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Field Report

チェアサイドでコンディショニング可能な超親水性インプラントシステム

青森県八戸市 医療法人 夏堀デンタルクリニック 理事長 夏堀 礼二

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  • [写真] 青森県八戸市 医療法人 夏堀デンタルクリニック 理事長 夏堀 礼二

    青森県八戸市
    医療法人 夏堀デンタルクリニック
    理事長
    夏堀 礼二

チタン製インプラントは大気に触れると表面に有機化合物が付着します。そして、時間の経過とともに疎水性表面へと変化します。このチタンエイジングの現象はオッセオインテグレーションの獲得を阻害することが知られています。そこでこれまで紫外線照射など、さまざまなチタンエイジング対策が行われてきました。
一方、サンドブラスティング・酸エッチング処理されたSPIシステムインプラントは、埋入後の安定性に定評があるインプラントシステムの1つです。当院でも十年来使用していますが、これまで目立ったトラブルは経験していません。
そのSPIシステムインプラントより、超親水性を再獲得できるインプラント体として登場したのがイニセルインプラントです。本国スイスでは以前より販売されていて、私自身も十年ほど前にその存在を知りましたが、ようやく日本においても一昨年から扱えるようになりました。
イニセルインプラントは専用ケースで供給され、埋入直前にインプラント体をコンディショニング液に浸漬させることで、有機化合物を除去し、加えて表面を水酸基で調整し、超親水性を再獲得します。
従来のSPIシステムインプラントでは乾燥した状態でパッキングされ、イニセルインプラントと比較すると表面の濡れ性は及びませんでした。一方でコンディショニング処理をしたイニセルインプラントは実際に使用してみて血液浸潤性が高いことがわかります。
超親水性を得たインプラント体の表面は血液中のタンパク質が均一に吸着するようになります。そして、表面へのタンパク質の吸着量が増加することで、より早い安定性が獲得できるようになります。それは治癒期間の短縮につながるものではありますが、私自身はチェアサイドで簡単にコンディショニングが行える点と、それでいて高い骨接触率が得られる点にメリットを感じています。
[写真] 症例は67のインプラント治療を希望されて来院した女性のケースです。7の根管治療を繰り返し行ったものの、咬合痛がなくならないということで、他院からの紹介により来院されました。
治療計画としては、最初に7を抜歯後、87に移植し、その後6にインプラント埋入を行い、もしも移植後に何かしらの問題があれば、最終的に7にインプラント治療を行うことで患者さんの同意を得ました。
この症例においてイニセルインプラントを選択した理由は、確実にオッセオインテグレーションを獲得したかったためです。仮に7の移植の予後が良くなかった場合にインプラント治療へ移行するためにも、最初の6を確実に成功させ、患者さんとの信頼関係を築く必要がありました。もしも、6の治療で何らかのトラブルが生じてしまえば、その後の治療に対しても、患者さんは不安を抱いてしまったことと思います。
結果としては、無事にファイナルまで進めることができ、移植歯も問題なく噛めるようになりました。
イニセルインプラントは従来のSPIシステムインプラントとくらべて、オッセオインテグレーションの獲得率も骨接触率も向上しています。さらに、早期に荷重がかけられる点も忙しい現代社会において患者さんのニーズに合致するものではないでしょうか。今後、国内においてもさらに普及が進んでいくものと感じています。

  • [写真] 初診時パノラマX線写真(右下インプラントは他院にて埋入)
    図1 患者:43歳、女性。主訴: 67インプラント希望で他院より紹介。初診時パノラマX線写真(右下インプラントは他院にて埋入)。
  • [写真] 埋入前の口腔内写真
    図2 7 移植後、6埋入前の口腔内写真。
  • [写真] イニセルインプラント エレメントMCφ5.0mm×12.5mmを一回法にて埋入
    図3 イニセルインプラント エレメントMCφ5.0mm×12.5mmを一回法にて埋入した。
  • [写真] トーメンスキャンアバットメントを装着し、「TRIOS 3」にて光学印象を採得し、プロビジョナルを作製
    図4 2ヵ月後、トーメンスキャンアバットメントを装着し、「TRIOS 3」にて光学印象を採得し、プロビジョナルを作製した。
  • [写真] 口腔内スキャンデータを元にCADソフトにてデジタルワックスアップを行った
    図5 口腔内スキャンデータを元にCADソフトにてデジタルワックスアップを行った。
  • [写真] 装着されたスクリューリテインのプロビジョナルレストレーション
    図6 装着されたスクリューリテインのプロビジョナルレストレーション。
  • [写真] プロビジョナルで咬合調整
    図7 プロビジョナルで咬合調整、清掃性をきちんと確認した上で、プロビジョナルをデスクトップスキャナーにてスキャンし、その形態を最終上部構造へ移行させる。
  • [写真] 装着時口腔内写真
    図8 装着時口腔内写真。
  • [写真] セット後約1年の口腔内写真
    図9 セット後約1年の口腔内写真。患者の満足も十分に得られた。
  • [写真] 治療終了時パノラマX線写真
    図10 治療終了時パノラマX線写真。
  • [写真] 治療終了後1年のデンタルX線写真
    図11 治療終了後1年のデンタルX線写真。

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