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Field Report

簡便で効率よくコンタクト部分を回復できるマトリックスシステム

山口県山口市 医療法人 鶴翔会内田歯科医院 院長 内田 昌德

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山口県山口市医療法人鶴翔会 内田歯科医院 地元山口市で開業して19年。“基本に忠実”、“教科書通り”をモットーにこれまで診療を続けてきました。大学では口腔生理や解剖学などの基礎的な分野を学び、その後臨床をはじめるようになったので、何事も丁寧に準備し、考えてから行う習慣がつき、その経験が私の今日の診療スタイルを作ってくれたと感謝しています。
歯科治療は口腔解剖学や口腔生理学、理工学といった基礎の集積ですから、その基本部分を抑えれば、そんな大きなトラブルに発展することはないと思いますが、昨今の医療事故を見ているとその基本的なところを疎かにしていることに原因があるのかもしれないと感じることもあります。
同じ観点で言うと、今回のテーマであるマトリックスシステムを使った臨床手技も少しの慣れとひと手間が必要ですから、その手間を惜しむ先生方からは敬遠されがちなツールなのかもしれません。現在、物性の向上と接着技術の進化によりダイレクトボンディングによるCR修復は切削侵襲を最小限に抑える有効な治療法として多くの先生が取り入れるところとなっています。
ただし、隣接面を含むⅡ級窩洞の場合、コンタクトの回復を正確に行わないと、機能的・審美的に満足できる保存修復にはなり得ません。また、隣接面は充填後の研磨や形態修正が困難なため、そうした部位には使い勝手の良いマトリックスの使用が不可欠になると考えています。
私の学生時代には、金属製のマトリックスとトッフルマイヤー式のリテーナーを用いた修復が一般的でしたが、手技が煩雑なことと金属で光重合が阻害されることがデメリットでした。コンポジタイト3Dシステムはそうしたマイナス要素を解消し、より簡便で効率よくコンタクト部分を回復することが可能なマトリックスシステムです。
製品を知ったきっかけは歯科ディーラーさんの紹介でしたが、それまでう蝕好発部位である隣接面をいかに二次カリエスにならないようにするかは大きな課題でした。また、私は好奇心旺盛なので気になる新製品やユニークな発想の器械や材料があれば、すぐに試してみたくなる性分なのです。というわけで、さっそく購入して使ってみました。
まず、コンポジタイト3Dシステムの最大のメリットは、コンタクト部の歯肉からの汚染物、出血や浸出液が窩洞に入ることを防ぎ、さらにマトリックスバンドを口腔内で保持する必要がないことです。手で保持していても必ず動いてしまいますし、フロアブルレジンを使った場合、動いた瞬間に重合してしまうとまず回復することができなくなります。そのリスクを考えればウェッジごとマトリックスを的確にホールドしてくれることは、治療を正確に行ううえで非常に大きなアドバンテージになります。
また、セットする際マトリックスをしっかり密着させることで、その後の形態修正が容易になるだけでなく、術後の研磨や咬合調整の時間も最小になり、結果的にチェアタイムを短縮することにつながります。リテーナーのセットに多少の慣れとコツが必要になりますが、これは数をこなすしか道はありません。エンド治療の際に使うラバーダムクランプがリテーナーをセットする良い練習になりますから、皆さんもぜひ試してみてください。
あとは適応症例を自分で見極められるようになること。本当にCRでいいのか、メタルの方が適している症例もありますから術前の診査診断は非常に重要で、その目を養うにはある程度自分でやってみて経験値を上げていくしかないでしょう。
以前はこうしたコンセプトの製品が市場になかったので、多少取っ付きにくい部分もありますが、使いこなすことによって、審美性だけでなくその後の二次カリエスや歯周炎のリスクも抑えられることを考えればマスターする価値は十分にある製品だと思います。
今後の抱負としては、できるだけ削らずに抜歯もせず、来院する方がみんなニコニコしているような、そんな歯医者を目指したいと思っています。そのためにはこれまで以上に予防に力を入れて広めていかなければなりません。まだまだ道半ばといったところですが、引き続き地域の皆さんの健康増進のお役に立てるよう邁進していきたいと思っています。

  • 図1 左側第一小臼歯部の冷水痛、違和感を主訴に来院。
    図1 左側第一小臼歯部の冷水痛、違和感を主訴に来院。
  • 図2 術前のX線写真。遠心隣接面コンタクト部にカリエスを認める。象牙質及び歯髄への石灰化が観察される。
    図2 術前のX線写真。遠心隣接面コンタクト部にカリエスを認める。象牙質及び歯髄への石灰化が観察される。
  • 図3 #330のカーバイドバーにて感染エナメル質を除去後、#5ラウンドバーにて軟化象牙質を除去。エアースケーラーのダイヤモンドバーを用いて隣接面のエナメルジャンクション部分を形成する。
    図3 #330のカーバイドバーにて感染エナメル質を除去後、#5ラウンドバーにて軟化象牙質を除去。エアースケーラーのダイヤモンドバーを用いて隣接面のエナメルジャンクション部分を形成する。
  • 図4 エアースケーラーのブラシにて切削片除去、歯面清掃を行う。
    図4 エアースケーラーのブラシにて切削片除去、歯面清掃を行う。
  • 図5 隣接面や咬合面へ余剰な充填を避けるため、分離材であるウォッシャブルセップ<サンメディカル(株)>を使用する。
    図5 隣接面や咬合面へ余剰な充填を避けるため、分離材であるウォッシャブルセップ<サンメディカル(株)>を使用する。
  • 図6 スリックバンド(グレー)を遠心隣接面の形態を再現するために使用。さらに、窩底部とスリックバンドの適合を高めるため、ウェッジワンドスモールを挿入する。
    図6 スリックバンド(グレー)を遠心隣接面の形態を再現するために使用。さらに、窩底部とスリックバンドの適合を高めるため、ウェッジワンドスモールを挿入する。
  • 図7 隣接面コンタクトの回復のためにコンポジタイト3Dリテーナー(スモール)を使用。残存歯質との適合を確認する。
    図7 隣接面コンタクトの回復のためにコンポジタイト3Dリテーナー(スモール)を使用。残存歯質との適合を確認する。
  • 図8 クリアフィルマジェスティESフローLow(A3)にて窩底部を充填する。
    図8 クリアフィルマジェスティESフローLow(A3)にて窩底部を充填する。
  • 図9 クリアフィルマジェスティESフローLow(A2)にて咬合面形態を付与する。
    図9 クリアフィルマジェスティESフローLow(A2)にて咬合面形態を付与する。
  • 図10 遠心辺縁隆線部の形態を付与するためにXTS8A(Hu-Friedy)を使用する。
    図10 遠心辺縁隆線部の形態を付与するためにXTS8A(Hu-Friedy)を使用する。
  • 図11 充填後の咬合面形態
    図11 充填後の咬合面形態。
  • 図12 咬合調整、最終研磨後の口腔内の状態
    図12 咬合調整、最終研磨後の口腔内の状態。確実な隣接面コンタクトの回復ができ、治療後の冷水痛、違和感も消失した。メンテナンス時に食後のフロスも引っかかりがなくなり、容易になったと患者さんより報告があった。

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