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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
歯周外科治療における低侵襲・高効率のアプローチ
東京都中央区開業 長谷川 嘉昭

歯周光線療法の併用/Er:YAGレーザーの活用方法/術前のCBCT画像解析の重要性

■目 次

■緒言

自院における通院患者の高齢化率は毎年上昇し続け、現在は27.21%になり、超高齢社会型歯科医院になっている。高齢者の残存歯数の増加は、同時に歯周炎罹患率と比例していて、歯周外科および欠損部位に対するインプラント外科手術も増加傾向にあることを鑑みると、今後ますます高齢者の歯周疾患への対応を考えなくてはならない。
特に歯周基本治療において非外科的処置のみでは対応できない患者に、「術後疼痛と腫脹」を経験させたならば、次の外科処置には難色を示すものである。それが高齢者ならなおのこと難しい。そのため歯周外科処置等が必要な高齢患者には、侵襲度合いを減らす工夫として低侵襲のフラップデザインや、臨床的に細かなテクニックを各自が持ち合わせて対応しているのだと思う。
Cortellini等が提唱するMISTやM-MISTは、まさに低侵襲・高効率なアプローチであり、時代にマッチした施術方法であるが、顕微鏡下での手術をあれ程上手に行える技量は私にはない。自分の技量を客観的に判断すると拡大鏡下(×3.0~×5.0程度)における施術が精一杯で、その中で高効率を目指した術式を選択している。
『裏付けのある歯周再生療法』の著者:安藤によれば、歯周外科処置におけるデブライドメントは、①軟組織、②歯根面、③骨面、④歯周靭帯と4ZONEの廓清が重要であると説いているが、従来のハンドインスツルメントのみでは歯根面の廓清ができても骨小腔の軟組織や歯周靭帯に残存する斜走線維を取り残しやすい。そこでEr:YAGレーザーとハンドインスツルメントを併用させることで高効率な廓清が可能となり、歯周組織再生療法の予知性はかなり向上したと思っている。
したがって、セメント質剥離や全身疾患を伴う高齢者への施術にも、この歯周光線療法の併用は有効であり、低侵襲なこの方法は今後大きな進歩を遂げると確信している。さらにフラップデザインの一工夫としてのSingle FlapApproach(SFA)や歯間乳頭温存切開によるエンベロープフラップの適応も、低侵襲な施術方法で、術後の患者負担を軽減できる特徴がある。
他にもさまざまな術式があると思うが、拡大鏡下でも十分に対応できる身の丈に合った技術の修練が、結果として高効率な術式に結びついていくのではないだろうか。そして、これらの戦術を可能にした副因は、術前におけるCBCT画像診断に他ならない。骨内欠損形態を三次元的に正確に把握することで、適切なフラップデザインの選択と廓清方法を術前にシミュレーションすることで、低侵襲・高効率な歯周外科処置が可能になったと考えている。
ここでは臨床例を提示し、特にEr:YAGレーザーの活用方法にフォーカスして紹介してみたい。

■症例供覧

症例1 初診時67歳 男性 左上1番頰側 セメント質剥離への対応

デンタルX線写真からも左上1番の近心面にセメント質剥離を疑う所見が確認できる。Linらによればセメント質剥離症例における成功の最重要ポイントは、完璧な廓清であると報告している。術野の確保と患者への外科的侵襲軽減のために歯間乳頭部切開はPapillae Preserved Technique(PPT)を用い、Single Flap Approach(SFA)にて歯肉弁を剥離した(図1)。
秋山らは、根面の除菌効果は超音波スケーラーよりEr:YAGレーザーの方が高く、青木らによれば、根面のデブライドメントは重篤な熱傷害なく効果的に達成できると報告している。臨床実感として多少時間は掛かるものの、ハンドインスツルメントとの併用が望ましいと考えている(図2)。
Er:YAGレーザー Erwin Adverl Evo(モリタ)にて歯根面、骨面および歯周靱帯部の廓清後にエムドゲインを塗布し、懸垂マットレス縫合と単純縫合を2種類の異なる縫合糸を併用して行い、Wound Healingを狙ってエムドゲインを追加塗布した(図3)。
術後30ヵ月経過時のCBCT画像からも、術前の骨内欠損は骨様組織で満たされていることがわかる。歯周ポケットも全周で2mmと術後経過は良好に推移していると考えている(図5

  • 近心8mmの歯周ポケットの写真
    図1 近心8mmの歯周ポケット
  • Er:YAGレーザーでの廓清が終了した状態と術前のデンタルX線写真
    図2 Er:YAGレーザーでの廓清が終了した状態と術前のデンタルX線写真
  • エムドゲイン塗布直後と縫合終了時のエムドゲインの追加処置の写真
    図3 エムドゲイン塗布直後と縫合終了時のエムドゲインの追加処置
  • 術後32ヵ月経過時の口腔内とデンタルX線写真
    図4 術後32ヵ月経過時の口腔内とデンタルX線写真
  • 初診時と術後30ヵ月経過時のCBCT画像比較写真
    図5 初診時と術後30ヵ月経過時のCBCT画像比較
    CBCTは「ファインキューブ<ヨシダ>」を使用。
症例2 同一患者の右下4番の歯周ポケットへの対応

極力、非外科的で低侵襲性のアプローチを考えた場合、従来通りの歯周基本治療で進めるか、フラップレスでの何らかの対応になる(図6)。
そこで私が選択した術式は、各種レーザーの特徴を利用したレーザートリートメント:Minimally Invasive LaserSurgery(MILS)である。歯根面および骨面のデブライドメントにハンドインスツルメントとEr:YAGレーザーを使い、骨髄からの出血を炭酸ガスレーザーにて血餅形成させるこの方法は、一般的なフラップと比較して術後疼痛をかなり低減できる利点がある(図7)。
最近では、フラップレスで処置した際にエムドゲインをポケット内に塗布する臨床報告も散見させるようになってきた。効果の程はよくわからないが、高齢患者における歯周治療の新たな試みとしては納得できる。私自身、まだ手探り状態であるがいろいろな術式を検討している。
顕著な骨再生は確認できないが、臨床的には歯周ポケット3mm以内で経過良好である(図8)。冒頭にも触れたが、医院の高齢化率は今後ますます増加の一途を辿ることになるため、MILSを含め、Er:YAGレーザーの使用頻度は高まるばかりである。

  • 診察時の写真
    図6 4の頰側近心から舌測にかけて最深部7mmの歯周ポケットがあり、出血と排膿を認める。
  • 治療時の写真
    図7 MILSの術式(注:血餅形成はEr:YAGレーザーでも問題なくできる)
  • 術後21ヵ月経過時の口腔内写真とデンタルX線写真
    図8 術後21ヵ月経過時の口腔内写真とデンタルX線写真
症例3 初診時55歳 男性 左下6番再生療法の紹介依頼患者への対応

初診時における口腔内検査としてデンタルX線写真と歯周ポケット値の測定はもちろん重要であるが(図9)、根分岐部や遠心骨内欠損の立体的な大きさなどは二次元の診査では限界がある。骨内欠損形態を3次元的に把握するには今やCBCTは欠かせないし、治療戦略として画像解析から切開線等のフラップデザインや術後予測をシミュレーションすることは、歯周組織再生療法には必須と考えている(図10)。
正確に分析することで、隣接歯根間距離がある舌側の2壁性骨内欠損であることがわかる。6番遠心側の骨内欠損の改善は見込めるものの、舌側からのⅢ度の根分岐部病変の完全閉鎖は困難である可能性が高い。再生療法においては、術前に結果予測を伝えることも重要であり、その後の対応に影響を与えると考えている。
術前のCBCTシミュレーションから隣接歯根間距離があるため、歯間乳頭部は温存切開が可能であり、頰側からのMPPF(Modified Papillae PreservationFlap)を選択し、舌側にフラップを全層弁にて剥離翻転した(図11)。
デブライドメント時の出力は、25pps 70mjを基本に、TipはPおよびPSタイプを使用して廓清を行った(図12)。乾燥させると白濁した歯根面をEDTAにて処理後、エムドゲインを塗布して終了させた。正常骨膜上の歯間乳頭切開なので、1次治癒が期待でき、尚且つ複雑な縫合を必要としない利点がある。術前のCBCT画像解析が如何に重要であるかがご理解いただけたことと思う。
2週間後の抜糸時の口腔内写真からも分かるように、患者への外科的侵襲度合いも最小限なため、術後の疼痛・腫脹などご不便を掛ける心配も少なくてすむ。
術前と比較しても頰側・舌側ともに歯肉退縮は少なく、術後の知覚過敏等の後遺症も全くなかった。患者のプラークコントロール能力も高く、現在7年経過しているが良好な状態を維持している。対合歯がインプラント補綴のため、検診時の咬合調整には細心の注意をはらっている(図13)。
CBCT画像評価としては、遠心と舌側の骨梁が鮮明になり骨様組織の再生が確認できる。当初からの予測通り舌側からのⅢ度の根分岐には、骨様組織の回復は見られないが出血も動揺もなく、安定している(図14)。

  • 初診時の口腔内写真とデンタルX線写真
    図9 初診時の口腔内写真とデンタルX線写真
  • 術前のCBCT画像
    図10-1 術前のCBCT画像
  • シミュレーションしたCBCT画像
    図10-2 シミュレーションしたCBCT画像
  • 処置に対する切開線と剥離翻転した状態の写真
    図11 6の処置に対する切開線と剥離翻転した状態
  • Er:YAGレーザーにて根面の廓清終了時(左)、縫合時(中)、術後2週間(右)の写真
    図12 Er:YAGレーザーにて根面の廓清終了時(左)、縫合時(中)、術後2週間(右)
  • 術後7年経過時の口腔内写真とデンタルX線写真
    図13 術後7年経過時の口腔内写真とデンタルX線写真
  • 術後7年経過時のCBCT画像
    図14 術後7年経過時のCBCT画像
症例4 初診時44歳 女性 遠距離紹介患者の再生療法への対応

正直、皆さんならこの歯を保存するだろうか?でも患者は一縷の望みをかけて遠方からお越しになった。さて!どう対応するべきか…。
まず、歯周病原細菌検査、血液検査、高感度CRP等の病因検査とCBCT、デンタルX線写真等の病態検査を行い、疾患の原因は?何故こうなったのか?を考えてみた(図1516)。
歯科的な炎症(出血・排膿等)はかなり重度であるが、血液からの生化学検査および高感度CRP値はすべて正常範囲内であり、歯周病原細菌検査からはいわゆるレッドコンプレックス等の細菌は検出されなかった。歯髄の生活反応は±で動揺度2+であり、咬合性外傷を主体とする骨破壊と診断した。こちらも一縷の可能性を信じ、これらの検査結果を患者に伝え、保存する方向性で治療を開始した。
根管治療と歯牙の固定を最優先し、早期に外科的対応として再生療法を検討した(図17)。
歯根面の廓清にはTipのP typeでレーザーの拡散を意図的に狙い、25pps70mjの出力にて通常処置の2~3割長く照射した。当然、ハンドインスツルメントも併用しているがストローク圧が強いと抜歯される恐れがあり、かなり慎重に対応した(図18)。
初診時と比較すると患歯周囲の骨梁状態が良好に回復していることがわかる(図19)。しかし、舌側の根分岐部に沿うグルーブ周囲から遠心側にかけて透過像があり、Re-entryしてその経過を確認することにした(当然、患者からは再手術における同意のもとで行っている)。CBCT画像とほぼ狂いなく、骨様組織の再生を認めるが、舌側から遠心部にかけて不良肉芽が残存している(図20)。
初診時および1回目の施術7ヵ月後と比較すると徐々にではあるが、骨梁構造がしっかりしてきていることがわかる。現在、経過途中ではあるが、この症例をいま提示した理由は、歯根面の廓清の良否で骨様組織の再生状態がかなり影響を受けていることを理解して欲しいからである。自戒も含めて「廓清した」と「廓清できた」と「廓清ができている」では、結果に大きな違いを生むとの認識である(図2122)。ハンドインスツルメントによる歯根の廓清は、今なお主流ではあるがEr:YAGレーザーの併用療法なくして私の臨床は語れないほどになっている(図2324)。

  • 初診時の左下臼歯部の口腔内写真
    図15 初診時の左下臼歯部の口腔内写真
  • CBCT画像
    図16 初診時の7のCBCT画像
  • 歯周外科時の口腔内写真
    図17 歯周外科時の口腔内写真。右:遠心歯根面には多量の歯石が確認できる。
  • 清終了後の写真
    図18 廓清終了後、エムドゲインのみを塗布しフラップを縫合して終了した。
  • 術後7ヵ月経過時のCBCT画像
    図19 術後7ヵ月経過時のCBCT画像
  • 最初の手術時と7ヵ月経過時の口腔内写真
    図20 最初の手術時と7ヵ月経過時の口腔内写真の比較
  • 意図的アンキローシスを狙って、再植と再生療法を併用するために一旦抜歯した写真
    図21 意図的アンキローシスを狙って、再植と再生療法を併用するために一旦抜歯した。
  • 抜歯した歯の写真
    図22 白丸に示す箇所に残存汚染物質を認めた。やはりこれだけ深い骨内欠損における根面の確実な廓清がいかに難しいことなのかを痛感した。
  • 治療写真
    図23 残石等の汚染物質の除去を目的に、Er:YAGレーザーを用いた。再植終了後にエムドゲインを塗布して施術を終えた。
  • 再植・再生療法6ヵ月経過時のCBCT画像
    図24 再植・再生療法6ヵ月経過時のCBCT画像

■まとめ

多くの研究者や臨床家によって、Er:YAGレーザーの有効性が報告されている現状を鑑みると、歯周治療における光線療法の需要は、今後ますます増加の一途を辿るであろう。
しかし、その足かせになっている最大の問題は、器機の価格と大きさ、さらにTipの消耗速度の速さが原因ではないだろうか。取り回しの良さと高効率なTip開発の今後を期待し、稿を閉めたい。

参考文献
  • 1) Akiyama F, Aoki A, Miura-Uchiyama M, Sasaki KM, Ichinose S, Umeda M, Ishikawa I, Izumi Y. In vitro studies of the ablation mechanism of periodontopathic bacteria and decontamination effect on periodontally diseased root surfaces by erbium:yttriumaluminum-garnet laser. Lasers Med Sci 2011: 26: 193-204.
  • 2) Aoki A, Ando Y, Watanabe H, Ishikawa I. In vitro studies on laser scaling of subgingival calculus with an erbium:YAG laser. J Periodontol 1994: 65: 1097-1106. 3)Aoki A, Miura M, Akiyama F, Nakagawa N, Tanaka J, Oda S, Watanabe H, Ishikawa I. In vitro evaluation of Er:YAG laser scaling of subgingival calculus in comparison with ultrasonic scaling. J Periodont Res 2000:35: 266-277.