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Clinical Report

SPI®システムインプラントのサージカルガイドの有効性について

医療法人恵生会寺﨑歯科クリニック 寺﨑 恵多朗

キーワード:SPIサージカルガイドシステム/Selective Incision Procedure(SIP)

目 次

サージカルガイドとは

インプラント治療において、1990年代に歯科用CBCTが実用化され、さらに2000年代に入って3Dシミュレーションソフトが開発されて以来、さらなるデジタルの恩恵によってガイドサージェリーへと進化してきた。
サージカルガイド(あるいはサージカルステントまたはサージカルガイドテンプレートとも呼ばれている:以下サージカルガイド)は、口腔内模型あるいは口腔内スキャナーによるデジタル模型、歯科用CBCT、3Dインプラントシミュレーションソフト、CAD/CAMソフトウェアによって作製され、ガイドスリーブを付与された3D樹脂であり、サージカルインスツルメントをガイドし最適な精度で、適切な位置に埋入するのをアシストしてくれるものである。

サージカルガイドのメリット

1. 安全性:神経や血管の損傷を事前に回避して正確に埋入できる。
2. 患者への負担軽減:手術時間の短縮や術後の腫脹や疼痛緩和につながり精神的および肉体的な負担軽減に繋がる。
3. トップダウントリートメント:最終上部構造の形態を把握し、それに合わせてインプラント軸を決定できるため、平行性やアバットメントの角度をある程度確認できる。
4. 治療期間の短縮:事前にインプラントポジションが把握できるため、プロビジョナルクラウン、既製アバットメントの選択、選択的切開ラインによって大幅な治療期間の短縮が可能になる。この方法は以下に概略を述べる。

サージカルガイドのデメリット

1. 費用の負担増加:製作コストの分、患者への経済的負担が増加する。
2. 製作までに時間を要する:外注でのガイド作製の場合、通常2週間くらいかかる。SPIのガイド製作の場合、モリタにセンターがないため、ラボに依頼する形をとっている。
3. 術野が見にくい:ガイド自体のサイズ、形状によって、視野が妨げられる場合がある。特に、刺入点付近の位置が目視にて確認しにくい(図1)。
4. ドリリングの感覚がフリーハンドより分かりにくい:ガイドスリーブによってドリルが誘導されるために、骨質などの感覚が分かりにくい。
5. 最後臼歯ではアプローチしづらいことがある:最後臼歯部への埋入時、十分な開口量やドリル装着時のエンジンヘッドが対合歯に干渉しないかを事前に把握しておく必要がある(図2)。

  • [写真] 刺入点付近の位置が把握しづらい
    図1 刺入点付近の位置が把握しづらい。
  • [写真] エンジンヘッドが対合歯に干渉している
    図2 エンジンヘッドが対合歯に干渉している。

サージカルガイドの具備すべき条件

1. Reduce complexity of planning
プランニングは、なるべくシンプルな方が良い。
2. Reduce cost and delivery as possible as early
サージカルガイドシステムは、コストを抑えたものが、患者、我々双方にとって有り難い。また、納品は適合、再現精度の高いものをできるだけ早い方が望ましい。
3. Simple structure with strength and high fitting accuracy
その構造体はシンプルで、ある程度高い強度を備えたもの、かつ適合精度の高いものが術中使いやすい。
4. Wide database of object
異なるメーカーのインプラントやアバットメント情報が多く入っている方が、インプラントセレクションの幅が広がり、その後の補綴設計に有利である。

ガイドの精度および誤差

Jungら1)は、誤差平均は刺入点で1.07mm、根尖部で1.63mmとし、その他の文献2)も近似の数値である。
しかしながら、結論的にサージカルガイドの使用によって、臨床レベルで良好な精度を得られているとしている(表1)。

  • [表1]
    表1

SPIサージカルガイドシステムの特徴

① 明視野の確保
SPIのガイドシステムは複数のシミュレーションソフトに対応しているが、国内では現状Swiss meda社のSMOPガイドシステムが対応しており、歯科用向けに開発されたMED610(透明で生体適合性のあるPolyJet材料)で製造された骨組み構造によって、術中の歯肉剥離した状態がよく可視でき、効果的な注水による冷やすクーリング効果も期待できる。また、適合の確認が容易にできる(図3)。
② SPIサージカルガイドカセットおよびインスツルメントの統一化・シンプル化
SPIシステムインプラントのコンタクトとエレメントの両ラインナップをこの1つのシステムでカバーしているので、ドリリングステップのみをシームレスにシンプルに行える。また、ドリル以外の補助器具を必要しないので、導入コストアップ、術中の視野の妨げ、アシスタント補助手の負担減少につながる。
③ ドリル形状
ガイドドリルはスリーブへ挿入時、ドリルの軸ブレが生じることがある。原因として、ドリルとガイドスリーブの内径との適合精度、ドリルの形状による切削抵抗などが考えられる。SPIサージカルガイドシステムの大きな特徴の1つは、VECTOdrillTMというパイロットドリルインスツルメント(図4)を採用していることである。このVECTOdrillの形状は、1つ前のドリルの直径に対応するようにステップ状のガイドチップを備えている。そのため、ドリル軸の滑りを防ぎ、正確な形状のインプラント床を形成することができる(Double-guide principle)。また、パイロットドリルの切れ味が良く、溝に砕片骨が残存しやすい構造にもなっているので、埋入したインプラント周囲への骨造成に利用できる(図5)

  • [写真] スリーブは内径4.8mm、長さ5mm
    図3 スリーブは内径4.8mm、長さ5mm。
  • [写真] 矢印:ステップ状ガイドチップを備えたパイロットドリル
    図4 矢印:ステップ状ガイドチップを備えたパイロットドリル。
  • [写真] 残った破片骨
    図5 残った破片骨。

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