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Clinical Hint

CBCT読影 虎の巻 Part5 被曝線量とその軽減

日本大学歯学部 特任教授 新井嘉則

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■はじめに

歯科用CBCT(以下CBCT)はいうまでもなくX線を用いた非破壊の画像検査の一つで、生体に適応することから、まず行為の正当化をしたうえで、できるだけ少ない被曝線量で、正確な診断をすることが求められる。
最新のCBCT:Veraview X800(モリタ製作所 以下X800)では様々なオプションが搭載され、その中から最適な撮像条件を選択することで、効率良く診断が行え、かつ、被曝線量の低減も可能となっているので、それらの機能を十分理解し、活用していただきたい(図1)。

■最適なFOVの選択

図2に示すように、様々な観察領域(Field of View:FOV)が選択できる。実際にX800ではφ40mm×40mmからφ150mm×140mmまでを1機種でカバーしている。単純に評価すると被曝線量は照射野に比例することから、前者を1とすると後者は16倍もの被曝をすることになる。したがって、診断目的が達成できる範囲で、できるだけ小さいFOVを選択することは、被曝を低減するために重要である。また、FOVを小さくすることで、散乱線などの影響も低減し、画質が向上するメリットもあることから、歯内療法における診断には有効である。
φ150mm×140mmを選択した場合は後述する方法を活用し、被曝線量が過大にならないように実施されるべきである。

■線量の低減とノイズの増加

図3に示すように、撮影時のX線管電流の低減や180度撮影を選択して撮影時間を下げると、それに比例して被曝線量を低減することが可能となる。
しかし、同時に画像のノイズも増加する。このことから、診断の妨げにならない範囲で、これらの条件を適切に選択する必要がある。

■断層厚とノイズ

図4に示すように、専用のViewerソフトi-Dixelで観察時に断層厚を厚くすることで、ノイズを減少することができる。
前述したように管電流を下げて、ノイズが増加してしまった画像に対して、断層厚を厚くすることでそれを補うことが可能な場合がある。i-Dixelではノイズ低減のために断層厚は標準で1mmに設定されているが、さらに厚くすることも可能なことから、この機能を積極的に活用していただきたい。

  • Veraview X800の図
    図1 Veraview X800
    様々な最新の被曝低減機構を備えている。これらの機能を十分に理解し被曝の低減を図りたい
  • 照射野が大きくなると被曝線量は非常に大きくなる。実際には、撮影条件等が最適化され抑制されている。
    図2 照射野が大きくなると被曝線量は非常に大きくなる。実際には、撮影条件等が最適化され抑制されている。
  • 線量を低減するとノイズが増加する。診断の妨げにならない範囲で、線量を低減する
    図3 線量を低減するとノイズが増加する。診断の妨げにならない範囲で、線量を低減する。
  • 線量が少なくノイズが多い画像では断層厚を厚くするとノイズが低減される
    図4 線量が少なくノイズが多い画像では断層厚を厚くするとノイズが低減される。

■Voxel sizeとノイズ

図5に示すように、X800では撮影が終了したあとでも、再々構成を選択することで様々なVoxel sizeを選択することが可能である。一般にVoxel size が大きくなると内部のノイズが均一化され、ノイズが低減される。X800ではFOVの領域が大きくなるに連れて、Voxel sizeも大きくなるように最適な値が予め設定されている(参考:φ40のHRモードは80μm、φ40のSDモードからR100までは125μm、φ150が320μm)。
図6に示すように管電流や撮影時間を低下させてノイズが増加した症例に対して、撮影後の再々構成でVoxel sizeを標準設定の80μmから160μmに変換することで、ノイズを抑制することができる。この場合副作用として解像力が低下する場合があり、留意が必要である。

■小児に対する留意点

小児は図7に示すように放射線に対する感受性が高く、余命も長いことから、CBCTの撮影はより慎重に実施し、撮影する場合は成人の半分以下の被曝線量になるように留意する。特に、180度撮影を選択することで被曝線量が低減されるばかりではなく、照射時間も半分となることから体動によるアーチファクトを防ぐことが可能となる。

■搭載されている低被曝化の機構

歯列弓型のFOVを選択することで、それに相当するφ100mmの円柱上のFOVに比較して20%の線量低減が可能となる(図8)。パノラマからのCT撮影の自動位置づけ機構(パノラマスカウト)は正確な照準を可能とし、位置づけ不良による再撮による被曝線量の増加を予防することができる(図9)。DoseRedaction(DR)を使用することで、照射線量が最適化され被曝線量を40%低減できる。また、Veraviewepocs 3Df およびX800はX線のフィルターに銅が採用され、よりエネルギーの高いX線を利用することで低被曝を実現している。

  • Voxel sizeを大きくするとノイズを低減できる。
    図5 Voxel sizeを大きくするとノイズを低減できる。大FOVの場合は線量低減し線量の増加を抑制する。線量低減によるノイズの増加は、Voxel sizeを大きくすることで抑制する。
  • X800では撮影後にノイズが多い場合では、再々構成で大きなVoxel sizeを選択することで、ノイズを抑制できる。
    図6 X800では撮影後にノイズが多い場合では、再々構成で大きなVoxel sizeを選択することで、ノイズを抑制できる。
  • 小児は特に留意が必要。
    図7 小児は特に留意が必要。
  • 歯列弓型のFOVを採用することで被曝線量が20%低減される。
    図8 歯列弓型のFOVを採用することで被曝線量が20%低減される。
  • パノラマスカウト。正確な照準によって、位置づけ不良による再撮影を予防。
    図9 パノラマスカウト。正確な照準によって、位置づけ不良による再撮影を予防。

■まとめ

まとめを表1に示す。最新のCBCTには様々な機能が搭載されていて、それらを活用することで、低被曝でかつ診断に有効な画像を得るようにする。小児の撮影においてφ150mm×140mmのFOVを選択し、管電流がすでに最小の値が選択されている場合は、管電圧を100kVから90kVに低下させることで被曝線量の低減が可能である。ただし、管電圧を不用意に低下させると画質が急激に悪化することがあるので留意が必要である。
表2にX800を使用して、成人男性を各FOVで撮影した場合の標準的な撮影条件の暫定版を示す。この表を基準に、女性は管電流を8割程度に、小児は半分程度に設定して使用することを推奨する。表中には被曝線量(実効線量)を自然放射線に換算したおよその日数も記載したので参照されたい。
表3にFOVφ40mm×40mmで歯内療法での診断を目的として撮影した場合の性別・年齢・部位別の標準的な撮影条件の暫定版を示す(なお、暫定版は改定される場合がありますのでご留意ください)。

  • 表1 まとめ:被曝線量の低減のために
    表1 まとめ:被曝線量の低減のために
  • 表2 X800:各FOVにおける成人男性(暫定値)
    脱灰進行の抑制効果
    一般に成人女性は線量を2割減弱し、小児は半分にするためにそれぞれ電流を2割・半分に低減する。φ150x140のように電流がすでに最小値で調整できない場合は電圧を90kVに変更する。
  • 表3 X800:各FOV(φ40×40)における性別 部位別(暫定値)
    残存コラーゲンの保護効果
    成人男性でスポーツ選手など線量不足が予想される場合はDRをoffとする。

参考:モリタ1撮影あたりの実効線量の推定値
http://207.38.115.52/dose_jp/professionaldevices.php
RADIATION PROTECTION N° 172, CONEBEAM CT FOR DENTAL AND MAXILLOFACIALRADIOLOGY,Evidence-Based Guidelines,www.sedentexct.eu

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