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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Technical Report
強度と操作性を高めた硬質レジンジャケット冠の製作
鶴見大学歯学部 歯科技工研修科 野平 勇人

■はじめに

近年、歯科用CAD/CAMの普及や、金属の価格高騰によりメタルフリーによる審美治療を目にする機会が多くなった。
保険診療の分野においても、2014年からCAD/CAM冠が保険導入され、患者にとって白く綺麗な歯がより身近になった。ハイブリッドレジンブロックから削り出されるCAD/CAM冠は、従来の硬質レジンジャケット冠の強度不足を補い、小臼歯部症例に広く使用されている。
しかし、審美性においてはハイブリッドレジンブロックの色調が単調なものも多く、従来法の硬質レジンジャケット冠に比べ、自然感のある色調を得ることが難しいのも事実である(図1)。また、適度な透明感を持つCAD/CAM冠は、メタルコアや変色支台歯などの場合には色調の影響を受けやすい。
そこでメタカラープライムアート<サンメディカル社>(図2)を用いた、硬質レジンジャケット冠について再考することにした。
今回は、メタカラープライムアートにラインナップされている耐衝撃性オペーク材のジャケットオペーク(図3)と操作性を高めたフローペーストを使用した、強度と審美性を兼ね備えた硬質レジンジャケット冠の製作法について、咬合面コアを応用した術式で紹介する。

■使用材料について

・ジャケットオペークの特徴
ジャケットオペークとはコンポジットレジンにグラスファイバーを練り込むことにより耐衝撃性を向上させたファイバー強化型コンポジットレジンである。これを、レジンジャケット冠内部にコーピング材として使用する(図4)。
メーカー公表の耐衝撃実験においては、従来の硬質レジン単一のジャケット冠と比較して耐衝撃性が8.5倍の数値を示し、ジャケットオペークを使用することで飛躍的な強度の向上が期待できる(図5)。

・フローペーストの特徴
フローペーストは、サービカル色(AC1-F、AC2-F)・インサイザル色(58-F、59-F、60-F)・トランスルーセント色(T-Blue、T-Clear)の全7色がラインナップされている(図6)。このペーストは名前の通り流動性が高く、ノズルが細く設計されており、シリンジから直接レジンを盛り上げられるため、無駄がなく操作性が良い。
サービカルフローペーストにおいては、他のフローペーストよりさらに流動性を高めた設計となっており、築盛後に適度な振動を与えると、容易に涙状の形態付与が可能で、マージン縁端の築盛に適している。

  • 図1 硬質レジンジャケット冠とハイブリットレジンCAD/CAM冠の比較(左・硬質レジンジャケット冠右・CAD/CAM冠)。
    図1 硬質レジンジャケット冠とハイブリットレジンCAD/CAM冠の比較(左・硬質レジンジャケット冠右・CAD/CAM冠)。
  • 図2 メタカラープライムアート。
    図2 メタカラープライムアート。
  • 図3 ジャケットオペーク。
    図3 ジャケットオペーク。
  • 図4 ジャケットオペークを使用したHJC断面。
    図4 ジャケットオペークを使用したHJC断面。
  • 図5 メーカー公表による耐衝撃実験の結果。
    図5 メーカー公表による耐衝撃実験の結果。
  • 図6 フローペーストラインナップ。
    図6 フローペーストラインナップ。

■透明シリコーンコアを使用した硬質レジンジャケット冠の製作術式

1)透明シリコーンバイト材を用いた咬合面コアの作製
ワックスにて歯冠外形を回復した後、両隣在歯を含めてグラスバイト(デタックス社)を盛り上げ、咬合面観のコア採得を行う(図7、8)。硬化後、咬頭頂より1/3程度の位置で余剰部分をカットし、咬合面コアの戻りを確認しやすくしておく(図9)

2)分離材の塗布
支台歯に石膏表面硬化剤を塗布し、十分乾燥する。支台歯軸面にアンダーカットがある場合には、あらかじめワックスにてブロックアウトを行う。支台歯のマージンを超えるように支台歯全体にプライムセップを一層塗布する(図10)。離型を容易にする目的とスペーサーとして、マージン側1.0〜1.5mmを除いてプライムセップを再度塗布する。支台歯が一層オレンジ味を帯びたのを目安に塗布を終了する(図11)。

3)ジャケットオペークの築盛
ジャケットオペーク(JMO)を築盛する。ジャケットオペークは耐衝撃性向上のためグラスファイバーが練りこまれている。そのため、築盛用のペーストに比べ耐摩耗性、耐着色性に劣るため、最外層に露出させないようにマージンより一層内側で築盛をとどめる(図12)。また、ジャケットオペークは粘性が高いため、築盛時にインスツルメントに付着しやすい。そのため、支台歯に直接ジャケットオペークを適量塗布し、インスツルメントの刃の部分を用いて押し広げていくと操作しやすい(図13、14)。メーカー指示では最低0.3mmの厚さでの築盛を推奨しているが、築盛中に厚みを確認することは困難である。感覚的ではあるが、目安として分離材のオレンジ色が一層薄く見える程度に築盛をとどめると概ね目標の厚みを得ることができる。

4)サービカルフローペーストの築盛
本症例では、歯頸部にサービカルフローペースト(AC2-F)を用いて築盛を行う。サービカルフローペーストはシリンジから直接レジンを盛り上げられるため、オーバーマージンさせることなく容易にサービカルの築盛を完了することができる(図15)。また、サービカルフローペーストは、高い流動性を有しているため、適度な振動を加えるだけでマージン先端から軸面に向かって移行的な形態を容易に付与することできる(図16)。

5)ボディペーストの築盛
咬合面に深みのある色調を再現するためにアクセサリーカラーペースト(AM)を築盛する(図17)。事前に製作した咬合面コアをあてがい咬合面部のエナメル築盛スペースが確保されていることを確認し光重合を行う(図18)。その後、ボディペースト(A3.5-B)を築盛する。ボディペーストの築盛は、最終歯冠外形から咬頭頂の位置を内側に倒してエナメルの築盛スペースを確保しておく(図19)。

6)インサイザルフローペーストの築盛
咬合面コアにインサイザルフローペースト(59-F)を注入する。流動性の高いフローペーストは、シリコーンとの馴染みが良く、容易に咬合面コアの細部にまでペーストが流れてくれる(図20)。インサイザルフローペースト(59-F)を咬合面コアに注入後、気泡が混入しないよう支台歯に慎重に圧接を行う(図21)。咬合面コアが両隣在歯に確実に戻っていることを確認し、コアをあてがったまま光重合を行う。透明シリコーンで製作した咬合面コアは光を透過するため、コアをあてがったまま光重合できるメリットがある。咬合面コアを撤去し、作業模型から支台歯を抜き取る。コンタクトの研磨しろを含め、残りの歯冠外形をインサイザルフローペースト(59-F)で直接築盛を行う。咬合面コアを使用することにより短時間かつ、正確にワックスアップした最終外形を再現することができる(図22、23)。

7)形態修正・離型
コンタクトとバイトを調整した後、形態修正を行う。ワックスアップした形態がそのまま再現されているため短時間で形態修正を完了できる。形態修正完了後、ジャケット冠を支台歯から離型する(図24)。マージン周辺に厚みが残っている場合は、シリコーンポイントを用いて厚みの調整を行う。内面に残った分離材は、スチームクリーナーや綿棒を用いて取り除く。

8)研磨・完成
通法により研磨を行い、完成する(図25、26)。

9)口腔内装着
多層築盛が可能なメタカラープライムアートを使用することにより自然な色調を再現することができた。また、ジャケットオペークを使用したメタカラープライムアートの硬質レジンジャケット冠は、耐衝撃性に優れているため、試適時やバイト調整時に起こりやすい、チッピングや破折などのトラブルを軽減することができる(図27、28)。

  • 図7 ワックスにて歯冠外形を回復する。
    図7 ワックスにて歯冠外形を回復する。
  • 図8 両隣在を含め、グラスバイトにて咬合面観をコア採得し、咬合面コアを作製する。
    図8 両隣在を含め、グラスバイトにて咬合面観をコア採得し、咬合面コアを作製する。
  • 図9 余剰部分をカットし、石膏模型への戻りを確認し、咬合面コアを完成させる。
    図9 余剰部分をカットし、石膏模型への戻りを確認し、咬合面コアを完成させる。
  • 図10 プライムセップ。
    図10 プライムセップ。
  • 図11 プライムセップは分離効果とスペーサーを兼ねる。オレンジ味を帯びたのを目安に塗布を終了する。
    図11 プライムセップは分離効果とスペーサーを兼ねる。オレンジ味を帯びたのを目安に塗布を終了する。
  • 図12 ジャケットオペーク(JMO)塗布。耐摩耗性、耐着色性に劣るためマージンを含め、最表層には露出させないよう注意する。
    図12 ジャケットオペーク(JMO)塗布。耐摩耗性、耐着色性に劣るためマージンを含め、最表層には露出させないよう注意する。
  • 図13 ジャケットオペークは粘性が高いため、築盛時にインスツルメントに付着しやすい。
    図13 ジャケットオペークは粘性が高いため、築盛時にインスツルメントに付着しやすい。
  • 図14 インスツルメントの刃の部分を利用して押し広げていくような感覚で築盛する。
    図14 インスツルメントの刃の部分を利用して押し広げていくような感覚で築盛する。
  • 図15 サービカルフローペースト(AC2-F)の築盛。ノズルが細く設計され、直接レジンを築盛できるため操作性が良い。
    図15 サービカルフローペースト(AC2-F)の築盛。ノズルが細く設計され、直接レジンを築盛できるため操作性が良い。
  • 図16 サービカルフローペーストは流動性が高く、適度な振動を与えることにより簡便に涙状の形態付与が可能である。
    図16 サービカルフローペーストは流動性が高く、適度な振動を与えることにより簡便に涙状の形態付与が可能である。
  • 図17 咬合面の色調に深みを出すため、アクセサリーカラーペースト(AM)を咬合面部に築盛する。
    図17 咬合面の色調に深みを出すため、アクセサリーカラーペースト(AM)を咬合面部に築盛する。
  • 図18 シリコーンコアで咬合面部のエナメル築盛スペースが確保されていることを確認する。
    図18 シリコーンコアで咬合面部のエナメル築盛スペースが確保されていることを確認する。
  • 図19 ボディースト(A3.5-B)を築盛する。ボディペーストの築盛時は、咬頭頂の位置を内側に倒し、インサイザル色の築盛スペースを確保しておく。
    図19 ボディースト(A3.5-B)を築盛する。ボディペーストの築盛時は、咬頭頂の位置を内側に倒し、インサイザル色の築盛スペースを確保しておく。
  • 図20 咬合面コアにインサイザルフローペースト(59-F)を注入する。フローペーストは流動性が高く、咬合面コアとの馴染みが良い。
    図20 咬合面コアにインサイザルフローペースト(59-F)を注入する。フローペーストは流動性が高く、咬合面コアとの馴染みが良い。
  • 図21 気泡が混入しないよう慎重に圧接を行い、咬合面コアをあてがったまま光重合を行う。透明性のある咬合面コアは、光を透過するため、石膏模型に固定したままペーストを光重合できる。
    図21 気泡が混入しないよう慎重に圧接を行い、咬合面コアをあてがったまま光重合を行う。透明性のある咬合面コアは、光を透過するため、石膏模型に固定したままペーストを光重合できる。
  • 図22 咬合面コアを撤去。歯冠外形を容易に短時間でレジンに置換することができる。
    図22 咬合面コアを撤去。歯冠外形を容易に短時間でレジンに置換することができる。
  • 図23 コンタクトの研磨しろを含めレジン不足部に、インサイザルフローペースト(59-F)を築盛する。
    図23 コンタクトの研磨しろを含めレジン不足部に、インサイザルフローペースト(59-F)を築盛する。
  • 図24 形態修正後、オーバーマージンがないことを確認して離型する。
    図24 形態修正後、オーバーマージンがないことを確認して離型する。
  • 図25 完成した硬質レジンジャケット冠の咬合面観。築盛時に咬合面コアを使用することで完成までの作業時間を短縮できる。
    図25 完成した硬質レジンジャケット冠の咬合面観。築盛時に咬合面コアを使用することで完成までの作業時間を短縮できる。
  • 図26 完成した硬質レジンジャケット冠の頰側面観。
    図26 完成した硬質レジンジャケット冠の頰側面観。
  • 図27 口腔内装着後の咬合面観
    図27 口腔内装着後の咬合面観。
  • 図28 口腔内装着後の頰側面観。
    図28 口腔内装着後の頰側面観。

■支台歯の色調条件が悪い場合のオペークの使用例

メタルコアや変色支台歯など条件が悪い場合は、ジャケットオペーク築盛前の支台歯にトップオペークを一層塗布する。ジャケットオペークを使用する以外は、従来通りの硬質レジンの築盛を行うため、支台歯の条件に左右されることなく審美的かつ高強度な硬質レジンジャケット冠を製作できる(図29、30)。

  • 図29 メタルコアの症例にメタカラープライムアートの硬質レジンジャケット冠を製作した。
    図29 メタルコアの症例にメタカラープライムアートの硬質レジンジャケット冠を製作した。
  • 図30 トップオペークを用いたメタカラープライムアートの硬質レジンジャケット冠は、支台歯の色調に左右されることがない。
    図30 トップオペークを用いたメタカラープライムアートの硬質レジンジャケット冠は、支台歯の色調に左右されることがない。

■おわりに

今回、ジャケットオペークとフローペーストを使用した硬質レジンジャケット冠の製作ステップについて咬合面コアを応用した術式で紹介した。ジャケットオペークは作業模型の支台歯にコーピング材として使用することで、高強度の硬質レジンジャケット冠を製作することができ、従来、臨床で問題とされてきた破折に対する耐久性の不安を解消することができる。
一方、フローペーストは、透明シリコーン製の咬合面コアを併用することで、形態修正から完成までの作業時間を大幅に短縮することができた。また、フローペーストは今回紹介した使用方法以外に、ポンティックの穴埋めや気泡の修正、マメロン部への築盛など、用途は多様であり、硬質レジンを築盛する各工程でペーストタイプと有効的に使い分けることで大幅な作業時間の短縮が期待できる。
そして、前述からメタカラープライムアートのシステムで製作した硬質レジンジャケット冠は、従来の硬質レジンジャケット冠では不安のあった強度面を改善でき、かつCAD/CAM冠では困難な深みのある色調を再現できる。今後も、日々進化するマテリアルの特性を十分理解し、日常臨床に積極的にとり入れていきたい。

参考文献
  • 1)大久保力廣、市川正幸、三山善也、伊原啓祐:「即!実践臨床技工テクニカルヒント」、医歯薬出版、P94,95、2014.
  • 2)森田真理子、岩田健吾、佐藤文裕、竹井利香他:クリアタイプ・シリコーンコアを応用した硬質レジン修復の製作法、日歯技工誌、24:165−171、2003.

デンタルマガジン 159号 WINTER