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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
「Veraview X800」を使った副鼻腔の読影法と経歯槽頂上顎洞挙上手術における活用法
石川県七尾市 室木口腔外科医院 口腔インプラントセンター 室木 俊美/村井 正寛

キーワード:CBCTを用いた埋入時のテクニカルエラーや術後のトラブル回避

■はじめに

インプラント治療において術前診査、治療計画、サージカルガイド作製および術後の状態確認には、CBCTを用いた歯槽骨・顎骨の3次元(3D)画像情報が必要不可欠となる。
また、当院は経歯槽頂上顎洞挙上手術(以下 本法)症例が多いため、術前の治療計画においてCBCT:「VeraviewX800」(モリタ)を使用し、上顎洞の形態と拡大方向、洞内の病変の有無や、上顎洞底部骨形態、骨質、骨幅、垂直的残存骨距離などを3次元的に把握することが大変重要となる。
今回、本法症例の術前、術後においてVeraview X800をどのように活用したかを実際の症例とともに供覧する。

■「Veraview X800」を使用した上顎洞撮影法

当院では本法を併用するインプラント症例に対して、左右の上顎洞を比較するため両側の上顎洞を広範囲で撮影する際は、FOV:150mm×75mmサイズ(図1)で撮影を行う。しかしこのサイズだと広範囲であるため解像度が粗くなるので、患側の上顎洞を鮮明な画像で確認したい時は高解像度であるFOV:100mm×80mmサイズ(図2)、もしくは80mm×80mmサイズで設定し撮影を行っている。
左側慢性上顎洞炎を認める症例に対し、上顎洞をCBCTで撮影。洞内に膿汁が充満しており、自然孔が閉塞していることを認める(図3)。
耳鼻咽喉科にて内視鏡下副鼻腔手術施行後のCT画像を見ると、自然孔が中鼻道に大きく開放されたことが分かる。つまり、上顎洞に炎症があるか否かを術前に診断するためには自然孔を含む、眼窩底~眼球の半分が撮影範囲に入れなくてはいけないのである(図4)

  • 広範囲で撮影する際はFOV:150mm×75mmサイズを使用
    図1 広範囲で撮影する際はFOV:150mm×75mmサイズを使用。
  • 鮮明な画像が必要な場合はFOV:100mm×80mmまたは80mm×80mmサイズを使用する
    図2 鮮明な画像が必要な場合はFOV:100mm×80mmまたは80mm×80mmサイズを使用する。
  • 上顎洞をCBCTで撮影。洞内に膿汁が充満しており、自然孔が閉塞していることがわかる。筋骨洞炎も併発していることから、好酸球性副鼻腔炎を疑った
    図3 上顎洞をCBCTで撮影。洞内に膿汁が充満しており、自然孔が閉塞していることがわかる。筋骨洞炎も併発していることから、好酸球性副鼻腔炎を疑った。
  • 自然孔~筋骨洞を開放した図3の術後CBCT。上顎洞の炎症の有無を診断するためには、眼窩底~眼球の半分まで撮影する必要がある
    図4 自然孔~筋骨洞を開放した図3の術後CBCT。上顎洞の炎症の有無を診断するためには、眼窩底~眼球の半分まで撮影する必要がある。

■症例供覧

症例1『14定型埋入、内視鏡下15・16経歯槽頂上顎洞挙上手術』
患者:68歳女性
初診:平成30年10月18日
主訴:17の歯肉腫脹および疼痛、14~16MTに対するインプラント治療 家族歴・既往歴:特記事項なし
現病歴:17の疼痛、歯肉腫脹および、14・15義歯紛失にて義歯新製を希望にて来院。
口腔内所見:14~16MT、17の歯肉腫脹、動揺度2度
X線所見:17根周囲透過像、14~17部の垂直的残存骨吸収(図5)、15の垂直的残存骨距離(RBH)は4.6mm、16の垂直的残存骨距離(RBH)は3.9mm臨床診断:14~16MTおよび17根尖性歯周炎と診断。
治療計画:17を抜歯し欠損部の骨化を待って14は定型埋入、15・16に本法を併用した内視鏡下インプラント治療を行う。
平成30年10月に17抜歯し、同年12月に14定型埋入、15・16に本法を併用したインプラント埋入手術を行った。
術前のCBCT画像(図6、7)術式:右側上顎の犬歯窩部に直径4mm程のピンホール状で開洞させ、そこにオリンパス製の硬性内視鏡True View を上顎洞内に挿入した。
14~17MTに対して14部にSPI®インプラント(トーメンメディカル社製)φ3.5×9.5mmを付加処置を加えないで定型埋入を行った。15~17部は骨整形した後、15・16は低回転式器(low rotaing reamer debavice)であるHatch Reamer®(HATCHREAMER社製、販売元:モリタ)を使用し洞粘膜を損傷しないよう開洞させた。
次に、洞粘膜剥離器具専用であるTM Sinus Lift Kit®(OSUNG社製、販売元:モリタ)を使用し洞底窩洞周囲の洞粘膜を剥離させ、ダイヤル式水圧挙上器具(フィジオリフト)を使用し上顎洞粘膜を水圧にて挙上を行った。そして、濃縮血小板血漿(Platelet rich fibrin 以下PRF)を填塞し(図8・内視鏡下所見)、15にはSPI®インプラントφ3.5×9.5mm、16にはSPI®インプラントφ4.0×9.5mmの埋入を行った。図9は術後の画像である。
術後CBCTの3D/ Volume rendering画像を水平断と矢状断にてカットした画像では、上顎洞底粘膜が挙上されインプラントが埋入されていることが分かる(図10)。また、冠状断、矢状断画像でも同様に上顎洞粘膜が挙上され埋入インプラント周囲のPRFが充満されていることを認める(図11)

  • 術前のオルソパントモグラフィー画像。14~17部に垂直的残存骨吸収が見られる
    図5 術前のオルソパントモグラフィー画像。14~17部に垂直的残存骨吸収が見られる。
  • 術前のCBCT画像
    図6 術前のCBCT画像。
  • 術前のCBCT画像
    図7 術前のCBCT画像。
  • PRFを填塞
    図8 PRFを填塞。
  • 術後のオルソパントモグラフィー画像
    図9 術後のオルソパントモグラフィー画像。
  • 術後のCBCT画像。上顎洞底粘膜が挙上されインプラントが埋入されていることが分かる
    図10 術後のCBCT画像。上顎洞底粘膜が挙上されインプラントが埋入されていることが分かる。
  • 術後のCBCT画像。埋入インプラント周囲のPRFが充満されていることを認める
    図11 術後のCBCT画像。埋入インプラント周囲のPRFが充満されていることを認める。

症例2『下顎骨欠損部にTiハニカムメンブレンを用いて骨造成した症例』
全顎的に水平的骨吸収を認め、36および44~47は歯根周囲に透過像を認め、臨床診断は全顎の慢性歯周炎と、36および44~47の根尖性歯周炎であり、治療計画は36および44、47を抜歯し、欠損部の骨化を待ってインプラント治療とした(図12)。
次に、36および34~37を抜歯し、約8ヵ月経過した埋入前のオルソパントモグラフィー画像である(図13)。36部位は歯槽頂までの骨化を認めていない。図14はそのCBCT画像である。
同様に35~37の垂直的および水平的骨吸収が著明であることを認める。また骨密度は、当院の分類でTypeDであり細分類では3-bに相当すると診断し、Tiハニカムメンブレン(モリタ)を使用したGBRと同時のインプラント埋入とした。
処置:35~37部の粘膜骨膜を剥離すると近遠心的に40mm頰舌的に20mmの骨欠損を認めた。次に、SPI®インプラントφ4.0×11mmを35と37部位に埋入したが、骨欠損のため約3/4のインプラント体が露出した。なお、44・46は定型埋入を施行した。
骨欠損部に、PRFの滲出液とBio-Oss®および自家骨を混合した計約2gの骨補填材をインプラントヘッドまで十分に覆うように填塞した(図15)。
次に、骨補填材の骨化を促進させるため、骨補填材直上にPRFを静置した。これをTiハニカムメンブレンで覆いチタン製ピンにて近心、遠心と2箇所固定した。縫合法はデッドスペース防止のためテンションフリーで骨膜水平マットレス縫合法を併用し固定した(図16)。
術後3ヵ月後のオルソパントモグラフィー画像(図17)とデンタル画像(図18)にて歯槽頂まで骨化とTiハニカムメンブレン直下まで骨補填材を確認できた。また、3D/ Volume rendering画像ではインプラント体の直上まで垂直的骨増生を認める(図19)。Tiハニカムメンブレンは純チタン製の金属被膜だがハレーション、アーチファクトは認めない。
通常は骨化に4ヵ月以上かかるが、術後3ヵ月後にCTにてTiハニカムメンブレンの直下の骨化を確認できたため、メンブレンを除去した(図20)。図21は上部構造体装着後のオルソパントモグラフィー画像である。
また、骨造成した病理組織学写真ではBio-Ossと既存骨が骨性結合しており、この部位においては新生骨の増加と既存骨との骨結合が認められる(図22)。

  • 術前のオルソパントモグラフィー画像
    図12 術前のオルソパントモグラフィー画像。欠損部の骨化を待ってインプラント治療とした。
  • 36および34~37を抜歯し、約8ヵ月経過した埋入前のパノラマ画像
    図13 36および34~37を抜歯し、約8ヵ月経過した埋入前のパノラマ画像。
  • 同CBCT画像
    図14 同CBCT画像。
  • 骨補填材をインプラントヘッドまで十分に覆うように填塞
    図15 骨補填材をインプラントヘッドまで十分に覆うように填塞。
  • デッドスペース防止のためテンションフリーで骨膜水平マットレス縫合法を併用し固定
    図16 デッドスペース防止のためテンションフリーで骨膜水平マットレス縫合法を併用し固定。
  • 術後3ヵ月後のオルソパントモグラフィー画像
    図17 術後3ヵ月後のオルソパントモグラフィー画像。
  • 同デンタル画像
    図18 同デンタル画像。
  • インプラント体の直上まで垂直的骨増生を認める
    図19 インプラント体の直上まで垂直的骨増生を認める。
  • Tiハニカムメンブレンの直下の骨化を比較的早く確認できたため、メンブレンを除去
    図20 Tiハニカムメンブレンの直下の骨化を比較的早く確認できたため、メンブレンを除去。
  • 上部構造体装着後のオルソパントモグラフィー画像
    図21 上部構造体装着後のオルソパントモグラフィー画像。
  • Bio-Ossと既存骨が骨性結合している写真
    図22 Bio-Ossと既存骨が骨性結合している写真(○部分)。この部位においては新生骨の増加と既存骨との骨結合が認められる。

■考察

日本顎顔面インプラント学会発行の『インプラント手術関連の重篤な医療トラブルについて』の調査によると、平成24年度の調査では、第1位は下歯槽神経血管束の損傷による神経麻痺だったが、平成29年度の第2回調査では、上顎洞炎が第1位にあがり、第3位は上顎洞内インプラント体迷入であった。
現在、上顎洞挙上手術に関連するトラブルが多くなっている。よって、このようなトラブルを回避するためには、術前にCBCTを活用し3次元的な画像情報をもとに副鼻腔の状態、上顎骨の骨量、骨質などを確認し、綿密な治療計画や手術準備が重要となる。
また、第2位である下歯槽神経損傷においても、CBCTを使用し下歯神経の走行を立体的に把握し、CTデータをもとにサージカルガイドを作製することにより、インプラント埋入時のテクニカルエラーや術後のトラブルの回避が向上できると考える。

■まとめ

今回供覧したVeraview X800を使用した症例は、上顎洞の疾患およびインプラント症例のみだったが、他にも歯内療法における根管形態の把握や、過剰埋伏歯の立体的な位置の把握、歯周治療における骨欠損範囲の把握など他分野においても大変必要となる。
また、3D/ Volume rendering画像を活用することにより、治療のイメージがたてやすくなり、しかも患者さんへの説明の際も立体画像であるため理解してもらい易い。
今後は、補綴の分野においても、さらにCBCTが重要となると考えられる。よって、多分野におけるVeraviewX800の活用法と進化が期待できる。

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