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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Interview
耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携 −歯科医師が知っておくべき舌がんと副鼻腔炎−
昭和大学横浜市北部病院 客員教授/神奈川県三浦郡葉山町 葉山かどくら耳鼻咽喉科 院長 門倉 義幸

■目 次

上顎洞炎のように共通の疾患がありながらも、耳鼻咽喉科領域については知らないことも意外と多いものです。舌がんや難治性慢性副鼻腔炎、インプラント術後に発症した副鼻腔炎など、歯科医師も知っておくと役に立つお話を葉山かどくら耳鼻咽喉科の門倉義幸先生にうかがいました。

■舌がんと口内炎の見分け方

今年、女性タレントが舌がんを公表したことで、舌の痛みに関する歯科医院への問い合わせが増えていると聞きます。私自身は大学病院での経験を含め、これまで多くの頭頸部がんを扱ってきました。それでも初期の舌がんで5mm以下の小さな病変は口内炎か否かの区別がつかないことがあります。ただ、好発する場所についてはほとんどが側縁です。また、「口内炎が2週間以上治らない」「触診すると盛り上がりや硬さを感じる」そうした場合はがんの疑いが高くなります。
口内炎は同じ箇所に繰り返し発症すると、がんになるリスクが高くなると言われています。例えば、舌と歯牙が機械的に、そして慢性的に接触し続けたり、不衛生な状態が続いていたりすると口内炎が発症しやすくなります。ですから、歯並びの調整や不良補綴物を治すことは舌がんの予防としても大切になります。
日頃から口腔内を診られている歯科の先生方は、舌がんを早期に発見する機会も多くあるのではないでしょうか。舌がんの検査や治療については口腔外科へ依頼されることが多いと思いますが、耳鼻咽喉科でも多く扱う症例ですので、気兼ねなくご相談、ご紹介いただけたらと思います。特に糖尿病、高血圧など全身疾患の合併症がある患者さんについては耳鼻咽喉科での治療をお勧めいたします。

■近年増加している難治性の副鼻腔炎

鼻腔の周囲には顔の中心から左右で対になっている空洞が8つあり、これが副鼻腔です。そのうち、頰の裏側にある副鼻腔が上顎洞になります。
副鼻腔内はせん毛の生えた粘膜で覆われ、自然口によって鼻腔と交通しています。細菌などによって炎症が起こると自然口に狭窄や閉塞が生じ、副鼻腔が換気不全を起こします。すると副鼻腔内で細菌が増殖し、粘膜の炎症が強くなり、せん毛の動きが阻害されます。結果、鼻汁などの分泌物が排泄されなくなり洞内に貯留します。これが副鼻腔炎の発症メカニズムです。症状は鼻閉、鼻漏、痛み(前頭部、眼周囲、頰部)、嗅覚障害等が認められます。治療は、抗菌薬の内服治療を主軸に、自然口の浮腫や狭窄を取り除くアプローチとして鼻漏吸引とネブライザー療法(抗菌薬の吸入療法)を行います。
副鼻腔炎の診断にはX線検査や鼻・副鼻腔内視鏡検査を行いますが、X線では歯根部までは明確に写りません。クリニックなどの小規模な医療施設ではCTの普及率が低いこともあり、鼻内観察やX線検査のみで歯性か否かの判断は難しいことが多くあります。
内服薬、ネブライザー治療後も症状が改善しない場合には手術を検討しますが、手術をしても短期間で再発する好酸球性副鼻腔炎が近年、増加傾向にあり、耳鼻咽喉科の領域では注目されています。
歯性上顎洞炎は基本的には一側性ですが、好酸球性副鼻腔炎は両側性で喘息との関わりが強い特徴があります。もし、そうした患者さんが来院された場合は、耳鼻咽喉科での検査を促していただけたらと思います。

■インプラントのトラブル

数例ですが、歯科からの依頼でインプラントの術後に上顎洞炎を起こした患者さんを治療した経験があります。
副鼻腔炎に気がつかないままインプラントを埋入すると、術後に上顎洞炎が強く出ることがあります。硬いものを食べなくなったなど諸説ありますが、近年は上顎骨が薄い方が増えているように思います。埋入前に上顎骨が薄い場合や副鼻腔炎が疑われる場合は耳鼻咽喉科で自然口の状態を検査することをお勧めします。万が一、術後に炎症が起きたとしても上顎洞の環境が整っていれば、重症化を防げることがあるためです。

■2人に1人がアレルギー疾患の罹患者

小児歯科などで「お口ポカン」と呼ばれる小児の口呼吸は、耳鼻咽喉科から見ても改善すべき状態です。本来、耳の正常な発育には鼻から中耳腔へ空気が流れ込む必要があります。鼻呼吸が行われないと空気が耳へ抜けにくくなり、中耳炎や難聴が誘発されやすくなります。親御さんには、口呼吸は耳にもよくないという話を伝え、口呼吸を改善していく必要性を説明しています。こうした口呼吸のお子さんは鼻に何かしらの問題を抱えているケースが多くあります。特に近年では日本人の2人に1人がアレルギー疾患に罹患していると言われ、早ければ2歳からアレルギー反応が出るお子さんもいます。
アレルギー性鼻炎の原因で多いのはダニやスギ花粉ですが、現在ではダニによるアレルギー性鼻炎とスギ花粉症については免疫療法(アレルギー体質を改善させる唯一の治療)が保険適応になりました。小児アレルギーに関する検査も指先の少量血液で判定できる簡便なキットがあります。口呼吸のお子さんで鼻炎などの症状が見られる場合は、耳鼻咽喉科からのアプローチも検討していただけたらと思います。

■耳鼻咽喉科から診た口臭の原因

副鼻腔炎は副鼻腔に膿が溜まるため、その臭いが吐息と混ざると口臭になることがあります。しかし、そうした臭いは鼻の臭いと認識する患者さんが多いようです。
また、耳鼻咽喉科領域で口臭といえば、膿栓が挙げられます。
膿栓の正体は扁桃の表面の陰窩に取り込まれた細菌塊や食事の残渣などです。基本的には扁桃の表面についていて目視できますが、陰窩の奥にある場合もあります。通常の膿栓は放置しても問題ありませんが、口臭が気になる場合や喉に違和感がある場合は耳鼻咽喉科への受診をお勧めします。

■肥満でなくても重症なSAS

睡眠時無呼吸症候群(SAS)も歯科と連携することがある疾患です。
SASの原因として肥満がよく挙げられますが、太っていない方でも意外と重症な方がいます。SASは舌が咽頭に落ち込む舌根沈下が原因の1つなので、下顎が後方に下がっている方は注意が必要です。日中の眠気のチェックなどを通じてSASが疑われる方がいましたら、SASに対応している耳鼻咽喉科との連携をご検討ください。

■舌がんの症例1

  • 舌左側縁の粘膜不整の写真
    舌左側縁の粘膜不整を僅かに認めるが、表在性の病変で明らかな腫瘤形成はみられない。
  • ヨード染色で不染域を確認し、安全域を設定した切除線を置いた写真
    ヨード染色で不染域を確認し、安全域を設定した切除線を置いた。
  • 切除断端、深部断端の写真
    切除断端、深部断端はいずれも陰性であった。

■舌がんの症例2

  • 舌左側縁に白板状の変化と粘膜不整をともなった病変の写真
    舌左側縁に白板状の変化と粘膜不整をともなった病変を認める。
  • 不染域を確認し、安全域を設定した切除線を置いた写真
    不染域を確認し、安全域を設定した切除線を置いた。
  • 切除断端、深部断端の写真
    切除断端、深部断端はいずれも陰性であった。

■舌がんの症例3

  • 右側縁に軽度な隆起性病変と周囲の白板状変化をともなった病変の写真
    右側縁に軽度な隆起性病変と周囲の白板状変化をともなった病変を認める。
  • 広範な不染域の写真
    視診で確認するよりも広範な不染域を伴っていた。
  • 深部の切除後の写真
    外方発育型であり深部の切除は比較的浅く留めることができた。

■舌がんの症例4

  • 外方発育型の腫瘤とその周囲に僅かな粘膜不整の写真
    外方発育型の腫瘤とその周囲に僅かな粘膜不整を認める。
  • 不染域の写真
    不染域はわずかであった。
  • 水平断端、深部断端の写真
    内方にも腫瘍浸潤がみられたが水平断端、深部断端はいずれも陰性であった。

症例写真提供:昭和大学 頭頸部腫瘍センター、昭和大学 医学部 耳鼻咽喉科学講座 櫛橋 幸民先生

門倉 義幸先生からのメッセージ

リスク分散の意味でも、医科歯科連携を

私たち耳鼻咽喉科医は受診患者のほぼ全例の口内を観察しています。患者さんの主訴によってはう蝕の簡単なチェックを行うケースもあります。口腔内をキレイに保つことで風邪を引きにくくなることが知られており、口腔内が著しく汚れている方は歯科への受診を促すこともあります。
最近は電動歯ブラシの性能も向上しているようで、手磨きよりも歯面がツルツルになるのがよくわかる製品もあります。高齢化が進み、ご自身での口腔内清掃が難しい方が増える中で、そうしたアイテムを上手に活用しながら、患者さんにはキレイな口腔を保って欲しいと思っています。
大学病院などでは耳鼻咽喉科と歯科が連携する例が増えていますが、クリニックレベルではまだまだ少ないのが現状です。今後はクリニックレベルでも密な連携が必要であると考えています。
耳鼻咽喉科としても患者さんを紹介していただけるのは嬉しいことです。お互いのリスク分散の意味でも、それぞれ得意分野を活かした医科歯科連携を増やしていければと思っています。

■プロフィール
神奈川県相模原市出身。
平成05年05月 昭和大学藤が丘病院耳鼻咽喉科 研修医
平成14年01月 昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科 講師
平成26年01月 〃 准教授
平成30年10月〃 客員教授
令和元年05月 葉山かどくら耳鼻咽喉科 院長

日本耳鼻咽喉科学会専門医
日本がん治療認定機構がん治療認定医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
内分泌外科専門医
日本禁煙学会専門医

  • 音波式電動歯ブラシ「ソニッケアー」の写真
    音波式電動歯ブラシ「ソニッケアー」
  • 8種類の替ブラシの写真
    「ソニッケアー」には用途に合わせて8種類の替ブラシがラインナップされている。

デンタルマガジン 171号 WINTER