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迅速かつ効果的なチェアサイド・コンディショニングを可能にしたイニセルインプラントのメカニズム

株式会社モリタ セールスプロモーション部

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超親水性の再獲得/コンディショニング処理/フィブリンネットワーク

■目 次

■はじめに

歯科インプラント体の表面性状は、生体材料へのタンパク吸着、細菌あるいは細胞付着に影響を与えます。
そのため、インプラントメーカー各社では、酸処理、サンドブラスト処理、酸処理とサンドブラスト処理の組み合わせなど、様々な性状加工を導入してきました。
しかし、チタン製インプラントは、酸処理などの処理直後は親水性を保っていますが、大気に触れることにより、表面に炭素などの有機物が付着し、時間の経過とともにチタン表面の炭素量が増加することが知られています。
その結果、チタン表面が疎水性表面へと変化し、細胞の接着や増殖の減少が認められ、骨結合速度の遅延や骨結合強度の減少がみられることがこれまでの研究により分かっています1)
つまり、このことは時間の経過に伴ってインプラントの機能が低下していることを示唆しています。
こうした機能低下の解決方法として、トーメンメディカルでは、専用ケースを使用し超親水性の再獲得を目指した「イニセルインプラント」(図1)を本国スイスはじめ諸外国で数年前から臨床使用を行ってきました。そしてこのたび国内販売が可能となり、日本国内の先生方にもご使用いただける運びとなりました。
本稿では、そのプロセスと特長についてご紹介させていただきます。

  • イニセルインプラントの写真
    図1「イニセルインプラント」


    出典元:Martin Oreggerli, www.micronaut.ch

■超親水性表面の再獲得

前述のように、チタン性インプラントの表面は大気に触れることにより、その表面に有機化合物が付着し、時間経過とともに疎水性表面へと変化していきます。イニセルインプラントでは、埋入直前にチェアサイドで簡単に行える「コンディショニング」を採用することにより、本来の超親水性表面を再獲得することが可能になりました。
チタン表面の親水性の獲得は、初期細胞接着に有利な影響を与えることがすでに報告されており、初期接着の向上は、チタン表面構造が備えているosseointegration能力を発揮するための重要な因子の一つであると考えられています。
イニセルインプラントは「APLIQUIQ®」という専用ケース(図2)にストレージされ供給されます。APLIQUIQ®本体にはアルミシールで密封されたアルカリ性コンディショニング剤が一体化されており、インプラントの埋入直前にカートリッジを押し込むことで、インプラント体がコンディショニング剤に浸漬され、表面に付着した有機化合物を除去し超親水性を再獲得することができます(図3)。
コンディショニング剤に浸漬された超親水性表面は血液浸潤性が高く、タンパク質を均一に吸着します。その結果、埋入直後から活性化した血小板がフィブリンネットワークを形成することで、治癒期間早期の段階においてインプラント体への骨結合の促進が期待できます(図4)。
小さなアクセスホール、5μm以下のマイクロギャップ、回転防止機構など、強度と審美性を兼ね備えたシンプルで精密なフィクスチャー構造は従来までのSPIシステムと変わりません。ストレートタイプの「エレメント」、テーパードタイプの「コンタクト」の2種類のインプラント形態をラインナップ。カラー部分は0.5mm~2.5mmまで選択可能で、前歯部から臼歯部まで幅広い症例に対応します。さらに、補綴パーツは従来のSPIシステムと共通です。

下のチャートエリアは横スクロールできます
  • イニセルインプラントと従来のSPIインプラントの治癒の初期段階における比較(埋入2週間後 動物実験)
    図2 イニセルインプラントと従来のSPIインプラントの治癒の初期段階における比較(埋入2週間後 動物実験)。
  • コンディショニング処理による親水性の変化
    図3 コンディショニング処理による親水性の変化
    チタンインプラントの表面特性は主にナノメーター領域の厚さの酸化膜の有無で決定されます。この表面特性は製造後から保管中にかけて空気と反応して変化するため表面エネルギーが低下し、その結果、時間の経過とともにチタンインプラントは疎水性(撥水性)となります。イニセルインプラントはコンディショニング処理を行うことにより、インプラント表面を変化させることで超親水性表面を再獲得し、血液による自発的かつ、浸潤を促進します。
    親水性の変化に関する動画はコチラから

  • 図4 超親水性表面における骨形成の促進
    インプラント表面にタンパク質が均一に吸着され、さらにフィブリンマトリックスと活性化した血小板が、骨芽細胞の吸着を促進します。この治癒過程はサンドブラスト・酸エッチング処理によるラフサーフェイスとコンディショニングによる超親水性(アルカリ性)表面により創傷治癒の加速に影響を与えていることを示唆しています。
    出典元:Burkhardt, M., Waser, J., Milleret, V. et al. Synergistic interactions of blood-borne immune cells, fibroblasts and extracellular matrix drive repair in an in vitro peri-implant wound healing model. Sci Rep 6, 21071 (2016) Nature

■最後に

今回国内発売されたイニセルインプラントは、コンディショニング処理を行うことにより、インプラント表面を変化させることで超親水性表面を再獲得し、血液による自発的かつ、浸潤を促進します。その結果、迅速なosseointegrationの獲得、早期脱離リスクの軽減、治癒期間の短縮、即時(早期)荷重への対応など、さまざまなメリットが期待できます。今後の先生方の日常臨床においてお役立ていただければ幸いです。

下のチャートエリアは横スクロールできます

  • 図5 APLIQUIQ®のメカニズム
    APLIQUIQ®はイニセルインプラントの超親水性表面の作成に使用する、迅速かつ効果的なチェアサイド・コンディショニングを可能にします。
    埋入直前に、ワンハンドで簡単にコンディショニングを行うことを目的にデザインされています 。
    APLIQUIQ®の操作手順に関する動画はコチラから
参考文献
  • 1) 池田 善之:「チタン表面の親水性が骨芽細胞に及ぼす効果」日本歯学, Nihon Univ Dent J, 89, 15-21, 2015.

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