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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

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歯科口腔外科部門新設への取り組みと可搬式歯科用ユニットの有用性
社会医療法人清恵会 清恵会病院 歯科口腔外科 科長 下出 孟史

2015年10月、社会医療法人清恵会清恵会病院(大阪府堺市)は創立から45周年を迎え、市立堺病院跡地への移転が実現した。この移転により、従来の建物では手狭だったため分散させていた施設を統合し、より高度で効率的な医療環境を整えることができた。さらに、周術期口腔機能管理や口腔ケア、入院患者の歯科治療など医科歯科連携の拡充を目的として、新たに歯科口腔外科が新設された。下出孟史科長はその新設に伴い同年4月に当病院に入職、歯科開設の準備と診療体制の充実のために心血を注いできたが、その取り組みの実際とそれを技術面で支えた可搬式歯科用ユニットの有用性についてクローズアップした。

■歯ブラシ一本、スポンジブラシ一本でスタートした口腔ケア

清恵会病院で歯科部門が設立されたのは2015年4月。10月の移転に備えた準備期間として、その期間内は病院内の患者さんの口腔ケアや義歯の調整などからスタートした。「45年もの間歯科が存在しなかった病院で、歯科口腔外科の存在が認知され、診療体制を整えるためには、まず歯科治療の有用性を病院内の皆さんに知っていただく必要がありました」と語る下出科長。しかし、移転を控えた旧病院に、新たな配管工事を伴う診療台の設置は現実的ではなく、もともと内科が使用していた小さな診療室で診療を始めることになった。
「医師からの依頼を受けて、片手にカゴを提げて、歯ブラシ一本、スポンジブラシ一本から始めました。そこで気付いたのはより専門的な口腔ケアを必要とする患者さんがたくさんいらっしゃったことです。回転切削器具や吸引装置などの歯科用器材が全くない状態でしたので、当初は十分な治療を提供できないケースも多くありました。そうした現場での経験を積む中、可搬式歯科用ユニットの存在を知り、その必要性を強く感じるようになりました」。

■可搬式歯科用ユニットの導入で通常の歯科診療が可能に

下出科長の頭にはその他にも必要な器材はいくつか思い浮かんだが、移転までの半年間の期間内にも必要な歯科治療が行える体制を整えること、またその際に購入した器材・器具が移転後にも十分に利用価値のあるものであること。
以上の点を考慮した結果、可搬式歯科用ユニットの導入を決定した。「可搬式歯科用ユニットは入職して1ヵ月後の2015年5月初旬に導入したのですが、これ以降は、院内のどこであっても通常の歯科診療所に引けをとらない診療が可能になったと思います。タービン、エンジン、バキュームはもちろん、超音波スケーラーが標準装備されていたこともとても有用でした。救急外来に顔面外傷の搬送があれば、全身精査の後、創傷処置や脱臼歯の整復などをストレッチャーサイドで行うこともできましたし、ベッド上から移動できない患者さんに対して、ベッドサイドで義歯調整を行うことも容易にできるようになりました。さらに、誤嚥防止のために体位への配慮は必須ですが、移動できない患者さんに3ウェイシリンジや超音波スケーラーを使えることは、口腔内の衛生状態改善にも非常に役立ったと感じています」と下出科長。
さらに、可搬式ユニットには歯科用チェアと同じインスツルメントが付いているためなのか、ユニットを押しながら病院内を回るだけで、患者さんや病院内スタッフに歯科診療室が設置されたことを広く認知してもらえるといった想定外の効果もあった。
また、見た目も堅牢で重厚感があるので、間に合わせの簡易器具で治療されているといったイメージもなく、患者さんも安心して治療に応じ、「病室で寝たままで、こんなに丁寧な治療をしてもらえるとは思わなかった」「歯医者さんに来たみたいです」といった声、そして看護師からは「あの患者さんも診てあげてもらえませんか」などと声をかけられるなど、病院内で歯科の存在が日増しに大きくなっていくことを実感することもできた。

■移転後は病院内の往診に活躍

昨年4月の歯科部門設立から10月の病院移転を経て、歯科口腔外科の外来診療室としての整備も着々とすすみ、十分な歯科口腔外科診療を行う体制が整った。
「現在は、歯科用診療台を3台設置し、通常の診療はこれらの診療台を使って行っています。当院の外来診療室の入口付近にはフリースペースを設けているので、ストレッチャーやベッド、車椅子のままで診療室に入ってもらうことも可能です」。
可搬式ユニットについては、「移転前にはほぼすべての診療で使っていましたが、移転した後は口腔外科に入院した患者さんの病棟での処置時や、病院内を往診する際など、引き続き活躍しています。歯科診療台に移乗することなく通常と何ら変わらない治療を行えるメリットは健在です」。

■病院全体のデンタルIQアップを目指す

「毎日無事に診療業務を行えるのは、一に歯科衛生士の尽力、二に病院内スタッフの協力、三に可搬式歯科用ユニットの活躍のおかげで、私の存在は圏外です」と謙虚な下出科長。「歯科の新設は認知されてきましたので、今後は病院全体のデンタルIQを高めるために努力していきたいと考えています。患者さんと接する看護師さんに口腔内の状況を診る習慣が付くことで、より専門的な口腔ケアをお願いすることもできますし、必要に応じて私たちに診察依頼を出してくださるようにもなるでしょう。そうした医科歯科連携をより充実させることも課題の1つです」。
創立45周年を迎えた清恵会病院に新設された歯科口腔外科部門。今後の活躍が大いに期待される。

  • 地上8階・全276床を誇る清恵会病院は堺市における救急医療に貢献する。
    地上8階・全276床を誇る清恵会病院は堺市における救急医療に貢献する。
  • 救急外来の際には、可搬式歯科用ユニット(ユーティリオⅡ)があればストレッチャーサイドで応急処置を行うことができる。
    救急外来の際には、可搬式歯科用ユニット(ユーティリオⅡ)があればストレッチャーサイドで応急処置を行うことができる。
  • オールインワンタイプの可搬式歯科用ユニットで病室が歯科診療室に早変わりする。
    オールインワンタイプの可搬式歯科用ユニットで病室が歯科診療室に早変わりする。
  • 病室で義歯調整を行う。周術期における口腔機能管理の重要性はさらに高まりつつある。
    病室で義歯調整を行う。周術期における口腔機能管理の重要性はさらに高まりつつある。
  • キャスターが大型になり可搬性が向上。エレベーター程度の段差なら女性でも問題なく移動できる。
    キャスターが大型になり可搬性が向上。エレベーター程度の段差なら女性でも問題なく移動できる。
  • 新設された歯科口腔外科診療室には歯科用診療台3台を設置。
    新設された歯科口腔外科診療室には歯科用診療台3台を設置。