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181号 SUMMER 目次を見る

Case Report

Ti ハニカムメンブレンを使用して硬軟組織の増生を行った前歯部インプラント治療

神戸市北区きずな歯科クリニック 副院長 萩原 誠/歯科医師 岩隈 由梨香

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キーワード:段階的GBRによる歯槽骨再建/賦形が容易な非吸収性メンブレン

目 次

はじめに

 前歯部審美領域のインプラント治療において、まず低侵襲で治療期間も少ない抜歯即時インプラント治療の適応を考慮する。
しかしながら、唇側の骨が1mm以下である場合や、口蓋側に十分な歯槽骨が少なく、適切なポジションにインプラントの初期固定を得ることが難しい場合には抜歯を行い段階的なGBR(骨再生誘導法)が必要である1)
審美的な結果を得るために、インプラントのショルダー部分の唇側2mm以上(できれば4mm以上が好ましい)の骨が必要であると考えている。
3次元的に欠損した歯槽骨を再建するためには、GBRの治癒期間の間、長期にバリアメンブレンとしての形態を維持してくれるTiフレームが入った非吸収性のメンブレンが適応になってくる。
今回は、前歯部の2歯連続欠損に対してTiハニカムメンブレンを使用し、硬軟組織の増生を行った症例を提示する。

症例概要

左上中切歯と側切歯の腫脹と疼痛を主訴に来院された。同部位には、大きなカリエスと垂直性歯根破折がみられたため、抜歯を行った。
抜歯後8週、軟組織の治癒を待ってGBRを行った(図15)。
Tiハニカムメンブレンを使用したGBRにおいては、メンブレンの賦形と固定が非常に重要であると考えている。
Tiハニカムメンブレンに鋭利な部分が残ることや、チタンピンによる固定が不十分であることが原因で、術後にTiハニカムメンブレンが動き、薄い歯肉弁のところから穿孔する症例をいくつか経験した。
その予防のために筆者はチタンピンを比較的多めに使用し固定を十分にすることが必要だと考えている。Tiハニカムメンブレンは、非常に薄いため形態の賦形は非常に容易である。
GBR後7ヵ月間の骨の成熟を待って、Tiハニカムメンブレンの除去とインプラント埋入と結合組織移植を同時に行った(図68)。
Tiハニカムメンブレンの除去は非常に簡便であり、このメンブレンの利点の一つであると考えられる。
インプラントを埋入後、増生された骨表面に一層形成される線維組織3)に結合組織を固定し、歯肉弁を唇側移動させ縫合を行った。
軟組織の治癒を3ヵ月間待った後に、プロビジョナルレストレーションを装着し、歯肉形態を整えた後に最終補綴に移行した(図912)。

  • [写真] 左上中切歯、側切歯を抜歯後8週
    図1 左上中切歯、側切歯を抜歯後8週。
  • [写真] 水平かつ垂直的な骨吸収がみられる
    図2 水平かつ垂直的な骨吸収がみられ、インプラント埋入には骨増生が必要である。
  • [写真] 抜歯して8週後、抜歯窩の形態が一部残存している
    図3 抜歯して8週後、抜歯窩の形態が一部残存している。
  • [写真] Tiハニカムメンブレン(M1)をトリミングし、賦形した後にチタンスクリューピンでメンブレンが動かないようにしっかりと固定
    図4 Tiハニカムメンブレン(M1)をトリミングし、賦形した後にチタンスクリューピンでメンブレンが動かないようにしっかりと固定。
  • [写真] 口蓋もTiハニカムメンブレンが浮き上がらないようにピンで固定
    図5 口蓋もTiハニカムメンブレンが浮き上がらないようにピンで固定。固定が不十分であるとメンブレンが浮き上がり、粘膜を穿孔するリスクが上がると考えている。
  • [写真] Tiハニカムメンブレン除去時
    図6 Tiハニカムメンブレン除去時。骨増生が得られた。
  • [写真] インプラント埋入する上で必要な骨増生が得られた
    図7 インプラント埋入する上で必要な骨増生が得られた。
  • [写真] インプラントのショルダー部分に口蓋から採取した結合組織を移植
    図8 インプラントのショルダー部分に口蓋から採取した結合組織を移植。
  • [写真] 最終補綴印象時
    図9 最終補綴印象時。
  • [写真] 最終補綴印象時
    図10 最終補綴印象時。
  • [写真] 最終補綴装着時
    図11 最終補綴装着時。
  • [写真] 最終補綴装着後のCT写真
    図12 最終補綴装着後のCT写真。
    左:1 右:2
    ※使用CT:Planmeca社製CT

まとめ

Tiハニカムメンブレンの利点を生かして、不足した歯槽骨の再建を行い、適切にインプラント治療が行うことができ、その有効性の高さを感じた。
今後、様々な場面で臨床応用し、さらなる高い臨床結果が得られるように取り組んでいきたいと考えている。

参考文献
  • 1) Akiyoshi Funato, Maurice A Salama, Tomohiro Ishikawa, David A Garber, Henry Salama. Timing, positioning, and sequential staging in esthetic implant therapy: a four-dimensional perspective. Int J Periodontics Restorative Dent. 2007 Aug;27(4):313-23.
  • 2) Ueli Grunder, Stefano Gracis, Matteo Capelli. Influence of the 3-D bone-toimplant relationship on esthetics. Int J Periodontics Restorative Dent. 2005 Apr;25(2):113-9.
  • 3) Hiroshi Hasegawa, Seiichiro Masui, Hiroshi Ishihata, Tetsuharu Kaneko, Daichi Ishida, Manabu Endo, Chihiro Kanno, Morio Yamazaki, Takehiro Kitabatake, Shinji Utsunomiya, Kenji Izumi, Keiichi Sasaki. Evaluation of a Newly Designed Microperforated Pure Titanium Membrane for Guided Bone Regeneration. Int J Oral Maxillofac Implants. Mar/Apr 2019;34(2):411-422.

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