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前歯部保険適用CAD/CAM冠材料「カタナ® アベンシア® N」の特長
クラレノリタケデンタル株式会社 営業・マーケティング本部 企画開発部

キーワード:滑らかな色調グラデーションを持つレジンブロック/信頼性を高めるトータルシステム

■目 次

■はじめに

歯冠修復では金属、セラミック材料、レジン系材料が目的に応じて臨床で使用されてきた。近年ではCAD/CAM技術(Computer-Aided Design/Computer-Aided Manufacturing)を用いた歯冠補綴装置の作製が普及しつつある。当該技術が確立されるに伴い、2014年の診療報酬改定ではコンポジットレジンブロック(以下、レジンブロック)を切削加工して得られるCAD/CAM冠が小臼歯に対して初めて保険適用となった。その後、2017年には下顎第一大臼歯にもCAD/CAM冠が保険適用となり(上顎は2020年4月より保険適用)、さらに2020年9月には前歯部への保険適用が決まり、保険診療における歯冠修復が今後益々デジタル技術に支えられてゆくものと考えられる。
CAD/CAM冠が普及するにつれて、歯科医療の安心・安全に対する考えに基いた日本歯科材料工業協同組合規格(JDMAS 245)が2017年に制定され1)、適用部位に応じてレジンブロックに求める性能基準が明確化された。これを受けてメーカーでの材料開発が活性化し、各性能基準を満たす材料が徐々に増えている。
2014年に当社では初めてのレジンブロックとなる「カタナ® アベンシア® ブロック」を小臼歯用の保険適用材料として発売した。「カタナ® アベンシア® ブロック」は機械的強度と研磨時の容易な艶出しの両立を特長としている。
この特長を引継ぎ、かつ、JDMAS規格(タイプ1b)を満たす「カタナ® アベンシア® ブロック 2」を2020年の保険改定に伴い発売した。
また、2018年に当社レジンブロックの中で最大の機械的強度を示す「カタナ® アベンシア® Pブロック」を大臼歯用として発売した。
レジンブロックの開発検討をさらに進め、今回、シームレスで滑らかな色調グラデーションを持つことを特長とする「カタナ® アベンシア® N」(図1)を発売したため、以下に解説をしたい。本品は前歯のCAD/CAM冠用材料として初めて保険適用となった製品である。

  • カタナ® アベンシア® Nの写真
    図1 カタナ® アベンシア® N

■本品を支える技術

 カタナ® アベンシア® シリーズでは、当社が培ったジルコニア材料の製造技術を応用することにより、独自の製法を採用している。
この製法はレジンブロックに含まれる無機質フィラー(セラミックの粒子)を高密度に圧縮成形し、レジンモノマーを均一に含浸、加熱により重合硬化する方法であり2)図2)、従来のレジンブロックのようにコンポジットレジンのペーストを型に流し込み、重合硬化して得られる材料とは異なる性質を示す。
当社内において、従来の製法で開発した試作品では無機質フィラーの密度を高めることが難しく、さらにはフィラーの分散不足による脆弱部の発生やペーストへの気泡混入を制御することが困難であった。
このため、カタナ® アベンシア® シリーズでは全く異なる製法を確立することにより課題を克服するに至った。また、選択する無機質フィラーのサイズを制御することにより、レジンブロックの用途に応じた特性を獲得している。
「カタナ® アベンシア® N」は同製法の特長を活かしながら、さらなる進歩を遂げている。この進歩とは、歯冠色を有する無機質フィラーを積み重ね、透明度と彩度を段階的に変えてエナメル色からボディ色への滑らかな色調グラデーション、すなわちシームレスなマルチレイヤー構造を持つレジンブロックの供給を可能にした点である。
異なる色調のコンポジットレジンペーストを積み重ねる製法では色調間に境界線が見られることを鑑みると、本品が示す滑らかなグラデーションは、当社独自の技術と言える。従来の単色からなるレジンブロックよりも一層の審美性を求める症例に役立つことを期待しての技術開発である(図3)。
本品には微細な無機質フィラーが選択的に使用されているため、CAD/CAM装置による切削加工後の状態から滑らかな表面性状を示し、その後の研磨においても加工で得られた形態を損なうことなく、手早く簡便に滑沢な表面に仕上げることができる(図4)。
なお、得られた滑沢性は40,000回の歯ブラシ摩耗試験にかけても消失しない。このことから、表面荒れによる着色物質の付着を抑制することが期待される。

  • フィラープレス/モノマー含浸法
    図2 フィラープレス/モノマー含浸法

  • 図3 多色(左:カタナ® アベンシア® N)と単色(右:カタナ® アベンシア® ブロック)クラウンの比較
  • カタナ® アベンシア® Nの加工後から仕上げまでの外観の変化
    図4 カタナ® アベンシア® Nの加工後から仕上げまでの外観の変化

■カタナ® アベンシア®に適したシステム

機械的強度、滑沢性は材料に求められる特性であるが、レジンブロックを加工するCAD/CAM装置、接着するためのセメントの選択、そして、これらの適切な使用が重要である。
当社はCAD/CAM装置、セメント材料を含むトータルシステムを提供し、より質の高い治療の提供を目指している。

1. 加工システム

図5にカタナ® が提供するCAD/CAMシステムを示す。2020年に発売したスキャナー「カタナ® デンタルスキャナー E4」は、スキャン速度が9秒(フルアーチ時)、スキャン精度は4μmの性能を持つ。
また、同2020年に発売した加工機「歯科用ミリングマシン MD-500」は高い剛性を有するため、加工物のたわみやブレを抑え、高精度の加工を短時間で行うことができる。当加工機を用いると、補綴装置の形状によって最短9分(小臼歯の場合)での切削加工が可能となる。
また、これまでのセラミックの加工で培ったノウハウを活かし、カタナ®アベンシア® シリーズを高い精度で加工できるように専用の加工バー「カタナ® ミリングバー」および加工プログラム「hyperDENT®」を導入した。加工バーには、ダイヤモンドコーティングを施し、先端の刃角の調整をしている。また、加工プログラムは、バーの移動軌跡や移動速度を最適化することで加工精度と効率を追求している。

2. 接着システム

補綴装置を装着する際は、グラスアイオノマー系セメントではなく、レジンセメントにより強固に接着させたい。レジンセメントの使用においては、補綴装置や支台歯に付着した唾液、仮封材、仮着セメント等の接着阻害因子をしっかり除去することが重要である3、4)
試適後には補綴装置の内面にサンドブラストを施し、リン酸エッチング、シランカップリング材(セラミック処理材)で適切に処理を行う。サンドブラストは試適後に再度施すことが望ましいが、歯科医院におけるサンドブラスターの所有率はまだ低いと言える。
試適後のサンドブラストの代替として当社「カタナ® クリーナー」による接着阻害因子の除去を推奨したい(図6)。
レジンセメントには当社「SA ルーティング® Multi」を使用するとともに、歯質への接着強さを高めることのできる「クリアフィル® ユニバーサルボンド Quick ER」の併用を推奨したい(図6)。また、支台歯がメタルコアの場合は遮光性の高いレジンセメントのパナビアV5オペークの使用を推奨する。
一方で、支台歯形成においては十分なクリアランスを確保することが求められるとともに、CAD/CAMでは加工できない支台歯形態があるので注意を促したい点である(図7)。
また、CAD/CAM冠においては過小な支台歯高径の症例や、顕著な咬耗(ブラキシズム)の症例への適用は推奨されない5)。

  • カタナ® CAD/CAM システムの写真
    図5 カタナ® CAD/CAM システム
  • CAD/CAM冠の接着に用いる材料の写真
    図6 CAD/CAM冠の接着に用いる材料
  • 前歯部クラウンに必要な最小厚み(左)、CAD/CAMで加工できない支台歯形態(右)の図
    図7 前歯部クラウンに必要な最小厚み(左)、CAD/CAMで加工できない支台歯形態(右)

■製品構成

本品の色調はA1、A2、A3、A3.5、B1、B2の6種類を準備しており(図8)、いずれもグラデーションを有する。
CAMによる加工準備時に、補綴装置のブロック内での位置を歯冠長方向に上下させることにより、症例に応じてエナメル色と象牙色の比率をコントロールすることができる(図9)。
サイズは14Lサイズの1種類であり、補綴装置の大小様々な症例に使用できる。

  • カタナ® アベンシア® Nの色調写真
    図8 カタナ® アベンシア® Nの色調
  • CAMによる加工準備時における色調比率の調整<
    図9 CAMによる加工準備時における色調比率の調整

■まとめ

 「カタナ® アベンシア® N」はこれまで培ったカタナ® アベンシア® シリーズの技術をさらに発展させ、滑らかな色調グラデーションを持つレジンブロックである。
従来のレジンブロックと比較して、より審美性が求められる前歯での歯冠修復に寄与することを期待し、活用いただきたい製品である。また、当社CAD/CAM装置およびセメント材料を組み合わせたトータルシステムにより、信頼性の高い治療として臨床に役立てられれば幸いである。

参考文献
  • 1) 日本歯科材料工業協同組合規格(団体規格No. 112):JDMAS 245: 2019, CAD/CAM冠用歯科切削加工用レジン材料.
  • 2) Okada K. et al.:A novel technique for preparing dental CAD/CAM composite resin blocks using the filler press and monomer infiltration method. Dental Material Journal, 2014; 33(2); 203-209.
  • 3) 末瀬一彦:保険診療に導入された「CAD/CAM冠」の初期経過に関する調査研究, 日本デジタル歯科学会誌, Vol.5, No.1, 2015.
  • 4) Komine F. et al:Clinical outcomes of single crown restorations fabricated with resin-based CAD/CAM materials, J Oral Sci, 2020; 62: 353-355.
  • 5) 日本補綴歯科学会 医療問題検討委員会:保険診療におけるCAD/CAM冠の診療方針, 2014.

デンタルマガジン 175号 WINTER