DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
Erwin AdvErL EVOの臨床応用の有用性と実際
医療法人祐真会はやし歯科クリニック(岡山県総社市) 林 宏規

キーワード:Water Micro Explosions/MI/Er:YAGレーザーによる組織再生

■目 次

■はじめに

歯科用レーザーは、「う蝕処置」、「歯周治療」、「外科治療」、「根管治療」など、幅広く臨床応用されてきた。当院でも開業当初より炭酸ガスレーザーを導入、長年使用してきた。
Er:YAGレーザーの存在は気にはなっていたものの、「高価」で「取り扱いが難しい」というイメージがあり導入を見合わせていた。
しかしErwin AdvErL EVO( 以下EVO)の登場により、従来よりも操作性が良くなり、より簡便に使用できるようになったため導入をすることになった。さらに、平成30年4月の診療報酬改定により、レーザー応用の保険収載が拡大されたことも追い風となり、インプラント治療のような自費治療のみならず積極的に保険治療に使用するようになった。
今ではEVO無しの診療は考えられないほど様々な症例で活用している(参考症例12)。
今回、保険治療を中心にEr:YAGレーザーの特性を生かし治療を行った症例を提示し、その有用性についても述べたいと思う。

参考症例1:カリエス処置

レーザーによるカリエス治療のメリットはタービンなどによる切削音や振動がないだけでなく、レーザーの特徴である殺菌・洗浄効果が期待でき、細菌叢の取り残しによる再発を低減できる点にあると考えている。

  • [写真] 術前写真
    術前写真。6にC1~2程度のカリエスを認める。
  • [写真] ダイアグノデントで「65」の数値
    ダイアグノデントで「65」の数値。
  • [写真] カリエス除去後
    カリエス除去後(麻酔は少量のみ)。
  • [写真] 術後写真
    術後写真。コンポジットレジンで修復。
参考症例1の動画はこちら
参考症例2:高齢女性のP急発への応急処置

高齢化社会の中、 低侵襲の消炎処置の必要性は高い。今症例も年齢と全身状態を考慮し無麻酔にて施行した。

  • [写真] 術前写真
    術前写真。急患にて6腫脹、 自発痛にて来院。
  • [写真] デンタルX-p 骨吸収を伴う炎症所見
    デンタルX-p 骨吸収を伴う炎症所見。
  • [写真] チップ:PSM600T、 出力:20pps、50mj にてポケット掻爬
    チップ:PSM600T、 出力:20pps、50mj にてポケット掻爬。
  • [写真] 術後1W写真
    術後1W写真。症状は改善した。
参考症例2の動画はこちら

■Er:YAGレーザーの特性

Er:YAGレーザーは表面吸収型非熱的蒸散レーザーであり、侵襲が少ないため適応範囲は広く、幅広い症例に用いることが可能である(図1)。作用機序は、水分に対して特異的に吸収される特性(図2)により、そのエネルギーが水成分を瞬間的に蒸散し、その爆発的な物性変化『Water Micro Explosions(水性爆発)』で硬組織を蒸散したり、軟組織を切除できる(図34)。他波長に比べ、深部組織を傷つけず、熱的な影響をほとんど与えないため(図4)治癒が早く、術後疼痛も少ない3)、まさにMI(Minimal Intervention)な治療が可能となるのである。

  • [表] Er:YAGレーザー 保険適用表
    図1 Er:YAGレーザー 保険適用表
  • [グラフ] レーザー各波長の吸収特性
    図2 レーザー各波長の吸収特性1)
  • [写真] 水分子のWater Micro Explosion
    図3 水分子のWater Micro Explosion
  • [図] レーザー各波長の組織浸透性等の特性
    図4 レーザー各波長の組織浸透性等の特性2)

■症例供覧(すべてマイクロスコープ下にて治療)

症例1 歯周ポケット掻爬・縁下歯石除去

初診時56歳女性、矯正治療を行う予定だが、局所的な骨欠損を伴う歯周病であり、矯正治療前処置として歯周病治療が必要であった。歯周基本治療後、2にハンドインスツルメントでは届かない深いポケットが残存した(図5)。フラップを展開し再生療法を行うと治癒期間が長くなり矯正治療のスタートに影響するため、Er:YAGレーザーによる縁下歯石除去、根面デブライドメントを計画した。フラップレスでの処置による治癒期間の短縮、そしてレーザーによる殺菌作用、エンドトキシンの分解・除去作用、さらに健全セメント質の温存が期待でき、完璧ではないにしろ、矯正治療へのリスク回避ができると考えた。
・使用チップ:PSM600T
・レーザー出力:20pps、50mj
術中気をつけたのは根面を過剰に蒸散させないようにコンタクトチップを根面に平行~やや斜めになるよう保持することである(図6)。処置は無麻酔で行い、術後、疼痛はほぼなく治癒は良好であった(図7)。矯正治療後、状況に応じて軟組織移植を含めた歯周外科が必要になる可能性をお伝えしてあるが、患者さんの満足度は非常に高かった。

症例1
  • [写真] 術前写真とデンタルX-p
    図5 術前写真とデンタルX-p。深いポケットが存在する。
  • [写真] 角度に気をつけながら蒸散
    図6 角度に気をつけながら蒸散。
  • [写真] 術後2日目
    図7 術後2日目。痛みは全く無かった。
症例1の動画はこちら
症例2 良性腫瘍摘出

患者は35歳男性。下唇に乳頭状の突起があり気になるとのことで来院。それまで同部位を噛んだ際、膨らむことはあったが治癒していたため気にならなかった、今回は乳頭状に残ったままなので取ってほしいとのことであった。腫瘍は約2mm、痛みもなくその形状、特徴から「乳頭腫」と診断し、Er:YAGレーザーによる切除を行うこととした(図8)。
前述した通りEr:YAGレーザーは組織透過性が少なく、熱刺激によるダメージがわずかなため、術中~術後の痛みが少ないと考えられている。そのため、手術は最小限の麻酔量で行うことができるので、術後に麻酔の痺れによる咬傷などの偶発症発生のリスクも低減できる。
・使用チップ:S600T
・レーザー出力:20pps、50mj
まずマイクロピンセットで腫瘍をひっぱり、テンションをかけた状態で周囲の上皮→腫瘍下の結合組織の順に切除していった(図9)。切除後、創面に非注水下、デフォーカスにてフォロー照射し止血を図り、その後7-0の縫合糸にて縫合、術後7日で抜糸した(図10)。疼痛はほぼなく経過は良好、再発も見られないが引き続き経過を見ていく予定である(図11)。

症例2
  • [写真] 下唇に発生した乳頭腫
    図8 下唇に発生した乳頭腫。
  • [写真] 乳頭腫をレーザーにて切除
    図9 乳頭腫をレーザーにて切除。
  • [写真] 縫合を行った
    図10 縫合を行った。
  • [写真] 術後
    図11 術後。
症例2の動画はこちら
症例3 歯周再生療法

患者は39歳女性。 4近心に8mmのポケットが存在し、デンタルX-p、CT画像から3壁性の骨欠損が認められたため、リグロス®を用いた歯周再生療法を行うこととなった(図1213)。
フラップデザインはCortelliniらの提唱するMIST(Minimally Invasive Surgical Technique)、Er:YAGレーザーによるデブライドメントで低侵襲かつ組織再生を期待する5)術式を選択した。
Er:YAGレーザーによる組織再生促進効果は6)レーザーSRPによる殺菌・無菌化のみならず、照射根面や切削骨面に血餅が付着しやすく、細胞の遊走や付着に有利なことによると考えられてきた7)。しかしそれ以外にも、最近の文献では、レーザー照射による骨形成抑制遺伝子の抑制作用があることが報告されている8)
実際の手術であるが、マイクロ用メスにて切開、マイクロ用インスツルメントで丁寧かつ最小限にフラップを剥離していった(図14)。術部には歯石、肉芽組織が付着しており、Er:YAGレーザーにて蒸散を行った(図15)。
・使用チップ:C400F
・レーザー出力:25pps、50mj
しっかりと廓清した後、リグロス®を塗布、7-0の縫合糸にて縫合した。術後疼痛は軽微で、炎症所見もほぼ見られなかった(図1617)。まだ術後間もないため、今後注意深く予後をみていく予定である。

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デンタルマガジン 177号 SUMMER