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178号 AUTUMN 目次を見る

Clinical Report

ステージドアプローチでTi ハニカムメンブレンを適用しSPIガイディッドサージェリーでイニセルインプラントを埋入した症例報告

ウケデンタルオフィス 宇毛 玲

キーワード:非吸収性メンブレン/超親水性イニセル/フラップデザインと減張切開

目 次

はじめに

前歯審美領域欠損部にインプラントを適応する際、抜歯に伴い生じた歯槽骨の形態変化により、審美的結果を得ることは困難を極める。インプラント上部構造と隣接する天然歯とその周囲軟組織との連続性と調和を保つような審美的結果を獲得するためには何らかの骨増生処置が必要になることは言うまでもない。
これまで様々な硬組織のオギュメンテーションが報告されてきたが術後の合併症や予知性などを勘案するとGBRが第一選択肢となる可能性が高い。GBRは過去20年間でテクニックセンシティブな非吸収性メンブレンから吸収性メンブレンへシフトされたが、依然としてGBRを必要とする10~15%の著しい歯槽骨吸収が認められるケースにおいては非吸収性メンブレンが必要である。
Ti ハニカムメンブレンは従来の非吸収性メンブレンと比較した場合に、その厚径は20μmと極薄で露出しづらく、孔径20μmの超微細な穿通孔を50μm間隔に配置する多孔性を有しており、組織統合性、栄養透過性、非骨原性組織の侵入を遮断し、加えてメンブレン内面に付着する宿主細胞により強力な骨形成促進因子BMP-2を含む主要な骨関連成長因子を徐々に発現および分泌する可能性のある革新的なメンブレンである(図1)。
SPIガイディッドサージェリーは数社のプランニングソフトが利用できるオープンシステムを採用しており導入が容易であり、そのドリリングのステップはシンプルで操作性が良好であり1つの外科キットでイニセルインプラントのエレメント(LC、RC、MC)、コンタクト(RC、MC)それぞれに対応するオールラウンダーである。
さらにベクトドリルは長径が短く、インテグレートテッドガイダンスによりハンドスリーブやドリルスリーブを必要としないために開口量の少ないケースにも対応可能である。ベクトドリル先端には一つ前のドリル径のガイド機能がついており骨面におけるスリップがなく、プランニングに基づいた精密なドリリングを実現可能にさせる(図2)。
また今回、インプラント体はイニセルインプラントを選択した。イニセルインプラントは埋入直前に専用アプリケーター(APLIQUIQ)を使用してNaOH溶液にインプラント体を浸漬することにより表面エネルギーを増加させ接触角5度未満の超親水性の表面に変化させることを可能にし、それにより単球の接着、血小板の活性化、血餅の形成、間葉系幹細胞の増加、BICを向上させた1)
またVasakらはブタによる研究で疎水性イニセルと親水性イニセルの埋入15日後のBIC値を評価したところ52.4%、69.7%と親水性イニセルが高い値を示した1)
またHicklinらは15名の下顎臼歯部に20本のイニセルインプラントを埋入し、21日目に70以上のISQ値を達成して、プロビジョナルレストレーションにより咬合負荷を与えたと報告した2)。このことから早期にインテグレーションが可能であり、再生骨などの完全に成熟していない骨に対しても有用性が高いことが示唆される。
本稿ではTiハニカムメンブレン、SPIガイディッドサージェリーとイニセルインプラントを使用した症例を報告させていただく。

  • [写真] 20μmの貫通孔
    図1 20μmの貫通孔で極薄で露出しづらく、孔径20μmの超微細な穿通孔を50μm間隔に配置する多孔性を有しており、組織統合性、栄養透過性、非骨原性組織の侵入を遮断する3)
  • [写真] SPIガイディッドサージェリー
    図2 SPIガイディッドサージェリー、操作が容易で直感的に使用手順が理解できる。

ケース紹介

<診査、診断>
患者は39歳女性、左上前歯の歯根露出を主訴として来院(図3)、12.13は重度歯周炎と判断し抜歯、初期治療終了後、アンテリアガイダンスとバーティカルストップの確立、12.13相当部インプラント上部構造に審美性を与えるスペースの獲得のため矯正治療を開始した(図4)。
矯正治療終了後6ヵ月の保定期間を経てインプラント治療を開始した。はじめに各種資料より、機能的、審美的側面を考慮しワックスアップモデルを作成しそれを複製し診断用ステントを作成した(図5)。
欠損部に隣接する歯と周囲軟組織との連続性を保つため軟組織をレジンで回復させ歯はCT上で読影できるよう不透過性を待たせるためラジオペーク含有のレジンを使用した。口腔内に装着(図6)して審美的な同意を患者から得られた後、CT撮影を行った。
前述したように、診断用ステントは吸収した欠損部歯槽堤に合わせるのではなく隣接する歯牙とその周囲軟組織と調和させることが重要であるため、欠損部の歯槽堤を何らかのマテリアルで回復させてから理想的な歯冠形態を再現させる必要がある。
SMOPにてプラニングを行った(図79)。診断用ステントを基準に埋入深度は3mm、隣接歯1.5mm、インプラント間は3mm、軸傾斜はステントインサイザルエッジより口蓋側方向、唇口蓋側方向は口蓋寄りとした、この際、注意すべきことはあくまでも補綴主導で行うことである。骨のあるところにインプラントを埋入すれば目標とする歯冠形態は達成できない。当然、インプラントが骨内に設置されていないということが起きる。場合によってはインプラント周囲に全く骨が存在しないということもありうる。
ここでプランニングソフト上で既存骨が埋入するインプラントの初期固定を確保できるかどうかを検討する。インプラントのポジショニングの後、GBRにおいてどのくらいの骨増生がどこの領域に必要かということを検討する。前述したインプラントのポジショニングを基にプラットフォームからは生物学的幅径の再構築を勘案し唇側水平的に2mm以上で、歯間乳頭部では予定している歯冠形態隣接部コンタクトポイント直下より3mm下方に骨が必要である。加えて欠損部に隣接する健全歯槽骨との3次元的(水平、垂直、前上方)連続性を参考に増生形態を勘案する。
本ケースにおいてはインプラントの初期固定は獲得できるが12.13インプラント間の垂直、前上方方向の骨が不足しており、垂直的GBRが必要で難易度が高いためステージドアプローチを計画した。

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