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Clinical Hint

My スケーラーの選択~「est2」を使用した臨床例~

美創会歯科・林美穂医院 歯科衛生士 延田 万里

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キーワード:Myスケーラー/苦手部位へのアプローチ/インスツルメントの管理

目 次

はじめに

歯周治療やメインテナンスを行ううえで、患者様の口腔内に合ったインスツルメントの選択は重要です。歯科衛生士は使用するインスツルメントに対してこだわりを持つ必要があります。また、口腔内に合ったスケーラーを選択し使用することは、患者様と私たち歯科衛生士に大きなメリットをもたらします。
【考えられるメリット】
①歯石除去時の苦痛軽減
②開口時間が減る
③手指の疲労軽減
④オーバーインスツルメンテーションの防止

機能的で豊富なデザイン

Gキュレット「est2」(YDM)は刃部の長さ、第一シャンクの長さに違いがあり(図1)、種類がハード・ソフト・ミニの3種類がラインナップされています(図2)。また、ハンドル部分においてはサクラ・カラフィー・TOIRO・丸柄・角柄(図3)があり、豊富な種類の中から自分に合ったキュレットをカスタマイズすることができ、セミオーダーのキュレットに仕上げることができます。
当院では、各人がMyスケーラーとして「est2」を所持しているので滅菌や管理の面でも識別がスムーズにできとても便利です(図4)。

  • [写真] 第一シャンクの違い
    図1 第一シャンクの違い。
  • [表] ハード・ソフト・ミニの3種類の特徴
    図2 ハード・ソフト・ミニの3種類の特徴。
  • [写真] 種類が豊富なハンドル
    図3 種類が豊富なハンドル。左からサクラ・カラフィー・TOIRO・丸柄・角柄。丸柄は15mm短いハンドル形状。
  • [写真] 各人が管理している“Myスケーラー”
    図4 各人が管理している“Myスケーラー”。

est2シリーズ

<スケーラー>
様々な種類の中で、前歯舌側部や歯頸部の縁上歯石除去において“曲”と“スプーン型”の組み合わせのスケーラー「est2 Slim」が適しています。
前歯歯頸部のスケーリングだけではなく、見落としがちな舌側歯面に対してもスプーン型の部分がフィットし歯肉縁上歯石を簡便に除去できます(図56)。
<Gキュレット>
ハードとソフトは#1~#18、ミニは#1~#16まであるキュレットの中から選択しSRPに使用します。デンタルX線写真や歯周組織検査表を参考に根面形態や歯石の沈着状態など、頭の中でイメージしSRPを行います。それぞれの歯牙には特徴があり、それらを考慮しポケット内にキュレットをていねいに挿入します。

  • [写真] 歯石を除去
    図5 est2 slimのスプーン型の部分が歯面にフィットし、歯石を除去。
  • [写真] 細かい部位の歯石除去
    図6 est2 slimを用いた隣接面や細かい部位の歯石除去。

苦手部位へのアプローチ

「est2」はYDM社従来品に比べ刃部がわずかに短く設計されたことでブレードコントロールが向上し、キュレットの刃部を容易に歯面に当てることができるという特徴があります。直視で作業を行えないSRPでは、苦手部位は誰にでも存在し、経験やスキルの差により歯石を取り残してしまう可能性があります。その中でも最後臼歯部遠心や隅角へのアプローチは苦手な方が多いのではないでしょうか。そのようなアプローチしにくい部位において、刃部がわずかに短く、様々なシャンクの角度がある「est2」は無理のない姿勢でSRPを行うことができます。また残存歯石の状態が手指へ敏感に伝わってくるので取り残す可能性も低くなると感じています(図7)。
他にも取り残しが多い部位として考えられるのが上顎小臼歯部です。上顎小臼歯の近心歯根面は凹んでいるという特徴があり、歯石を取り残しやすいため注意が必要です。キュレットを当てる際は歯根面から刃部が離れないよう意識しながら進めて行きます。
図8は、歯周組織再生療法における歯肉剥離時の写真を示しています。この症例は、歯周組織再生療法前に「est2」を使用しSRPを行いました。写真からもわかるように歯肉を剥離するとわずかに残存した縁下歯石が根面に見られます。しかし凹み部位には歯周組織再生療法前に行ったSRPでしっかり刃部が届いていた様子が確認できます。

  • [写真] 最後臼歯部の根面にもしっかりフィット
    図7 最後臼歯部の根面にもしっかりフィット。
  • [写真] 歯周組織再生療法における歯肉剥離時の状態
    図8 歯周組織再生療法における歯肉剥離時の状態。

インスツルメントの管理

使用後はシャープニングし洗浄・滅菌を行います。シャープニングではインスツルメント本来の形態を保ちつつシャープなエッジに仕上げていきます。「est2」は高硬度の鋼材によりシャープニング後も新品と変わらないくらいの切れ味が持続するように感じます。しかしながら繰り返しシャープニングを行うと刃部が細くなり(図9)、口腔内で刃部が折れることがあります(図10)。当院では、シャープニング後に「YDM Gキュレット ブレードチェッカー」(非売品)を用いて刃部の幅の確認を行っています。刃部の幅の確認を行うことで折れる前に交換でき、安心して次の患者様に使用することができます(図11)。

  • [写真] シャープニングを行い細くなったキュレット
    図9 シャープニングを行い細くなったキュレット。
  • [写真] 折れたキュレットの先端
    図10 折れたキュレットの先端。デンタルX線写真で確認後、除去した。
  • [写真] 「YDM Gキュレットブレードチェッカー」(非売品)
    図11 「YDM Gキュレットブレードチェッカー」(非売品)で確認。細くなったキュレットは破棄。

最後に

「est2」を使用するようになり、様々な状況においてスケーラーの選択肢が広がりました。
また、SRP時の苦手部位に対するアプローチも変わり歯周治療に対するやりがいをこれまで以上に感じています。どんな患者様にも対応できるよう今後も日々研鑽して参ります。

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