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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Dental Talk Special
吸収性歯科用骨再建インプラント材「テルフィール(オスフェリオンDENTAL)」の適用
和泉 雄一 / 児玉 利朗 / 二階堂 雅彦

骨補填材は骨の代用材としての用途から、積極的な骨造成を図る材料として活用する時代へと移り、さまざまな種類の骨補填材が開発・上市されるようになった。そしてこのたび、オリンパステルモバイオマテリアルから整形外科領域で10年以上にわたって販売されてきた「オスフェリオン」が歯科領域での認可を取得し、「オスフェリオンDENTAL」(発売名:「テルフィール」)としてモリタから販売されることになった。今回、テルフィールの発売を機に骨補填材の特徴や適用範囲、術式や注意点について3名の先生方にお話を伺った。

  • 和泉雄一先生の画像
    東京医科歯科大学
    大学院医歯学総合研究科
    歯周病学分野教授
    日本歯周病学会理事長
    和泉雄一
  • 児玉利朗先生の画像
    神奈川歯科大学
    高度先進口腔医学講座
    インプラント・歯周病学分野大学院教授
    日本歯周病学会理事
    児玉利朗
  • 二階堂雅彦先生の画像
    二階堂歯科医院院長
    日本臨床歯周病学会理事長
    二階堂雅彦

■歯周治療における基本的な治療スタンス

和泉
今回、オスフェリオンが歯科分野で認可を受けましたが、骨補填材は通常、歯周病に対する診断と治療が十分に進んでから活用することになると考えられます。そこでお二人の先生に臨床家のお立場から、主に歯周治療に関しての治療方針や進め方についてお話しいただけますでしょうか。
児玉
現在の臨床の中では、十分に歯周病の治療が行われていないのにも関わらず、安易にインプラントに移行しようという傾向があるように感じています。さらに歯周治療のあり方を日常臨床の中で見直したとき、骨欠損に対する対応が非常に重要になってくることは明白です。
二階堂
歯周病で生じた深い骨欠損がある場合、長期的な安定を考えると骨欠損の修復をはかる必要があります。まずは基本治療を十分に行いますが、その後積極的な骨欠損の修復をはかるためには、歯周組織再生療法の応用を考えます。再生療法には様々な方法論がありますが、現在では骨補填材を単独で使うことは少なくなり、特に骨壁が少ない場合は、メンブレン、エナメルマトリックス・デリバティブ(EMD)、増殖因子製剤(growth factor)と骨補填材とのコンビネーション・セラピーを用いています。また抜歯窩に関しても、特に審美ゾーンの場合は、吸収を防ぐためにリッジ・プリザベーションを積極的に行い、その際にも骨補填材が必要になります。

■垂直性骨欠損への対応

和泉
歯周治療を進めていくと、最終的に垂直性骨欠損と根分岐部病変への対応になってしまうと言えます。現在では“切除から再生へ”という流れになっていますが、先生方は垂直性骨欠損があった場合、どのように対応していらっしゃいますか?
児玉
私は吸収性遮断膜(メンブレン)コーケンティッシュガイド(以下ティッシュガイド)の開発にも関わってきたことからティッシュガイドも使っていますが、垂直性骨欠損に対しては、Bone swaging(有茎骨移動術)を行ったり、自家骨を移植したりした後、ティッシュガイドを適用する併用法を行っています(図1、2)。ただ、Boneswagingは骨欠損形態によって限界がありますし、自家骨も無尽蔵に採れるわけではありませんから、やはりケースバイケースで、置換性の良い人工材料を併用することも今後の垂直性欠損に対する対応であると感じています。
二階堂
私もこれまで骨移植単独、GTR、EMD、増殖因子製剤など、いろいろな治療方法を行ってきました。骨壁が少ないケースではコンビネーション・セラピーを行うことになり、骨補填材の併用は必須だと考えています。ただ、過去の私のイメージでは合成材料はあまり再生能力には長けていないと感じていましたので、牛などの生物由来の骨補填材を敬遠される患者さんに、β-TCP系のものを使ったことはありましたが、ファーストチョイスとして積極的ではなかったですね。

  • 大臼歯の3壁性骨欠損への対応の写真
    図1 大臼歯の3壁性骨欠損への対応(提供:神奈川歯科大学児玉利朗先生)
  • 大臼歯の3壁性骨欠損の術直前から術後3年までのデンタルX線写真の画像
    図2 大臼歯の3壁性骨欠損の術直前から術後3年までのデンタルX線写真。

■骨補填材料の選択基準

和泉
人工の骨補填材料は世界で様々な製品が開発されバリエーションも増えましたが、国内で承認を受けている人工骨は、HAとβ-TCPの2種類です。これらの製品の特徴について伺いたいのですが…。
児玉
HAは材質上、吸収置換が非常に緩やかなので骨伝導環境の中ではいいのですが、歯周外科的には、歯と歯肉の隙間からの汚染や感染、上皮のダウングロースという問題があり、さらに、軟部組織との接触による異物反応で被包化して骨伝導しない場合もありますので使いづらいですね。
逆に賦形して残したいリッジオーギュメンテイションなどでは、HAがいいのではないでしょうか。β-TCPの場合、吸収置換はいいのですが、やはり結合組織からの線維芽細胞が伝導する環境では異物反応を起こすので、よほど環境がよくないと単独で使うことは難しいと思います。ただβ-TCPは現在では世界的に骨造成には欠かせない材料になってきていますので、それを使わずにレイマス(下顎枝前縁〜大臼歯部)から自家骨を採り、さらに入院も必要となると患者さんの負担も大きくなります。
そこで私たちは、β-TCPを今後積極的に骨造成に活用していきたいと考えています。現在、インプラント植立を前提とした適用は国内で承認されていませんが、世界的な見地に立てばサイナスリフトもほぼβ-TCP単独で非常に高い成功率を示していますから、ぜひ今後の適用拡大を期待したいところですね。
和泉
では、骨補填材が残ってもいい場所、残ってはいけない場所というところの判断基準についてはいかがですか?
二階堂
歯周病による骨欠損の場合は基本的に残っていない方がいいと思います。
児玉
閉鎖創の中だったらHAが残っていても感染する可能性はないですが、プラークコントロールが悪くポケットから感染してしまうような環境だと感染源になってしまいます。HAの場合、歯肉の形態が凹まないようになどの使い道はありますが、長期的には使いにくいですね。自分の骨と吸収置換するものはβ-TCPの方が有利と位置づけして臨床の中で使い分けているのが現状だと思います。
二階堂
児玉先生は牛骨由来などの異種骨の長期症例をお持ちだと思いますが、経過はいかがでしょうか?
児玉
ボーンジェクトの場合、焼成温度が1100℃と高く、吸収に時間がかかりますが、合成HAなどと比較すると後から炎症を起こして出てくることは意外と少ないですね。
生体由来なので構造自体が合成骨と違って、直径10μm以下のミクロ気孔が多数存在しますし、緩徐には吸収しているのではないかと感じています。もちろんβ-TCPに比べれば吸収率は格段に落ちますが…(図3上図)。
二階堂
最終的には置換されていくのですか。
児玉
そうですね。私たちが行ったイヌの動物実験では、12ヵ月で全部置換されて無くなることはありませんが、吸収が緩徐に行われていることは確かです(図4)。通常の合成HAと牛骨由来の焼成骨では少し位置付けが違うと考えた方が良いのかもしれません。

  • 牛骨由来焼成骨ボーンジェクトと合成β-TCP テルフィール(オスフェリオンDENTAL)のSEM写真の画像
    図3 牛骨由来焼成骨ボーンジェクトと合成β-TCP テルフィール(オスフェリオンDENTAL)のSEM写真。
  • ビーグル犬下顎第3・4前臼歯部から全層弁を剥離し、近心根部に5×5mmの裂開型骨欠損を作製し、各種適用と全層弁の復位縫合を行った後の48週目(1年目)の組織標本の画像
    図4 ビーグル犬下顎第3・4前臼歯部から全層弁を剥離し、近心根部に5×5mmの裂開型骨欠損を作製し、各種適用と全層弁の復位縫合を行った後の48週目(1年目)の組織標本。

    出典:伊海博之, 児玉利朗ら:アテロコラーゲン・天然アパタイト複合材を併用したGTR法の有用性に関する病理組織学的研究. 日本歯周病学会誌41(2):p125~143, 1999.

■テルフィールの特長

(以下、オリンパステルモバイオマテリアル社によるテルフィールの特長に関するコメントです。)
テルフィールの特長は、天然骨と同様に、直径10μm以下のミクロ気孔が多数存在することです。顆粒タイプの場合、細胞自体は顆粒間に入っていきますが、細胞の侵入を促進する成分などは表面に吸着しますから、ミクロ気孔がたくさんあるほど表面積が増え、吸着率が上がることで細胞の侵入が促進されると考えられます(図3下図)。
また、細胞侵入のための最適気孔径が300~400μmといわれていることから、S、M、Lの3タイプの顆粒サイズのうち、できるだけ大きいサイズの顆粒を選んだ方がより細胞が侵入しやすくなり、骨伝導には有利に働くと考えられます(図5)。
トルイジンブルー染色による組織標本(図6)で見て、黒く残っているところがテルフィールです。ブルーの部分が骨ですから、吸収置換は良好と言えます。動物実験では、初期の吸収置換がとても早く、新生骨で周囲を囲まれると安定した状態になり、その後はゆっくりと置換されるため、12週でまだ残存しています。また、もともとX線不透過ですが自分の骨に置換していくと透過していきます。整形外科の文献ではβ-TCP1cm3であれば4ヵ月でX線観察上では吸収されて置換されていると言われています。さらに、整形外科でも必ず骨膜を残して、骨膜で覆うのが適用の基本とされています。

  • 顆粒間に存在する顆粒の大きさに準じた幅の隙間の写真
    図5 直径9.6mmの円形の容器に各顆粒径のオスフェリオンDENTALを緊密に充填してからポリエステル樹脂を加えて硬化させた後、断面を切り出して研磨し、SEM写真を撮影。顆粒間には顆粒の大きさに準じた幅の隙間が存在する。
  • ビーグル犬下顎骨欠損適用後のトルイジンブルー染色による組織標本の画像
    図6 ビーグル犬下顎骨欠損適用後のトルイジンブルー染色による組織標本。

■β-TCP系骨補填材の有効な活用法

和泉
では次にβ-TCP系骨補填材の活用法についてお聞かせいただけますか?
児玉
自家骨を多く採れないときに併用するとか、メンブレンの下に置くとかといった使い方は今後大いに期待できます。抜歯窩の場合では、骨壁があるところに限られると考えます。
二階堂
頰側の骨壁がない抜歯窩のリッジ・プリザベーションなどの際に骨補填材を使いますが、その際には吸収性メンブレンを併用して閉鎖環境を作り、あわせて骨補填材の結合組織による被包化を防いでいます。
児玉
完全な骨伝導環境になっていれば吸収置換にはいいですよね。
二階堂
骨膜のないところはメンブレンを併用するということでしょうね。
和泉
メンブレンを併用してフラップをキチッと閉じることが大事ですね。ではどのようにすればうまく使いこなせるのですか?

  • ビーグル犬下顎骨欠損適用後の新生骨面積と残存移植材面積率のグラフ
    図7 ビーグル犬下顎骨欠損適用後の新生骨面積と残存移植材面積率。
    ※オリンパステルモバイオマテリアル(株)社内データ
  • テルフィール(オスフェリオンDENTAL)を使用するうえでの注意点の表
    図8 テルフィール(オスフェリオンDENTAL)を使用するうえでの注意点。

■有効に使いこなすための環境づくり(活用のポイント)

児玉
治癒の環境づくりで重要なことは血流を確保することです(図8)。
二階堂
デコルチケーションといっても歯周病の骨欠損で骨髄に穿孔するのはなかなか難しくないですか?
児玉
骨欠損の大きさによります。掻爬した部分の環境も重要です。掻爬して骨壁から出血してくるときは何もしなくていいと思います。全く出血しない感染期間が長いケースは薄く削るか、もしくはピエゾのラウンド系のものを使うと出血してきます…。
二階堂
製品によっては根面に最初に成分が付かないといけないので“出血させないように”というものもありますね。
児玉
術中には出血してほしくないけど後から血流は確保したいという、わがままなオーダーだと思います(笑)。
和泉
では骨補填材を使う上で難しい部分はどんなところですか?
児玉
やはり切開ラインと切開デザインでしょうね。骨欠損の直上に切開ラインを持ってくると予後に不安が残りますから、健全な骨の上に切開ラインを設定して創部の安静を確保し、血流を促すということになると思います。
二階堂
一週間後に見て開いてしまっていたら、上皮性の治癒はしますが再生はあまり期待できなくなってしまいますからね。
児玉
図9は私が作ったイラストですが、デザインとしては健全な骨の上に切開ラインを持っていきます。うまくいかない場合もありますが、可能な限りそういった環境づくりをして血液の供給を維持する。メンブレンを置いたときにも露出が少なくなりますから…。

  • 骨欠損に応じた切開設計のイラスト
    図9 骨欠損に応じた切開設計
  • 対談風景

和泉
抜歯窩に対してはどのようにカバーしていけばいいですか?
児玉
骨壁がない部分の軟部組織にβ-TCPが直接触れると異物反応が起こり十分な効果が得られない可能性があるので、軟部組織に触れないようにする必要があります。あとは抜歯窩の入口の軟部組織の治癒をうまくしてあげないと…、ソケットマネジメントで失敗する理由は、“補填材を入れれば骨ができる”と勘違いをされている先生が多いからです。その前に骨伝導環境になっているかどうかをしっかり見極めることが重要です。
私の場合は、抜歯窩の骨壁のレベルまでβ-TCPを入れて、上部のギャップにテルプラグとテルダーミスを併用すると十分な量の軟組織ができ、その後骨も再生してきます。
二階堂
私もリッジ・プリザベーションはルーティンに行う治療法です。骨壁がないときは周囲を袋状に剥離してメンブレンを挿入し、それから骨補填材を入れます。
児玉
軟部組織から線維芽細胞が侵入してくることが骨補填材を使うときの一番の問題になりますから、必ずメンブレンを併用するということですね。今回の適用は歯周外科領域などに限られていますが、歯科臨床の現状を考えた場合、自家骨採取という侵襲と人工材料を使うという兼ね合いを考えなければなりません。
二階堂
安全で同じ結果が得られるのであれば人工材料の方が患者さんにとっても負担が少ないわけですから。和泉骨補填材に自家骨を混ぜるというのはいかがですか?
児玉
動物実験では自家骨と混ぜた方が骨形成と吸収が促進されることが明らかになっていますから、もちろんそれもありです。例えばレイマスから自家骨を採ると骨髄性の出血が発生したりして、とても腫れることがあります。ですから難症例のケース以外は人工材料でやりたいですし、何より患者さんに受け入れてもらいやすいのではないでしょうか。
二階堂
開業医の場合、なるべく人工材料を選択したいというのはありますよね。
児玉
動物由来だと敬遠する患者さんも多いですから、合成材料の方が意外と受け入れられやすいと思います。そうなるとテルフィールのような合成材料は適用症の拡大も含めて、今後大いに期待できる材料だと思います。
和泉
まさにおっしゃるとおりです。これからの臨床成績が期待できますね。本日はありがとうございました。

デンタルマガジン 156号 SPRING