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Field Report
CR充填法の適応症を拡大し予後の確実性を高めるマトリックスシステム
大阪市阿倍野区 医療法人脇歯科医院 理事長 脇 宗弘

従来、2級修復のケースでは間接法を用いたインレー修復に頼ることが多く、結果として適合の不具合やその後発生する二次カリエスをはじめ、ネガティブな要素がたくさんありました。しかし近年、コンポジットレジン(CR)やボンディング材が飛躍的な進歩を遂げ、直接法によるCR修復を選択することが世界的なスタンダードになりつつあると感じています。直接法を選択することで、二次カリエスのリスクが少なく脱離もほとんど発生しないという臨床上のアドバンテージに加え、1回の来院で白い歯に治せて長期安定性が望めるという点でも患者さんが受けるメリットも大きいのではないでしょうか。
さて、CR充填による2級修復の際、皆さんが最も苦労する部分が隣接面のコンタクトポイントの回復だと思いますが、使い勝手の良いマトリックスシステムを用いることで意外と簡単にその問題をクリアでき、かつ多くの臨床上のメリットを享受することが可能になります。私はコンポジタイト3Dシリーズを使用していますが、このマトリックスはとても使いやすいので大変気に入っています。これまで使っていた製品はマトリックスとリングを使って隣接面の形状は作れるのですが、歯間離開するセパレート機構があまり働かず緩くなって使いづらい面がありました。その点、コンポジタイト3Dシリーズは従来のリングとマトリックスにウェッジを加えて、それら3つを同時に装着することで窩洞とマトリックスの密着性を高めることができるとても理にかなったシステムです。窩洞に対してしっかりマトリックスとウェッジで固定できる環境を作れば、あとはリングを使って動かないように固定するだけで簡単に装着することができます。この手順が難しいと感じて敬遠する方も多いようですが、慣れてくればそんなに難しいことはありません。逆にこの作業1つで治療の予知性が大きく変わってきますから、チャレンジする価値はあると思います。
適用症例としては、ほぼ全ての2級窩洞に応用することができます。マトリックスが持っている付与可能な形態と固定するリングによって、具現化できる形状はあらかじめ決められていますが、隣接部と2級の窩底部さえキチッと充填できれば、頰舌側と隣接面の移行部の偶角が広い場合などの充填が難しい部分は後からレジンをアドオンすることで形態は付与することができます。このマトリックスの目的は両隣接歯とのコンタクトポイントをできるだけ忠実に再現することですから、大事なことは隣接面のウォールをしっかり作って、なおかつ窩底部をフィット(空隙がない、バリがない、オーバーハングがない)させることです。
コンポジタイト3Dシリーズの場合、歯冠の高さや窩洞に応じて様々なマトリックスバンドが用意されていますが、いろいろ試した結果、私はスリックバンドを使うことがほとんどです。このバンドは表面がコーティング加工されていてスムーズにバンドを除去することができます。また、大きさによって色分けされていることも使いやすい理由の1つです。リングに関しては従来大きな歯に合わせたものしかありませんでしたが、アメリカで乳歯や歯列不正用として販売されているスモールタイプが日本人の歯にうまくフィットします。そのおかげで使用用途や適用範囲はかなり増え、今ではこのタイプを使う頻度が多くなっています。
ところで、私は現在モリタ塾という講習会で講師を勤めさせていただいています。その際、若い先生方には「もし自分がその患者さんと同じ立場ならどんな治療を望みますか?」という歯科医師としてあたりまえのところから考えてもらっています。自分や自分の家族が受診して果たしてパラのメタルのインレー修復を望むでしょうか?決してインレー修復が悪い訳ではありませんが、従来のやり方にとらわれてCR充填が可能なものまで安易にインレー修復を選択してはいないでしょうか?硬組織の疾患に関しては、崩壊した部分を何らかのカタチでリペアする必要がありますが、現在ではより侵襲が少ない治療を選択し、永続性が高いことが大前提になっています。それをかなえてくれるのが今日の接着技術やCR充填修復ですから、今後ますますスタンダードになっていくでしょう。しかし、一朝一夕でできるものではありませんから、私自身も臨床家として引き続き努力を重ねていきたいと思っています。

  • 図1 術前。左側上顎第一・第二小臼歯隣接部に変色と二次カリエスを伴う古いCR充填が認められる。
    図1 術前。左側上顎第一・第二小臼歯隣接部に変色と二次カリエスを伴う古いCR充填が認められる。
  • 図2 第二小臼歯充填の後に第一小臼歯の充填物・感染歯質の除去を行った。
    図2 第二小臼歯充填の後に第一小臼歯の充填物・感染歯質の除去を行った。
  • 図3 インスティダム(ザーク社)にて防湿の後、接着操作に入る前にハンディジェットとPMTCパウダー(EMS社)にて歯面清掃を行う。
    図3 インスティダム(ザーク社)にて防湿の後、接着操作に入る前にハンディジェットとPMTCパウダー(EMS社)にて歯面清掃を行う。
  • 図4 隣接歯への汚染を防ぐためテフロンテープで保護し、エッチング・ボンディングを行う。
    図4 隣接歯への汚染を防ぐためテフロンテープで保護し、エッチング・ボンディングを行う。
  • 図5 クリアフィルメガボンドFAによって歯面処理された、隔壁装着前の2級窩洞の状態。
    図5 クリアフィルメガボンドFAによって歯面処理された、隔壁装着前の2級窩洞の状態。
  • 図6 スリックバンドスモール(グレー)を隣接面の三次元的形態を再現するために挿入する。
    図6 スリックバンドスモール(グレー)を隣接面の三次元的形態を再現するために挿入する。
  • 図7 隣接面窩洞の窩底部とマトリックスとの適合を高めるためにウェッジワンドスモール(ブルー)を挿入する。
    図7 隣接面窩洞の窩底部とマトリックスとの適合を高めるためにウェッジワンドスモール(ブルー)を挿入する。
  • 図8 隣接面コンタクトの回復のために歯間離開効果を持つコンポジタイト3Dリテーナー(スモール)を使用する。
    図8 隣接面コンタクトの回復のために歯間離開効果を持つコンポジタイト3Dリテーナー(スモール)を使用する。
  • 図9 クリアフィルマジェスティESフロー(High A-2D)にてマトリックス内面が作り出す形態と残存歯質とを一体化させる。
    図9 クリアフィルマジェスティESフロー(High A-2D)にてマトリックス内面が作り出す形態と残存歯質とを一体化させる。
  • 図10 クリアフィルマジェスティESフロー(Low A-3D)にて中間層を充填する。
    図10 クリアフィルマジェスティESフロー(Low A-3D)にて中間層を充填する。
  • 図11 クリアフィルマジェスティESフロー(SuperLow A-2)にて咬合面形態を付与していく。
    図11 クリアフィルマジェスティESフロー(SuperLow A-2)にて咬合面形態を付与していく。
  • 図12 術後。色調のみならず自然な隣接部の歯冠形態と接触点の回復ができたことにより、フロスによるメンテナンスも行えるようになった。
    図12 術後。色調のみならず自然な隣接部の歯冠形態と接触点の回復ができたことにより、フロスによるメンテナンスも行えるようになった。

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デンタルマガジン 154号 AUTUMN