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【CT発売20周年記念 特別寄稿】根分岐病変に対する歯周組織再生療法におけるCBCTの有効活用

静岡県磐田市 北島歯科医院 北島 一

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■目 次

■はじめに

歯周病に起因する歯槽骨の骨欠損状態の観察は、従来2次元イメージであるデンタルX線写真からの情報とポケットプロービング、あるいはプローブによるボーンサウンディングからのデータを重ね合わせて、骨欠損形態を想像していた。これは単根歯であれば臨床的に有効な手段ともなり得るが、複根歯の根分岐部における病変を診査する上では、様々な深さの分岐部病変へのアクセスが物理的に困難であったり、様々な形態的な多様性があったりするため、計測のエラーが起こりやすく、加えて3次元的に複雑な形態を2次元のデンタルX線写真で診断することに限界があった1)
しかし、CBCTを応用することで、高い精度で根分岐部における骨吸収状態を観察することができるようになった2)
また根分岐部病変のほかにも、歯根の頰側や舌側における裂開状の骨欠損もデンタルX線写真では確認が困難であるが、CBCTを用いることによって確認可能となる。
これによって歯周組織再生療法を行う場合、術前の診断をより正確に行うことができ、どのような切開デザインにして、どんなインストゥルメントを用いてアクセスするのか、また使用する材料は何が良いかなど、手術をより具体的にイメージできるようになった。そればかりではなく、術後経過の観察においても有効であると考えている。

■症例供覧

症例1は6遠心隣接面における根分岐部病変が存在していた。同部位の垂直的なプロービング値は6mmであり、Ⅱ度の根分岐部病変が認められた。垂直的骨欠損の深さは4mmであった(図12)。
隣接する7との間の非常に狭いスペースから根分岐部にアクセスしなければならない困難さはCBCTのボリュームレンダリング画像から確認することができたため、骨欠損の深さや奥行きなどをイメージしながら手術に必要な超音波チップやキュレット、エキスカベータなどをあらかじめ用意することができた(図3)。
歯周組織再生療法の術後デンタルX線写真では骨縁下欠損の改善は認められるが(図5)、根分岐部の改善は確認できない。しかし術後2年におけるCBCTのAxial画像を見ると、根分岐部にbone fillが認められており、良好な状態が維持されていることが確認できる(図6)。
症例2は6遠心頰側根の舌側に根分岐部病変Ⅱ度および根尖近くに及ぶ骨縁下欠損と裂開状の骨欠損を認め(図78)、同部位には吸収性メンブレンを用いたGTR法を適用した(図9)。
術後2年のCBCTのCross-sectional画像では、歯槽骨から頰側に突出した遠心頰側根の裂開状骨欠損部に4mm程度のbone fillを認めた(図10)。
また同時に遠心の根分岐部病変および骨縁下欠損部においても同様にbone fillが認められた(図1112)。

  • [写真] 6 遠心に骨縁下欠損が観察される
    図1 6遠心に骨縁下欠損が観察される。
  • [写真] 6 遠心根と口蓋根の間の根分岐部病変Ⅱ度の状態が観察される
    図2 6遠心根と口蓋根の間の根分岐部病変Ⅱ度の状態が観察される。
  • [写真] 6 遠心隣接面を遠心方向から観察
    図3 6遠心隣接面を遠心方向から観察し、術前に根分岐部へのアクセスをどのように行うかを考慮する。
  • [写真] 6 遠心骨欠損の状態
    図4 6遠心骨欠損の状態。3壁性の骨縁下欠損。
  • [写真] 術後6年、6 遠心骨縁下欠損の改善が認められる
    図5 術後6年、6遠心骨縁下欠損の改善が認められる。
  • [写真] 術後2年、Axial CBCT image遠心根分岐部にbone fillが認められる
    図6 術後2年、Axial CBCT image遠心根分岐部にbone fillが認められる。
  • [写真] 6 遠心の骨縁下欠損の深さは11mm
    図7 6遠心の骨縁下欠損の深さは11mm。
  • [写真] 6 遠心の根分岐部病変はⅡ度、遠心頰側根は歯槽骨から頰側に突出している
    図8 6遠心の根分岐部病変はⅡ度、遠心頰側根は歯槽骨から頰側に突出している。
  • [写真] 骨移植および吸収性メンブレンによるGTR法
    図9 骨移植および吸収性メンブレンによるGTR法。
  • [写真] 左:術前 cross-sectional CBCT画像 / 右: 術後2年4ヵ月、cross-sectional CBCT画像
    図10 左:術前 cross-sectional CBCT画像。右: 術後2年4ヵ月、cross-sectional CBCT画像、突出した頰側歯根面に骨添加が認められる(黄色矢印)。
  • [写真] 術前6 遠心根の根分岐部病変のCBCTボリュームレンダリング画像
    図11 術前6遠心根の根分岐部病変のCBCTボリュームレンダリング画像。
  • [写真] 術後2年4ヵ月、CBCTボリュームレンダリング画像、骨添加の状態を確認することができる
    図12 術後2年4ヵ月、CBCTボリュームレンダリング画像、骨添加の状態を確認することができる。

■おわりに

このように歯周組織再生療法において、術前の診断から手術の前準備、そして術後経過の観察にCBCTは非常に有効に活用できるといえ、筆者の歯周治療の臨床において無くてはならないものとなっている。

参考文献
  • 1) Walter, C., R. Weiger, and N.U. Zitzmann, Periodontal surgery in furcationinvolved maxillary molars revisited--an introduction of guidelines for comprehensive treatment. Clin Oral Investig, 2011. 15(1):p. 9-20.
  • 2) Walter, C., R. Weiger, and N.U. Zitzmann, Accuracy of three-dimensional imaging in assessing maxillary molar furcation involvement. J Clin Periodontol, 2010. 37(5): p. 436-41.

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