DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
マニー新型NiTi ロータリーファイル「JIZAI」の開発コンセプトから使用法について
日本大学松戸歯学部 歯内療法学講座 臨床教授/付属病院特別診療室 マイクロスコープ特診外来 辻本 恭久

キーワード:NiTiロータリーファイル、形状記憶、オフセンター、マルテンサイト相

■目 次

■はじめに

 根管治療にファイルは欠かせないものである。1988年にNiTiハンド用ファイルが開発され1)、1990年代に入るとロータリー用のNiTiファイルが市販されるようになった。以来、根管治療にはNiTiファイルが多用されるようになってきた。
開発当初のNiTiファイルはオーステナイト相が主であり、超弾性の性質を持つファイルであった。ただ、ステンレススチールファイルと比較し、根管内の追従性は向上したが、根管拡大中に根管内で突然破折するという偶発症が問題となった。
さらに、根管口部を確実にストレート化(ロート状拡大)せず、いきなりNiTiファイルを根管内に使用すると、スムーズな根管拡大を行えずレッジを形成、あるいは穿孔を起こすこと等が問題であった。
そのため、NiTiロータリーファイルを使用する場合の手順や、使用する回転数、トルク等について、これまでに多くの研究者たちが研究をしてきた。
また、NiTiロータリーファイル自体の構造についても様々な検討がなされた。さらに、NiTiファイルについても開発時に使用されていたオーステナイト相のものから、オーステナイト相とマルテンサイト相の間に相当するR相ファイルの開発が進み、超弾性のNiTiファイルから形状記憶特性のものへと市場も変わってきた。
NiTiロータリーファイルを使用しないと考えている歯科医師は、使用中にファイルが破折してしまい除去が難しいことから、安心して使用できないと思っているのではないだろうか。
歯科治療用器材は、術者がより安心して使用でき、患者にとって安全でなくてはならないのは当然である。そのために、根管治療の際、より安全性の高いNiTiロータリーファイルが望まれる。

■マニー「JIZAI」について

この度、マニー株式会社から発売されたNiTiロータリーファイル「JIZAI」はマルテンサイト相に近いR相であり、図1に示したようにファイル本体を曲げた後の形態については、オーステナイト相のファイルは形態が元に戻り、中央のR相ファイルはある程度曲げた位置から戻るが、JIZAIは曲げた位置のままになっている。
この状態を見てもJIZAIが中央のR相ファイルよりもよりマルテンサイト相に近い状態であることがわかる。根管内の破折に関しては、オーステナイト相よりもR相のほうが疲労破折に関しては耐久性があることがわかっている2)
また、図2に示したように疲労破断性向上のためにオフセンター構造を採用しており、コア率も減少させている。コア率を減少させることで疲労破断性が向上することは既に我々が報告3)しており、JIZAIは適切なコア率の構造で設計されている。
通常臨床で使用するJIZAI Ⅰ(#25.04)、JIZAI Ⅱ(#25 .06)、JIZAI Ⅲ(#35 .04)の断面形状は図3に示したように、ラジアルランド1つを有し、オフセンター構造となっている。オフセンター構造だと根管を追従しやすく、また深いファイル溝とフルート部分を大きくとっているため、切削片を根管上部へと運びやすい構造となっている。
さらに、図4に示したように前詰めピッチにしてあるため、根管拡大時のスクリューイングを軽減することができる。。

  • Au相file、R相file、JIZAI(R相file,Martensite寄り)の写真
    図1 上から下へ、Au相file、R相file、JIZAI(R相file,Martensite寄り)
  • 耐疲労性の向上の図
    図2 耐疲労性の向上はコア率で変化する。
  • JIZAIを横から見た図(上)と横断面(下)
    図3 JIZAIを横から見た図(上)と横断面(下)
  • JIZAIのピッチの写真
    図4 JIZAIのピッチは前詰めになっておりスクリューイング(引き込まれ)感が減少する。

■「JIZAI」による根管形成法

 現在、NiTiロータリーファイルを使用して根管治療を行う場合の基本的手順として考えられているのは 1. 天蓋除去 2. 根管口明示 3. 根管口部のストレート化(ロート状拡大) 4. 根尖孔へのネゴシエーション 5. 穿通(以下、patency) 6. 根管長測定 7. 根管の予備拡大(以下、glide path) 8. NiTiロータリーファイルによる根管拡大 9. 根管洗浄 10. 根管充填になると思うが、術者によって使用する機材や機器は多少の違いがある。
今回紹介する、「JIZAI」を用いた根管形成法には、トライオート ZX2(モリタ、図5)を用いている。
トライオート ZX2にはglide pathを行う際のOGP(Optimum Glide Path)モード、根管拡大形成を行う際にファイルの破折を防止するためのOTR(Optimum Torque Reverse)モードが付いている。

<根管口部のストレート化>

天蓋除去、根管口明示以後の根管拡大形成の手順は、図6に示したようにフルレングス(Full Length)法で行う。それぞれについて人工根管模型を使用してステップごとに解説する。
図79に示したのは、オリフィスオープナー(#25, .14)を用いて根管上部(1/3~1/2)を切削し根管口部のストレート化(ロート状拡大)のステップである。トライオート ZX2のOTRモード 500r/min,180deg, 0.8Ncmを使用する。
図9において、根管口部がストレート化されたのが観察できる。臨床においては、この根管口部の処置をすることによって、第二象牙質・第三象牙質で覆われて狭窄している根管口部を、クリアーに明示し広げることによって、根管拡大に使用する各種器具が無理なく根管内に挿入できるため、器具の破折、根管のレッジ形成等の偶発症を防ぐことができる。特に、高齢者の歯髄腔は狭窄しており、時として肉眼では根管口の確認が困難なこともある。その場合は、マイクロスコープを使用して根管口を確認することが求められる。

<根尖孔へのネゴシエーション・根管長測定>

次に、根尖孔へのネゴシエーションであるが、われわれは、#10のDファインダー(マニー)で根尖孔がpatencyできていれば、#15, .02のスーパーファイル(マニー)でトライオートZX2を用いての glide path は100%成功すると既に報告4)している。そのため、まずDファインダー(図10)を使用して根尖孔へのネゴシエーション、根尖孔からのpatencyを行う(図11)。また、臨床ではこの時、根管長測定を行い、作業長を決定する。

<Glide path>

次に、#15, .02のスーパーファイル(図12)を用いてglide pathを行う。その時使用するトライオート ZX2はOGPモード300r/min, 180degで設定する。図13は#15, .02のスーパーファイルを使用してglide pathを行っている最中の状態であり、図14は終了時の状態である。このglide pathは狭窄している根管、湾曲している根管の予備的拡大として理解するとよい。根管長測定ができたからと、いきなりNiTiロータリーファイルで根管拡大形成を行うと、根管の形態によっては、ファイル自体に無理な圧がかかり破折してしまうことが知られている。また、根管のトランスポーテーションが生じてしまうこともある。

<「JIZAI」による根管拡大形成>

Glide pathが終了したら、「JIZAI」で根管拡大形成を行う。トライオートZX2 OTR モード500r/min 180deg,0.8Ncmに設定して使用する。
1. 最初にJIZAI Ⅰ(#25, .04)を使用する。図15にJIZAI Ⅰを使用して拡大中の状態を示し、拡大終了後の状態を図16に示した。
使用時にはブラッシングモーションで上下しながら根尖部へと進行させて、根尖孔部に達したら引いて、2、3回根尖孔部に達するようにする。あまり何度も行うと根尖孔部を広げてしまう可能性もあるので、根管洗浄し次のステップへと進む。
500r/minを使用するのが早く感じて怖い術者には、300r/minで使用しても差し支えないが、現在我々が持っているデータでは、500r/minで使用しても他のNiTi ロータリーファイルを300r/minで使用した時よりも耐疲労破断性は高く、またセンタリングアビリティーすなわち根管のトランスポーテーションが起こる確率も他のものより低いことが分かっている(現在論文投稿中)。
2. 次にJIZAI Ⅱ(#25, .06)を使用する。図17に根管拡大中の状態を示し、図18に根管拡大終了後の状態を示した。使用方法はJIZAI Ⅰと同様である。非常に狭窄した根管や湾曲の強い根管はJIZAI Ⅱまでの拡大形成とする。ただし、感染象牙質が残存している場合はその限りではない。
3. 最後にJIZAI Ⅲ(#35, .04)を使用して根尖部の拡大形成を行う。図19には根尖部拡大形成中の状態を示し、図20には形成終了時の状態を示した。JIZAI Ⅱで拡大形成された根管はテーパーの関係で、JIZAI Ⅲで形成する際、根尖部が拡大形成される。
図21には根管拡大形成前の人工根管模型と、根管拡大形成された人工根管模型を示しているが、根管にトランスポーテーションがみられないことがわかる。
最後は手用ファイルで根尖孔の状態、根管に感染歯質の残留がないかなどを確認して、問題なければ最終的な根管充填を行う。

  • トライオート ZX2の写真
    図5 トライオート ZX2
  • 根管拡大形成の手順
    図6 根管拡大形成の手順
  • オリフィス オープナー #25 .14の写真
    図7 オリフィス オープナー #25 .14
  • オリフィス オープナーを用いての根管口を含む上部の形成する写真
    図8 オリフィス オープナーを用いての根管口を含む上部の形成。
  • オリフィス オープナーによる根管のストレート化が終了した状態
    図9 オリフィス オープナーによる根管のストレート化が終了した状態。
  • Dファインダー(マニー)の写真
    図10 Dファインダー(マニー)
  • #10 .02のDファインダーを用いてのネゴシエーションとpatencyの写真
    図11 #10 .02のDファインダーを用いてのネゴシエーションとpatency。
  • スーパーファイル(マニー)の写真
    図12 スーパーファイル(マニー)
  • スーパーファイルを用いたglide path中の状態
    図13 スーパーファイルを用いたglide path中の状態。
  • スーパーファイルを用いたglide path終了時の状態
    図14 スーパーファイルを用いたglide path終了時の状態。
  • JIZAI Ⅰ #25, .04を用いた根管拡大形成中の状態
    図15 JIZAI Ⅰ #25, .04を用いた根管拡大形成中の状態。
  • JIZAI Ⅰ #25, .04を用いた根管拡大形成終了時の状態
    図16 JIZAI Ⅰ #25, .04を用いた根管拡大形成終了時の状態。
  • JIZAI Ⅱ #25, .06を用いて根管拡大形成中の状態
    図17 JIZAI Ⅱ #25, .06を用いて根管拡大形成中の状態。
  • JIZAI Ⅱ #25, .06を用いた根管拡大形成終了時の状態
    図18 JIZAI Ⅱ #25, .06を用いた根管拡大形成終了時の状態。
  • JIZAI Ⅲ #35, .04を用いて根尖部形成中の状態
    図19 JIZAI Ⅲ #35, .04を用いて根尖部形成中の状態。
  • JIZAI Ⅲ #35, .04を用いた根尖部形成終了時の状態
    図20 JIZAI Ⅲ #35, .04を用いた根尖部形成終了時の状態。
  • 根管拡大形成前(左)と形成後(右)の人工根管模型の比較
    図21 根管拡大形成前(左)と形成後(右)の人工根管模型の比較。

■臨床例

患者は60代女性。#27の歯冠部破折で抜髄が必要になったが、「根管が湾曲しているので根管治療が困難と思われる」とのことで依頼医から紹介された。
術前のX線写真を図22に示した。患者に特記すべき既往歴はなく、局所麻酔後に歯冠部の病的歯質を除去し、コンポジットレジンで隔壁を形成、ラバーダム防湿下で抜髄、根管治療、根管充填を行った。
根管口は今回提示したオリフィスオープナー(#25, .14)を使用した。
#10 Dファインダーを使用して、根尖孔へのネゴシエーション、patencyを行いトライオート ZX2を用いて根管長測定を行った。
その後、トライオート ZX2 OGPモード 300r/min, 180degにて#15 スーパーファイルでglide pathを行った。
15%EDTA、2.5%NaClOで根管洗浄を行い根管内の無機質(スミヤー層)、有機質(歯髄残渣)を除去し、JIZAIⅠをトライオート ZX2 OTRモード500r/min 180deg, 0.8Ncmで使用し根管拡大形成を行った。
引き続きJIZAI Ⅱを使用した根管拡大形成を行い、最終根管洗浄を15%EDTA、2.5%NaClOを用いて行い、最後は生理食塩水で根管洗浄し根管乾燥を行った。
根管充填はデュオガンを用いてインジェクション法で行った。根管充填後のX線写真を図23に示した。
根管形成は湾曲根管に沿って正確になされており、根管充填も密に根管を填塞している。
図24にはジルコニアボンドクラウンを装着した後の予後のX線写真である。

  • #27術前のX線写真
    図22 #27術前のX線写真。
  • #27根管充填後のX線写真
    図23 #27根管充填後のX線写真。
  • 補綴装置セット後のX線写真
    図24 補綴装置セット後のX線写真。

■まとめ

 「JIZAI」を使用した根管拡大形成は、前処置をしての根管口の適切なストレート化、根尖孔までの適切なネゴシエーション・patency・根管長測定が行われていれば、本来の根管を逸脱することなく、より簡単に安全にそして安心して行うことができると考えられた。

参考文献
  • 1) Walia H, Blantley WA, Gerstein H. An initial investigation of the bending and torsional properties of nitinol root canal files. J Endod 1988; 14:346-351.
  • 2) Zupanc J, Vahdat-Pajouh N, Schafer E. New thermomechanically treated NiTi alloys-a review. Int Endod J 2018; 51:1088-1103.
  • 3) Izawa M, Tsujimto Y. Ni-Ti file fatigue fracture and cuttability investigation, and design with differing core ratios. Int J Microdent 2019; 10:40-46.
  • 4) 和田 健、渡邊昴洋、中澤弘貴、伊澤真人、辻本恭久. Tri Auto ZX2を使用した根尖孔穿通の検討.日歯内療誌2019; 40:111-116.

デンタルマガジン 173号 SUMMER