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進化するクリアフィル支台築造システム~新ファイバーポスト「クリアフィルⓇADファイバーポストII」を追加~

クラレノリタケデンタル(株) 企画開発部

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キーワード:レジン支台築造の拡大とリスク因子/象牙質処理の新規保険適用/初期トラブルの少ない支台築造システム

■目 次

■はじめに ~レジン支台築造をめぐる環境~

近年の修復物に対する審美的欲求の高まりや、アレルギーの問題、歯根破折予防、MI概念の定着等の観点から、コンポジットレジンを活用した「レジン支台築造」が選択されるケースが増加している。特に、2016年1月にファイバ―ポストが保険適用されてから、レジン支台築造数は、大幅な伸びを記録している。支台築造全体での算定回数に大きな変動がない中で、2017年に鋳造支台築造の算定率が50%を下回り、2018年にはファイバーポスト併用のレジン支台築造は約20%に達するまでとなった(図1)。実際、レジン支台築造の信頼性は向上していると考えられ、臨床成績においては、15年間の予後調査報告で、生存率がレジン支台築造78.7%(1,752装置)、鋳造支台築造55.4%(372装置)と、レジン支台築造の方が良好な成績を示す報告がある1)
一方で、ファイバーポストを併用したレジン支台築造には、様々なリスク因子が存在する(図21)。このような考慮すべきリスクが多い中で、臨床家が特に危惧していることは築造体の「脱離・脱落」(図32)、不安や難しさを感じる点としては、「接着操作・接着強さ・防湿・レジン浸透」の、接着関連であるとの報告があり(図43)、より確実で信頼性の高いシステムが望まれていることは想像に難くない。
当社では、レジンや接着に関する技術を活用、性能向上を行いながら、術式の簡便化・使い勝手にも配慮し、ヒューマンエラーの防止を目指した製品開発を続けている。
そこで今回は、当社支台築造システムの特長について改めて紹介したい。

  • 拡大するレジン支台築造のグラフ
    図1 拡大するレジン支台築造
  • ファイバーポストコアにおけるリスク因子
    図2 ファイバーポストコアにおけるリスク因子2)
  • レジンコアによるトラブルで危惧されるケースのグラフ
    図3 レジンコアによるトラブルで危惧されるケース
  • 直接法レジンコアでどのようなところに不安や難しさを感じるか?のグラフ
    図4 直接法レジンコアでどのようなところに不安や難しさを感じるか?

■当社の支台築造システム

直接法および間接法における当社製品の活用例を図に示す(図56)。直接法においては、接着性レジンセメントの「SA ルーティング® Multi」(または「パナビア® V5」)で歯科用ポストの植立、または「クリアフィル® DCコア オートミックス® ONE」で歯科用ポスト植立および築盛まで行う方法がある。
一方で間接法においては、「クリアフィル® DCコア オートミックス® ONE」(または「クリアフィル® フォトコア」)で築造体作製後、当社接着セメントにて合着する方法を推奨している。「SAルーティング® Multi」を使用する場合には、ファイバーポスト表面のシランカップリング処理が不要となる。また、特に歯質接着性の増強を目的として、「クリアフィル® ユニバーサルボンド Quick ER」の併用が可能である。接着面が不足する等、より高い接着力が必要な場合は、併用をご検討いただきたい。ファイバーポストは、「クリアフィル® セラミックプライマープラス」で表面処理、または「SAルーティング® Multi」ではプライマー不要で植立することを推奨している。

  • 直接法における当社製品活用例
    図5-1 直接法における当社製品活用例
  • 直接法における当社製品活用例(セメント併用)
    図5-2 直接法における当社製品活用例(セメント併用)
  • 間接法における当社製品活用例</
    図6 間接法における当社製品活用例

■各製品の特長概要

当社支台築造関連材料の特長は以下の通り。
(1)「クリアフィル® DCコア オートミックス® ONE」(図7
経済的なシリンジサイズ(10 mL)でありながら、ディスペンサー不要で手で押し出せる。根管内に填入できる流動性がありながら、歯冠部に築盛できる垂れにくいペースト性状を持つことが最大の特長である。マイクロサイズとナノサイズのフィラーをバランスよく配合し、高い物性と象牙質に近似した弾性率、象牙質のような切削感となるよう設計している。
(2)「クリアフィル® ユニバーサルボンド Quick ER」(図8
操作性を向上させるためヒンジキャップを採用し、「クリアフィル® ユニバーサルボンド Quick」の中身を変更せず、2018年に名称変更した。支台築造時の重要な特長として、混和不要で、1液のままでも「クリアフィル® DCコア オートミックス® ONE」または「SAルーティング® Multi」と接触時に界面から硬化する、タッチキュアシステムを採用している。この技術は、ボンドとコア材またはセメントにそれぞれ対となる触媒を配合し、接触時コア材とボンドの界面から硬化反応を促進することで、光の届きにくい根管内でも安定した接着力を確保することが可能となっている(図9)。タッチキュア自体のコンセプトは、1980年代の「パナビア® 21」から採用されているが、本製品では触媒技術の進歩により1液で達成している。また、直接充填時のみならず、支台築造時においても塗布後の待ち時間不要で処置が行え、より短時間での処置が可能となっている。ただし、1液性のボンドは、塗布前の乾燥のみならず、その組成に有機溶剤と水を含むため、塗布後は溶剤除去のための5秒以上の乾燥操作と、液溜まり防止のため築造窩洞最深部へのペーパーポイントの使用に留意いただきたい。また、「クリアフィル® DCコア オートミックス ONE」と併用時はボンドに光照射を事前に行うことにも注意が必要である。
なお、2019年12月に診療報酬の一部改定が行われ、区分番号「M001 歯冠形成1 生活歯冠形成」を行った歯に対して、歯科用シーリング・コーティング材を用いて、象牙質細管封鎖を目的としてコーティング処理を行った場合に算定できるが、本品も対応可能となっているため、直接充填・支台築造・合着時以外にも幅広く活用できる(図8)。
(3)「クリアフィル® ADファイバ―ポストⅡ」(図10
2019年11月に発売。本品は、胴体部分は通常の円柱状として最大限の強度を確保する一方で、先端テーパー部に溝を付与することで、コア・セメント材との機械的嵌合による引き抜き抗力確保に配慮した独自形状を継承している。従来品はマトリックスレジンとガラス繊維のみの構成であったが、さらなる耐久性の向上のため、マトリックス部分にフィラーを配合、無機成分を増量することで耐久性を向上させている(図1112)。また、従来の1.04、1.24、1.44、1.64mmサイズに加えて、0.84mmの細いサイズを追加した。漏斗状根管でファイバーポストを複数植立する(アクセサリーポスト)場合や、抜髄直後の細い根管等にも適用が可能となっている。なお、細かい点であるが、ピンセット等での把持性向上のため、垂直方向への長さを4mm延長(18mm→22mm)し、操作性の向上を図っている。
ファイバーポストの表面は、酸処理または汚染除去用の「カタナ® クリーナー」で清掃後、当社「クリアフィル®セラミックプライマー プラス」のような機能性モノマーを含むシランカップリング剤で処理した際に、最も長期耐久性を得られるとの報告4)があることから、当社のシステムでも、ファイバーポストは、「クリアフィル® セラミックプライマー プラス」で表面処理すること、またはシランカップリング剤を含有する「SA ルーティング® Multi」で、直接ポスト植立を推奨している。
(4)「SAルーティング® Multi」本品の最大の特長は、独自シラン
カップリング剤のペースト内安定配合技術により、陶材やCAD/CAM冠等に「セラミックプライマー不要で、シラン処理ができるレジンセメント」である。本品を使用することで、シランカップリング剤を別途塗布することなく歯科用ポストを植立することができる。なお、詳細は本誌のSpring 2019,168号にて紹介しているため、そちらをご参考いただければ幸いである。

  • クリアフィル DCコア オートミックスの写真
    図7-1 クリアフィル DCコア オートミックスとは
  • クリアフィル DCコア オートミックスの特徴
    図7-2 クリアフィル DCコア オートミックスとは
  • クリアフィル ユニバーサルボンド Quick ERについて
    図8-1 クリアフィル ユニバーサルボンド Quick ERについて
  • 生PZ時の窩洞のコーティング処理の図
    図8-2 生PZ時の窩洞のコーティング処理
  • タッチキュアシステムについての図
    図9 タッチキュアシステムについて
  • クリアフィル ADファイバーポストⅡについての図
    図10 クリアフィル ADファイバーポストⅡについて
  • 組成の改良の図
    図11 組成の改良
  • 熱負荷付与後の曲げ強さ(耐久性の向上)のグラフ
    図12 熱負荷付与後の曲げ強さ(耐久性の向上)

■臨床評価

本システムは現在、2ヵ月の短期臨床評価が報告されている2、3)。結果は、「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」と「クリアフィル® DCコアオートミックス® ONE」を組み合わせた場合は、373症例の中トラブル発生率0.5%と非常に低い数値であった(図13)。また、「SAルーティング® Multi」を使用した支台築造のケースでは、直接法182症例、間接法192症例の合計374症例において、脱離率0%で初期トラブルがないと報告されている(図14)。

  • 短期臨床評価結果(レジン支台築造)
    図13 短期臨床評価結果(レジン支台築造)
  • 短期臨床評価結果(レジン支台築造)
    図14 短期臨床評価結果(レジン支台築造)

■まとめ

当社支台築造システムは、新たな技術を継続して導入していくことで、ユーザーにやさしい設計でありながら、性能も向上させてきた。短期ではあるが、臨床評価が示す通り、信頼性の高いシステムであることが報告されている。接着阻害因子が多く、トラブルが発生しやすい支台築造において、操作に迷わず、より確実性を目指したシステムとして、臨床にお役立ていただければ幸甚である。

参考文献
  • 1) 坪田有史:支台築造とファイバーポストコアの現状 日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 9: 94-100, 2017
  • 2) Oral Studio Report 20
  • 3) Oral Studio Report 30
  • 4) 青崎有美:ガラスファイバーポスト表面処理法に関する微小引張試験による検討 日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 3: 238-247,2011

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