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Field Report

領域にあわせてサイズ変更が可能 被曝量が少なく様々な症例で有効な歯科用CT

大阪府高槻市 河原歯科クリニック 院長 河原 敬

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「患者さんに最善の治療を提供すること」をコンセプトに、2008年、開業しました。なかでも「自分が受けたい治療を提供したい」という想いから、日々の自己研鑽はもちろんですが、CTの三次元画像など視覚的な要素を取り入れた、患者さんにわかりやすく納得いただける誠実なインフォームド・コンセントを心がけています。また、大学病院で学んだ歯牙保存のノウハウを活かし、単に歯を抜かないだけではなく、状態の悪い部分を機能できる状態に回復させて保存することを第一に考えています。
歯科用CTは2012年に導入したのですが、モリタ製CTの画質の良さ、被曝量の低さについて耳にしていたこともあり、サポートしてくださる「人」も含めて、ベラビューエポックス3Dfを選びました。それまでは、近隣の病院にCT撮影を依頼していましたが、以前から院内の歯科用CTの必要性を強く感じていました。経営的なタイミングにより、私としては少し遅い導入になりましたが、歯科医療が進化していく中で、時代にあった機器や設備を取り入れていくことは、自分の技術を向上させるのと同じくらい重要だと感じています。
インプラント治療を行うためにも、院内に歯科用CTを導入することは大きなメリットと感じていましたが、いざ、歯科用CTを導入してみると、インプラント治療診断に有効なことはもとより、エンド領域やペリオ領域でも有用な情報を与えてくれるのは予想以上の驚きでした。そこで、当院での歯科用CTの活用例を3つご紹介したいと思います。
最初は外傷による歯内療法のケースです。12歳の女性が下顎前歯部の激痛を訴えて来院し、口腔内診査とデンタルX線から急性根尖性歯周炎を疑うも、診断に確信が持てませんでした。そこで保護者への説明と同意を得てCT撮影を行ったところ、明らかな根尖部透過像が認められ確信を持って12歳の女性の歯内療法に踏み込むことができました。このような症状の強い待ったなしのケースでは、院内ですぐに撮影できることは大きなメリットです。また、必要に応じて撮影範囲をピンポイントで選択し、被曝量を最小限に抑えられるため、若年者でも適切な撮影期間をおいて処置前と処置後の経過を確認することができました。
次に矯正治療希望で矯正歯科を受診された37歳女性の歯周治療のケースです。矯正専門医より歯周治療の依頼を受け、各種検査の後、全顎のCTを撮影。抜歯箇所と歯周病の状態を確認し、結果的に4ヵ所の歯周組織再生療法とインプラントアンカーを用いて矯正医による矯正治療を行いました。ボリュームレンダリングの三次元画像を参考にすることで治療のイメージがしやすく、患者さんへの説明、矯正歯科医と連携して治療相談を行うのにとても役立ちました。
最後はインプラント埋入のケースです。特にオステオトームテクニックによる上顎洞挙上術が必要なケースにおいては、マイクロスコープを併用してシュナイダー膜を損傷しないよう慎重な手技が求められます。歯科用CTでは、事前にシュナイダー膜の位置や厚さを確認できることはもちろんですが、手術後の再撮影で粘膜の状態や移植骨の漏れなど不具合が起きていないかを確認することができます。患者さんにとって処置後の経過を把握したり、その後のフォローに役立つことは当然ですが、治療に関わる私たちが「安心感を得る」という意味でも欠かせないものになっています。
このように、歯科用CTはさまざまな分野で活用できる必須のツールだと思います。ビュアーソフト「i-VIEW」はとても操作性がよく、歯周外科を行う症例の際は術式の決定、切開線の設定などを確認できるほか、エンドではこれまで見つけられなかった根管の発見や根管の曲がり方といった細部にわたる治療に有用な情報を多く与えてくれます。また、必要に応じて小さなサイズも撮影できるので、被曝という観点からもひとつの安心につながっています。
かつて歯科用CTといえば外科領域だけのイメージでしたが、いまやインプラント治療のほかにも、ペリオ領域、エンド領域、さらに小児歯科の分野でも活用されつつあり、その有用性は歯科臨床全般で明らかになってきています。歯科用CTは正確な診断、精度の高い治療に結びつける欠かせないツールといえるでしょう。
今後は、これまで以上に歯の保存に必要な治療技術の研鑽を続け、歯科用CTをはじめとした最新機器を活用することで、よりレベルの高い診療をめざしていきたいと考えています。

  • 症例1-1
    症例1-1 術前デンタル
    12歳女性。下顎前歯部の激痛を訴え来院。口腔内診査とデンタルX線から1の急性根尖性歯周炎を疑うも診断に確信が持てなかったため保護者に説明しCT撮影の同意を得た。
  • 症例1-2
    症例1-2 術前CBCT像
    明らかな根尖部透過像を認める。皮質骨が完全に失われていないケースにおいてCBCTは非常に有用である。
  • 症例1-3
    症例1-3 術後デンタル
    隣在歯も歯内療法を行うことになってしまったが、問題なく治癒しているように思われる。
  • 症例1-4
    症例1-4 術後CBCT像
    処置開始6ヵ月後、明らかに治癒を認める。撮影範囲を選択でき、被曝量が少ないモリタ製CBCTは使いやすい。
  • 症例2-1
    症例2-1 術前口腔内写真
    37歳女性。矯正治療希望で矯正歯科受診。矯正専門医より歯周治療の依頼を受け、当院に来院された。
  • 症例2-2
    症例2-2 CBCTの水平断画像
    下顎前歯部にフォーカスをあてるが、2 1の支持骨が喪失されているのが分かる。
  • 症例2-3
    症例2-3 ボリュームレンダリング画像
    視覚的に歯牙と顎骨との関係を理解できる。患者説明ならびに矯正医との治療計画の相談にも非常に有用であり、下顎前歯の抜歯対象歯の決定にも一役買ってくれた。
  • 症例2-4
    症例2-4 上顎左側臼歯部のCBCT矢状
    断画像歯周組織再生療法を行った部位の術前のCBCT画像。垂直性の歯槽骨の吸収が認められる。
  • 症例2-5
    症例2-5 再生療法の術中写真
    CBCT画像で術前に得られた歯槽骨の吸収を認める。得られたイメージにより切開線の設定など手術計画の立案に役に立った。
  • 症例2-6
    症例2-6 術中口腔内写真
    下顎前歯部については結果的に舌側転位した2を抜歯し、矯正専門医に矯正治療を依頼した。
  • 症例3-1
    症例3-1 6のオステオトーム時のドリルホール
    シュナイダー膜を損傷しないように注意深く挙上した。マイクロスコープにてドリルホールを確認した。
  • 症例3-2
    症例3-2 術後CBCT画像
    シュナイダー膜の損傷および移植骨の上顎洞内への迷入は認めない。

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