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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

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高濃度フッ化物配合歯磨剤時代の う蝕予防
神奈川歯科大学大学院 口腔科学講座 教授 荒川 浩久、講師 宋 文群/ライオン株式会社 オーラルケア研究所 藤川 晴彦/ライオン歯科材株式会社 製品マネジメント室 諸星 裕夫

■はじめに

フッ化物配合歯磨剤の普及に伴い、子どもたちのう蝕が急激に減少するという傾向が先進国でみられたのが1970から80年代。日本はその潮流に乗り遅れ、1996年のフッ化物配合歯磨剤の市場シェアは47%にとどまっていた。その1996年に、本格的な歯科用歯磨剤Check-Upが登場した。
それから20年後の2016年には、フッ化物配合歯磨剤市場シェアは91%に達した。一方、配合フッ素濃度は、ISO(国際標準化機構)基準の1,500ppmを大きく下回る1,000ppm以下に規制されていたが、2017年3月に厚生労働省はフッ素濃度1,000ppm以上で1,500ppm以下の製品を医薬部外品として承認した。かねてから世界標準のフッ素濃度配合歯磨剤(図1)を切望していた歯科界にとって朗報であり、8020達成者が51.2%(図2)と、多数の歯が残る高齢者が急増する現代においては、フッ素濃度1,000ppm以上のフッ化物配合歯磨剤の登場は心強い支援ツールになると確信している。なお、フッ素1,000ppmF以上配合の歯磨剤は6歳未満への使用は控える旨の表示が記載される。
そこで、フッ素濃度1,450ppmに改良されたCheck-Upについて研究データを交え紹介する。

■高濃度フッ化物配合歯磨剤の有効性と生まれ変わったCheck-Up

WHO Technical Reportによれば、フッ素濃度1,000ppm以上の歯磨剤では、フッ素濃度が500ppm上昇するごとにう蝕予防効果が6%ずつ上昇すると評価されている。さらに、1,000ppmと1,500ppmのフッ素を配合した歯磨剤のう蝕予防効果に関する比較研究も海外で行われ、14〜22%う蝕予防効果が上昇するという結果が示されている(図3)。
以上のように、う蝕予防効果の高い高濃度フッ化物配合歯磨剤時代を迎え、Check-Up歯磨剤は、従来のシリーズのうち、大人向けの3品のフッ素濃度を1,450ppmとした(図4)。患者様の年齢とカリエスリスクに応じて濃度や剤形が選択でき、患者様一人ひとりのカリエスソリューションとして、適したフッ化物配合歯磨剤をお届けできる体制が整った(図5)。
また、フッ素濃度1,450ppmとした3品は、従来通り少量洗口が可能な製剤設計とともに、エナメル質にフッ化物を吸着させるコーティング剤としてのカチオン化セルロースを配合し、フッ素濃度1,450ppmの効果をさらに発揮しやすい設計とした(図6)。
今回、フッ素濃度1,450ppm化による影響を確認するため以下の2つの研究を行ったので報告する。
1)Check-Up standard使用後のヒト唾液中フッ素濃度
2)Check-Up rootcareのミネラル脱灰とコラーゲン分解抑制への影響次章からその結果を紹介し、そこから得られたヒントをもとに、有効性をより高める日本人向けの使用法を提案する。患者様一人ひとりのリスクに合わせた歯磨剤の選択により、患者様の口腔内環境の向上に繋がれば幸いである。

  • 海外でのフッ化物配合歯磨剤のフッ素濃度基準の図
    図1 海外でのフッ化物配合歯磨剤のフッ素濃度基準
  • 20本以上歯が残っている人の割合(厚生労働省:歯科疾患実態調査, 2016)の図
    図2 20本以上歯が残っている人の割合(厚生労働省:歯科疾患実態調査, 2016)
  • フッ素1,500ppm配合歯磨剤の臨床研究結果の図
    DMS とはDecay Missing Filled Surfaces の頭文字で、1 本の歯を前歯部4 面、臼歯部5 面に分割し、その歯面のむし歯状況を、むし歯面・喪失歯面・治療済充填歯面の分類に分けて記録し、その歯面数の合計で表される指標のこと。DMFS=(被験者全員のDMF 歯面の合計)/(被験者数)⊿DMFS=(試験終了時のDMFS)ー(試験開始時のDMFS)図1 海外でのフッ化物配合歯磨剤のフッ素濃度基準
    図3 フッ素1,500ppm配合歯磨剤の臨床研究結果
  • フッ素濃度が1,450ppmになったCheck-Upシリーズの図
    図4 フッ素濃度が1,450ppmになったCheck-Upシリーズ
  • Check-Upによるカリエスソリューションの図
    図5 Check-Upによるカリエスソリューション
  • Check-Upの特徴の図
    図6 Check-Upの特徴

■研究1

Check-Up standard(1,450ppmF)使用後の唾液中フッ素濃度
神奈川歯科大学大学院口腔科学講座
教授 荒川浩久、講師 宋文群
今回、新発売されたフッ素濃度1,450ppmF配合の歯磨剤使用後の口腔内フッ化物保持について、従来のフッ素濃度950ppmF配合歯磨剤と比較実験を行った。実験用歯磨剤はどちらもCheck-Up standardを使用した。

材料および方法
対象者は平均年齢44.5±15.8歳の健康な成人4名(男性2名、女性2名)である。本研究は神奈川歯科大学研究倫理審査委員会の承認(No.439)のもとに、以下の3つの実験を行った。
実験①:従来のフッ化物配合歯磨剤(950ppmF)を用いたブラッシング(洗口1回)
対象者はフッ素濃度950ppmのフッ化物配合歯磨剤0.5 gにて3分間のブラッシングを行い、直後に1回吐き出し、15mLの蒸留水にて5秒間1回の洗口を行った。その直後、5分後、15分後、30分後、60分後、120分後、150分後の計7回にわたり5分間安静時唾液を採取し、フッ素濃度を測定した。
実験②:高濃度フッ化物配合歯磨剤(1,450ppmF)を用いたブラッシング(洗口1回)
フッ素濃度1,450ppmのフッ化物配合歯磨剤を用いて、実験①と同じ手順で実験を行った。
実験③:高濃度フッ化物配合歯磨剤(1,450ppmF)を用いたブラッシング(洗口2回)
フッ素濃度1,450ppmのフッ化物配合歯磨剤を用いて、実験②と同じ手順で実験を行った。ただし15mLの蒸留水にて1回5秒間の洗口を2回とした。
上記した3つの実験結果のうち、経時的な唾液中のフッ素濃度の変化をグラフ化し、150分まで口腔内保持されたフッ素量を曲線下面積(AUC)として算定した。

結果および考察
各実験におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の唾液中フッ素濃度の経時変化を図7のAとBに示した。唾液中フッ素濃度は、実験②(フッ素濃度1,450ppm歯磨剤×洗口1回)が各時間帯において、実験①(フッ素濃度950ppm歯磨剤×洗口1回)と実験③(フッ素濃度1,450ppmF×洗口2回)より高かった。120分後の唾液中フッ素濃度の平均は、実験②および③は、再石灰化を促進するのに必要なフッ素濃度の下限値である0.05ppmを上回った。
150分まで口腔内に保持されたフッ素量を曲線下面積AUCとして図8のAとBに示した。実験①と②(P<0.01)、実験②と③(P<0.05)の間に有意差が認められた(対応のあるt検定)。洗口回数1回同士の比較では、実験②(フッ素濃度1,450ppm歯磨剤)は、実験①(フッ素濃度950ppm歯磨剤)より高い口腔内フッ素保持が得られた。また同じフッ素1,450ppm濃度の歯磨剤同士の比較では、実験②(フッ素濃度1,450ppmF歯磨剤×洗口1回)は実験③(フッ素濃度1,450ppm歯磨剤×洗口2回)より高い口腔内フッ素保持が得られた。
35〜64歳までのう蝕有病率がほぼ100%で、より高年齢層のう蝕有病率が増加する中で、成人や高齢者に対し、より高濃度のフッ化物配合歯磨剤を用い、洗口回数をできるだけ少なめにして、より多くのフッ化物を口腔内に残す使用方法を推奨する(図9)。

  • 実験①と②におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の唾液中フッ素濃度(ppm)
    図7A 実験①と②におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の唾液中フッ素濃度(ppm)
  • 実験②と③におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の唾液中フッ素濃度(ppm)
    図7B 実験②と③におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の唾液中フッ素濃度(ppm)
  • 実験①②③
  • 実験①と②におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内フッ素保持(AUC)
    図8A 実験①と②におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内フッ素保持(AUC)
  • 実験②と③におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内フッ素保持(AUC)
    図8B 実験②と③におけるフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内フッ素保持(AUC)
  • 効果的なフッ化物配合歯磨剤の使用法
    図9 効果的なフッ化物配合歯磨剤の使用法

■研究2

Check-Up rootcare(1,450ppmF)の根面う蝕予防効果に関するインビトロ実験
ライオン株式会社オーラルケア研究所
藤川晴彦
Check-Up rootcareは、フッ化物と併用することで根面う蝕予防が期待されるコーティング成分ピロリドンカルボン酸(以下PCA)を配合し、その効果について報告してきたが1、2)、今回、Check-Up rootcareのフッ素配合1,450ppm化にともないインビトロにおける有効性について研究を行った。

材料および方法
初期脱灰してコラーゲンを露出させた象牙質サンプル(処置面:2×2mm)を歯磨剤①プラセボ(フッ化物とPCA無配合)、歯磨剤②1,450ppmF配合、歯磨剤③3,000ppmF配合、歯磨剤④Check-Up rootcare( 1,450ppmF+PCA配合)で処置した。
コラゲナーゼを含有する再石灰化液(pH6.5:安静時唾液を想定)に5時間浸漬後、脱灰液(pH5.0:飲食後の唾液を想定)中に溶出したカルシウムイオン量(溶出時間:3時間)を原子吸光法で、残存コラーゲン表面のヒドロキシプロリン量をラマン分光法で評価した(図10)3)

結果および考察
Check-Up rootcareは、1,450ppmFより有意にカルシウムイオンの溶出量を減少させ、3,000ppmFと同等以上に脱灰を抑制することが確認された(図11)。さらに、コラーゲンの構造変化を確認できるヒドロキシプロリン4)量において、Check-Up rootcareは、1,450ppmFおよび3,000ppmFより有意に高い値を示し(図12)、残存コラーゲンを保護している可能性が示唆された。残存コラーゲンが保護されることでカルシウムイオンの溶出が抑制されるとともに、その後それらを足場とした再石灰化も期待できる5、6)
以上のことから、1,450ppmFとPCAを配合したCheck-Up rootcareは、象牙質の脱灰抑制やコラーゲン保護効果が高く、高齢者の根面う蝕の進行を効果的に予防できることが期待される。

  • 根面象牙質に対する評価フロー
    図10 根面象牙質に対する評価フロー
  • 脱灰進行の抑制効果
    図11 脱灰進行の抑制効果
    1,450ppmF+PCA群は、1,450ppmF群に比べて有意に脱灰抑制効果あり
  • 残存コラーゲンの保護効果
    図12 残存コラーゲンの保護効果
    1,450ppmF+PCA群は、1,450ppmF群および3,000ppmF群に比べて有意にコラーゲンの保護効果あり
参考文献
  • 1)藤川晴彦ほか:第138回日本歯科保存学会春季学術大会講演抄録集:2013.
  • 2)井上志磨子ほか:第143回日本歯科保存学会秋季学術大会講演抄録集:2015.
  • 3)中山志織ほか:第147回日本歯科保存学会秋季学術大会講演抄録集:2017.
  • 4)van Strijp AJP et al:Caries Research 37:58-65、2003
  • 5)Qian Xie et al:Journal of Dentistry 36:900-906、2008
  • 6)Bedran-Russo AK et al:Archives of OralBiology 58:254-260、2013.

デンタルマガジン 163号 WINTER