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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Hint
困難症例もこれで容易に!中間ファイルの臨床的有効性
トータル歯科東京青井 代表 高橋 真広

キーワード:中間ファイルの特長と臨床的意義/#15のファイルを入れやすくする方法

■目 次

■1. はじめに

根管長測定器にはじまり、NiTiファイル、エンド用モーター、超音波装置など歯内療法における器具の開発・進歩は目覚ましいものがある。そして、近年では手術用顕微鏡(以下、マイクロスコープ)と歯科用コーンビームCTが臨床使用されることとなり、根管治療の診断と治療に革新的な飛躍をもたらしたと言える。
この飛躍の結果、従来では見落としていた根管を発見する機会が増えている。上顎第一大臼歯の近心頰側根は約50%の確率で2根管性であることが知られている1)が、その2根管目の解剖学的形態は複雑で根管形成は困難を伴うことが多い。そのためにNiTiファイルとエンド用モーターの開発・普及が進んでおり、湾曲根管に対しても追従する根管形成が可能となりつつある。この時、湾曲根管の根管形成の成否を決定するのは根管のネゴシエーションおよび穿通性の確保であると考えられる。
最初に根管内に挿入した細いファイルで根尖孔までを探ることをネゴシエーションと呼ぶが、湾曲した根管や石灰化した根管、狭窄した根管ではこのネゴシエーションに苦労することが多い。
さらに多くのNiTiファイルでは#15程度までのグライドパスを作ることが推奨されており、そこまでの根管形成・拡大は手用ファイルを使用することがほとんどである。しかしながら、前述のような難易度が高い根管に対して根管形成を行う場合は、#8などのファイルを用いて丁寧にネゴシエーションを行うことが必要とされる。ようやくネゴシエーションが終了し、穿通性を確保したものの、そこから#15までの拡大に苦労することが多い。
本稿では、そのような時に役立つ中間ファイル(図1:マニー)の特長と臨床上のポイントについて紹介する。

  • 中間ファイル(#12~#37)の写真
    図1 中間ファイル(#12~#37)

■2. 根管内切削器具(リーマー、ファイル)のISO規格

~先端径とその増加率~
根管内切削器具はリーマー、Kファイル、Hファイルが代表的なものであるが、これらはさまざまな断面形態を有している(図2)。断面は異なるものの太さや長さそしてテーパーなどファイルの規格はISO規格で定められている(図34)。ISO規格ではファイルの先端径が0.5mm(#15から#50まで)または1mm(#50から#140まで)ずつ増加する。このため、#10から#15に移るときの先端径の増加率は50%にもなり(図5)、根管の湾曲に追従しづらかった2)。追従しないファイルを無理に進めると、根尖付近でレッジやジップさらにはアピカルトランスポーテーションなど(図6)を引き起こし、本来の根管を追従できないばかりか、根尖を破壊してしまうことにつながる。
臨床で散見するクラウンブリッジ系の補綴物の2次カリエスと高齢者における根面う蝕は、ほとんどが不顕性で進行は緩慢であるが、急性症状を惹起し根管治療が必要となるケースが多々ある。こういったケースでは経年的に根管が狭窄するだけではなく、2次象牙質の添加もあり、根管が狭窄していることが多い。そのような狭窄し湾曲した根管への穿通性の確保のためには#8(ないし#6)のような細いファイルを使わざるを得ないことも多い。
術者としては、狭窄し湾曲した根管であるからこそNiTiファイルを使用し根管に追従した根管形成を行いたいところであるが、前述のように多くのNiTiファイルが手用ファイルによる#15までのグライドパスの形成を推奨している。#8から#10の先端径の増加率が25%であるのに対し、#10から#15の先端径の増加率は50%であるため、#15の穿通性の確保に時間がかかることこそ臨床家が抱えるジレンマではなかろうか。ここの治療ステップで中間ファイルを使用することで番手を上げやすくするとともに根管にストレスの少ない根管形成が可能となると筆者は考えている。

  • 根管内切削器具の断面写真
    図2 根管内切削器具の断面。左からリーマー、Kファイル、Hファイルの断面を示す。
  • 根管内切削器具のISO規格のまとめ
    図3 根管内切削器具のISO規格のまとめ
  • 根管内切削器具のISO規格のイラスト
    図4 根管内切削器具のISO規格のイラスト
  • ISO規格の根管内切削器具の先端径とその増加率の関係図
    図5 ISO規格の根管内切削器具の先端径とその増加率の関係
  • 湾曲根管にて起こりうる偶発事故の図
    図6 湾曲根管にて起こりうる偶発事故

■3. 中間ファイルとは

中間ファイルとはその名の通り#10から#40までのファイルの中間に当たる先端径を有する#12、#17、#22、#27、#32、#37のファイルを示す。規格はカラーコードがオリジナルであることを除き、号数と先端径の関係やテーパー、作業部分の長さなどはISO規格である。カラーコードはその名の通り中間色のパステルカラーで一つ前の番手の色のパステル調となっているので違和感なく使用できる。中間ファイルを用いた場合の先端径とその増加率を図7にまとめる。中間ファイルを使用することで#10から1番手上げる際の先端径の増加率を50%から20%にまで軽減でき、根管形成の時間が短縮できるとともに、根管へのストレス軽減につながると考えられる。
当院では通常のファイルボックス(図8)と別に中間ファイルを併用した湾曲・狭窄根管用ファイルボックスを準備(図9)している。難易度が高いと考える根管治療の際はマイクロスコープ(図10)とX線画像(当院ではマイクロ画像とX線画像を並行して観察できるような環境を整えている:図11)そして、後者のファイルボックスを併用し、オリジナルの根管を逸脱しない根管形成を心がけている。

  • ISO規格の根管内切削器具に中間ファイルを混在させた場合の先端径とその増加率の関係図
    図7 ISO規格の根管内切削器具に中間ファイルを混在させた場合の先端径とその増加率の関係
  • 通常のファイルボックス(ISO規格の根管内切削器具)#10から#70の写真
    図8 通常のファイルボックス(ISO規格の根管内切削器具)#10から#70。
  • 湾曲・狭窄根管拡大用のファイルボックスの写真
    図9 湾曲・狭窄根管拡大用のファイルボックス(ISO規格の根管内切削器具に中間Kファイルを混在させている)。
  • ライカM320Dの写真
    図10 当院で使用中のライカM320D。HDカメラを内蔵しており、これ一台で根管内の観察そして撮影まで可能となる。
  • マイクロスコープの使用環境写真
    図11 当院でのマイクロスコープの使用環境。正面のモニタにX線画像、右上にマイクロスコープの画像が表示できるようになっており、アシスタントは画像を確認しながら、アシストワークならびに撮影を行っている。

■4. 中間ファイルを使用した根管拡大の臨床例

最後に、中間ファイルを使用した根管拡大から根管充填までを終えたケースを供覧したい。
患者は47歳の女性で上顎左側大臼歯の補綴物の脱落を主訴に来院された。パノラマX線にて歯髄腔に達するであろう、う蝕が観察された(図12)。自発痛や冷温痛などの自覚症状はなかった。う蝕を除去していくと露髄し、2根管性のように見えるが、マイクロスコープにて観察すると、近心、遠心、口蓋の根管口が一直線に並んでいることが分かった(図13)。
根管がこのように配置している場合は根管口の位置が変位していることが多く、それにより根管が湾曲していることが多い。このような根管を形成・拡大する際に中間ファイルは有効で、本症例においてはラバーダム装着後#8でネゴシエーションを行い穿通を確認し、#10、#12、#15、#17と中間ファイルを併用しながら手用ファイルにてグライドパスを作り、その後NiTiファイルを用いて根管形成を行い、続いて根管充填を行い治療を終了した。
Anticurvature filing3)を意識することで、根管形成終了時に根管口の位置が一般的な位置に変位していること(図14)、術後のデンタルX線から根管の湾曲に沿った根管形成(図15)ができていることが分かる。

  • 術前のX線画像
    図12 術前のX線画像。髄腔内に達するう蝕を認める。
  • う蝕を除去し根管口を明示した写真
    図13 う蝕を除去し根管口を明示したところ。遠心根の根管口が変位し3つの根管口がほぼ一直線に並んでいるのが観察される。
  • 根管拡大を終了した写真
    図14 根管拡大を終了したところ。オリジナルの根管を逸脱しないような根管形成をすることで根管口の位置は正常な位置に復位している。
  • 根管充填終了時のX線画像
    図15 根管充填終了時のX線画像

■5. おわりに

今回、中間ファイルの特長とその臨床的意義・有用性を述べさせていただいた。
2019年現在、ネゴシエーションに使用できるモードを備えるエンド用モーターも登場してきており、NiTiファイルとエンド用モーターの開発・発展は今後も続くと予想される。しかしながら、従来通りの手用ファイルもすぐになくなることはないであろう。最新機器の進歩は、我々臨床家にとって治療がより確実に、そしてチェアタイムの短縮につながる大変有用性の高いものである。最新の機器とコンベンショナルな機器の共存という点において中間ファイルの使用は有意義なものであると考える。

参考文献
  • 1) Cleghorn BM, Christie WH, Dong CC. Root and root canal morphology of the human permanent maxillary first molar: a literature review.J Endod. 2006 Sep;32(9):813-21. Epub 2006 Jun 30. Review.
  • 2) 吉岡隆知、須田英明:歯髄ならびに歯内療法の最新トピックス(1)、歯界展望、88(2):401~411、1996.
  • 3) Abou-Rass M, Frank AL, Glick DH.Goodchild JH. The anticurvature filing method to prepare the curved root canal. J Am Dent Assoc. 1980 Nov;101(5):792-4.

デンタルマガジン 172号 SPRING