じていたため、これらの機器は2014年10月の開業と同時に導入しました。
よく院内感染防止対策にはコストがかかると言われますが、「WD-150」は器具をセットしたらボタンを押すだけで洗浄・消毒をすべて自動で行ってくれます。それは洗い場にスタッフを一人雇っているのと同じこと。初期費用は確かにかかりますが、長期的に使用することを考えると、実は大きなコスト削減に繋がっています。また、使用履歴をデータとして残すことができるので、もしも患者さんから院内感染について何かを問われた際には資料として提示できる点もリスクマネジメントの観点から気に入っています。
「BC-17」はJIS規格に適合し、医療先進国であるヨーロッパの厳しい基準EN13060もクリアしたクラスB準拠のオートクレーブです。そのため、何よりも安心感を得られることが魅力です。クラスBの「B」は「Big」の略。つまり、あらゆる種類や形状の被滅菌物の滅菌が可能であることを表わしています。プレポストバキューム方式により真空状態で蒸気の注入を繰り返すため、細かいインスツルメントなどでも芽胞まで取り除くことができるのです。
ただ、残念なことに諸般の理由から日本の歯科医療現場ではクラスBのオートクレーブ普及率はまだまだ低いと言われています。
しかし、世界を見渡せば、欧米はもちろん、韓国や中国などのアジア諸国でも8割以上の歯科医院でクラスBが採用されているのも事実です。近年、国内でも新聞で取り上げられるなど、院内感染防止対策の重要性について見聞きする機会が増えました。
以前、内覧会を開いたときには「ホームページを見ました」と「WD-150」と「BC-17」を見に来られた方が予想以上にいらっしゃり、中には歯科医療関係者の方もいて、院内感染などに対する関心の高さをうかがい知れました。今後、日本の歯科医療現場においても、こうした意識はさらに高まっていくのではないでしょうか。
ところで、院内感染防止対策は患者さんへの安心安全の提供という側面以外にも、スタッフにとってのメリットも多分にあるものと思っています。器具の洗浄中にケガをする事故はどんなに気をつけていても起こるものです。ウォッシャーディスインフェクターはそうした事故を未然に防ぐ役割も担っています。
そして、プレポストバキューム式オートクレーブでしっかりと滅菌できる設備を整えることで歯科衛生士さんにも自信と誇りを持って治療に当たって欲しいと願っています。
スタッフにとって快適な職場環境をつくることは、スタッフの地位向上にも寄与し、結果的に当院における治療やホスピタリティのレベルが底上げできればと思っています。
院内感染防止対策は何かとコスト面で懸念されがちではありますが、ひとたび事故が起こればその損失は計り知れません。そして、スタッフにとっての快適な環境づくりと患者さんへの安心安全の提供、これらのことを鑑みれば、長い目で見たときにはメリットのほうが勝るのではないかと感じています。

  • 洗浄・滅菌エリア内には大きなピンセットが用意されていて、清潔なガーゼ、器具などには直接手を触れないようにしている。
    洗浄・滅菌エリア内には大きなピンセットが用意されていて、清潔なガーゼ、器具などには直接手を触れないようにしている。
  • 「BC-17」を稼動させるのは1日3〜4回。耐熱性樹脂製品にも対応した「ソフト乾燥モード」を主に使用している。
    「BC-17」を稼動させるのは1日3〜4回。耐熱性樹脂製品にも対応した「ソフト乾燥モード」を主に使用している。
  • 診療エリア内にあるシンクの蛇口はすべてフットペダル式になっている。手洗いは院内感染予防対策の基本だ。
    診療エリア内にあるシンクの蛇口はすべてフットペダル式になっている。手洗いは院内感染予防対策の基本だ。
  • テーブルのコントロールパネルやオペレーティングライトのハンドルには患者さんが変わるごとに市販のマスキングテープを貼っている。
    テーブルのコントロールパネルやオペレーティングライトのハンドルには患者さんが変わるごとに市販のマスキングテープを貼っている。
  • チェアなどのユニットまわりも患者さんごとにクリーナーで清掃する。こうした準備には4〜5分ほどかかるという。
    チェアなどのユニットまわりも患者さんごとにクリーナーで清掃する。こうした準備には4〜5分ほどかかるという。
  • エントランスの脇に置かれたペットボトルの飲料水と使い捨てのスリッパ。備品は可能な限りディスポーザブルで対応している。
    エントランスの脇に置かれたペットボトルの飲料水と使い捨てのスリッパ。備品は可能な限りディスポーザブルで対応している。

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