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178号 AUTUMN 目次を見る

Clinical Report

2級コンポジットレジン修復の成功に繋がる6つの心掛け-前編-

DRC.Hamamatsu・田代歯科医院 田代 浩史

キーワード:修復精度を向上させる器材・材料/コンポジットレジン直接修復/2級コンポジットレジン修復の成功ポイント

■目 次

■はじめに

現代の歯科診療においては「接着」の概念を活用した修復治療が行われる場面が多く、「接着」の概念は、直接法でのコンポジットレジン修復関連材料と、間接法での接着性レジンセメント関連材料とで活用されている。
いずれもレジンモノマー(硬化前は液体状のレジン)がエナメル質・象牙質の表層に浸透・硬化し、歯質と機械的・化学的に結合することで、歯質と修復物との一体化が可能となる。
このような2つの大きな接着修復の術式は既に完成形に近づき、臨床状況に応じてそれぞれの特徴を活かした治療オプションとして日常臨床で活用されている。
一般的には、直接法コンポジットレジン修復の歯質接着強度は極めて高く、歯質との一体化の点では間接法レジンセメントの能力を上回る1)
一方で間接修復における形態再現能力はその最大のメリットであり、直接法での口腔内における歯冠形態再現に限界を感じる臨床状況でその存在感が示される。
患者の口腔内の平均残存歯数が伸び続ける現代の歯科医療において、健全歯質を温存し1歯単位の歯牙保存の可能性を高める接着修復の概念を最大限活用するためには、その高い接着強度を前提としたコンポジットレジン修復の口腔内直接形態再現の客観的術式を確立することが必要であると考える。
今回は、2級コンポジットレジン修復における各ステップにおいて、修復の精度を向上させるために使用される器材・材料に注目し、Direct Restoration Center. Hamamatsu(田代歯科医院)での臨床状況に応じた選択基準と使用方法について2回の連載で解説する。

■臼歯部2級修復の治療選択肢

臼歯部隣接面う蝕への初期対応として、最小限の切削介入によりコンポジットレジン修復を行う治療方針は、近年の歯科大学教育でも第一優先の選択肢として広く認識されてきている。
歯科医師国家試験での臼歯部う蝕に関する出題もコンポジットレジン修復の詳細な術式を問う問題が頻出されている。
メタルインレー修復の再治療時の選択肢として、再度メタルインレー修復を行う機会は残されているが、臼歯部隣接面う蝕への初期対応の選択肢としては既に一般的であるとは言えない状況となった。
歯科医療保険制度におけるメタルフリーへの方向転換の方針も顕著であり、今後の若年者の口腔内に金属修復材料が存在しない状況を作り出していくための重要な最初の一歩が、臼歯部2級コンポジットレジン修復の攻略であると考える。
セラミックス等の審美材料による間接修復と比較して、コンポジットレジン直接修復の完成度は術者の修復技術への依存度が高く、器材・材料の活用方法への正確な理解と臨床経験が必要となる。以下に2級コンポジットレジン修復を成功するための各ステップでのポイントを示す。

■2級コンポジットレジン修復を成功するための6つのステップ

Step 1:感染歯質の除去・窩洞形成(う蝕検知液の使用・スプーンエキスカの使用・滑らかな窩縁部の整理)
Step 2:隔壁設置(マトリックスバンドの選択・リングタイプリテーナーの選択・適切なサイズのウェッジ挿入)
Step 3:接着操作(エナメル質窩縁へのセレクティブエッチング・1ステップタイプ接着材の適正使用)
Step 4:充填操作(フロアブルレジンでのライニング・ペーストタイプレジンでの積層充填操作)
Step 5:光照射(光照射強度の距離による減衰への配慮・光照射時間の延長対応)
Step 6:形態修正・研磨操作(解剖学的形態の付与・未重合層の除去・段階的な研磨操作)

■STEP 1 窩洞形成図19

コンポジットレジン修復における窩洞形成は、感染象牙質の選択的除去とベベルの付与を含む窩縁部の整理によって終了し、基本的には健全歯質への切削介入を必要としない。
感染象牙質の除去では、う蝕検知液(カリエスディテクター:クラレノリタケデンタル)を活用して削除必要部位を明確化し、低速回転のMIステンレスバー(マニー)やスプーンエキスカベータ(YDM)を使用して過剰切削を回避することが可能となる。
窩洞内でのう蝕検知液使用後、水洗して濃い染色部のみ切削し、薄ピンク色の染色部は温存する。
切削器具は使用回数により切削能力が低下するため、常に刃部のコンディションに配慮して使用する必要がある。
MIステンレスバーやスプーンエキスカベータは基本的に直径の大きなタイプから使用し、徐々に切削範囲を狭めていくよう段階的に使用する。
感染象牙質除去後の窩洞形成の仕上げには、ダイヤモンド粒子の直径が20~30μm程度のエクストラファインタイプのダイヤバー(マニー)を使用し、滑らかなエナメル質切削断面を獲得する。
これによって、コンポジットレジン充填後の重合収縮応力の影響による微細なエナメル質亀裂発生を予防することが可能となる1)

  • [写真] 術前
    図1 術前。6近心部の隣接面初期う蝕を疑う。
  • [写真] メタルインレーを除去し、感染象牙質の範囲を確認
    図2 メタルインレーを除去し、感染象牙質の範囲を確認。
  • [写真] ウッドウェッジによる歯間離開を行った
    図3 5遠心部の健全歯質に対する誤切削を防止するため、ウッドウェッジによる歯間離開を行った。
  • [写真] う窩開拡後のう蝕検知液による染色
    図4 う窩開拡後のう蝕検知液による染色。
  • [写真] 感染象牙質を除去
    図5 水洗・乾燥後、MIステンレスバーとスプーンエキスカベータを順次使用して感染象牙質を除去。
  • [写真] 窩縁部を滑らかな形態に整える
    図6 エクストラファインタイプのダイヤバーにより窩縁部を滑らかな形態に整える。
  • [写真] 左:スタンダード 右:エクストラファイン
    図7 左:スタンダード 右:エクストラファイン
  • [写真] スタンダードのダイヤバーによるエナメル質切削断面の電子顕微鏡像
    図8 スタンダードのダイヤバーによるエナメル質切削断面の電子顕微鏡像:10~20μmの亀裂が観察される。
  • [写真] エクストラファインのダイヤバーによるエナメル質切削断面の電子顕微鏡像
    図9 エクストラファインのダイヤバーによるエナメル質切削断面の電子顕微鏡像:亀裂はほぼ観察されない。

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