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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
中規模な垂直的骨欠損への骨増生術におけるTi ハニカムメンブレンの有用性
医療法人社団 新樹会 豊嶋歯科医院 副院長 豊嶋 健史

■目 次

■はじめに

Tiハニカムメンブレンは孔径20μmの穿通孔を有しており、栄養透過性を確保しながらも軟組織侵入を防ぐ。また、穿通孔はハニカム状に配置されているため、メンブレン自体の強度が高く変型および破断しにくい特性を持つ。さらに、メンブレンの厚みは20μmで賦形性が高く、骨欠損部位を被覆しても創部の閉鎖の障害となることが少ない。
今回は、中規模な垂直的骨欠損に対して、インプラント埋入前の骨増生術にこのTiハニカムメンブレンを使用した症例を供覧する。

■症例

患者は62歳の男性。以前に右側下顎第一大臼歯を分割し第二小臼歯と連結していたが、歯根破折により抜歯適応となった(図1)。
抜歯後の第一大臼歯および第二大臼歯部の欠損に対して、患者がインプラント治療を希望した。
2017年9月、局麻下に連結冠を切断後に第一大臼歯を抜歯した。肉芽の掻爬のほかには、リッジプリザベーションなどの処置は行わなかった。
2017年10月に、veraviewepocs 3Dfを用いて埋入予定部位のCT撮影を行った(図2-12-2)。
抜歯窩においては、第一大臼歯近心根相当部で頰舌的に歯槽骨が欠損していた。また、遠心根相当部で舌側の歯槽骨は保存されていたが、頰側は欠損していた。歯槽骨頂を基準とすると少なくとも6〜7 mm程度の垂直的骨欠損を2ヵ所有していた。
また、歯槽骨幅は十分であったが、直径4.8 mmのインプラントの埋入を計画しても、インプラント体の歯冠側の大部分が残存骨から露出してしまう状況だったために段階法を選択した1、2)
なお、第二小臼歯の遠心には歯槽骨頂が保存されており、骨増生術を行うのに好条件であった。
十分な粘膜治癒を確認できた2017年11月に、局麻下に骨増生術を行った(図3)。
第一大臼歯および第二大臼歯部に歯槽頂切開、第二小臼歯の遠心に縦切開を加え粘膜骨膜弁を剥離翻転した。
抜歯窩に残存した軟組織を除去した後、抜歯前のデンタルX線写真から抜歯窩周囲の骨硬化を予想できたため、ラウンドバーなどを用いて可能な限り抜歯窩内の骨を穿孔し血流を得た(図43)
次に、Tiハニカムメンブレン(サイズM1)を開封し、まず、滅菌包装紙をトリミングして増生部位の大きさに適合した。その包装紙を参考にTiハニカムメンブレンをトリミングしたが、その際にはできるだけフレームを切断しないように注意した。
このフレームは、適度な強度を持ち、加えて手指で賦形できる程度の柔軟性も備えている。その結果、目標とする歯槽骨の外形に比較的容易に賦形することができた。
賦形後に多少、Tiハニカムメンブレンが後戻りするのでオーバーベンディングした。この時点で、新しい15番メスで頰側の粘膜骨膜弁に減張切開を加え伸展させ、骨増生後に十分な一次閉鎖を達成できることを確認した。 減張切開を行うタイミングに関しては議論がある。筆者は、減張切開後に出血があるので、その止血確認と必要ならば止血処置を行うために、縫合直前ではなくこの時点で減張切開を行うことにしている。
周囲からボーンスクレイパーを用いて自家骨粉砕骨を採取し、DBBMと混和した。混和の割合は5:5を目指すが、実際の臨床では、自家骨採取部位による制約や処置時間の制限により達成できないことも多い。
本症例では自家骨とDBBMの割合は2:8程度であった(図5)。
目標とする増生部位に自家骨粉砕骨とDBBMを骨補填材として充填した後、あらかじめ賦形したTiハニカムメンブレンを設置した。
この際に、Tiハニカムメンブレンが増生した歯槽骨上で不安定だと増生効率に悪影響を与えるので、可能な限り安定を目指す。
本症例では遠心の歯槽骨に接触するTiハニカムメンブレンの再賦形と骨補填材の追加を行い、Tiハニカムメンブレンを安定させた(図6)。
スクリューやピンを使用せず、縫合糸のみで固定を行った。ホールディングスーチャーとして、頰側および舌側の粘膜骨膜弁の根尖側にゴアテックス縫合糸を通し、テンションのかかりにくい部位にはソフトレッチを使用して一次閉鎖を行った(図7)。
特に、ゴアテックス縫合糸でTiハニカムメンブレンを増生部位に十分に圧接するイメージで縫合した。
Tiハニカムメンブレンは適度な強度を有するため、筆者は、この縫合糸によって多少変形しメンブレンと骨補填材の間のスペースがより小さくなり、しかしながら、必要以上には変形せず望ましい形態を留めた結果、さらに安定を得られると考えている。
本症例では欠損部にメンブレンを安定させる部位が複数あったためスクリューやピンを使用しなかったが、歯槽骨から外側性に骨増生を行う場合には、それらを用いる方が安定した予後が得られると考えている(図8-18-4)。
骨増生術直後のデンタルX線写真では、目標とした骨増生と安定して設置されたTiハニカムメンブレンのフレームが確認できた(図9)。
術後、問題なく経過し2018年1月にCTにより順調な骨新生を確認できたため(図10-110-2)、骨増生術から3ヵ月経過した2018年2月に、局麻下にTiハニカムメンブレンの除去とインプラント埋入術を行った。
第一大臼歯および第二大臼歯部に歯槽頂切開、第二小臼歯および第三大臼歯に歯頸部切開を加え粘膜骨膜弁を剥離翻転すると、軟組織の迷入が一切認められないTiハニカムメンブレンの表面を露出できた(図11)。
露出面よりもさらに頰側および舌側の骨膜下にTiハニカムメンブレンを設置していたが、これ以上の粘膜骨膜弁の剥離翻転は不要だった。ピンセットで容易にTiハニカムメンブレンを除去でき、裏面にも軟組織の付着はなかった(図12)。
骨増生術から3ヵ月経過した時点であったが、十分な新生骨を確認できたため、予定通りに、第一大臼歯および第二大臼歯部に直径4.8 mmのインプラントを埋入した(図13)。
十分な初期固定4〜6)を獲得できたため1回法にして終了した(図14)。
術後、問題なく経過し順調なインプラント周囲の軟組織治癒を認めたため、2018年3月にジルコニアセラミックによる最終上部構造(技工:船越玲央氏:O-bic)を装着した(図15)。

  • 歯根破折により抜歯適応となった右側下顎第一大臼歯。
    図1 歯根破折により抜歯適応となった右側下顎第一大臼歯。
  • veraviewepocs 3Df によるCT画像。第一大臼歯近心根相当部で頰舌的に歯槽骨が欠損していた。
    図2-1 veraviewepocs 3Df によるCT画像。第一大臼歯近心根相当部で頰舌的に歯槽骨が欠損していた。
  • 遠心根相当部で舌側の歯槽骨は保存されていたが、頰側は欠損していた。
    図2-2 遠心根相当部で舌側の歯槽骨は保存されていたが、頰側は欠損していた。
  • 局麻後の右側下顎の欠損部。
    図3 局麻後の右側下顎の欠損部。
  • 抜歯窩に残存した軟組織を除去した後、ラウンドバーなどを用いて抜歯窩内の骨を穿孔し血流を得た。
    図4 抜歯窩に残存した軟組織を除去した後、ラウンドバーなどを用いて抜歯窩内の骨を穿孔し血流を得た。
  • 骨欠損部位に自家骨粉砕骨とDBBMを充填した。
    図5 骨欠損部位に自家骨粉砕骨とDBBMを充填した。
  • 骨増生後に予め賦形していたTiハニカムメンブレンを設置し、遠心の再賦形と骨補填材の追加を行いTiハニカムメンブレンの安定を得た。
    図6 骨増生後に予め賦形していたTiハニカムメンブレンを設置し、遠心の再賦形と骨補填材の追加を行いTiハニカムメンブレンの安定を得た。
  • ゴアテックス縫合糸でTiハニカムメンブレンを増生部位に十分に圧接するイメージで一次閉鎖した。
    図7 ゴアテックス縫合糸でTiハニカムメンブレンを増生部位に十分に圧接するイメージで一次閉鎖した。
  • (別症例)右側上顎第一小臼歯部のインプラント周囲炎。軟組織を除去すると頰側のスレッドが露出した。
    図8-1 (別症例)右側上顎第一小臼歯部のインプラント周囲炎。軟組織を除去すると頰側のスレッドが露出した。
  • (別症例)Tiハニカムメンブレンを口蓋側に固定し、周囲からの自家骨粉砕骨を露出部に充填。
    図8-2 (別症例)Tiハニカムメンブレンを口蓋側に固定し、周囲からの自家骨粉砕骨を露出部に充填。
  • (別症例)その外側にDBBMを充填。
    図8-3 (別症例)その外側にDBBMを充填。
  • (別症例)(別症例)Tiハニカムメンブレンで被覆し2本のスクリューで固定した。
    図8-4 (別症例)(別症例)Tiハニカムメンブレンで被覆し2本のスクリューで固定した。
  • デンタルX写真により、目標とした骨増生と安定して設置されたTiハニカムメンブレンのフレームが確認できた。
    図9 デンタルX写真により、目標とした骨増生と安定して設置されたTiハニカムメンブレンのフレームが確認できた。
  • veraviewepocs 3Df によるCT画像。第一大臼歯相当部では垂直的骨欠損部の骨新生が認められた。
    図10-1 veraviewepocs 3Df によるCT画像。第一大臼歯相当部では垂直的骨欠損部の骨新生が認められた。
  • 第二大臼歯相当部では安定した骨新生が認められた。
    図10-2 第二大臼歯相当部では安定した骨新生が認められた。
  • 粘膜骨膜弁を剥離翻転すると、軟組織の迷入が一切認められないTiハニカムメンブレンの表面を露出できた。
    図11 粘膜骨膜弁を剥離翻転すると、軟組織の迷入が一切認められないTiハニカムメンブレンの表面を露出できた。
  • ピンセットで容易にTiハニカムメンブレンを除去でき、裏面にも軟組織の付着はなかった。骨増生術から3ヵ月経過した時点であったが、十分な新生骨が獲得できた。
    図12 ピンセットで容易にTiハニカムメンブレンを除去でき、裏面にも軟組織の付着はなかった。骨増生術から3ヵ月経過した時点であったが、十分な新生骨が獲得できた。
  • 第一大臼歯および第二大臼歯部に直径4.8mmのインプラントを埋入した。
    図13 第一大臼歯および第二大臼歯部に直径4.8mmのインプラントを埋入した。
  • 十分な初期固定を獲得できたため1回法にして終了した。
    図14 十分な初期固定を獲得できたため1回法にして終了した。
  • ジルコニアセラミックによる最終上部構造を装着した。
    図15 ジルコニアセラミックによる最終上部構造を装着した。

■考察

本症例では骨増生術から3ヵ月経過した時点でインプラント埋入を行った。この期間でインプラント埋入時に十分な初期固定を得られるほど、DBBMと自家骨粉砕骨による新生骨が成熟した印象だった。
これは、① Tiハニカムメンブレンが栄養透過性を有していること、② 穿通孔がハニカム状に配置されているため十分な強度を有していること、③ 菲薄なため賦形性が高く、それゆえ創部の閉鎖が容易なこと、により、増生部位が舌や頰粘膜の圧力に晒されることなく、効率的な骨新生が行われたからかも知れない。また、増生部位の形態や大きさに
もよるが、既存骨および新生骨により埋入時の十分な初期固定が獲得できるなら、インプラントの骨結合達成に要する時間と増生部位の新生骨の成熟に要する時間を重ねて良いと考えている。
最後に、垂直的骨欠損の範囲が大きく大規模な骨増生術が必要な症例では、骨補填材とメンブレンのみではスペースメイキングと維持が不可能なため、支柱ピンや高強度のチタンメッシュが必要である。その一方で、インプラント埋入と同時に行う小規模な骨増生術には、吸収性メンブレンで対応可能な場合も多い。それらの間に位置する、本症例のような中規模な垂直的骨欠損において、骨欠損部上で安定させることが可能であれば、手技や材料がスリム化できるために、Tiハニカムメンブレンを選択することは非常に有用である。

参考文献
  • 1)20 years of Guided Bone Regeneration in Implant Dentistry. Second edition.Daniel Buser. Quintessence.
  • 2)ITI Treatment Guide volume 7. Ridge Augmentation Procedures in Implant Patients.A Staged Approach. Quintessence.
  • 3)Nelson S, Thomas G. Bacterial persistence in dentoalveolar bone following extraction:a microbiological study and implications for dental implant treatment.Clin Implant Dent Relat Res.2010 ;12 :306-14.
  • 4)Ueno D, Nakamura K, Kojima K,Toyoshima T, Tanaka H, Ueda K, Koyano K, Kodama T. A stepwise under-prepared osteotomy technique improves primary stability in shallow-placed implants:a preliminary study for simultaneous vertical ridge augmentation. Odontology.2018;106:187-193.
  • 5)Toyoshima T, Tanaka H, Ayukawa Y,Howashi M, Masuzaki T, Kiyosue T, Koyano K, Nakamura S. Primary Stability of a Hybrid Implant Compared with Tapered and Cylindrical Implants in an Ex Vivo Model. Clin Implant Dent Relat Res.2015;17:950-6.
  • 6)Toyoshima T, Wagner W, Klein MO,Stender E, Wieland M, Al-Nawas B. Primary stability of a hybrid self-tapping implant compared to a cylindrical non-selftapping implant with respect to drilling protocols in an ex vivo model. Clin Implant Dent Relat Res.2011;13:71-8.

デンタルマガジン 166号 AUTUMN