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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
Systema SP-T の臨床応用
宮城県石巻市 三宅歯科医院 院長 三宅 宏之

■はじめに

1965年Löe, Hらの研究1)によって歯肉炎とプラークの関係が示されて以来、機械的プラークコントロールが歯周治療の重要な役割を果たすことは知られている。歯肉縁上の機械的プラークコントロールすなわち物理的なプラークコントロールにはブラッシング、スケーリング、ポリッシング、ルートプレーニングが挙げられるが、その中でも最も重要なことは患者さんよるセルフケア、ブラッシングであり、当院でも動機付けや生活習慣改善指導に、より多くの時間をさいている。担当歯科衛生士はすべての患者さんに口腔内写真撮影、サリバテスト、位相差顕微鏡でのプラークの観察と説明を実施しており、術前と術後の口腔内写真で歯肉の腫脹、発赤が著しく改善された患者さんが担当衛生士と共に喜んでいる光景をよく目にする。
患者説明用に模型や資料写真など数多く販売されているが、患者さん本人の口腔内写真で担当歯科衛生士と一緒にブラッシングの成果を共有することが、患者さんのモチベーションの維持につながると思う。また患者さんから「歯磨剤はどれがいいの?」「うがい薬は効くの?」などの質問にはスタッフも困っているようである。
歯磨剤を使用すると、発泡とミントやメントールなどによる清涼感によりプラークが除去されてないにも関わらずとれたようにごまかしてしまい短時間のブラッシングになってしまうので、患者さんには歯磨剤、洗口剤は使用しないように指導してきた。しかし、近年いろいろな薬効成分が添付されている歯磨剤、洗口剤が数多く市販され、患者さんに何を勧めたら良いのか?と悩んでいた。また患者さんもメディアからの情報に惑わされているようで「歯ブラシをしなくても、うがい薬で治るんでしょ」と言われるとメディアの過大広告と影響力の大きさに閉口してしまう。

■機械的/化学的プラークコントロール

機械的プラークコントロールの重要性を実感した重度歯肉炎の症例である。患者さんは53歳男性で主訴は「歯ブラシをすると血が出る」だった。糖尿病と高血圧の既往があり薬を服用していたがHbA1cは8.6だったので観血処置を避け歯肉縁上の機械的プラークコントロールで対応することを担当歯科衛生士と話し合った。
初診時歯肉の腫脹、出血はひどかったが、極軟毛の歯ブラシとDENT.EXonetuft systemaを使用し出血させず丁寧に磨くことを指導した。
また来院時にはスタッフが綿球でプラークを丁寧に拭いとった(図1:初診時2002年10月)。
2ヵ月後の12月には出血はなく普通の硬さの歯ブラシで磨けるようになっていた(図2:2002年12月24日)。
患者さんに聞くとスタッフの指導を聞き歯磨剤を使用せず朝30分、昼30分、夜1時間ブラッシングしていたようである。
歯肉の異常な腫脹は投薬による副作用もあったと思うが、原因であるプラークを機械的に除去すれば歯肉炎は良好な状態を維持することを経験した。
初診から13年経過した現在も6ヵ月に1度のメンテナンスは欠かさず来院して、良い状態を維持している(図3:2015年10月6日)。
その後も当院ではブラッシングを中心としたアプローチは変わっていないが、重度歯周炎の患者さんには機械的プラークコントロールと化学的プラークコントロールを併用し対応している。
化学的プラークコントロールとは、日本歯周病学会用語集2)によると「抗菌薬、消毒薬、酵素剤などの薬物により、化学的にプラーク形成を抑制したり、あるいはすでに付着しているプラークを除去する方法」とされている。また、「薬物の効果がバイオフィルムにより低下したり、薬物の運用による耐性菌が出現するなどの問題点があるため、通常はスケーリングやブラッシングなどの機械的プラークコントロールと併用する」とある。つまり化学的プラークコントロールは機械的プラークコントロールの補助療法としての位置づけになる。
化学的プラークコントロールでまず思い浮かぶ薬剤は「グルコン酸クロルヘキシジン」(CHX)であろう。1970年Löe,H&Schiott, Rの実験3)で0.2%CHX溶液を使用し1日2回の洗口でプラーク形成の抑制を確認して以来CHXによるさまざまな研究が行われているが、効果が報告されているCHX溶液は0.12〜0.2%溶液を使用した研究である。
しかし日本ではCHXの口腔内を含む粘膜面への使用によりアナフィラキシーショックを発現した報告があるため、これを用いることができない。
一方、医薬部外品については低濃度(0.05%未満)の添加が認められており、CHX含有の洗口液が市販されている。CHX洗口液を希釈して0.005〜0.01%というごく低濃度で直接歯周ポケットの洗浄に用いた場合でも、アナフィラキシーショック発現の報告があるため、目的外使用は絶対的禁忌である。

  • 図1 重度歯周炎。歯肉の異常な腫脹がみられる(2002年10月)。
    図1 重度歯周炎。歯肉の異常な腫脹がみられる(2002年10月)。
  • 図2 極軟毛ブラシとEX onetuft systemaで丁寧に刷掃。腫脹は減退(2002年12月24日)。
    図2 極軟毛ブラシとEX onetuft systemaで丁寧に刷掃。腫脹は減退(2002年12月24日)。
  • 図3 初診から13年経過後(2015年10月6日)。良い状態を維持している。
    図3 初診から13年経過後(2015年10月6日)。良い状態を維持している。

■Systema SP-Tシリーズ

当院で使用しているSystema SP-Tシリーズはメディカルガーグル(洗口剤)とジェル(歯磨剤)と歯ブラシの3品セットになっており、SP-Tメディカルガーグルには殺菌成分として塩化セチルピリジニウム(CPC)が配合されている(図4)。
CPCは森嶋らの研究4)により浮遊菌(P.gingivalis, A.viscosus)に対し、低い濃度(40ppm)から殺菌効果を発揮することが証明されている(図5)。
また三上の臨床研究5)によると39名の被験者において、0.005%の低濃度SP-Tガーグルによる洗口を行った36名と水で洗口を行った3名ではSP-Tガーグル使用群で明らかに細菌数の減少が認められており、舌、口腔粘膜などのブラッシングできない部位に付着した細菌のコントロールにも有効と思われる。
次にSP-Tジェルには殺菌成分としてイソプロピルメチルフェノール(IPMP)が配合されている。
IPMPとは安全性が高く、広範囲の抗菌スペクトルをもち低刺激性、抗酸化性機能のある薬剤で日常の手指消毒で使用されるハンドソープなど、医薬品・医薬部外品・化粧品に広く使われている殺菌・消毒剤である。IPMPにはバイオフィルムに対する浸透性と殺菌力があることが確認されている(図6、7)。
またSP-T歯ブラシは細くやわらかい短めのスーパーテーパード毛が密集して植毛されており、今までのsystema44H.44Mなどに比べるとチクチク感がなく歯肉にあてやすくなっている(図8)。歯周炎の患者さんにSP-T歯ブラシを使用することにより歯肉にあてても痛くなく、物理的にプラークを除去する効率があがり、SP-Tジェルに配合されているIPMPのバイオフィルム浸透性により化学的にプラークを殺菌しSP-TガーグルのCPCにより舌や口腔粘膜などの浮遊性細菌を殺菌する相乗効果が期待される。

  • 図4 DENT. Systema SP-Tシリーズ
    図4 DENT. Systema SP-Tシリーズ
  • 図5 浮遊性A.viscosusに対する各種抗菌剤の殺菌活性。CPCは、浮遊性細菌に対し、低い濃度から高い殺菌効果を発揮する。
    図5 浮遊性A.viscosusに対する各種抗菌剤の殺菌活性。CPCは、浮遊性細菌に対し、低い濃度から高い殺菌効果を発揮する。
  • 図6 IPMPのバイオフィルムへの浸透効果。殺菌剤IPMPがバイオフィルムの内部まで浸透し殺菌する。
    図6 IPMPのバイオフィルムへの浸透効果。殺菌剤IPMPがバイオフィルムの内部まで浸透し殺菌する。
  • 図7 IPMPのバイオフィルムへの殺菌効果。
    図7 IPMPのバイオフィルムへの殺菌効果。
  • 図8 SP-T歯ブラシ(スーパーテーパード毛)の設計。DENT.EX. systema 44Mより毛が細く短いスーパーテーパード毛を採用。
    図8 SP-T歯ブラシ(スーパーテーパード毛)の設計。DENT.EX. systema 44Mより毛が細く短いスーパーテーパード毛を採用。

■臨床応用例

今回、侵襲性(急速破壊性)歯周炎の患者さんにSystema SP-Tシリーズを使用し良い治療経過を得ているので報告する。
初診は2013年5月、患者さんは26歳女性、主訴は「歯ぐきが痛い」であった。妊娠8ヵ月で大きなお腹を抱え来院した。非喫煙者で全身的既往歴はなく、歯科的既往歴は虫歯が少なく、学校健診でチェックされた時のみの通院で、最近は近所の歯科医院で歯ぐきが腫れた時に診てもらっていたそうである。その他の欄に「個室での診療希望」と小さな字で書かれていた、受付による問診確認時「口を見られるのが恥ずかしい」と言っていた。住所を見ると隣町から来院しており車で1時間かけてきたそうである。
4辺縁歯肉の腫脹、排膿があり歯周炎の急性発作と診断し歯ブラシ指導、歯肉縁上のプラーク除去を行い3回の来院で症状は落ち着き、産後来院していただくことを約束した。
3ヵ月後の8月に再来院した際に口腔内写真の必要性を説明し何とか撮らせていただき、歯周組織検査、X-ray14枚、サリバテストを行い、その資料をもとに私と30分間医療面接の時間を設けた。
説明は①現在の状況②なぜこうなったのか原因の説明③治療方法④治療後のメンテナンスについて話した。患者さんからは「なんでもするから治したい」と言われた。その時の口腔内写真(図9:2013年8月)、歯周組織検査(図10)を示す。セルフケアはSystemaSP-TジェルをSP-T歯ブラシに付け磨いてもらい、ビスケットパウダー状のプラークは来院時に担当衛生士が綿球で丁寧に拭ってから歯肉縁上のPMTCをSP-Tジェルにて行った。
またブラッシング後の洗口剤としてSP-Tメディカルガーグル、食後3回なめるタブレットとしてDENT. Systemaオーラルヘルスタブレット(図11)を処方した。このタブレットを使用し始めて1週間後、患者さんから「ネバネバしていた口がサラサラしてきた」と言われ、確かに唾液に粘稠度がなくなっている。乳酸菌を使用したプラークへのアプローチは生物学的プラークコントロールになるが、2005年に松岡らの研究6)によりタブレットに配合されている乳酸菌TI 2711は歯肉縁下プラーク中へと移行し、P. gingivalisを有意に減少させるとともに、歯周炎の臨床症状を改善する傾向が認められている。すなわち、TI 2711は口腔内のプラークコントロールを可能とするプロバイオティクスであることが示されており、今後プロバイオティクスを用いた生物的プラークコントロールが新しい歯周病予防法になるものと期待されている。
現在の状態を図12に示す。3ヵ月に1度のメンテナンスには欠かさず来院し良い状態を維持している。

  • 図9 初診時(2013年5月)の歯周病の急性発作後、歯ブラシ指導、歯肉縁上のプラーク除去で症状が落ちついた状態(2013年8月)。
    図9 初診時(2013年5月)の歯周病の急性発作後、歯ブラシ指導、歯肉縁上のプラーク除去で症状が落ちついた状態(2013年8月)。
  • 図10 歯周組織検査表
    図10 歯周組織検査表
  • 図11 DENT. Systema オーラルヘルスタブレット
    図11 DENT. Systema
    オーラルヘルスタブレット
  • 図12 2015年8月の様子。良い状態を維持している。
    図12 2015年8月の様子。良い状態を維持している。

■ おわりに

歯周治療の基本は機械的プラークコントロールであることは間違いない。しかし重度歯周炎の患者さんには、補助療法として化学的プラークコントロール、生物学的プラークコントロールを併用して治療するとより効果的であり、その際Systema SP-Tシリーズは大変有用なアイテムであると思われた。

参考文献
  • 1)Experimental gingivtis in man.Löe, H etal. J. periodontal. 1965;36:177-187.
  • 2)歯周病学用語集第2版特定非営利活動法人日本歯周病学会編医歯薬出版.
  • 3)The effect of mouthrinses and topicalapplication of chlorhexidine on the developmentof dental plaque and gingivitis inman Löe, H&Schiott, R.J Periodontal.Res.1970;5:79-83.
  • 4)第53回日本口腔衛生学会総会発表インビトロバイオフィルムに対する抗菌剤の胴体とその殺菌活性について. 森嶋 清二ら口腔衛生学会誌、54(4):437、2004.
  • 5)Systema SP-Tシリーズの特徴とその臨床活用法について. デンタルマガジン147(winter):84-89、2013.
  • 6)Lactobacillus salivarius TI2711(LS1)の服用が臨床症状およびプラーク中の歯周病原菌に及ぼす効果. 松岡隆史ら日歯周誌47(3):194-202、2005.

デンタルマガジン 156号 SPRING