会員登録

178号 AUTUMN 目次を見る

Case Report

GBRにおけるTi ハニカムメンブレンの有用性

北九州市小倉南区開業 きのした歯科クリニック院長 木下 俊克

PDFダウンロード

キーワード:メンブレンの選択基準

目 次

はじめに

インプラント治療において、メンブレンを使った骨造成が必要な症例に多く遭遇する。現在使用されている主なメンブレンは、素材で分類すると
① チタンメッシュ
② d-PTFE膜
③ 乳酸/グリコール酸共重合体(吸収性)
④ チタンメンブレン(Tiハニカムメンブレン)
などがある。それぞれに特性があり、それを見極めたうえでの使用によって臨床に成果をもたらすものである。
今回は、Tiハニカムメンブレンの有用性について、実際の症例を通して報告する。

症例1

68歳女性。右下の欠損部にインプラント修復を希望され来院。4-7欠損の口腔内(図1)であったが、患者の希望により4部、6部のインプラントを支台とするインプラントブリッジによる補綴設計となった。ステントを作成(図2)し、当該部のCTによる診断を行った(図3)。4部の頰側に骨の裂開が予想されたため、自家骨によるGBRを伴うインプラントの埋入を計画した。メンブレンの選択においては、下記(①~④)の理由からTiハニカムメンブレンM1-typeを選択した。
① 純チタン素材で生体親和性に優れる
② ハニカム型フィルター構造で変形や破れに強い
③ 膜厚が20ミクロンで組織再生のスペースを阻害せず、賦形性に優れる
④ 中央部にフレーム構造があり、強度と賦形性を高めた種類がある
また、インプラントの選択においては超親水性表面で、治癒期間の早期からインプラントの骨結合が期待できるイニセルインプラントを選択した。
歯肉弁を展開すると、CTでの診断通り頰側に骨の裂開を確認した(図4)。ステントを利用して予定の埋入部にインプラントを植立し、6部の遠心から採取した骨移植材を骨裂開部に填入しメンブレンのトリミングを行い、試適した(図5)。チタンピンを用いてメンブレン位置を固定したのち、歯肉弁に減張切開を加え、弁の戻る位置を確認した。その後、歯肉弁を戻し、指によってメンブレンに5分間軽く圧を加えて骨面になじませた後、縫合した(図6)。図7は1ヵ月後の口腔内であるが裂開もなく安定していて良好な予後が確認できる。

  • [写真] 口腔内所見
    図1 口腔内所見で骨欠損は想像できなかった。
  • [写真] ステントを作成
    図2 ステントを作成。患者の希望により46部にインプラントを植立してブリッジによる修復の計画になった。
  • [写真] CT画像
    図3 CT画像。4部の頰側に骨の裂開が予想された。(使用CT:KaVo 3D eXam)
  • [写真] 4部頰側に骨の裂開を確認
    図4 歯肉弁を展開すると、4部頰側に骨の裂開を確認した。
  • [写真] Tiハニカムメンブレンは大変薄いためトリミングが容易
    図5 Tiハニカムメンブレンは大変薄いためトリミングが容易である。
  • [写真] チタンピンでメンブレンを固定した後、減張切開を入れて縫合
    図6 チタンピンでメンブレンを固定した後、減張切開を入れて縫合した。
  • [写真] 術後、1ヵ月
    図7 術後、1ヵ月。歯肉弁の裂開もなく術野は安定しており、良好な骨造成が期待される。

症例2

60歳女性。7部にインプラント希望。歯根破折のため他院にて抜歯後3ヵ月、口腔内の所見からも骨欠損の存在を予想させる(図8)。ステントを作成し、当該部のCTの診査により、頰側に大きな骨欠損の存在が予想される(図9)。
歯肉弁を展開すると、CTでの診断通り頰側に大きな骨の裂開を確認した。欠損部を掻把し、骨髄からの出血を促すためラウンドバーで骨を穿孔し複数の穴をあけた。その後TiハニカムメンブレンM1-typeを試適し、頰側に固定して骨欠損部に骨移植材を填入し、縫合した(図1011)。
10ヵ月後、弁を展開しメンブレンを除去した。メンブレンの下には軟組織の侵入がなく、容易に取り除くことができた。良質な骨の再生を認める。メーカーが謳うように超精密で微細な穿通孔を有するTiハニカムメンブレンの構造が、血清やタンパクやミネラルを通すため、効率の良い骨再生が達成されたと感じた(図12)。通法に従いインプラントを埋入(図13)。施術3ヵ月後、SPIニューイージーアバットメントを装着し、ジルコニアクラウンにて補綴した(図14)。

  • [写真] 頰側に骨欠損が予想される口腔内所見
    図8 頰側に骨欠損が予想される口腔内所見。
  • [写真] 骨欠損の大きさから、GBRで骨を作り、10ヵ月後に顎堤の状態を確認してからインプラントを植立する計画
    図9 骨欠損の大きさから、GBRで骨を作り、10ヵ月後に顎堤の状態を確認してからインプラントを植立する計画となった。(使用CT:KaVo 3D eXam)
    • [写真] メンブレン試適に際し頰側の歯肉弁に減張切開を加え、弁が切開部で緊張なくきちんと閉じることを確認
    • [写真] 骨移植材を欠損部に填入
    図10 メンブレン試適に際し頰側の歯肉弁に減張切開を加え、弁が切開部で緊張なくきちんと閉じることを確認後、骨移植材を欠損部に填入した。
  • [写真] 縫合
    図11 縫合は、弁が安定し血液循環を損なわぬように、広く拾って行うように心がけている。
  • [写真] 術前の骨欠損は、良質な再生骨で満たされていた
    図12 術前の骨欠損は、良質な再生骨で満たされていた。
  • [写真] インプラントの埋入
    図13 骨幅も十分得られたため、インプラントの埋入は容易であった。
  • [写真] 1年後
    図14 咀嚼効率を優先し、セメント合着の修復物とした。1年後、安定している。

まとめ

Tiハニカムメンブレンは、
① 膜の薄さから、弁の減張が少なくて良く、裂開を生じにくい
② チタンの薄膜なので賦形が容易で、造成した歯槽骨の形に馴染みやすい
③ フレームも十分な強度を持ちつつ、しなやかで賦形が容易である
④ 耐久性、生体親和性に優れ良好な骨再生が得られる
⑤ 膜の性状から膜に上皮の侵入が無く除去が容易であるなどの印象を得た
以上のことから、Tiハニカムメンブレンは、GBRを行う際に歯槽堤の様々な状況に対応が可能でかつ安定性が高く、術中・術後の術者のストレスを緩和できる大変有用なアイテムと言える。

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。