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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
日常臨床に接着を活かす -支台築造の接着を考える-
福岡県北九州市富山歯科クリニック 池上 龍朗

■はじめに

近年、ファイバーポスト併用レジンコア(以下、ファイバーコア)は、歯根破折を防ぎ、なおかつ審美性が良いというイメージから、支台築造のマテリアルとして多く選択されるようになった。しかしながら、“メタルフリー治療は優れている”というイメージが安直に一人歩きをし、『接着』に対する考察は十分になされているとは言えないように感じる。
CAD/CAM冠の保険治療への導入、そして2016年からはファイバーコアが保険導入され、歯科界は一層メタルフリー治療へと傾倒することになりそうだが、支台築造の接着について再考する時が来ているのではなかろうか。

■支台築造における接着

まず、支台築造はコア部とポスト部に分けられる。コア部は補綴装置の維持、ポスト部はコア部の維持と支持として働く。ポスト部はあくまでもコア部の維持としてのみ働き、ポストによる歯質の補強効果は期待できない。しかし根管内への接着が成立すれば、歯質の強化が図られる1)。また、歯冠部歯質が3壁以上、厚さ1mm以上かつ高さ2mm以上あれば、コア部を維持するためのポスト部は必要ないとされている2、3)(図1〜4)。
既製メタルポストやファイバーポストにおけるポスト部の維持は、歯質との接着によりなされる。メタルコアのポスト維持は、今までは機械的嵌合(≒合着)に依存してきたが、接着性レジンセメント並びに接着用メタルプライマーの進歩により、歯面との容易な接着獲得が可能となった。レジンコアのみならず、メタルコアにおいても支台築造体を歯質と接着することには大きな意味がある。接着が成立していれば、支台築造のマテリアルに関係なく歯質の強化に繋がる4)だけでなく、根管内部への細菌の侵入(コロナルリーケージ)を防止し、根尖性歯周炎の再発を回避できる可能性が高まるからである(図5〜8)。

  • 図1 髄腔保持型の支台築造の対象となる歯質が4壁、厚さ1mm以上かつ高さ2mm以上あるケース。
    図1 髄腔保持型の支台築造の対象となる歯質が4壁、厚さ1mm以上かつ高さ2mm以上あるケース。
  • 図2 ポストの設置は行わず、レジンのみでコアを築造する。
    図2 ポストの設置は行わず、レジンのみでコアを築造する。
  • 図3 縁上歯質によるフェルール効果が十分に確保できているため、ブリッジの支台であっても問題はないと思われる。
    図3 縁上歯質によるフェルール効果が十分に確保できているため、ブリッジの支台であっても問題はないと思われる。
  • 図4 髄腔保持型はポストを設置しないため、すべて光重合のシステムで対処が可能であり、ポストフリーコア(サンメディカル)などが有効である。
    図4 髄腔保持型はポストを設置しないため、すべて光重合のシステムで対処が可能であり、ポストフリーコア(サンメディカル)などが有効である。
  • 図5 このように縁上歯質が残っているケースは、安易にレジンコアが選択されやすい。
    図5 このように縁上歯質が残っているケースは、安易にレジンコアが選択されやすい。
  • 図6 事前に支台歯概形成を行い、歯質の厚みを1mmにて整えると縁上歯質が不十分と思われた。
    図6 事前に支台歯概形成を行い、歯質の厚みを1mmにて整えると縁上歯質が不十分と思われた。
  • 図7 このようなケースはメタルコアを適応したほうがトラブルは少ないと思われる。
    図7 このようなケースはメタルコアを適応したほうがトラブルは少ないと思われる。
  • 図8 分割メタルコアをスーパーボンドにて装着し、支台歯形成を行った。
    図8 分割メタルコアをスーパーボンドにて装着し、支台歯形成を行った。

■支台築造における接着の特性

【ファイバーコアの接着】
ファイバーコアにおいて十分にその機能と効果が発揮されるには、すべてが“接着”に依存することに十分留意する必要がある。その接着には、根管歯質との接着とファイバーポストとの接着の二界面が存在し、間接法を選択した場合はポスト・コアレジンとセメントの接着界面が一つ増加する。
1)根管歯質との接着
根管内は細長いため、C-factor値が非常に高く、重合収縮の影響を強く受けることに加え、照射器の光が届きにくく、ボンディング操作に不可欠な十分なエアーブローや水洗も困難である。また、根管治療における洗浄剤(NaOCl 他)や貼薬剤(Ca(OH)2 他)の影響や、シーラーの残留、根管象牙質の変性などの接着阻害因子も多く存在するため、根管内では接着不良が生じやすい。
特にポスト先端部においては、これらすべての接着阻害因子の影響が集中しやすいため、不十分な光照射がもたらす重合不良とポスト・コアレジンの重合収縮が相まって、接着が十分に達成されないことに注意すべきである。そういった理由から、ファイバー自体の光透過性も重要であり、光ファイバーが中心に入ったi-TFCファイバー光ファイバーポスト(図9)のような光透過性の高いファイバーが有効となる。長いポスト孔においては、先端部のポスト・コアレジンを積層充填するか、もしくは間接法を用い化学重合型のレジンセメントを使用するといった工夫も必要になると思われる。
2)ファイバーポストとの接着
一般的にファイバーポストはガラス繊維をマトリクスレジンにて硬化させたものであるため、ポスト表面に露出したガラス繊維とマトリクスレジンが接着の対象となる。マトリクスレジンは既に重合硬化しており、マトリクスレジンに対しての接着はあまり期待できない。マトリクスレジンにフィラーが含有していれば、フィラー表面のシリカに対するシラン処理による化学的接着が得られるが、フィラー不含有ならば接着力は弱くなるものと推測される。
ファイバーポスト表面の露出したガラス繊維にもシラン処理を行うことで接着力を発揮させることになるが、処理前にポスト表面に付着した油分等の接着阻害因子の除去を徹底的に行う。露出したガラス繊維が断裂すると強度低下を起こすため、アルミナサンドブラストは行ってはならない。
i-TFC光ファイバーポストはガラス繊維が編み込んであるため、ポスト・コアレジンとの機械的嵌合が期待できる。また、専用のファイバーポストプライマーの使用により、ポスト・コアレジンとのぬれが良好となり、接着には極めて有利といえる。症例を以下に示す(図10〜19)。

【メタルコアの接着】
メタルコアの接着の際に考慮すべき点は、根管内部への光照射は不可能なためすべてが化学重合に依存することである。デュアルキュア型レジンセメントを化学重合にて硬化させた場合、重合率が低く、重合収縮も大きい5)ため、化学重合型レジンセメントであるスーパーボンドの使用が望ましいと考える。接着操作においては、細長い根管形態を考慮し、接着阻害因子の徹底除去および水洗・乾燥・エアーブローに十分配慮する。
メタルコアへの表面処理に関しては、銀合金の場合はアルミナサンドブラストのみ、貴金属の場合はアルミナサンドブラスト+V-プライマーの使用が有効である6)

■ファイバーコアの適応症と限界

石原の実験7)によると、2mmの残存歯質があればポストマテリアルによる破折強度に差はなく、残存歯質が少ない場合はメタルポストが強度的に有利であることが示されている。また、大祢らの実験8)によると、歯冠部歯質がない場合には、メタルポスト・ファイバーポストどちらにおいてもポスト孔をある程度(5〜8mm)深く形成した方が、破折強度が高まることが示されている。
同じ長さのポストであれば、ファイバーコアよりもメタルコアの方がより重篤な歯根破折様相を示すことから、歯根破折のリスクを軽減するにはファイバーポストは有効なのだろう。しかしながらポスト部が長くなるとファイバーコアであっても歯根破折の頻度が高まる。
以上のことから、残存歯質が少ない場合にファイバーコアを選択した場合は、ファイバーコアの破折強度はメタルコアより弱いため、破折強度を高めるためにポスト部を長くする必要がある。そうなると歯根破折のリスクは高まり、ファイバーコアのメリットは減少する。だからといってポスト部を短くすれば、コアの脱離や破折のリスクが大きくなる。十分な歯質が確保されない場合は、メタルコアを選択することも必要だと筆者は考えている。
また、歯軸を大幅に変更する場合、コア部においてファイバーポストによる加強が行われない9)ため、前もって矯正により歯軸を適正方向に修正しておくか、メタルコアを使用する方が望ましいと思われる。

■ファイバーポストの配置位置と本数

ファイバーポストにより破折強度を高めるには、咬合による応力が掛かる方向(引っ張り側)にファイバーポストを配置する必要がある10)。また、ファイバーポストは1本よりも複数本配置した方が破折強度を高めるために有効であり、円筒形の補強用ファイバー(i-TFCファイバーのスリーブ)も効果が高い11)
ファイバーポストの効果を発揮させるためには、上顎前歯においては舌側に、上顎臼歯ならびに下顎前臼歯においては頰側に、主ファイバーポストを位置させ、可能な限り複数本副ファイバーポストを配置させることが理論上望ましい(表1)。

  • 図9 2015年8月にリニューアルされたi-TFCシステム。光ファイバーポストとスリーブやアクセサリーファイバーによる築造体の補強が可能である。
    図9 2015年8月にリニューアルされたi-TFCシステム。光ファイバーポストとスリーブやアクセサリーファイバーによる築造体の補強が可能である。
  • 図10 2015年5月14日 メタルポスト除去時の1 デンタルX線写真。
    図10 2015年5月14日 メタルポスト除去時の1 デンタルX線写真。
  • 図11 2015年5月29日 根充後のX線写真 接着による封鎖が期待できるメタシールSoft(サンメディカル)にて根充を行った。
    図11 2015年5月29日 根充後のX線写真 接着による封鎖が期待できるメタシールSoft(サンメディカル)にて根充を行った。
  • 図12 2015年6月12日 縁上歯質概形成時の正面観。歯質量は1mmの高さで3壁残存し、引っ張り側である口蓋側歯質が十分に確保できている。
    図12 2015年6月12日 縁上歯質概形成時の正面観。歯質量は1mmの高さで3壁残存し、引っ張り側である口蓋側歯質が十分に確保できている。
  • 図13 試適時の正面観。やや漏斗状の根管形態であったため、光ファイバーポストをスリーブおよびアクセサリーファイバーで補強している。
    図13 試適時の正面観。やや漏斗状の根管形態であったため、光ファイバーポストをスリーブおよびアクセサリーファイバーで補強している。
  • 図14 光ファイバーポストを専用のファイバーポストプライマーに浸漬。
    図14 光ファイバーポストを専用のファイバーポストプライマーに浸漬。
  • 図15 根管内の水洗・乾燥を確実に行うため、3wayシリンジの先端を改良している。
    図15 根管内の水洗・乾燥を確実に行うため、3wayシリンジの先端を改良している。
  • 図16 i-TFCシステムポストレジン填入後、ポスト先端に光が到達するように十分に注意をして光照射を行う。
    図16 i-TFCシステムポストレジン填入後、ポスト先端に光が到達するように十分に注意をして光照射を行う。
  • 図17 i-TFCシステムコアレジンフローによるコア部の築盛。
    図17 i-TFCシステムコアレジンフローによるコア部の築盛。
  • 図18 概形成後の正面観。
    図18 1 概形成後の正面観。
  • 図19 同1 デンタルX線写真。
    図19 同1 デンタルX線写真。
  • 表1 理想的なファイバーポストの配置<文献11)より改変・引用>
    表1 理想的なファイバーポストの配置<文献11)より改変・引用>

■ポスト・コアマテリアルの選択基準

コア部の維持をファイバーポストが担うファイバーコアにおいては、ポスト部とコア部の直径が小さい下顎前歯などの場合、太いファイバー径の選択およびアクセサリーファイバーの配置が無理なため、コアの破損のリスクが高いようである。このような場合はメタルコアの適応と思われる。逆に大臼歯のように、ポスト部・コア部どちらも径が大きいケースでは、スリーブやアクセサリーファイバーの配置が可能であり、ファイバーアレンジメントが容易であることから、歯根破折防止を考慮した支台築造が可能と考える。
ファイバーコアはあくまでもBondedRestorationの際の審美性向上のマテリアルと位置づけ、審美性を優先するのか、コア部の維持と破折強度向上を優先するのか、歯根破折のリスク軽減を優先するのか、それぞれの優先順位からポスト・コアマテリアルを使い分ける必要があるのではと筆者は考えている。

■直接法と間接法の選択

直接法と間接法の選択については、どちらが有利か議論されることが多いが、接着界面の少ない直接法が「接着」においては圧倒的に有利である。しかしながらポスト部が長い場合は、直接法ではポスト先端部の接着不良を招きやすいため、間接法を選択し、化学重合型のスーパーボンドを用いた方が重合収縮や重合不良の問題は生じにくいと思われる。一方で、硬化したポスト・コアレジンとの接着は、ポスト・コアレジン内のフィラーとの結合が主体となるため、十分な接着阻害因子の除去ならびにシラン処理が不可欠である。ポスト部の長さや窩洞の形態を考慮し、確実な接着が得られるよう、直接法と間接法を使い分けたほうが良いだろう。

■まとめ

筆者の考えるファイバーコアの適応症とフローチャートを示す(表2、3)。接着に依存するファイバーコアは、その能力を十分に発揮させるためにクリアしなければいけないステップがとても多い。この稿が、臨床の現場において支台築造を見つめ直すきっかけの一助となれば幸いである。

  • 表2
    表2
  • 表3
    表3
参考文献
  • 1)Martin Trope, David O. Maltz,Leif Tronstad.Resistance to fracture of restored endodonticallytreated teeth. Dental Traumatology,Vol.1(3);108–111,1985.
  • 2)Salameh Z,Sorrentino R,Ounsi HF,Sadig W,Atiyeh F,Ferrari M:The effect ofdifferent full-coverage crown systems onfracture resistance and failure pattern ofendodontically treated maxillary incisorsrestored with and without glass fiberposts.J Endod,34(7):842-846,2008.
  • 3)橋本興,坪田有史:漏斗状ポスト孔の支台築造に関する研究.補綴誌,46(1):54-63,2002.
  • 4)天川由美子:鋳造支台築造とレジン支台築造の保持力に関する研究.補綴誌,42:1054〜1065,1998.
  • 5)医歯薬出版 補綴臨床別冊 失活歯のリコンストラクション.
  • 6)真坂信夫:続・変わりつつある支台築造1)変革が必要とされる支台築造法.日本歯科評論,vol.669;1998.
  • 7)石原正隆:支台築造された失活歯の残存歯質が破折強度および破折様相に与える影響.鶴見歯学,24(1):157-170,1998.
  • 8)大祢貴俊:ファイバーポスト併用レジン支台築造のポスト長に関する研究.補綴誌,50(2):180-190,2006.
  • 9)天川由美子,山田和伸:ファイバーポストを用いたレジン支台築造Q&A−オールセラミック修復をより確実に行うために.歯界展望,116(1):26-51,2010.
  • 10)原島厚ら:ガラスファイバーポストによる支台築造用コンポジットレジンの補強効果.歯材器,24(6):459-465:2005.
  • 11)荒井良明:ファイバーポストの効果的利用方法.vol.72(4) 113-120,日本歯科評論,2012.