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Field Report

クオリティの高いダイレクトボンディングを実現するコンポジットレジンとそれをアシストする充填器

神戸市中央区 高田歯科 院長 髙田 光彦

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2005年に開業して以来、一人ひとりの悩みや要望に応じたオーダーメイド治療を行っています。なかでも保存修復治療では、開業当時から審美性の要求されるダイレクトボンディングに取り組んできました。
この10年間、国内外のあらゆるメーカーのコンポジットレジンに触れてきましたが、研磨のしやすさ、研磨後の光沢感など、全体的にクオリティが上がってきていると感じます。
私は臼歯部に「クリアフィルマジェスティESフロー」(クラレノリタケデンタル)をよく使用しますが、「High」「Low」「Super Low」の3タイプのうち、特に「High」と「Super Low」は私の臨床上欠かせない存在です。
当院では歯間部隣接面を充填する場合、一般的な既製マトリックスではなく、窩洞の形成後にシリコン印象を採り、カスタマイズドキャストマトリックスを使ったオリジナルの補綴治療を行っています。
症例写真のように、シリンジの先端を窩洞の底に当てて流動性が良いHighフローを使って歯頸部から辺縁隆線までの隣接面を築盛します。その後、Super Lowフローで窩底部の凹凸をフラットに修正します。隣接に歯がある場合には、セパレーティングモジュールを入れて歯間離開すれば応用が可能です。この手法は一見大げさなようですが、窩洞形成やシリコン印象を採る基本的なスキルがあれば、少しの訓練で実践できる科学的で再現性の高い方法だと考えています。
さらに、ペースト状のレジンである「クリアフィルマジェスティES-2」(クラレノリタケデンタル)で咬合面の隆線を築盛し、解剖学的形態を回復します。ES-2はVITA社のクラシカルシェードに適合し、色合わせが容易であることと、咬合面に適用した際の耐摩耗性が高く、光沢がよく出るので使いやすいと感じています。加えて、使用するインスツルメントに左右されず、素材の器具離れがよく、丸みのある形が作りやすい点も気に入っています。
レジン充填は頻繁に行う治療ですから、充填器選びにもこだわり、“持ちやすい”“滑りにくい”“持ち替えやすい”の3つをポイントにしています。その点で「CRマスター」(オソン社)は、柄が短いので顕微鏡下でも持ち替えやすく、手繰り寄せなどの無駄な動きがないのでストレスがかかりません。3タイプ6形態ある中でも、私の臨床において出番が多いのは「#M3」の槍型部分です。珍しいデザインですが用途は広く、歯頸部に残ったバリをとる以外に、先端部分で臼歯の咬合面を形成したり、ステイン材を溝に流し込む時に使用しています。また、「#M1」は臼歯にレジンを詰めて押し固めるのに、「#M2」は歯軸に沿って垂直にアプローチする際に便利です。今後さらにバリエーションが広がっていくことを期待しています。
品質の高い材料と器具を選択することは当然ですが、ご存知の通りダイレクトボンディングの成功には術前の歯面清掃や防湿といった基本的な作業が欠かせません。
ダイレクトボンディングが国内に普及して10年以上になりますが、広く浸透するにはもう少し時間が必要かもしれません。まずは、私たちが患者さんにダイレクトボンディングのメリットをどう伝え、理解していただくかが大切だと思います。
当院では“治す技術を提供する”ことを理念に、テクニック、チェアタイム、クオリティの違いを明確にし、自費と保険の治療の違いを患者さんに丁寧に説明するよう心がけています。さらに、顕微鏡下で治療を行う場合は、術前・術中・術後すべてのプロセスをビデオとカメラで記録し、患者さんの目で確認いただいて信頼を得られるよう努めています。2016年からは歯科衛生士も顕微鏡下で治療を行っていますが、今後、歯科医師と歯科衛生士がより多くの情報を共有し、お互いに切磋琢磨しあうことで、技術とサービスのクオリティを高めていきたいと考えています。

  • インレー下に二次カリエスを認めた。インレーを除去し、内部の軟化象牙質をう蝕検知液を用いて染め出しながらエキスカベーターCDR(YDM)にて除去。
    図1 6 インレー下に二次カリエスを認めた。インレーを除去し、内部の軟化象牙質をう蝕検知液を用いて染め出しながらエキスカベーターCDR(YDM)にて除去。
  • 窩洞形成後にティースメイトディセンシタイザー(クラレノリタケデンタル)を用いて象牙質の保護を行う(ミラー像)。
    図2 窩洞形成後にティースメイトディセンシタイザー(クラレノリタケデンタル)を用いて象牙質の保護を行う(ミラー像)。
  • ボンディング材を塗布し、クリアフィルマジェスティESフロー(Highフロー)を用いて象牙質の露出部位をコーティングしてシリコン印象を採得する(ミラー像)。
    図3 ボンディング材を塗布し、クリアフィルマジェスティESフロー(Highフロー)を用いて象牙質の露出部位をコーティングしてシリコン印象を採得する(ミラー像)。
  • 石膏模型上でカスタマイズドキャストマトリックスを作製。
    図4 石膏模型上でカスタマイズドキャストマトリックスを作製。
  • 2度目の来院時に患歯の治療を再開する。前回象牙質の表面に充填してあるレジンの表層を削合し未反応官能基とフィラーが露出する状態を作る。
    図5 2度目の来院時に患歯の治療を再開する。前回象牙質の表面に充填してあるレジンの表層を削合し未反応官能基とフィラーが露出する状態を作る。
  • 露出している歯面全体をブラシで清掃する。表層にあるペリクルを除去することで接着力を上げることにつなげる。
    図6 露出している歯面全体をブラシで清掃する。表層にあるペリクルを除去することで接着力を上げることにつなげる。
  • クリアフィルユニバーサルボンドクイック(クラレノリタケデンタル)をレジンと歯質の全面に塗布。
    図7 クリアフィルユニバーサルボンドクイック(クラレノリタケデンタル)をレジンと歯質の全面に塗布。
  • 事前に作製しておいたキャストマトリックスを適合させ、近心隣接面部にESフロー(Highフロー)を流し込んで隣接面を築盛する(ミラー像)。
    図8 事前に作製しておいたキャストマトリックスを適合させ、近心隣接面部にESフロー(Highフロー)を流し込んで隣接面を築盛する(ミラー像)。
  • キャストマトリックスを用いることで隣接面の歯頸部、コンタクトポイント、辺縁隆線に到るまでのエリアを一塊として、解剖学的な形態を考慮して回復できる。
    図9 キャストマトリックスを用いることで隣接面の歯頸部、コンタクトポイント、辺縁隆線に到るまでのエリアを一塊として、解剖学的な形態を考慮して回復できる。
  • CRマスターとクリアフィルマジェスティES-2を用いて咬合面のレジン充填を行う。筆者は隆線を一つずつ築盛して、間に裂溝ができるように充填する。(写真は#M2を使用)
    図10 CRマスターとクリアフィルマジェスティES-2を用いて咬合面のレジン充填を行う。筆者は隆線を一つずつ築盛して、間に裂溝ができるように充填する。(写真は#M2を使用)
  • CRマスターは3種類6形態あり、それぞれ繊細な作りになっているため、咬合面の形態付与に適している。(写真は#M3を使用)
    図11 CRマスターは3種類6形態あり、それぞれ繊細な作りになっているため、咬合面の形態付与に適している。(写真は#M3を使用)
  • 術後。クリアフィルマジェスティES-2は賦形しやすく短時間で審美的なレジン充填が行える。
    図12 術後。クリアフィルマジェスティES-2は賦形しやすく短時間で審美的なレジン充填が行える。

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