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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

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全ては安全・安心の提供を基に設計したNiTi ファイル「JIZAI」
マニー株式会社 デンタル部 デンタル開発課

キーワード:JIZAIの性能と特徴/耐久性と追従性に優れた国産NiTiファイル

■目 次

■はじめに

Nickel Titanium(NiTi)製合金が根管拡大形成分野に応用され始めたのは1980年代、今から約40年前のことです。歯科治療の発展に寄与してきたNiTiファイルは今もなお進化を続け、各社研究や改良が進められており、その視点は切削時の効率性、トルク、回転疲労など多岐に及びます。時代と共に求められる要求特性も変わりつつある中、今でもその最終・完成形態と呼べる物はなく、今後も進化し続ける製品となるでしょう。NiTiファイルに関しての研究や臨床報告も日々活発に行われ、ユーザーからのNiTiファイルに対しての関心が高いことは言うまでもありません。
ステンレス製ファイルと比べ、柔軟性の高い材質特性を持つNiTiファイルは根管への追従性能が高く、かつレッジやジップといった不適切な根管形成への危険が少なく、より難症例の対応も可能となり、医療の質を高めています。一方、その材質の特性上、破折時の兆候が表れ難く、突発的な破断が懸念されていることも事実です。我々の調査結果でも、優れた性能は理解しつつもこの「突発的な破断」が、NiTiファイルが採用されにくい大きな要因の一つであることが明らかとなり、破断耐久性の向上が最重要課題であると考えました。しかしながら、ファイルを設計するうえにおいては、この破断耐久性のほか、断面形態、切削効率、形成時間、表面処理方法など各種検討しなければならない要素があり、またそれぞれの要素が時にはトレードオフの関係にあります。それらを考慮しながら、当社ファイル設計の根底には『安心・安全』というコンセプトを第一に、どの要素を選択するか迫られた際には、迷わず、より安心・安全に傾く方針を追い続けました。すべては「使用される先生方と患者様への安心・安全を提供したい」という願いがこのファイルには込められているからです。
本稿ではそのマニー製NiTiファイル「JIZAI」(図13)について紹介いたします。

  • NiTiファイル「JIZAI」のセット内容の写真
    図1 NiTiファイル「JIZAI」のセット内容
  • パッケージを開いた写真
    図2 パッケージを開いたところ
  • 「JIZAI」を拡大した様子
    図3 「JIZAI」を拡大した様子

■「JIZAI」の性能と特徴

■ 耐久性と追従性を考慮した柔軟性
「JIZAI」は多くが湾曲を有した根管に対応できるよう材料に処理を施し柔軟性を担保しています。ただし過度に柔軟性を付与してしまうと切削時のトルクに負けてしまうこともあるため、バランスのとれた柔軟性となるよう、特徴的とも言える断面形状で調整を行っています。
近年さまざまな個性的なファイルが発売されていますが、いかに柔軟性が高いかをアピールした広告をよく目にします。もちろんNiTiファイルは柔軟であることが重要な要素ですが、先述したように過度に柔軟性を付与することによるデメリットもあると考えられます。つまり単に柔らかければ良いというものではなく、根管治療に求められる適切な範囲があると推測されます。この範囲を決め設計することは非常に難しく、またこの範囲は時代によって変化していくものだとも考えています。
「JIZAI」は多くの情報や評価を重ねながら当社なりの見解を出し範囲を設定していますが、その範囲内に収められ得られた柔軟性によって、湾曲度の高い根管にも逸脱することなく追従できる性能を有することができます。これはできる限り健全な歯質を残すことを目的としたMIの観点での治療をサポートするものとも考えています。
■ ラジアルランドを有した特徴的な形状
「JIZAI」は根管の内壁に接するラジアルランドを有した特徴的な形状(図4)であり、根管追従性能を高める機能を担います。一方で内壁に接する面積が多いことで接しているラジアルランド部より疲労を蓄積してしまうことがあるため、適度な範囲のラジアルランド設計が必要となります(図56)。社内での機械的試験や数多くの先生方に模型を使っての評価をいただくことで、適切な範囲を定めており、さらに当社では敢えてその範囲の中から厳しい基準を設けることで、安定した製品の提供を目指しています。
以下に当社で実施している2つの特徴的な機械的試験を挙げさせていただきます。
◎臨床での使用回転疲労を模擬した機械的試験(回転疲労破断試験)
ISO規格で定められた試験以外にも当社独自の基準を設けさまざまな試験を実施しています。湾曲した根管を模擬した冶具で器具を回転させることで負荷を与え、器具が破折するまでの回転数と時間を測定しています。これはできるだけ臨床に近い状態で使用することでユーザーとメーカーの製品性能評価に対してのギャップを埋めるべく採用しています。
◎臨床での意図しない“引き込まれ”を模擬した機械的試験(スクリューイング試験)
当社が独自に行った調査の結果では疲労破断と同じく、スクリューイングもユーザーがNiTiファイルを採用しない一つの要因であることが分かりました。スクリューイングとは、NiTiファイルを使用の際に、意図せず引き込まれてしまう力のことです。これはNiTiファイルに限ったことではありませんが、根管治療では精密な作業が要求されるため、いかにユーザーの意図した動きが実現できるか(=スクリューイングをしないか)は重要な要素の一つとなります。
■ シンプルな使用方法
このファイルは決してエンド専門医向けだけに設計されたファイルではありません。術者や症例を選ばず広く使っていただけるようなファイルを目指した設計コンセプトであるため、特に新たなテクニック等は必要ありません。グライドパスを適切に形成・確保し、過度な根尖方向への負荷を避け、作業長到達ごとにファイルを変える従来手技であるフルレングスでお使いいただけます。
またシャンク部には使用するテーパーおよび番手を印字し識別できるため、誤った品番選択のリスクを抑えています。
■ 使用手順
<ストレートラインアクセス>
オリフィスオープナー(#25.14)を用いてストレートラインアクセスを確保します。
<穿通>
#10のDファインダーまたはスーパーファイル(「トライオートZX2」のOGPモード※と併用)を用いて穿通および作業長を確認します。
<グライドパス>
手用ファイルまたはスーパーファイル(「トライオートZX2」のOGPモード※と併用)の#15が無理なく入るまで予備拡大を行います。
<形成>
Ⅰ(#25. 04)、Ⅱ(#25. 06)、Ⅲ(#34.04)の順に拡大形成を行います。
※ロータリーモード/500min-1/3.0Ncm以下:トライオートZX2 OTRモード500rpm 0.8Ncm
参考としてS字模型の形成前後の比較をご確認ください(図7)。
■ ユーザーに認められる製品作りを目指して
当社のファイルは専門医や大学関係者への使用感評価はもちろん、一般開業医の先生方にも使用感の評価を行っており、まだ臨床にNiTiファイルを取り入れていない先生も多く含まれています。いただいた評価を受け多岐に渡り改良を行っており、最終的な製品評価では多くの先生方に納得いただく結果となっています。これは我々がNiTiファイルに込めた治療への安心・安全への想いが、広く先生方に受け入れられたことだと考えています。

  • 「JIZAI」の刃部の写真
    図4 「JIZAI」の刃部。ラジアルランドを有することにより、バランスのとれた切削感が得られる。
  • 「JIZAI」の断面写真
    図5 「JIZAI」の断面。ラジアルランドを有した特徴的な形状。
  • 「JIZAI」のコア率
    図6 「JIZAI」のコア率:55%~60%
    r:コア半径
    R:ファイル仮想円半径
    コア率:r/Rx100
  • 「JIZAI」を使ったS字状根管模型の形状前後の比較写真
    図7 「JIZAI」を使ったS字状根管模型の形状前後の比較。

■最後に

開発の際には透明な根管模型を使用しての評価も行っていますが、それは先生方が当たり前のように行っている日々の臨床とは大きく異なったものであり、評価中は作業箇所を直視できるものです。それでも開発としては根管形成という手技の難しさを感じることが多く、これが実際の臨床では暗視野での作業であることを考えると、先生方は非常に難易度の高い手技を当たり前のように行われていると痛感します。
だからこそ我々製造メーカーとしても少しでもその難易度を下げるためにサポートすることが責務だと感じております。
今回提案させていただく「JIZAI」は先生方のNiTiファイルに抱く不安を少しでも払拭するべく設計されたファイルであるとも言え、安心・安全にご使用いただけるファイルをコンセプトに設計を行ってきました。
国産メーカーならではの、日本のニーズに沿った細やかな作り込みが活きたファイルです。ぜひ多くの臨床で活用され、先生方の治療の一助となれば幸いです。

デンタルマガジン 172号 SPRING