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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Field Report
診断機能にとどまらないより効率良く精確な治療を実現するための支援ツール
鹿児島県鹿児島市 吉嶺歯科院長 吉嶺 真一郎

鹿児島県鹿児島市 吉嶺歯科 広島大学卒業後、鹿児島大学の口腔外科に5年在籍し、1987年に開業しました。口腔外科を専門にしてきましたので、インプラント治療は約20年前から取り組んでいます。試行錯誤を続けるうちに、3次元画像があれば今まで見えなかった骨の状況を確認することができ、適応症を拡大していけることもわかってきました。そこで、当時モリタから発売されたばかりの3DXを導入することに決めました。確かに高額な機種ではありますが、3DXが映し出す画像の鮮明さは群を抜いていましたから、思い切って導入しました。既に導入から9年以上が経過しましたが、その時の選択は間違っていなかったと思っています。
導入した当初は専らインプラント診断と過去に治療した経過症例の確認がほとんどでした。特に、経過確認では今まで行ってきた診療の方針に間違いがないかなど治療技術の再評価を行うことができ、自分のスキルアップにも非常に有効だったと感じています。
また、当時は九州にCTを導入している歯科医院が少なかったこともあり、撮影依頼を受けるケースも多かったですね。ただ、依頼される先生方はCTの画像をほとんど見た経験がありませんから、どう見ればいいかわからないといった相談を受けるようになり、読影に関するアドバイス的なこともさせていただくようになりました。それが高じてモリタ主催のハンズオンセミナーを開催するようにもなりました。セミナーは、歯科用CTを正しく普及させるために必要なノウハウを実習形式でお伝えするもので、そのエリアは現在九州、西日本にとどまらず関東地方まで広がっています。
読影のコツとして、被曝量をできるだけ少なくして有効な撮影範囲を設定する方法などもアドバイスしています。それを聞いて導入するCTの機種の判断材料にされる先生もいらっしゃいます。3DXの生みの親である新井嘉則先生が「2次元を頭の中で3次元構築する」とおっしゃいますが、3次元イメージを頭の中で描きやすいような画像を切り出すテクニックが必要ですし、「この部分を診断するにはこういうふうに画像を動かしてスライスする」という読影の原理原則も存在します。
現在では自分が診断するだけでなく、患者さんが理解しやすい画像をいかにつくるかといったことにも気を使っています。一般の患者さんはCTの画像を見ても十分に理解できないことも多いので、直感的にイメージできるような画像を抽出し、あえて3次元画像にしてお見せすることもあります。それは診断とは別の意味で重要なことで、3DXの場合そうした画像がとても作りやすいというメリットもあります。
歯科用CTを単に診断機器と決めつけてしまうのではなく、外科治療や根管治療を支援するツールとして活用することで、効率的に治療が進み治療時間を短縮できるメリットがあることも最近分かってきました。
当院では歯科用CTの他にマイクロスコープ(ライカ製)やレーザー装置(アドベール)を使っていますが、それぞれの得意分野を融合させることで得られる相乗効果は非常に高く、より良い治療結果をもたらすことを、毎日の診療で実感しています。
今後、歯科用CTはさらに普及が進み、歯科診療にとって必要不可欠なツールになることはほぼ間違いないでしょう。高品質のCTデータは歯科医院の財産です。それはこれまで培ってきた治療データの蓄積であり、客観的に再評価することで自分を成長させる大きな糧になるものですから、決してお金にはかえられないものです。導入の際には、できるだけクオリティの高いデータを求め、それを長期間保管していく上でも信頼性のおける機種、メーカーを選択することをお薦めしたいですね。

  • 20歳前後の患者の下顎埋伏智歯のレントゲン写真
    図1 21歳女性。主訴:親知らずを抜きたい。20歳前後の患者の下顎埋伏智歯は下顎管に接している症例が多く見られる。
  • 根尖部の歯根形態と下顎管の位置関係のレントゲン写真
    図2 それゆえ下顎埋伏智歯の抜歯の術前検査でCT撮影する頻度は高い。特に根尖部の歯根形態と下顎管の位置関係は様々な方向から把握する必要がある。
  • 厚い粘膜に覆われた完全埋伏智歯の写真
    図3 この症例のように厚い粘膜に覆われた完全埋伏智歯の場合、歯冠の位置関係を口腔内から把握しにくい。粘膜切開にはEr:YAGレーザーを使用した。
  • ボリュームレンダリング画像
    図4 ボリュームレンダリング画像は切開線の設定をするのに有用な画像である。
  • 粘膜剥離を行った写真
    図5 ボリュームレンダリング画像で設定した切開部から粘膜剥離を行うと画像とほぼ同じ状態が現れる。これにより切開量の過不足が起こらず、適正な術野を確保することができる。
  • ボリュームレンダリング画像
    図6 また、頰側に比べて舌側の骨形態は粘膜剥離しても把握しにくい場合が多い。ボリュームレンダリング画像では容易に舌側の歯と歯槽骨の形態を把握することができる。
  • 粘膜剥離を行った写真
    図7 頰側、舌側から見たボリュームレンダリング画像から歯冠周囲の歯槽骨の削除量を決定する。骨削除にもEr:YAGレーザーを使用した。骨バーに比べ削除には時間がかかるが、特に舌側の骨削除は粘膜を傷つけることなく安全に行える。
  • 前方歯のアンダーカット部に引っかかる歯冠をダイヤモンドバーで切断した写真
    図8 前方歯のアンダーカット部に引っかかる歯冠はダイヤモンドバーで切断、除去する。
  • 埋伏歯のボリュームレンダリング画像
    図9 埋伏歯のボリュームレンダリング画像を水平に切断した像にて歯根と下顎管との位置関係を確認する。CTの水平断の2次元画像でも確認できるが、この画像のほうが3次元的位置関係のイメージが得やすい。この画像を参考にエレベーターで歯を脱臼するためにかける方向とかけてはいけない方向をイメージする。
  • 脱臼するためにかける方向とかけてはいけない方向をイメージする写真
    図10 ボリュームレンダリング画像を参考にエレベーターで歯を脱臼するためにかける方向とかけてはいけない方向をイメージする。エレベーターを舌側方向に力をかけると下顎管を圧迫する可能性があることがわかる。
  • 脱臼させた写真
    図11 切れ込みを入れた歯頸部にエレベーターを入れ、頰側歯槽骨を支点にして上方に持ち上げるようにして脱臼させた。容易に脱臼し、スムーズに抜歯が行えた。
  • 抜歯した写真
    図12 近接した下顎管にも損傷は認められず、安全に抜歯が終了した。術後治癒も良好で、ほとんど不快感は認めなかった。

デンタルマガジン 153号 SUMMER