DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Field Report
歯石を探知し、確実に取り除く SRPに有効なスケーラーの選択と使用法
福岡県福岡市中央区  船越歯科医院 歯科衛生士 有村 知子

■目 次

[写真] 歯科衛生士 有村 知子
福岡県福岡市中央区
船越歯科医院
歯科衛生士
有村 知子

歯周治療の基盤となるSRPは歯科衛生士として大きな責任を伴う業務の一つです。SRPの際に強い炎症が疑われる場合は、不必要な痛みを軽減し、限られた時間のなかで確実に歯石を除去することを心がけていますが、そのためには適切な技術と器具選びが大切です。当院では歯科衛生士が手用スケーラーを各自管理し、歯石の硬さや量、歯牙の形態、歯肉の状態と、スケーラーの刃の硬さや大きさ、しなり具合などのお互いの相性をみて、複数のメーカーを使い分けています。
硬い歯石に対しては超音波スケーラーで歯肉縁上の歯石を除去した後、「estシリーズ」(YDM)の手用スケーラーで歯肉縁下の歯石除去や仕上げを行っています。estは繊細なつくりでシャープな切れ味にもかかわらず、刃が硬くてしなりにくく、硬い歯石を除去するときに側方圧がかけやすいので便利です。また、日本人に多くみられる歯列叢生にはスケーラーの刃が入らないことがあります。estのミニタイプは、スタンダードタイプに比べて分岐部などの歯牙の形態が複雑なケースにも適しています。
さらに歯石が硬くなるとスケーラーの刃が立たないこともあります。過去の施術などでスケーラーの選択と使い方を誤ってしまうと、バニッシング(歯石の上をスケーラーが滑って取り残された状態)が起きていることがあります。例えば、「他の施設に2年間通院しても治る見込みがない」といって当院に転院されてきた患者さんは、歯石がバニッシングされて黒色化し、重度の歯周病が進行していました。その場合、超音波スケーラーの後に手用スケーラーで細部を触っていきますが、極度に硬い歯石は側方圧をかけようとすると、どうしても手先が滑りやすくなります。このような場合は固定点を歯牙と離れたところに置き、手用スケーラーの第1と第2シャンクの屈曲部分に親指を添えて、一緒に弾くと歯石に引っかかって取りやすくなります。
estにはしなりが少なく側方圧がかけやすいハードタイプと、しなりがあり繊細な感覚が手先に伝わりやすいソフトタイプがあります。経験が浅いうちはソフトタイプで歯石の感触や側方圧のかけ方を習得し、徐々にハードタイプに移行するといいと思います。
また、歯周治療が思うように改善しなかったり、メインテナンス期に入って再発する原因の一つに歯石の取り残しがあげられます。歯石の探知ができていないと、同じ場所を何度も触ったり、必要な場所に触れることができず、結果的に歯石の取り残しにつながります。これを防ぐためには歯石や根面の凹凸が伝わってくる指先の感触を見逃さないことです。「デブライドメント用インスツルメント」(YDM)は、SRP後の歯石の取り残しや歯石の沈着状況を確認する目的で開発され、基本検査後やスケーリング後の歯石の探知に欠かせない道具の一つです。フェザータッチで使える軽くて繊細な性状が持ち味で、歯石の探知をはじめ、歯肉縁下のプラークや沈着したての歯石のキャッチ、あるいは炎症のある繊細な場所に触れるときなどに幅広く応用できます。また、チタン製タイプは通常のスケーラーでは触れにくい、炎症を伴ったインプラントの歯根付近にもしっかりアプローチしてくれます。
以前私が講師を務めていたセミナーの受講生の方からは、「思ったように歯石が取れない」「器具の適切な使い方がわからない」といった声をよく耳にします。SRPの上達には歯石の探知が欠かせません。さらにスケーリングが上手でも、切れないスケーラーを使っていると歯石の探知が困難だけでなく、患者さんへの負担も大きくなります。このようにSRPはとても奥が深いので、スケーラーの使い方や選び方から、シャープニングの重要性まで具体的にお伝えするには、いくら時間があっても足りないほどです。
適切なSRPと治療の結果、患者さんから「おいしく食べられるようになった」「ありがとう」の言葉をいただけることが日々の喜びです。まだまだ未熟ですが、少しでも他の歯科衛生士さんのスキルアップをサポートし、私自身も患者さんの健康増進の橋渡しができる歯科衛生士としてさらに技術を磨いていきたいと思っています。

  • [写真] 滅菌された状態で種類ごとに管理
    図1 当院では滅菌された状態で種類ごとに管理している。
  • [写真] 固定点は臨在歯あるいは少し離れた歯に置く
    図2 固定点は臨在歯あるいは少し離れた歯に置くとコントロールしやすい。
  • [写真] 前歯部や臼歯部、根分岐部などにアクセスしやすい形状
    図3 前歯部や臼歯部、根分岐部などにアクセスしやすい形状を有している。
  • [写真] 執筆状(左)または執筆状の変法(右)
    図4 執筆状(左)または執筆状の変法(右)でグリップする。
  • [写真] デブライドメント用インスツルメント(黄色のリング(下)は「チタン製」
    図5 デブライドメント用インスツルメント(黄色のリング(下)は「チタン製」
  • [写真] チタン製を選択することでインプラントの歯根部分にもアプローチできる
    図6 チタン製を選択することでインプラントの歯根部分にもアプローチできる。

私が考える『予防歯科』とは

コロナ禍で患者さんは体力が低下し、さまざまな感染症を発症しやすくなっています。とくに口腔内が不衛生になるとインフルエンザやコロナウイルス感染のリスクが上がり、肺炎を引き起こしやすくなります。また、自宅に引きこもる生活が長く続くと、うつ傾向になりやすく、気分も沈みがちです。このようなときの支えになるのが「食の力」です。
ブラッシング指導などを通じて、お口から食べてしっかり噛むことができる環境をサポートし、患者さんの健康を入り口から支えていくことも予防歯科の一つのあり方だと思います。
日々の臨床では患者さんの思いをしっかり理解し、安心して相談してもらえる関係を築きながら、コロナ禍のなか、少しでも笑顔の増えるような健康増進のお手伝いを続けていきたいと思っています。

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    『サンドペーパーを使った探知の練習方法』に関する動画はこちらから
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    『デブライドメント用インスツルメントの使用方法』に関する動画はこちらから
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    『シックルスケーラーの使用方法≪KIRIKO≫』に関する動画はこちらから
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デンタルマガジン 177号 SUMMER