キーワード:多様な焼成方法とカラーバリエーション/色調再現の可能性
近年の歯科治療におけるセラミックス材料は目覚ましい発展を遂げている。中でもクラウン・ブリッジ、インプラント補綴に関してCAD/CAMによる補綴製作の普及、その材料の性質・操作性・審美性の精度は目覚ましく進化してきた。
クラレノリタケデンタルによるジルコニア材料は、築盛法に使用されるHTシリーズ、新たにラインナップされたLTシリーズや、高透光性マルチレイヤード(ML)、UTML /STMLは4層構造からなる色調の異なるジルコニアを積層したフルジルコニアに適したシリーズまで臨床に幅広く適応している(図1~3)。
さらに、2016年10月に発売された「セラビアンZR FC ペーストステイン」(図4)は、多様な焼成が可能であり、フルジルコニアクラウンやPFZ(ジルコニアコーピングに専用のポーセレンを築盛したクラウン)にも対応できる。そのことから、PFZの修正用ステイン材としても使用している(図5、6)。
本稿では、カタナジルコニアを使用した日常臨床におけるセラビアンZRFCペーストステインの有効な使用方法について述べたい。
「セラビアンZR FC ペーストステイン」はジルコニア表層に使用できるペーストタイプのステイン材(全27種類)であり、多彩な表現が可能である。また、UTML/STMLとの組み合わせにより効率的な作業ができると考える。
セラビアンZRエクスターナルステインのカラーバリエーションを備えていることと切縁領域の擬似的透明感の表現を可能にする寒色系にライトグレー・ダークグレー・グレイッシュブルー・ブルーの4色に細分化され豊富であり、透明色にクリアグレーズ・グレーズの2色と明度コントロールに長けたバリュー、蛍光性の付与にFluoroが追加された。そのことで歯冠全体に透明感のある艶出しが可能になり、若干の明度を上げることが容易になった(図7、8)。
筆者は表現したい色調のステインとクリアグレーズを配合し使用している。それにより一度の焼成で一定の艶出しを可能にすることと、色の濃淡をコントロールし易くするためである。比率は色ステイン:クリアグレーズが1:1あるいは1:2で行い、必要であれば細かく変更している。色の濃淡をステインリキッドによってコントロールすることも可能であるが、色ムラ・焼成ムラに繋がる可能性があるため、注意が必要であると考える。
以下にフルジルコニアクラウンSTML A2を使用したセラビアンZR FCペーストステインの配合割合の異なるサンプルを紹介する(図9~19)。
近心はグレーズのみ、遠心は色調ステインとクリアグレーズを配合したものを塗布し焼成しており、その配合比率を変えた3パターンを試作した。
図11~13の1:1では、近遠心ではっきりとした差が確認できる。
図14~16の1:2では、淡くステインが効いており、臨床では微調整の工程で使用できると考える。図17~19の1:5は淡すぎる結果となる。
筆者は臨床で使用する際、1:1で大まかな色調を構築し、1:2を微調整の際に使用し、色調再現のコントロールに役立てている。
Case1にフルジルコニアクラウンSTML/A2、セラビアンZR FCペーストステインを使用した臨床ケースを紹介する(図20~25)。
UTML/STMLシリーズについてはその最低保証厚さを0.8mmと規定している。
上顎右側第二小臼歯、第一大臼歯の製作のシェード画から、A2よりも目標歯は若干明るく見えるが、1ランク明るいSTML/A1を使用すると臼歯部では明るく見えやすくなるため、STML/A2を使用した。支台歯色調・形成量・クラウンの厚みによって色調は左右されるため、注意が必要と考える。
Case2では、PFZの色調修正として使用した症例である。焼成後はパールサーフェスF・Zなどで艶調整し完成とした(図26~28)。
セラビアンZR FCペーストステイン・カタナジルコニアの豊富なラインナップにより、色調再現の可能性が広がっていると感じるが、その選択・特徴・特性への深い知識・探究心が必要だと考える。
最後に、症例をご提供いただきました今枝常晃先生(いまえだ歯科:愛知県一宮市)に感謝いたします。