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179号 WINTER 目次を見る

Field Report

口腔内のリスク分析結果を活かし歯磨きの重要性を伝え、予防意識を高める

山口県宇部市 みやわき矯正歯科クリニック 宇部オフィス 副院長  宮脇 綾/歯科衛生士  新屋 雅代

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山口県宇部市 みやわき矯正歯科クリニック 宇部オフィス

  • [写真] 副院長 宮脇 綾
    副院長
    宮脇 綾
  • [写真] 歯科衛生士 新屋 雅代
    歯科衛生士
    新屋 雅代

<宮脇綾 副院長>
矯正歯科専門医院として、審美と機能の両立を目指して2001年に開院しました。患者さんの約半数は小、中、高生です。矯正器具をつけると、細菌総数が5倍に増えるといわれています。しかし、学生生活が忙しくなること、年齢的に親の介入が難しいこともあり、歯磨きがおろそかになるお子さんも見受けられ、予防の大切さを伝える難しさを痛感しています。
私自身の子育て経験から、予防歯科の重要性を強く感じてきました。そのため、開業当時から矯正前の検査に力を入れています。その一つとして唾液のリスク分析テスト「SMT(Salivary Multi Test)」を全ての患者さんに実施しています。患者さんに予防を意識してもらうのに適したツールだと感じたことが導入の主な理由です。
たとえば、最近はマスク生活で口臭を気にする患者さんも増えています。「口腔内に細菌がいますよ」とお話しするよりも、SMTの結果をもとに「口臭などの原因になるアンモニアの量が多く出ているので口腔内の細菌総数が多いと考えられます」とアプローチするほうが伝わりやすい印象があります。また、SMTの結果がよくない患者さんには、まずはカリエスリスクを下げるため矯正器具の装着前に予防処置をすることでセルフケアに対するモチベーションを高めてもらうきっかけになればと思っています。すべてが伝わらないもどかしさもありますが、そのなかで患者さんやご家族に「矯正してよかった」「子どもが喜んでいる」という声をいただくことが励みになっています。矯正装置を年単位で付けておくのは本当に大変なことですが、キレイになった歯並びをきっかけに自分の歯に興味をもってもらえるようになれば幸いです。そして、検査を行う側としては、検査後すぐに結果がわかるので、スタッフの負担を軽減できることも大きなメリットと感じています。

[写真] みやわき矯正歯科クリニック 宇部オフィスのスタッフ

<新屋雅代 歯科衛生士>
SMTは初診検査と一緒に行い、後日、患者さんとの面談で結果をお伝えしています。約1時間の面談では、まず歯科医師が今後の治療計画を話し、次に歯科衛生士がSMTの結果とブラッシング指導や、【口腔管理と食事に関するアンケート】(事前回答)をもとに、口腔衛生状態について説明しています。
SMTの結果は、6項目(むし歯菌・酸性度・緩衝能・白血球・タンパク質・アンモニア)のチャートで表示されますが、酸性度が高く、また緩衝能も低い結果が出た患者さんの場合、アンケートの記載内容で間食の回数が多かったり、炭酸飲料を好まれることが確認された場合は、ご本人やご家族に現状を理解してもらい、食習慣の見直しや食後の歯磨きを徹底していただくようにお伝えしています。
また、口腔内の状態が悪い方には、SMTの結果をもとに炎症があること等を伝えるとデータも可視化して説明できるので患者さんにも納得してもらいやすく、その後のブラッシング指導やセルフケア用品への提案もスムーズに進みます。
矯正器具の装着後も定期的なPMTCを行いますが、とくに歯磨きが苦手な患者さんには、そのつど染め出しをして、磨けていない箇所を意識してもらえるように、くり返しアドバイスをしています。当院では「患者さんに寄り添い、家族のような温かみのあるお付き合いを」という方針に沿って、一人ひとりに合った予防プログラムを提案し、検査後に手書きの資料をお渡しするなど、予防の大切さを少しでも感じていただける工夫をしています。
矯正治療を最後まで続けてもらうためには、まずはお子さんをはじめ、成人の患者さんにも、楽しく治療に来ていただくことが大切です。これからも患者さんが気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけていきたいと思います。

    • [写真] 上段:矯正治療前のスクリーニング検査で染め出しを行った状態/下段:矯正装置を付けて2週間後の染め出しで磨き残しの箇所が増えた
    • [写真] 上段:矯正治療前のスクリーニング検査で染め出しを行った状態/下段:矯正装置を付けて2週間後の染め出しで磨き残しの箇所が増えた
    • [写真] 上段:矯正治療前のスクリーニング検査で染め出しを行った状態/下段:矯正装置を付けて2週間後の染め出しで磨き残しの箇所が増えた
    図1~3 上段:矯正治療前のスクリーニング検査で染め出しを行った状態。叢生箇所の汚れが目立つ(10代後半女性)。
    下段:矯正装置を付けて2週間後の染め出しで磨き残しの箇所が増えた。装置を付けるとプラークコントロールが悪くなるので、装置をつけてからもSMT結果をもとにカウンセリングやブラッシング指導に時間をかけてプラークコントロールがよくなるように心掛けている。
  • [写真] SMTはチェアサイドで実施
    図4 SMTはチェアサイドで実施。採取した唾液は別室で測定を行い、後日、他の検査と一緒に説明を行う。
  • [写真] 洗口吐出液を点着し、測定の様子を行っている様子
    図5 洗口吐出液を点着し、測定の様子を行っている様子。測定時間は5分とスピーディ。
  • [写真] ドクターによる今後の治療方針と、歯科衛生士から口腔状態の説明を行う
    図6 治療開始に関する一連の検査後の面談で、ドクターによる今後の治療方針と、歯科衛生士から口腔状態の説明を行う(1時間程度)。
  • [写真] SMTの結果や【口腔管理と食事のアンケート】
    図7 SMTの結果や【口腔管理と食事のアンケート】などをもとに、食事指導やプロケア、セルフケアにつなげている。
  • [写真] 面談時に手渡す資料
    図8 予防の大切さを伝えるため、面談時に手渡す資料は手書きにこだわっている。

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