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Clinical Hint

高齢者における メインテナンスの着眼点 -“見る”ではなく“診る”へ-

愛媛県今治市 森田デンタルクリニック 歯科衛生士 森田 久美子

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■はじめに

現在の日本では、超高齢社会を迎え、世界でも類を見ないほど急速に高齢化が進んでいます。
歯科医療は、小児期から高齢期まで長期継続的に診ることができるため、メインテナンスを通じて患者の健康寿命の延伸に全力を尽くすことが私自身の大きな命題だと思い日々努力しています。
今回は、患者のライフステージの中でも高齢期にフォーカスを当て、私の臨床におけるメインテナンスの着眼点と対応方法について紹介させていただきます。

■高齢者メインテナンスの実際

高齢者の身体的な特徴は、加齢に伴う免疫機能、身体的機能の低下、種々の全身疾患を有していることが多く口腔内だけでなく全身的にも様々な問題点を抱えています。そのため、一つの問題が顕在化することをきっかけに口腔内や全身状態が短期間で大きく変化し、機能の低下を伴いやすいのが特徴です。
そのような高齢者に対し適切な診査を行うことで、現状をより悪化させる原因となり得るトリガーポイントを見極める能力が歯科衛生士に求められるのです。

■デンチャーのメインテナンスにおけるチェックポイント

高齢者のメインテナンスでは、口腔内に義歯を装着している割合が高く、メインテナンスを行う際の重要なチェックポイントになります。
私のメインテナンスにおけるチェックポイントは、①義歯にプラークや歯石は付いていないか?②クラスプの緩みや適合性に問題はないか?を問診や口腔内所見、全身所見と照らし合わせながらチェックを行っています。
特に、デンチャープラーク中の細菌は誤飲、誤嚥することで肺炎を招く危険性があるため注意が必要です。また、義歯床に付着するデンチャープラーク中の真菌Candida albicansが、義歯性口内炎や口腔カンジタ症の原因としても重要視されています(図1、2)。
口腔カンジタ症は、抗生物質の投与されている患者や抵抗力の衰えた高齢者などにおいては、全身的なカンジタ症に移行する可能性もあるため、義歯全体を清潔に保つことの必要性を患者に伝える必要があります。
また、クラスプの緩みや粘膜の適合性は、義歯を快適に使用する上で大切です。残存歯の位置による左右の顎堤への力の加わり方の違いや習慣性の咀嚼癖が関係して、顎堤の吸収が起こり不適合になることは日々の臨床ではよく経験することです。
患者さんが大切に残している鉤歯を守る上でも歯科衛生士の立場から不適合をメインテナンス時にチェックすることも重要な要素だと思います。

■義歯のプロフェッショナルケアの実際

義歯に多量の歯石や着色が付着している際は、医院用義歯洗浄剤「フィジオクリーンプロ歯石用Ⅱ」を用いて短時間で簡便に除去することができます。「歯石用」という製品名がついていますが、その効果はもっと高く、義歯床に付着した着色までキレイに除去できるというのが私の臨床実感です。
日々の忙しい臨床の中で、この方法のみで義歯のプロフェッショナルケアを完結することが可能です。超音波洗浄機で5〜10分洗浄を行うだけなので、使用方法は簡単です(図3〜6)。
診療の最初に義歯を預かり洗浄を行いながら口腔内のメインテナンスを並行して行うことができるので私の臨床の中では非常に重宝しています。
洗浄後は自宅でのセルフケアのクオリティーに比べると格段に良い仕上がりとなり舌感も新製義歯のように良く、義歯表面の色もキレイな状態になることから、患者のモチベーションが格段に上がり、セルフケアの意識向上とともに継続的な来院につながることも大きな利点です。

  • 図1 多量に付着した義歯性プラーク。誤嚥性肺炎や義歯性口内炎の原因となる
    図1 多量に付着した義歯性プラーク。誤嚥性肺炎や義歯性口内炎の原因となる
  • 図2 義歯性口内炎及び口腔カンジタ症。
    図2 義歯性口内炎及び口腔カンジタ症。
  • 図3 歯科医院用義歯洗浄剤「フィジオクリーンプロ歯石用Ⅱ」。酸の力で歯石を溶かし除去する。
    図3 歯科医院用義歯洗浄剤「フィジオクリーンプロ歯石用Ⅱ」。酸の力で歯石を溶かし除去する。
  • フィジオクリーンプロ歯石用Ⅱにて超音波洗浄で5から10分洗浄を行う。
    図4 フィジオクリーンプロ歯石用Ⅱにて超音波洗浄で5から10分洗浄を行う。
  • 図5 喫煙者の義歯。口蓋に多量の着色が付着している。歯石と着色が混在して付着している様子が見て取れる。
    図5 喫煙者の義歯。口蓋に多量の着色が付着している。歯石と着色が混在して付着している様子が見て取れる。
  • 図6 図5の義歯をフィジオクリーンプロ歯石用Ⅱにて洗浄後。
    図6 図5の義歯をフィジオクリーンプロ歯石用Ⅱにて洗浄後。

■義歯のセルフケア指導

義歯のセルフケアの基本は義歯ブラシによる機械的清掃です。
毎日清掃を行っていても義歯の機械的清掃だけでは汚れを取り切ることが難しく、来院時、義歯表面に歯石が付いているというケースも日常臨床で存在します。
そのような方には、セルフケアでも効果的に歯石を除去できる「歯石くりん」を機械的な清掃に加えてご使用いただくことで歯石の再付着を予防することができます(図7〜9)。
この洗浄剤は、カンジタ菌に対しても強い除菌効果を発揮しますので、前述のような誤嚥性肺炎等の全身性のリスクファクターを軽減させるといった意味でも、私の臨床において大切な義歯セルフケア用品です。

  • 図7 歯石をターゲットとしたセルフケア用義歯洗浄剤。錠剤タイプのため、粉末タイプのようにこぼれたり飛散することがない。
    図7 歯石をターゲットとしたセルフケア用義歯洗浄剤。錠剤タイプのため、粉末タイプのようにこぼれたり飛散することがない。
  • 図8 機械的清掃を徹底しているが歯石が付着しやすいケース。
    図8 機械的清掃を徹底しているが歯石が付着しやすいケース。
  • 図9 プロケアで「フィジオクリーン」、セルフケアで「歯石くりん」をご使用することで義歯を衛生的に維持している。
    図9 プロケアで「フィジオクリーン」、セルフケアで「歯石くりん」をご使用することで義歯を衛生的に維持している。

■おわりに

高齢者のメインテナンスでは高齢者特有の特徴を知っておくことが必要です。
加齢による全身的な変化や、口腔内の環境変化に合わせたアプローチの一つとして本稿が皆様のお役に立てれば幸いに思います。

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