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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Hint
X線画像読影虎の巻Part1 歯根周囲感染病巣の読み方
吉岡デンタルオフィス 院長 吉岡 隆知 / デンタルスキャン 院長 神田 重信

■緒言

歯の異常とくに歯根の病変を探るためには、臨床所見の次にデンタルX線写真が必須となる。しかし、デンタルX線写真は2次元の重複画像のために、歯根以外の構造物と重なり合うことが多く、歯根自体を鮮明な画像として描出できない欠点がある。特に、歯根の頰側(唇側)や舌側(口蓋側)に病変や変化がある場合は、ほとんど正確な所見が読めない。こうなると、3次元の断面画像であるCBCTの出番となる。
CBCTによれば、歯根や周囲歯槽骨のほとんどの病変や異常を画像化できるので、大きな武器ではあるものの、常時CBCTを活用できるわけでもない。したがって、CBCT所見を正解として、その時のデンタルX線写真の変化と比較して、CBCT所見をフィードバックして有効に役立てる算段もしておかなければならない。
本論文では根尖病巣をはじめとする歯根周囲の感染病巣をデンタルX線写真で読む場合のヒントやコツを、CBCT所見と合わせて述べてみたい。

■画像症例

1)根尖病変と根管狭窄(図1)
上顎左側第二大臼歯に痛みを訴えていた。デンタルX線写真(図1)では根尖部に透過像が見られる。根尖透過像の上方に見られる帯状の不透過部は上顎洞底線に頰骨弓が重なったものである。根尖病変と上顎洞の交通はないように見える。本症例で注意しなければならないのは根管が高度に狭窄しているためにほとんど見えないことである。根管だけでなく髄腔も確認できない。慢性の刺激があって第三象牙質が形成され、根管狭搾して歯髄血流が減少し歯髄死に至ったと考えられる。安易に根管治療しようと削り出してはならない。3DX-CT(モリタ)のような高解像度を有する歯科用小照射野CT(CBCT)で歯髄腔狭搾の程度を調べ、対応を検討しなければならない。なお、隣の第一大臼歯は根尖病変こそ見られないものの同じように根管は狭搾している。

2)歯根側方病変・垂直性歯根破折(図2)
何らかの訴えでデンタルX線写真撮影をして図2の下顎左側第二大臼歯のような所見を得たとき、垂直性歯根破折(VRF)を考慮しなければならない。その所見とは近心根に見られる、歯根周囲を取り巻くような透過像である。この像がVRFの典型的な形態である。歯頸部の骨が健全なので歯周病によるものではない。根尖部に歯根膜腔の拡大は見られないので、根尖性歯周炎でもない。側方病変の原因としては側枝、歯根吸収、穿孔などが考えられ、これらはいずれも原因部位を中心に同心円状に骨欠損が広がる。しかし本症例ではほぼ一定の幅の骨欠損が歯根に沿ってみられる。これは破折線に沿って骨破壊が起こるためである。

3)歯根吸収(図3、4)
デンタルX線写真(図3)で上顎右側中切歯近心にX線透過像が見られる。歯頸部と根尖周囲の歯槽骨に破壊像はない。CBCT(図4)では歯根近心面が大きく欠損している。これは歯根外部吸収である。CBCTで見られる歯根吸収の形態はデンタルX線写真をよく見ると中切歯の歯根近心に重なって読影できる。しかし、CBCTの画像なしにそこまで読影するのは難しいだろう。歯根側方病変ではデンタルX線写真と併せてCBCT画像を活用して診断したい。

4)歯根破折と根尖性歯周炎(図5〜9)
図5の上顎右側側切歯根尖部の透過像は遠心歯根面を取り巻くように見える。VRFでは歯根を取り巻くような骨破壊像とともに限局性の歯周ポケットが特徴である。しかし根尖性破折では根尖部のみ破折していて歯頸部歯質は健全なために歯周ポケットを生じない。透過像の形態が破折を疑う根拠となる。
単純撮影とは異なり、CBCT像では骨が欠損して黒っぽく見える部分をX線透過像とは呼ばない。骨破壊像、骨欠損像、病変像など適切な表現を選ぶ。近遠心断面像(図6)での骨欠損の範囲はデンタルX線写真と同様の所見であるが、頰舌断面像(図7)では口蓋側での歯頸側への広がりを確認できる。
破折による歯片の離開幅が広ければCBCTで観察できる場合もある。しかし破折が広がる前に症状が出ることが多い。CBCTの解像度よりも狭い離開幅(数μmのこともある)、および根管充填材や築造体などによるアーチファクトのために破折線そのものをCBCTで観察することは困難である。デンタルX線写真と同様に骨破壊像の形態で破折の存在を推定する。本症例ではCBCT像からも根尖性垂直性歯根破折を原因とする可能性を否定することはできない。破折線周囲の骨欠損によるものか、根尖性歯周炎が歯冠側に広がったものか画像診断ではこれ以上の考察はできない。そこで歯根端切除術を前提とした外科的探索を行った。
歯科用顕微鏡で歯根切断面を観察しても破折線は見られなかった(図8)。そのため垂直性歯根破折は否定でき、難治性根尖性歯周炎と診断した。
逆根管充填を行って1年後には根尖部透過像は消失していた(図9)。根尖部透過像の有無は歯根膜腔を追って判断するが、図では側切歯周囲にきれいに歯根膜腔が再生している。もし垂直性歯根破折であれば同様の処置を行ってもこのような治癒は得られない。

5)根尖病変(図10〜12)
図10は症状のない上顎右側前歯部のデンタルX線写真である。中切歯および側切歯根尖部に直径約15mmの根尖部透過像が見られる。両歯とも根管治療および築造が行われている。ポスト先端と根管充填材の間には少し空隙が見られるものの、治療の質は許容できるものなので歯根端切除術が適応となる。しかし歯根膜腔を追った時に根尖部透過像との関係は判然としない。
CBCTで側切歯(図11)の根尖孔は病変と連続しているが、歯根膜腔と病変との移行はなさそうだ。一方、中切歯(図12)の根尖孔は歯槽骨で覆われており、病変とは独立している。また、病変は切歯管にまで広がっている。以上の所見から、病変は側切歯が起因した歯根嚢胞か、顔裂性嚢胞の可能性が考えられた。歯根端切除術により嚢胞の摘出を行い、その病理学的所見は鼻歯槽嚢胞であった。

6)根尖突出(図13、14)
図13は根尖部圧痛を訴えていた犬歯のデンタルX線写真である。根尖部に歯根膜腔の拡大が見られる。同部のCBCT(図14)では唇側の骨は薄く、一部断裂しているようである。根尖孔は歯槽骨に覆われず、唇側に露出している。この場合、根尖性歯周炎による炎症は骨をほとんど破壊せず、歯槽骨表面に広がる。デンタルX線写真では根尖部透過像が見られないにもかかわらず、根尖部圧痛のような症状が見られる理由である。このように根尖孔が歯槽骨表面から突出するのは上顎中切歯、第一小臼歯にも好発するが、とりわけ上顎犬歯によく見られる。犬歯窩があってもともと骨が陥凹している上に歯根は外側に張り出していることが理由である。読影の際にはこのような解剖学的形態を念頭に置かなければならない。根管治療で症状が改善しなければ歯根端切除術の適応を積極的に検討しなければならない病態である。

7)未処置根管(図15〜18)
図15は根管治療後に再発した上顎右側第一大臼歯である。瘻孔から挿入したガッタパーチャは近心根の根尖部透過像に到達している。上顎大臼歯近心頰側根はしばしば2根管だが、口蓋側に存在するいわゆるMB2は見落とされがちである。未処置のMB2は近心頰側根根尖病変の原因となる。しかし、デンタルX線写真だけでMB2の存在を予想することは偏心撮影を行ったとしても容易ではない。MB2を確定するにはCBCTが必要である。
図16は近心頰側根の頰舌断面像で、頰側のMB1のみ処置され、その根尖孔周囲にあまり骨欠損はない。MB1は近心頰側根の頰側に偏り、口蓋側に根管は見えないがMB2がありそうな形態である。骨欠損の中心を通るあたりでの近遠心断面像が図17で、かすかに根管が見える。これがMB2である。広範な骨破壊は未処置のMB2によるものと考えられる。このくらい根管が見えれば歯科用顕微鏡下で根管の探索は可能である。
MB2を発見・処置後に瘻孔は消失した。図18はMB2の根管充填確認の偏心撮影時のデンタルX線写真である。近心根には2本の根管充填された根管が見られるが、右側がMB1、左側がMB2である。根尖までの長さも充填の緊密度も適切であることが読み取れる。

  • 図1 66歳女性。上顎左側第二大臼歯の根尖病変。
    図1 66歳女性。上顎左側第二大臼歯の根尖病変。
  • 図2 39歳男性。下顎左側第二大臼歯。
    図2 39歳男性。下顎左側第二大臼歯。
  • 図3 57歳女性。上顎右側中切歯のデンタルX線写真。
    図3 57歳女性。上顎右側中切歯のデンタルX線写真。
  • 図4 CBCT像。
    図4 CBCT像。
  • 図5 54歳男性。上顎右側側切歯。
    図5 54歳男性。上顎右側側切歯。
  • 図6 CBCT近遠心断面像。
    図6 CBCT近遠心断面像。
  • 図7 CBCT唇口蓋断面像。
    図7 CBCT唇口蓋断面像。
  • 図8 歯根端切除後の切断面。歯科用顕微鏡下での強拡大像。
    図8 歯根端切除後の切断面。歯科用顕微鏡下での強拡大像。
  • 図9
    図9
  • 図10 67歳男性。上顎右側前歯部。
    図10 67歳男性。上顎右側前歯部。
  • 図11 CBCT側切歯断面像。
    図11 CBCT側切歯断面像。
  • 図12 CBCT中切歯断面像。
    図12 CBCT中切歯断面像。
  • 図13 45歳男性。上顎左側犬歯。
    図13 45歳男性。上顎左側犬歯。
  • 図14 CBCT唇口蓋側断面像。
    図14 CBCT唇口蓋側断面像。
  • 図15 58歳女性。上顎右側第一大臼歯。
    図15 58歳女性。上顎右側第一大臼歯。
  • 図16 CBCT頰口蓋断面像。
    図16 CBCT頰口蓋断面像。
  • 図17 CBCT近遠心断面像。
    図17 CBCT近遠心断面像。
  • 図18
    図18

■デンタルX線写真のピットフォール

デンタルX線写真撮影では、頰側(唇側)から舌側(口蓋側)に向けてX線が照射され、歯や周囲組織を通過して検出器に投影されるので、そのX線の通過域にある物体(硬組織)はすべて重複しながら画像として写される。
即ち、次の模式図のように硬組織構造が重なって検出器に到達しX線画像となる(図19)。
X線→皮質→骨梁→歯(エナメル質+象牙質)→骨梁→皮質→検出器したがって、お互いに重なった硬組織はやや不鮮明になったり、見えないことも多い。
まず、歯根自体の画像は近心側や遠心側の側面は比較的鮮明に画像化されているものの、図20のように頰側や舌側の変化や病変はほとんど画像化されなかったり、不鮮明にしか見られないので、見落とすことになりやすい。特に、フイルム撮影では現像処理のまずさによりほとんど見えなくなる。同様に、図21のように歯根周囲の歯槽骨においても、歯根と重なった頰側や舌側の変化や病変はほとんど描出されないか不鮮明となって、変化をキャッチできないことが多い。
以上のようなデンタルX線写真の致命的な欠点を知りながら、2次元画像を読んで行く必要があり、3次元画像であるCBCTの力を活用する必要もある。

  • 図19-a 縦断模式図。
    図19-a 縦断模式図。
  • 図19-b 横断模式図。
    図19-b 横断模式図。
  • 図20-a 歯根外部吸収。
    図20-a 歯根外部吸収。
  • 図20-b 歯根内部吸収。
    図20-b 歯根内部吸収。
  • 図20-c 単根2根管ではお互いに重複して1根管に見える。
    図20-c 単根2根管ではお互いに重複して1根管に見える。
  • 図21-a 頰側や舌側に沿った根側病変はデンタルX線写真には写らない。
    図21-a 頰側や舌側に沿った根側病変はデンタルX線写真には写らない。
  • 図21-b 上顎大臼歯の根尖が上顎洞に接しているとそこに病変があってもデンタルX線写真では不鮮明になりやすい。
    図21-b 上顎大臼歯の根尖が上顎洞に接しているとそこに病変があってもデンタルX線写真では不鮮明になりやすい。

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