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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
Erwin AdvErL EVO の臨床活用 ~一般医での幅広い有用性~
鹿児島県枕崎市 (医)皓歯会 かわばた歯科医院 川畑 正樹

キーワード:Er:YAGレーザーの特徴と適応症/う蝕治療における活用/歯周治療における活用

■目 次

■はじめに

歯科治療でのレーザーの臨床応用は、1980年代後半から炭酸ガスレーザーでの歯肉の切除療法等に始まり、1990年代中頃の硬組織にも応用可能なEr:YAGレーザーの登場により、歯石除去や歯の切削へ広がったとされる1)
歯科用レーザーは、う蝕治療、根管治療、歯周治療、外科処置、疼痛緩和など幅広い用途で活用されており、平成30年度診療報酬改定では、歯科用レーザー治療の保険収載範囲も大きく広がった。
当院では、開業後徐々に広まっていたレーザーを用いた治療に先進性を感じ炭酸ガスレーザーを使用してきたが、学会等でEr:YAGレーザーの歯周治療への有効性が示され興味を持ち導入することとなった。
当初は思うような臨床結果が得られず使用法に戸惑いもあったが、臨床での活用範囲も広がり、現在ではErwin AdvErL EVOは自身の臨床に不可欠な診療機器となっている。
今回、う蝕治療、軟組織に対しての処置、歯周治療といった日常での症例を提示し、その有用性をお伝えしたい。

■Er:YAGレーザーの特徴と適応症

Er:YAG レーザーの最大の特徴は、組織表面吸収型のレーザーであり、炭酸ガスレーザーの約10倍、Nd:YAGレーザーの約15,000~20,000倍も水に対して特異的に吸収特性を持つ(図12)
その特性から、表層の水分子が反応した結果硬組織の蒸散が促進され、その際に生じる微小爆発により歯の切削が可能である。また、注水との併用で熱の発生が少なく低侵襲で無痛的に罹患歯質の除去が可能となり、「う蝕歯無痛的窩洞形成加算40点」の算定が可能な歯科用レーザーである。
軟組織に応用した場合も、水分を含んだ組織表層のみの反応となり深部に達する熱変性はない(図2)。創傷の治癒も早く、安全性の高いレーザーとされ、適応症は幅広いものとなっている3)図3)。また、レーザーの照射面は蒸散により殺菌され、組織賦活効果もあるため硬組織、軟組織ともに疼痛の軽減、治癒の促進をもたらすことが報告されている。

  • レーザーの水に対する吸収スペクトルのグラフ
    図1 レーザーの水に対する吸収スペクトル(文献2より)
    • Nd:YAGレーザー、Er:YAGレーザー、炭酸ガスレーザーの組織透過性等の特性
      図2 Nd:YAGレーザー、Er:YAGレーザー、炭酸ガスレーザーの組織透過性等の特性
    • 各種歯科用レーザーの適応症例
      図3 各種歯科用レーザーの適応症例(文献3より)

■う蝕治療における活用

う蝕の治療におけるレーザーによる蒸散では、回転切削器具で生じるスミアー層がない。平滑面う蝕、Ⅴ級窩洞う蝕、楔状欠損の表層除去などに適用しやすく、エナメル質の蒸散・切削も可能である(図45)。
使用するチップについては、主としてCシリーズを用いているが、同じ出力でもチップの太さにより削れ方に違いがあり、歯質への照射もエナメル小柱構造や象牙細管内液への配慮が必要とされることから、斜め照射が推奨されている4)。チップによる湾曲度の違いも操作性に関わり、窩洞形態によっては、適切なチップの選択や回転切削器具との併用も必要である。新たに開発され加わったチップCS600Fでは、注水が霧状となり視認性も高く、蒸散も早く行えるとともにチップの耐久性も向上しており、初心者へはまず使いやすいチップと思われる(図67)。
う蝕検知液使用時には、象牙質照射面での変性層が染まりやすく、接着の観点からもレーザーによる影響層の除去には配慮が必要である。接着に関しては、エナメルエッチングの必要性が示唆されており、エッチング後プライミング処理を施した上で充填を行っている。
日常臨床においてしばしば遭遇する歯髄に達する深在性う蝕に対しても、Er:YAGレーザーを露髄面の処理に用いた歯髄温存療法に取り組んでいる5)図89)。マイクロスコープでの拡大視野下にて、露髄歯髄表面の最小限の蒸散と周辺部の罹患歯質除去に用い、MTAセメントにて覆髄する。術前の臨床症状によっても対応は異なるが、この保存処置を行う頻度が高まっており、良好な結果を臨床実感として感じている。う蝕治療において予防填塞・初期う蝕から深在性う蝕までEr:YAGレーザーの適用範囲は広い。

  • 小窩裂孔周辺の有機性付着物の除去写真
    図4 小窩裂孔周辺の有機性付着物の除去には苦慮する。機械的清掃に加えレーザー蒸散後充填。
  • 窩洞の写真
    図5 エナメル質の蒸散切削も可能。窩洞形態修正には回転器具との併用が必要な場合がある。
  • 霧状の噴霧写真
    図6 CS600F 霧状の噴霧となり、蒸散スピードも上がり視認性も向上している。
  • 罹患歯質の除去時の写真
    図7 CS600F 無麻酔 パネル値出力100mJ 20pps 注水(+)エアー(+)罹患歯質の除去は視認性がよく蒸散スピードも速い。
  • 深在性う蝕の写真
    図8 深在性う蝕。冷温水痛(−)打診(−)マイクロスコープ下にて歯髄の観察後、パネル値50mJ 20pps注水(+)エアー(+)にて露髄部位周辺を蒸散。
  • 修復処置後の写真
    図9 露髄面は、チップとの距離を意識し最小限の蒸散後、MTAセメントにて覆髄。経過観察後、修復処置へ移行した。

■軟組織治療における活用

Er:YAGレーザーは、前述したように他の高出力歯科用レーザーと比較して表層のみの蒸散となり、熱変性層も少なく深部組織への影響が少ない。この特性から、日常臨床でよくみられる口内炎の表面蒸散や歯肉・歯槽部膿瘍の切開をはじめとした種々の軟組織の切除等に用いている(図1011)。
歯肉切除術など歯の周囲歯肉の処置は、従来の外科用メスでは侵襲が大きくなり困難なものもある。電気メスもよく用いられているが、熱傷害も大きく、ほぼ麻酔下の処置となるため禁忌症だけでなく患者との同意が得られにくい場合も多いのではないだろうか。浸潤麻酔を行わず、どこまで処置が可能かという点については、術者の技量や患者側の許容に関わると思うが、適切なチップの選択と水量、出力をコントロールし、また照射時に患者とコミュニケーションをとりながら処置を行うことで、無麻酔あるいは表面麻酔のみで可能となることも多い(図12)。
インプラント周囲においても、熱の影響が少ないため2次手術や補綴時の周辺歯肉の切除に用いることが可能である(図13)。
メラニン色素沈着除去においては、薄い歯槽粘膜への照射でも骨膜、骨等の深部組織への影響はわずかであり、照射方向の工夫や拡大視野下でメラノサイトを含む上皮層を正確に蒸散することで、出血や疼痛も少なく早い治癒が得られ、極めて低侵襲で特性を生かせる応用例と考えている6)図1416)。

  • 口蓋部膿瘍の写真
    図10 口蓋部膿瘍。麻酔下 パネル値50mJ 20pps注水(+)エアー(+) 組織表面からの蒸散で安全に穿孔し排膿が可能である。
  • 不適冠除去後の辺縁歯肉切除の写真
    図11 不適冠除去後の辺縁歯肉切除。無麻酔パネル値50mJ 20pps 注水( +) エアー(+) S600T、PS400TSなど側方にも照射エリアをもつチップを使用。
  • 萌出時の歯冠周囲炎の写真
    図12 13歳の女児。萌出時の歯冠周囲炎。患者の強い希望により表面麻酔のみにて、歯肉弁切除術を行った。
  • インプラント上部構造脱離症例
    図13 インプラント上部構造脱離症例。熱影響が少ないためインプラント体周辺の処置は安全に行える。周辺歯肉切除後、再装着を行った。
  • メラニン色素沈着の写真
    図14 左右の歯槽粘膜部にメラニン色素沈着が認められる。
  • マイクロスコープ拡大視野下
    図15 マイクロスコープ拡大視野下 パネル値30mJ~ 20pps C400Fにて沈着部のみを慎重に蒸散。深部への侵襲は極めて少ない。充填と共に麻酔下で行ったが、表面麻酔のみでも可能と思われた。
  • 術後1週間程度経過の写真
    図16 術後1週間程度経過。処置部の早期の治癒が得られ、疼痛も少なく術前術後の変化に患者の満足度も高い。

■歯周治療における活用

硬組織、軟組織共に蒸散できるという点から、Er:YAGレーザーは歯石の除去や歯周外科手術時の炎症性肉芽組織除去など歯周治療においても有効性が示されている7)。歯周治療における基本治療時からメインテナンスまで幅広く使用でき、Erwin AdvErL EVOは、歯周外科治療において「手術時歯根面レーザー応用加算60点」が認められる唯一の波長となっている(2019年8月現在)。
スケーリングにおいては、主として手用スケーラーや超音波スケーラーを用いるが、転位や捻転を伴う歯の叢生部など操作性の悪い部位では、Er:YAGレーザーを併用することで除石の効率を高めることができる。
チップ先端が金属でカバーされているチップPSM600Tは、破折の危険も少なく形状からも歯周ポケット内での操作性や効率が良い(図17)。中等度以上の慢性歯周炎に対する歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)では、従来からの手用キュレットタイプスケーラーや超音波スケーラーに加えて積極的に用い良好な結果を得ている(図1820)。
手技的には機械的な根面のデブライドメントのあと、根面への照射を追加することで終え、また内縁上皮側へも一層表面照射し蒸散する。Er:YAGレーザーによるSRPは、注水下の照射で歯周ポケット上部が開き視認性も良い。蒸散された根面、内縁上皮側からは、歯石や上皮内に侵入した細菌等の原因が除去され、さらに殺菌・無毒化に加え治癒促進がはかられる。垂直性骨欠損を伴う部位については、東京医科歯科大学 青木章教授らにより報告されているEr-LCPT(Er:YAG Laser-assisted Comprehensive Periodontal Pocket Therapy)法に積極的に取り組んできた。詳細は、本誌前号(170号<2019年9月1日発行>)の水谷幸嗣先生らによるクリニカルレポートに掲載されている。Er-LCPT法は、上述の歯肉縁下のSRP時の手技に加え積極的な内縁上皮側の除去と骨欠損部のデブライドメントを確実に行い、ポケット周辺外側の上皮へも蒸散を加え、ポケット内への上皮のダウングロースを抑制する。また、骨欠損底部からの出血については、無注水下に非接触デフォーカス照射を行うことで歯周ポケット入り口に血液を凝固させポケット内の血餅の安定化と封鎖を行う手法である8)
図2125は63歳女性患者の広汎型重度慢性歯周炎に対し、全顎的に歯周治療に取り組んだ症例である。部分的な提示となるが、初診時には下顎右側犬歯小臼歯部ともに近心側には7ミリ以上の歯周ポケットと垂直性の骨欠損を認めた。
SRP時にEr-LCPT法を行ったことで歯肉の反応も良く、その後の再評価では全周に3ミリ程度以下まで大幅な歯周ポケットの減少が得られた。非外科的治療ながら外科治療後のような歯肉の反応や結果が得られ、これまで歯周治療でSRPを受けていない症例では、今まで体験したことないような良好な結果となることも多い。歯肉の薄い症例にも適用できるため外科手術が未熟な筆者にとって、今後も学び経験を積んで取り組みたい手技である。
一般医では、歯周基本治療が大半を占め、コンプライアンスが得られない患者に対しても歯周治療を行わざるを得ないことも少なくない。増え続ける高齢者や有病者に対する歯周治療の場においても、Er:YAGレーザーを用いることで従来の外科的治療の回避にもつながり低侵襲に治療が行えるのではないかと考えている。

  • スケーリング時の写真
    図17 スケーリング。パネル値50~70mJ 20~25pps 注水(+)エアー(+)破折の心配がないPSM600Tを使用。
  • 48歳の男性の写真
    図18 48歳の男性。下顎犬歯近心には5ミリの歯周ポケットがみられた。
  • 歯肉縁下のデブライドメント後の写真
    図19 麻酔下での機械的手技でのSRP後、パネル値50mJ 20pps 注水( +)エアー(+)にて 歯肉縁下のデブライドメントを行った。
  • 再評価時の写真
    図20 再評価時には、歯周ポケットは2ミリ程度に改善。
  • 垂直性骨欠損を伴う広汎型慢性歯周炎の写真
    図21 63歳の女性。垂直性骨欠損を伴う広汎型慢性歯周炎。下顎犬歯と小臼歯近心側に6ミリの歯周ポケットが存在。内縁上皮側の除去、外側の上皮の蒸散後、歯周ポケット上部にデフォーカス照射し血液を凝固させ血餅を形成。
  • 初診時X線画像
    図22 初診時X線画像。犬歯小臼歯部位に垂直性骨欠損が認められた。
  • Er-LCPT法術後3週間後の写真
    図23 Er-LCPT法術後3週間後。早期に歯肉の治癒が得られている。
  • Er-LCPT法術後1年6ヵ月経過後のX線画像
    図24 Er-LCPT法術後1年6ヵ月経過後のX線画像。歯槽骨の改善が認められた。
  • Er-LCPT術後4ヵ月経過時の写真
    図25 Er-LCPT術後4ヵ月経過。再評価時歯周ポケットは全周3ミリ以下となった。

■おわりに

歯科領域でのEr:YAGレーザーに関する基礎的研究や臨床研究から、すでに多くの有効性が示されている。
近年ではインプラント周囲炎に対しての治療は特に注目されており、さらに再生治療での良好な結果も報告されている9、10)。今後も適用される領域は広がり、Er:YAGレーザーを用いた臨床は確実に発展するのではないだろうか。導入からわずか3年という短い期間であるが、一般的な治療において幅広く用いることができると有用性を実感している。
また、Er:YAGレーザーを用いた治療では、意外な感覚や結果が得られ楽しみながら経験を積むことができたように思う。基本的に“安全性が高く”、“痛みが少ない”、“患者さんに優しい” といった点は、小児から高齢者までの患者層となる一般医とって大変有益であると考えており、今後もErwin AdvErL EVOと共に研鑽を積み臨床に取り組んでいきたい。

参考文献
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  • 3) 加藤純二, 粟津邦男, 篠木 毅, 守谷佳世子:一からわかるレーザー歯科治療.医歯薬出版,東京,2003.
  • 4) 山本敦彦:Er:YAGレーザーの可能性を探る、Er:YAGLaserによるう蝕歯無痛的窩洞形成法について.モリタ Dental Magazine125 別冊.
  • 5) 松本邦夫:露髄時におけるEr:YAGレーザーの応用.ザ・クインテッセンス37巻2号 P0261-0263.2018.
  • 6) 篠木 毅: Er:YAGレーザーによるメラニン色素除去.日本レーザー歯学会誌 20巻3号 P183-187,2009.
  • 7) 青木章ら:ポジションペーパー(学会見解論文)レーザーによる歯石除去.監修:特定非営利活動法人日本歯周病学会.日本レーザー歯学会. 日本歯周病学会会誌.第52巻第2号,P180-190,2010.
  • 8) Aoki A, Mizutani K, Schwarz F, Sculean A, Yukna RA, Takasaki AA, Romanos GE, Taniguchi Y, Sasaki KM, Zeredo JL, Koshy G, Coluzzi DJ, White JM, Abiko Y, Ishikawa I and Izumi Y. Periodontal and periimplant wound healing following laser therapy. Periodontol 2000. 2015; 68: 217-269.
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  • 10) Taniguchi Y, Aoki A, Takagi T. Izumi Y. Development of Er:YAG Laser-Assisted Bone Regenerative Therapy (Er-LBRT) in Periodontal and Peri-Implant Therapy. Nippon LaserIgakkaishi.2019; 40(1)45-51.

デンタルマガジン 171号 WINTER