DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
INICELL®インプラントの特徴を活かした臨床応用
医療法人社団 かしわの葉 原歯科医院 原 俊浩

キーワード:付着歯肉幅の狭い症例への対応/予知性の高いインプラントシステム

■目 次

■はじめに

超親水性表面「INICELL®」が国内で発売され約1年が経過し、日常臨床において様々な恩恵を受けている。その特徴の一つがオッセオインテグレーションの早さであり、埋入から3~4週間で骨結合が得られ、患者様へは喜びとなってフィードバックされている。
また、フィクスチャーのラインナップも増え、機械研磨面(カラー)の高さも選べるようになり、臨床のindicationに応じた選択ができるようになった。
具体的にはカラー部の高さが2.5mmのフィクスチャーが加わり、フィクスチャーとアバットメントの接合部を歯冠側へ位置させることが可能で、補綴後の炎症のコントロールが予知性の高いものとなった。
そこで、今回はカラー部の高さ2.5mmのエレメントLCインプラントを用いて、付着歯肉幅の狭い症例に対し良好な結果を得たので紹介したい。

■症例

患者様は72歳女性。高血圧にて投薬中。47歯が噛むと痛いとのことで来院(図1)。初診時のX線写真(図2)で歯根尖に及ぶ透過像があり、垂直的な動揺もみられた。数年前より咬合時に違和感があったが、歯を削ることで対応していたとのこと。初診時の口腔内写真からも患歯に削合痕が観察された(図1)。
今回は対処療法ではなく、根本的な治療をご希望されたため、抜歯後にインプラント治療をご説明したところ承諾された。図3は抜歯後6週の埋入前の写真であり、metal tattooの存在と頰小帯が高位に付着しているのが観察された。
抜歯後7週に直径4.0mm、長さ8mmのINICELL®インプラント、エレメントLCを鎮静下で埋入した(図45)。切開は歯槽頂切開とし、粘膜骨膜弁を翻転後にmetal tattooの除去と頰小帯の側方移動術をEr:YAGレーザーを用いておこなった。埋入窩形成時には抜歯窩が残っていたが、抜歯窩根尖部より下顎管側の骨に初期固定を求めた(図6)。今回用いたインプラントはparallel wall typeのインプラントであったが、溝のピッチが狭いため、先端部の骨のみで初期固定が得られるのがこのインプラントの特徴と言える。
また、SPIのベクトドリルは先端部が細くなっていることから、サイズを太くする際にwobblingすることも少ない。したがって、残存する抜歯窩に誘導されることなく埋入することができたのも初期固定が得られた要因と思われる(図7)。
図8は埋入後4週の口腔内写真である。頰小帯とインプラントの間には十分な角化歯肉が確保され、頰側のmetal tattooもおおよそ改善された。
その後インプラント上部の歯肉を側方へ移動し、カバースクリューを装着して軟組織の治癒を待った(図910)。
図11は術後5週のX線写真であり、カラー部が骨縁上に位置しているのがわかる。カラー部の高さを2.5mmのものを選択したため、歯肉の高さとショルダーの位置がほぼ同じ位置となり、予想通りの結果となった。この時点のISQ値は72であったので、続けてトーメンスキャンアバットメントを装着し(図12)、IOS (TORIOS®3:3shape)にて印象採得をおこなった(図13)。トーメンスキャンアバットメントの装着も接合部が歯肉縁に位置しているため容易におこなえた。
得られたデータはラボサイドへ転送し、画面上でジルコニアクラウンの設計(Dental System:3shape)を開始した(図14)。選択したジルコニアディスクはグラデーション付きのものとし、焼結後はステイニングも施した。
筆者は、歯肉の厚み確保の観点から骨縁から歯肉縁までの粘膜貫通部はできるだけ細くすることを慣例としている。今回のケースでは、粘膜貫通部はインプラントカラー部となり、インプラントとアバットメントの接合部がほぼ歯肉縁に位置している。そのため、プロビジョナルによるエマージェンスプロファイルの調整はおこなわず、最終補綴物を光学印象後すぐに製作した(図15)。アバットメントは臼歯部であることからチタン性のチタンベースアバットメントをもちい、ジルコニアクラウンとレジンセメントにてラボサイドで接着した(図16)。製作された補綴物はスクリュー固定にて装着され、確認のデンタルX線を撮影した(図17)。図18は装着後の咬合面観である。SPIインプラントの特徴であるアクセスホールの細さが観察される。この特徴により補綴物の頰舌側の厚みが十分に確保でき、チッピングや破折が軽減されるのもSPIインプラントの利点である(図1920)。

  • [写真] 初診時の咬合面観
    図1 初診時の咬合面観
  • [写真] 初診時のX線写真
    図2 初診時のX線写真
  • [写真] 抜歯後6週の口腔内写真
    図3 抜歯後6週の口腔内写真
  • [写真] INICELL® エレメントLC(φ4.0mm、L8mm)
    図4 INICELL® エレメントLC(φ4.0mm、L8mm)
  • [写真] INICELL® インプラント パッケージ
    図5 INICELL® インプラント パッケージ
  • [写真] 術中写真
    図6 術中写真
  • [写真] 術直後CT写真
    図7 術直後CT写真
  • [写真] 術後4週の口腔内写真
    図8 術後4週の口腔内写真
  • [写真] 光学印象前の口腔内写真
    図9 光学印象前の口腔内写真
  • [写真] 光学印象前の口腔内写真(ヒーリングキャップ撤去時)
    図10 光学印象前の口腔内写真(ヒーリングキャップ撤去時)
  • [写真] 術後5週のX線写真
    図11 術後5週のX線写真
  • [写真] トーメンスキャンアバットメント装着時の口腔内写真
    図12 トーメンスキャンアバットメント装着時の口腔内写真
  • [写真] 光学印象時
    図13 光学印象時
  • [写真] 光学印象データ(TORIOS® 3 3shape)
    図14 光学印象データ(TORIOS® 3 3shape)
  • [写真] ZrCrownの設計(Dental Designer, 3shape)
    図15 ZrCrownの設計(Dental Designer, 3shape)
  • [写真] 完成したZrCrown(チタンベース使用)
    図16 完成したZrCrown(チタンベース使用)
  • [写真] 装着後のX線写真
    図17 装着後のX線写真
  • [写真] 装着後の口腔内写真(アクセスホール封鎖前)
    図18 装着後の口腔内写真(アクセスホール封鎖前)
  • [写真] 装着後の口腔内写真(アクセスホール封鎖後)
    図19 装着後の口腔内写真(アクセスホール封鎖後)
  • [写真] 装着後の側方面観
    図20 装着後の側方面観

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デンタルマガジン 177号 SUMMER