DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Contribution
歯根端切除術におけるCBCTの有用性
医療法人宝樹会 福西歯科クリニック 福西 一浩

■目 次

■はじめに

当クリニックにモリタのCBCTが導入されたのは、2009年のことである。当時のX線室の広さやオルソパントモとの併用のメリットも考えて、「Veraviewepocs 3D」に決めた。
導入の大きな目的は、主にインプラント治療と歯内療法で使用することであった。とくに根管治療は、毎日の臨床で行う頻度が高く、その必要性と重要性を強く感じた。その一方、被ばくの問題が懸念されたが、撮影設定の工夫を行うことで、多くの検証を加えた結果、低い被ばく量で、鮮明な画像を得ることが可能となった。根管治療の術前診査においては、まずはデンタルX線写真を撮影し、そこで診断がつくケースも多い。しかし、上顎臼歯の複根の場合では、各歯根が重なり、それぞれの歯根の形態や根尖部の状況が把握できないケースが大半である。従来では、正法線と近遠心的偏心投影にて対処せざるを得なかったが、限界があることも事実である。さらに根尖病変があるケースでは、頰(唇)舌的にどれくらいの拡がりがあるのかを知りたいこともあり、CBCTから得られる情報は数えきれないものがある。そこで今回は、歯根端切除術におけるCBCTの有用性について検討する。

■CBCTは歯根端切除術の術前検査に有効

根尖病変を有する歯の治療では、まずはオルソグレード(通常の根管口からのアプローチ)にて進めていくことが一般的である。しかし、その治療が功を奏さない場合(難治性根尖性歯周炎)や根尖病変のある歯で、長いポストコアが装着されていて、それを除去するのに歯根破折の可能性を伴う場合、また患者がどうしても上部構造体を除去したくないという希望がある場合などは、歯根端切除術が有効となる。歯根端切除術を計画する際の術前検査には、CBCT撮影は必須であると考えている。3次元的な歯根の湾曲具合いや病変の拡がりを確認することに加えて、頰(唇)側の皮質骨の状態を把握することで、切開線や骨窩洞形成のデザイン、根尖部のカットをどのあたりで行うかなどを事前に検討する。では、ここで実際の症例を通じて、CBCTの有用性について考察する。

■症例供覧

患者は、38歳の男性である。上顎左側中切歯を他のクリニックにて根管治療中で、自発痛と根尖部の圧痛を訴えて来院された。同部の根尖部歯肉にはサイナストラクトが認められ、まずは、デンタルX線写真の撮影を行った(図1)。根尖部には炎症性吸収による根尖破壊の像が認められ、根尖病変内(根尖孔外)に根管充填材と思われる不透過像が観察された。そこで、精査のためにCBCTを撮影したところ、根尖部周囲に境界明瞭な透過像とその中に溢出した不透過が認められた(図2)。歯列横断面像を少し近心側に移動すると唇側の皮質骨が欠損している部分が認められ、これは手術時に骨窩洞を形成する際の重要な指標となる(図3)。まずは、通常の根管治療を行い、根尖部は#120まで拡大をして、Bio-MTAにて根管充填を行った。そして、約6ヵ月の経過観察の後に、デンタルX線写真を撮影した(図4)。その結果、治癒傾向が認められなかったため、患者と相談のうえ、歯根端切除術を行うことにした。フラップを開けると、皮質骨の開窓部が確認され(図5)、内部の病変を徹底的に掻把し、骨窩洞形成を行った(図6)。根尖部を約3mmカット後、超音波チップにて約3mmの逆根管形成を行い(図7)、その部にBio-MTAを充填した(図8)。術後のデンタルX線より、根尖孔外に溢出していた異物も確実に除去できていることを確認した(図9)。その後、疼痛もなくなり、サイナストラクトも消失したため、約4ヵ月後に再評価を行った。デンタルX線写真では、根尖部の透過像も消失し、治癒が確認された(図10)。しかし、デンタルX線写真の場合、CBCT画像と比較して約50%の根尖病変を認知できないという研究1)もあるため、患者の同意が得られることを条件に、術後のCBCT撮影を行うこともある。この症例は患者の希望もあり、CBCT撮影を行い、3次元的に病変の治癒を確認することができた(図11)。歯列横断面像と水平断面像から、唇側の皮質骨も再生していることが観察された。

  • [写真] 術前のデンタルX線写真
    図1 術前のデンタルX線写真。根尖病変が認められ、その中に根管充填材と思われる不透過像が観察される。
  • [写真] 同CBCT像
    図2 同CBCT像。歯列横断面像から根尖部が大きく破壊されていることがわかる。また、歯列平行断面像から根尖病変は、根尖より近心側に拡大していることが観察できる。
  • [写真] 同CBCT像
    図3 歯列横断面像を少し近心側に移動すると唇側の皮質骨が欠損している部分が確認できる。
  • [写真] 根管充填後、約6ヵ月のデンタルX線写真
    図4 根管充填後、約6ヵ月のデンタルX線写真。根管充填材として用いたBio-MTAが根尖孔から大きく溢出しており、根尖病変の治癒傾向は認められない。
  • [写真] サイナストラクトの直下に骨の開窓が見られ、その中に肉芽腫と思われる組織が認められた
    図5 サイナストラクトの直下に骨の開窓が見られ、その中に肉芽腫と思われる組織が認められた。
  • [写真] 病変内の肉芽組織と窩壁を徹底的に掻把し、マイクロミラーが操作できる大きさまで形成を行った
    図6 病変内の肉芽組織と窩壁を徹底的に掻把し、マイクロミラーが操作できる大きさまで形成を行った。
  • [写真] 専用の超音波チップを用いて、逆根管形成を行った
    図7 専用の超音波チップを用いて、逆根管形成を行った。
  • [写真] 逆根管充填材には、Bio-MTAを用いた
    図8 逆根管充填材には、Bio-MTAを用いた。
  • [写真] 術後のデンタルX線写真
    図9 術後のデンタルX線写真。歯冠―歯根比も大きな問題はないと思われた。
  • [写真] 術後、約4ヵ月のデンタルX線写真
    図10 術後、約4ヵ月のデンタルX線写真。根尖周囲組織の治癒が確認された。
  • [写真] 同CBCT像
    図11 同CBCT像。唇側の皮質骨も再生し、歯根周囲に均一な歯根膜空隙が確認できる。

■おわりに

CBCTの撮影は、適切な診査を行ううえで歯科医師が必要だと判断し、かつ患者に被ばくに関する正しい情報をお伝えし、同意が得られた場合に限り行うことを原則としている。そして、的確な診断や予後の確認のために、CBCTの撮影が本当に必要かどうかの判断は、各歯科医師のモラルと責任に委ねられていることを肝に銘じておかなければならない。

参考文献
  • 1) Estrela C, Bueno MR, Leles CR, Azevedo B, Azevedo JR. Accuracy of cone beam computed tomography and panoramic and periapical radiography for detection of apical periodontitis. J Endod. 2008;34(3):273-279.

デンタルマガジン 177号 SUMMER