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Field Report

矯正治療中の知覚過敏症に有用な 知覚過敏抑制材

千葉県市川市 むらおか歯科・矯正歯科クリニック 矯正治療担当 小林 英範

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むらおか歯科・矯正歯科クリニック 歯列矯正の治療に際して、知覚過敏の対応に悩まされている先生は多いのではないでしょうか。
矯正装置を接着する際のエッチングによる影響、歯の移動量が多いことや歯肉が下がることによる歯面の露出、過剰なブラッシングなど、矯正治療中に知覚過敏が生じる因子はいくつもあり、特に成人の患者さんの場合、「歯がしみる」と訴えられる方が非常に多くいらっしゃいます。
これまで当院ではそうした患者さんに対し、知覚過敏抑制材を使用したり、レーザー治療を行ったり、あるいは矯正治療による知覚過敏は数日で治まることもあるため、「そのうちよくなりますよ」とお伝えしたりといった対応をすることが主でした。しかし、それでも症状が改善しないケースがあり、どこか騙し騙し、または悩みながら対応する、という思いが拭えませんでした。こうした状況を変えたのが、今年から導入している知覚過敏抑制材「ティースメイトAPペースト」です。
最初は本当に効果があるのか半信半疑でしたが、塗布後に口を漱いだ瞬間から「痛みがなくなった」とおっしゃる患者さんが多く、ボンディング治療と同等くらいの即時効果があるように感じます。
塗布の回数については、矯正治療の影響から知覚過敏になった患者さんは症状が軽度のためか、一度の塗布だけで、その後に症状を訴える方はほとんどいらっしゃいません。
多くの知覚過敏抑制材は塗布前にエアーによる完全乾燥が必要となりますが、APペーストの場合、歯面が濡れたままでも塗布できるため、処置時に痛みが伴わない点も患者さんから喜ばれています。また、主成分であるリン酸カルシウムは生体親和性が高いので、歯肉に対して刺激がなく、患者さんに薦めやすい点も助かります。
塗布方法は、当院ではラバーカップのほか、矯正装置まわりの細かい箇所などにはブラシを使用して塗り込むように塗布しています。適度な粘性があるペースト状なので、原因歯が特定できない場合であっても多数歯にわたって楽に塗り込むことができ、手間暇がかかりません。
塗布後は歯面が平滑になり、茶渋などの着色が付着しにくくなりました。
矯正治療中はブラッシングがしにくい箇所ができるので、う蝕のリスクが高まります。そのため、当院では歯磨き指導をはじめとしたTBIを厳しく行っていますが、前述のように歯面が平滑になること、また、フッ化ナトリウムが配合されていることなど、う蝕予防という観点からもAPペーストはメリットがあるように思います。
私自身も以前はそうでしたが、矯正歯科を専門に行っていると、どうしても歯をどう動かし、どうやって並べるかといったテクニックにばかり着目しがちになります。そのため、知覚過敏で悩まれている患者さんは、実際には多いにも関わらず、そのことについてしっかりと向き合わない傾向があるように思います。
矯正治療は不正咬合を改善することで正常な口腔機能を回復させ、う蝕のない健康な口腔を維持できるようにすることが本来の目的です。知覚過敏が生じていれば、やはり健康的な状態であるとは言い難く、歯科医師として最善の努力を尽くしたいと考えています。
今後は、効果および即時性が高いAPペーストを積極的に活用することで、これまで以上に自信をもって日々の診療に取り組むことができると期待しています。

  • 30歳、女性。マウスピース矯正装置で治療中
    症例1-1
    30歳、女性。マウスピース矯正装置で治療中、1 に知覚過敏が発生した。
  • 歯に付いているアタッチメントなどを気にせずにAPペーストを塗布できる。
    症例1-2
    歯に付いているアタッチメントなどを気にせずにAPペーストを塗布できる。
  • 痛みはすぐに消え、程良い粘稠度のため施術中も液だれの心配がなく塗布後も歯面に残っている。
    症例1-3
    痛みはすぐに消え、程良い粘稠度のため施術中も液だれの心配がなく塗布後も歯面に残っている。
  • 27歳、男性。5 の捻転した歯が並び始めた時に知覚過敏が発生した。
    症例2-1
    27歳、男性。5 の捻転した歯が並び始めた時に知覚過敏が発生した。
  • 矯正装置に邪魔されないようにAPペーストをコントラブラシを使って低回転で塗布する。
    症例2-2
    矯正装置に邪魔されないようにAPペーストをコントラブラシを使って低回転で塗布する。
  • APペースト塗布後即時に痛みがなくなった。
    症例2-3
    APペースト塗布後即時に痛みがなくなった。
  • 29歳、男性。口蓋側転移の歯を唇側配列後に知覚過敏が発生した。
    症例3-1
    29歳、男性。口蓋側転移の歯を唇側配列後に知覚過敏が発生した。
  • 配列直後の動揺があるような歯でもAPペースト塗布時の痛みはない。
    症例3-2
    配列直後の動揺があるような歯でもAPペースト塗布時の痛みはない。
  • APペースト塗布後、矯正治療中に同様な痛みを訴えることはなかった。
    症例3-3
    APペースト塗布後、矯正治療中に同様な痛みを訴えることはなかった。
  • 40歳、男性。喫煙者。リトラクション(前歯後方牽引)中に21 に知覚過敏が発生した。
    症例4-1
    40歳、男性。喫煙者。リトラクション(前歯後方牽引)中に21に知覚過敏が発生した。
  • リンガルブラケットも同様に細かい箇所にAPペーストを擦り込ませるためにブラシで行う(ミラー像)。
    症例4-2
    リンガルブラケットも同様に細かい箇所にAPペーストを擦り込ませるためにブラシで行う(ミラー像)。
  • APペースト塗布直後に痛みがなくなり、歯に艶が出た(ミラー像)。
    症例4-3
    APペースト塗布直後に痛みがなくなり、歯に艶が出た(ミラー像)。

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