DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Interview
高齢者のセルフケア指導は歯科の腕の見せどころ~自身の介護経験から学んだ 高齢者口腔ケアのあり方~
東京都江戸川区 宝田歯科医院 院長 宝田 恭子

■目 次

超高齢化にともない、高齢者の口腔ケアが大きな問題になってきています。今回は、宝田恭子先生に有効な口腔ケアツールや患者さんとの向き合い方など、ご自身のお母様の介護経験から得たさまざまな気づきについてのお話を伺いました。

■既成概念にとらわれず“患者さんに合うもの”を


東京都江戸川区
宝田歯科医院

宝田 恭子 院長
高齢の患者さんの口腔ケアにお悩みの先生や歯科衛生士の方も多いと思います。加齢によって、顎骨の骨梁構造は徐々に小さくなって歪みが生じてきます。さらに、顎骨構造が変化することで歯の角度も変わってしまい、歯と歯が重なり合うなどしてフロスが入りにくくなったり、歯間にフロスが詰まったりしてケアが難しくなりがちです。私は過去に母の介護の経験をして以来、高齢者の方のセルフケアには「ソニッケアー エアーフロス」をお薦めしています。エアーフロスは、3wayシリンジと同様の効果をセルフケアに取り入れられる点はもちろん、使いやすさの点でもとても重宝しました。
電動歯ブラシや電動デンタルフロスの利点は、腕の筋力や握力が弱くても使えるところです。私の孫は「ソニッケアーキッズ」を日常の口腔ケアに使っていますが、ハンドルが握りやすく、スイッチ類も大きくて操作が簡単。この点では、高齢者やリウマチの患者さんにもお薦めです。患者さん自身が工夫すること、何より継続して使えるなら小児用のツールをお薦めするのも一案です。“その患者さんに合うものを一緒に考えてあげるのも歯科医師の務め”、私は常々そう考えて患者さんと向き合っています。
残念ながら歯科医院で行うプロケアには限界があります。セルフケアを強化するためには、継続して指導するのは当然ですよね。「何度でも相談に来てください」という一言を添えること。そして、きちんとセルフケアができていたら、まずそれを褒めてあげることが継続するためのポイントだと思います。

  • 「ソニッケアーエアーフロス」には機能別に2種類のモデルがラインナップされている。
    「ソニッケアーエアーフロス」には機能別に2種類のモデルがラインナップされている。

■効率的な部分使いで無理なく継続

東京都江戸川区にある宝田歯科
東京都江戸川区にある宝田歯科。3代にわたって地域の口腔衛生向上に貢献してきた。
最近は、ブラッシングと歯間ケアの指導で、歯科の腕が試されると感じています。宝田歯科は三代目で、患者さんの多くは60歳以上です。ケアの方法はそれぞれですが、こちらが勉強させられるくらいデンタルIQが高い人もいらっしゃいます。意識の高い方に共通しているのは、食習慣が整っていて、自分の歯並びや食べ物が詰まりやすい箇所をよく知っている点。さらに、最初に歯間部分をきれいにしてから歯を磨くという方もいます。食物残渣の下に残ったプラークは除去が困難。最後ではなく最初にエアーフロスで食物残渣を除去して、歯間の風通しをよくする方法はとても効果的です。
ただ、面倒だと感じて続かなければ意味がありません。無理なくケアを続けるためにも、全ての歯間に使う必要はなくて、特に歯ブラシでケアしづらい箇所や詰まりやすい箇所にだけ、補助的にエアーフロスを使えば良いでしょう。
「大人のむし歯は根のむし歯」とよくいわれますが、これには食習慣の乱れが大きく関わっています。子育てや仕事から解放される50~60歳からは、自由な時間ができて食習慣が乱れてしまう人が多いようです。私はこの自由な時間こそ口腔ケアに使ってほしい。人間は誰しも、普遍的に老化します。歯に限らず、自分の身体をケアする時間は加齢とともに増えるはずなのです。「こんなに磨いているのに治らない」という方には食習慣から見直していく指導が必要だと思います。

■本人・家族にとって幸福な選択をするために

高齢者施設や病院などでは、口腔ケアにまで手が回らないという現状があります。本人や家族による口腔ケアができれば、それに超したことはありません。ただ、歯ブラシ1本で十分なケアをしてあげられるかと考えた時に、エアーフロスを含めさまざまな選択肢があることを早い段階から患者さんやご家族にお伝えしてほしいですね。
介護をする側にとっては、実は総義歯の方がケアしやすいという話も耳にします。実際、私の母は、80歳を過ぎても全部自分の歯を保っていましたが、歯肉が下がって歯間鼓形空隙ができ、結果としてケアは複雑になっていました。ただ母は、食事に補助が必要な人や義歯が合わずに痛い思いをしている人が多い中で、「全部自分の歯なんです」と常々周囲に話すほど、それがとても誇らしかったようです。
たとえ我が子であっても介護される側は遠慮してしまうものですし、施設に会いに行くだけしかできないのは家族にとってもつらいもの。そんな時に、何か役立てることがあると、介護する側も救われると思います。私自身がきちんとしてあげたいと思いましたし、今後も患者さんやご家族のそうした想いを支えていきたいですね。

■生活全体における口腔ケアのあり方を考える

健康長寿の社会を実現するためには、歯科だけではなく、持病の有無や食事のバランス、生活習慣や睡眠の質などを含め、生活全体における口腔ケアを考える必要があると感じています。そうすることで、患者さん一人ひとりによりマッチした的確なアドバイスができるのではないでしょうか。
患者さんには、生きている限り、宝田歯科までご自分の足で歩いて通ってほしいと思っています。補助なしに自力で通院している人はごく少数。でも、颯爽と歩いて通院できるというのは、美しい人生ですよね。言葉で語るほど簡単ではありませんが、それが実現できてこその健康長寿社会。「まだまだ歯科にできることはたくさんある」、そう感じています。

デンタルマガジン 172号 SPRING