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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
窩洞の大きさで異なる2級修復のガイダンス −マトリックスシステムの選択方法−
静岡県浜松市田代歯科医院 田代 浩史

■隣接面部における隅角部歯質の残存状況に大きく左右される臼歯部2級修復の精度

臼歯部における隣接面う蝕への修復対応では、コンポジットレジン直接修復が第一選択となる環境が徐々に整備されている。感染象牙質を削除した象牙質表面に対し、高い接着能力で二次う蝕のリスクから象牙質内層を保護する接着システムが確立し、充填用コンポジットレジンも色調・流動性・強度・耐摩耗性など様々な特徴を持った選択肢が用意されている。また、難易度が高い隣接面の充填操作における形態回復のステップに関しても、回復すべき健全歯質の喪失程度に合わせて適切なマトリックスシステムを選択可能な状況となっている。マトリックスシステムに必要な要件を以下に整理する。

マトリックス
隣在歯との離開距離に合わせて、「フラットタイプ」または「3Dタイプ」から形状の選択が可能。「フラットタイプ」は隣接面部の原発性う蝕など、隣在歯との離開距離が小さい場合に使用され、平面的な接触点形態となる。
一方で「3Dタイプ」はメタルインレーからの審美性改善のための再修復など、隣在歯との離開距離が大きい場合に使用され、3次元的な豊隆形態の回復が可能となる。
また、「メタルマトリックス」または「プラスチックマトリックス」から素材の選択も可能である。「メタルマトリックス」は厚さ約30μmと非常に薄く強度がある素材だが光透過性はない。
一方で「プラスチックマトリックス」は光透過性があり隣接面部の重合硬化に有利だが厚さ約50μmとやや厚く強度は低い。

リテーナー
隣在歯との離開距離に合わせて、「トッフルマイヤータイプ」または「リングタイプ」から形状の選択が可能。「トッフルマイヤータイプ」は「フラットタイプ」のメタルマトリックスと併用され、隣接面部の原発性う蝕など、隣在歯との離開距離が小さい場合に効果的に使用される。リテーナー単体での歯間離開効果はなく、くさびとの併用で隣接面接触点の適正回復を図る。
一方で「リングタイプ」は「3Dタイプ」のマトリックスと併用され、残存歯質量に応じて様々な形状より選択して、マトリックスを適切な位置に固定して歯間離開効果を発揮する。

ウェッジ
隣在歯との間の鼓形空隙の形状に合わせて、「プラスチックタイプ」または「ウッドタイプ」から形状・素材の選択が可能。
「プラスチックタイプ」には様々な形状の補助的形態が付与され、挿入部位の微細構造に合わせたマトリックス圧接効果と適度な歯間離開効果が得られる。
一方で「ウッドタイプ」は比較的シンプルな形状でサイズバリエーションが多く、吸水膨張による挿入部位でのマトリックス圧接効果が期待できる。必要に応じてナイフなどで形態を調整し、カスタムメイドのウェッジとして使用可能である。
本稿では、臼歯部2級修復における隣接面部健全歯質の喪失程度に合わせたマトリックスシステムの選択基準を示し(図3)、その中からギャリソンデンタル社のコンポジタイト3Dシステムを用いた3つのケースについて、実際の臨床応用症例を提示して「マトリックス」・「リテーナー」・「ウェッジ」の適正使用に関する修復操作のポイントを整理する。

  • コンポジタイト3DリテーナーフュージョンSの図
    図1 コンポジタイト3DリテーナーフュージョンS
  • コンポジタイト3DリテーナーフュージョンLの図
    図2 コンポジタイト3DリテーナーフュージョンL
  • 隅角部歯質の残存状況による隔壁装置の選択
    図3 隅角部歯質の残存状況による隔壁装置の選択

■ケース① 隣接面喪失角が60°程度の場合:コンポジタイト3D リテーナー(スタンダード)

小規模メタルインレー修復の審美障害に対し、コンポジットレジンによるメタルフリー再修復を行う場合、隣接面部歯質を可能な限り温存してメタルインレーを除去することが重要である。
頰舌側隅角部歯質をある程度温存して窩洞形成を完了した場合(図4)、隣接面喪失角は60°程度に規定され(図5)、コンポジタイト3Dリテーナー(スタンダード)を活用した3次元的な隣接面再構築が可能となる(図6)。
使用する3Dメタルマトリックスの豊隆形態を活用して、歯頸部から接触点、さらに辺縁隆線部までの範囲を、残存歯質と移行的に再現する。リングタイプリテーナー(スタンダード)の脚部形状は直径約1mmのメタル円柱状で、隣接面喪失角60°程度の状況で設置難易度が低く、歯間離開効果が有効に機能するため、修復操作完了後の接触点は緊密に再現される。

  • 頰舌側隅角部歯質をある程度温存して窩洞形成を完了
    図1 頰舌側隅角部歯質をある程度温存して窩洞形成を完了
  • 窩洞形成後の隣接面喪失角が60°程度の場合
    図2 窩洞形成後の隣接面喪失角が60° 程度の場合
  • コンポジタイト3Dリテーナー(スタンダード)の設置が適応
    図3 コンポジタイト3Dリテーナー(スタンダード)の設置が適応
  • 術前。メタルインレーの審美障害が主訴
    ケース1−1 術前。メタルインレーの審美障害が主訴。
  • 窩洞形成後、遠心隣接面部にコンポジタイト3D リテーナー(スタンダード)を設置
    ケース1−2 窩洞形成後、遠心隣接面部にコンポジタイト3D リテーナー(スタンダード)を設置。
  • 遠心隣接面の狭小部にクリアフィルマジェスティESフローHigh A2(クラレノリタケデンタル)を充填
    ケース1−3 遠心隣接面の狭小部にクリアフィルマジェスティESフローHigh A2(クラレノリタケデンタル)を充填。
  • 近心隣接面部にコンポジタイト3Dシステムを移動して設置
    ケース1−4 近心隣接面部にコンポジタイト3Dシステムを移動して設置。
  • クリアフィルマジェスティES-2 プレミアム(A2E)(クラレノリタケデンタル)にて充填操作を完了
    ケース1−5 クリアフィルマジェスティES-2 プレミアム(A2E)(クラレノリタケデンタル)にて充填操作を完了。
  • 術後
    ケース1−6 術後。

■ケース② 隣接面喪失角が80°程度の場合:コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)

大規模う蝕による健全歯質削除・根管治療終了後、コンポジットレジンによるメタルフリー再修復を行う場合、隣接面部歯質を可能な限り温存して窩洞形成することが重要である。
頰舌側隅角部歯質を僅かに温存して窩洞形成を完了した場合(図7)、隣接面喪失角は80°程度に規定され(図8)、コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS:図1)を活用した3次元的な隣接面再構築が可能となる(図9)。
使用する3Dメタルマトリックスの豊隆形態を活用して、歯頸部から接触点、さらに辺縁隆線部までの範囲を、残存歯質と移行的に再現する。リングタイプリテーナー(フュージョンS)の脚部形状は幅約5mmのシリコーン製で、隣接面喪失角80°程度の状況でメタルマトリックスの把持に優れ、歯間離開効果が極めて有効に機能するため、修復操作完了後の接触点は緊密に再現される。

  • 頰舌側隅角部歯質を僅かに温存して窩洞形成を完了
    図7 頰舌側隅角部歯質を僅かに温存して窩洞形成を完了
  • 窩洞形成後の隣接面喪失角が80°程度の場
    図8 窩洞形成後の隣接面喪失角が80° 程度の場
  • コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)の設置が適応
    図9 コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)の設置が適応
  • 術前。根管治療終了後、残存歯質量が豊富なため、コンポジットレジン直接修復にて歯冠形態回復を計画
    ケース2-1 術前。根管治療終了後、残存歯質量が豊富なため、コンポジットレジン直接修復にて歯冠形態回復を計画。
  • コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)の設置
    ケース2-2 コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)の設置。
  • 近心隣接面部の緊密な接触点の回復を目指す
    ケース2-3 近心隣接面部の緊密な接触点の回復を目指す。
  • 近心隣接面部の再構築を完了
    ケース2-4 近心隣接面部の再構築を完了。
  • 咬合面部のエナメルシェードレジンの充填操作を完了
    ケース2-5 咬合面部のエナメルシェードレジンの充填操作を完了。
  • 術後
    ケース2-6 術後。

■ケース③ 隣接面喪失角が100°程度の場合:コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL)

大規模メタルインレー修復の審美障害に対し、コンポジットレジンによるメタルフリー再修復を行う場合、隣接面部歯質を可能な限り温存してメタルインレーを除去することが重要である。頰舌側隅角部歯質を止むを得ず削除して窩洞形成を完了した場合(図10)、隣接面喪失角は100°程度に規定され(図11)、コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL:図2)を活用した3次元的な隣接面再構築が可能となる(図12)。使用する3Dメタルマトリックスの豊隆形態を活用して、歯頸部から接触点、さらに辺縁隆線部までの範囲を、残存歯質と移行的に再現する。
リングタイプリテーナー(フュージョンL)の脚部形状は幅約10mmのシリコーン製で、隣接面喪失角100°程度の状況でメタルマトリックスの把持・賦形性に優れる。歯間離開効果が有効に機能するため、修復操作完了後の接触点は緊密に再現される。
リングタイプリテーナー(スタンダード)では細い脚部が隅角部を越えて歯間部隣接面に深く侵入して、メタルマトリックスの変形を起こすため、幅の広いシリコーン製脚部の特徴ある形態が有効活用される臨床状況となる。

  • 頰舌側隅角部歯質を止むを得ず削除して窩洞形成を完了
    図10 頰舌側隅角部歯質を止むを得ず削除して窩洞形成を完了
  • 窩洞形成後の隣接面喪失角が100°程度の場合
    図11 窩洞形成後の隣接面喪失角が100°程度の場合
  • コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL)の設置が適応
    図12 コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL)の設置が適応
  • 術前。メタルインレーの審美障害が主訴
    ケース3-1 術前。メタルインレーの審美障害が主訴。
  • 窩洞形成後、近心隣接面部にコンポジタイト3Dリテーナー(スタンダード)を設置するも、形態不適合でメタルマトリックスが変形
    ケース3-2 窩洞形成後、近心隣接面部にコンポジタイト3Dリテーナー(スタンダード)を設置するも、形態不適合でメタルマトリックスが変形。
  • コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)を設置するも、形態不適合で変更に
    ケース3-3 コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンS)を設置するも、形態不適合で変更に。
  • コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL)を設置
    ケース3-4 コンポジタイト3Dリテーナー(フュージョンL)を設置。
  • 咬合面部のエナメルシェードレジンの充填操作
    ケース3-5 咬合面部のエナメルシェードレジンの充填操作。
  • 術後
    ケース3−6 術後。

デンタルマガジン 164号 SPRING