181号 SUMMER 目次を見る
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スタッフに笑顔が生まれる!チーム力のある医院づくり実践術
■目 次
- ≫ 「問題解決型」から「価値提案型」へ
- ≫ “何丁目何番地”に向かっているのか
- ≫ どのポジションにも価値がある
- ≫ ある一言を別の言葉に置き換える
- ≫ 価値提案型に必要なのは「総力戦」
- ≫ まわりはバカだと思っていた
- ≫ 歯科は楽しく働ける職業
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株式会社clapping hands 代表
医療法人社団海星会
角 祥太郎
診療の傍ら、スタッフ教育などの講師としても活躍する角祥太郎先生のもとには、全国からセミナーの依頼が寄せられ、その数は年間140以上にものぼります。セミナー後は「スタッフに笑顔が生まれた」「院内が活気づいた」と喜びの声が数多く届くそうです。令和時代の歯科医院のあり方やチーム力を高める実践術を角先生に伺いました。
「問題解決型」から「価値提案型」へ
コロナ禍となり、離職者が多い医院と結束力が高まった医院との差が浮き彫りになったように感じています。両者にはどんな違いがあるのでしょうか。私は“チーム力”がひとつの鍵だと考えています。
以前であれば、う蝕などの疾患がある患者さんを治療する、いわば「問題解決型」の歯科医療がニーズの大半でした。この場合、ある程度の正解が決まっているため、院長はスタッフに対して、「これをやっておいて」と指示を出すだけで十分でした。
しかし、近年では予防、あるいは呼吸や姿勢の改善、あるいは食事といった、生涯を通じた健康のために歯科医院に通う患者さんが増えています。加えて、コロナ禍によって予防や健康に対する関心がより高まっています。そうしたなか、歯科医院に求められているのは健康を支えるための「価値提案型」の歯科医療です。
価値提案型の場合、問題解決型のように決まった正解はありません。そのため、スタッフは院長からの指示を待つのではなく、積極的に患者さんと関わり、正解のない提案をできるかどうかが大切になります。だからこそ、“チーム力”が鍵となるのです。
“何丁目何番地”に向かっているのか
「医院は一艘の船」、私はそんなふうに考えています。スタッフは船員で院長が船長です(図1)。
チーム力が弱い歯科医院ではスタッフが不安を抱えているケースが散見されます。不安をもつスタッフは「この船に乗っていても大丈夫なのか」と考え、いずれ離職の道を選ぶかもしれません。あるいはメンタルを保たせるために仲間を増やそうとし、その結果、他のスタッフにも不安が伝播していきます。
では、不安の原因はどこにあるのでしょうか。多くの場合、船長である院長が目的地(ミッション)を明確に示していないことが挙げられます。例えば、「信頼される医院になりたい」と院長が目標を掲げたとします。けれども、「信頼される医院」とはどんな医院でしょうか。
これはセミナーでの実例ですが、「信頼される」とは具体的に何を指すのかをその院長に質問していくと、「信頼とは情報提供」だと認識していることが分かりました。その瞬間、スタッフ全員が驚きました。現場では「信頼=話を聞くこと」と考えていたからです。そのため、スタッフは患者さんの話をたくさん聞くようにしていました。しかし、院長にとっては「情報提供」が何より大事なのでスタッフの対応に不満が募り、スタッフも院長から評価されないために不安が募る。そんな悪循環に陥っていました。
今乗っている船の目的地は“何丁目何番地”なのか。スタッフに不安を与えないためには、曖昧な言葉ではなく、具体的に示すことが大切です。
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図1 歯科医院は「船」。船長である院長が向かう先である目的地(ミッション)を明確にしていないと、スタッフは不安になる。また、目的地を明確に語れる船長であれば、荒波の中でもリーダーシップが発揮できる。
どのポジションにも価値がある
さらに不安のもう1つの原因として、各スタッフが自分のポジションに価値を見出せていないことが挙げられます。
これも実例ですが、歯科助手や受付スタッフに元気がない歯科医院がありました。理由を探ると、診療に直接携わっていない自分たちには価値がないと考えていました。
しかし、診療をスムーズに行うには、当然ながら歯科助手の存在は欠かせません。あるいは、受付スタッフが待合室の患者さんの様子を診療スタッフに伝えるだけでも、診療時にさまざまな提案が行える可能性が広がります。これと同じようなことは新人にも言えることで、片付けなど診療以外であっても活躍できるポジションを見つけると、途端に動きが早くなるものです。
各スタッフが自分のポジションを理解し、価値を見出すだけでチーム力は格段に上がることを覚えておいてください(図2、3)。
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図2 角先生が行う院内セミナーの様子。院長の想いを実現し、スタッフのモチベーション向上にもつながるセミナーとして人気が高い。 -
図3 セミナー後には、それまで抱えていた不安が解消され、みんなが笑顔に。
ある一言を別の言葉に置き換える
院長がスタッフとのコミュニケーションを断ち切ってしまう一言をご存じでしょうか。例えば、広報の一環としてリーフレットを作ろうと決めたとします。1ヵ月後、スタッフに「あれ、できた?」と訊ねている先生はいませんか。
広報活動に正解はありません。一方で院長は治療に際して、常に正解を導き出す仕事をしています。そのため、すぐに「あれ、できた?」という問いで答えを詰めようとしてしまいがちです。そう問われたスタッフは「できました」と返すしかありません。
このとき、「どうだった?」という訊ね方に変えるだけで、「若い人にはSNSがいいかもしれません」という新しいアイデアが出てくることがあります。診療以外の業務の多くには正解がありません。診療時のように常に正解を求める思考のままスタッフと接してしまうと、意思疎通が図れなくなり、チーム力は弱まってしまいます(図4)。
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図4 ベースに「院長が見てくれている」という感覚をスタッフが持っていないと、指示だろうが叱ろうがミーティングだろうが、「どうせ見てないくせに」となってしまう。
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