DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
Er:YAG LaserとNd:YAG Laserを用いた適材適所無麻酔硬組織治療の実際
愛知県名古屋市 おおやま歯科医院 大山 吉徳

キーワード:無麻酔/エルビウム・ネオジウムを用いたハイブリッド治療/セレック修復

目 次

はじめに

大学院時代総合診療科にEr:YAG Laserが導入されており興味本位で使い始めた。しかしながら、その時はこのレーザーの意義が何もわからず使用していた。そのため平成18年開業時、レーザーを未導入で診療を開始した。
その後、歯を削るということに違和感を持ち多岐にわたる講習会を受講し、治療の際に用いる水に細菌が「0」の環境とともに、できるだけ歯を削らず神経を残すことが可能な治療を心掛け、7年前にNd:YAG Laserを導入した。
導入直後より歯髄近接に対し組織浸透性レーザーは歯髄に不可逆的作用があるのではないかと疑問を持ちながら診療をしていたが、疑問を解決する日は突然やってきた。
令和2年にレーザーの視野をひろげようと、表面吸収性Er:YAG Laserの講習会に参加した。その講習会において、今まで疑問に感じていたことの解決への糸口が明確に確認できた。
大学院時代に口腔細菌学講座でLPSについて研究をしたこともあり、不活化には250度30分以上必要とされるLPSの吸収波長2.92μmに近似したEr:YAG:2.94μm波長のすばらしさは必然的にすぐ理解でき、Er:YAG Laserの導入を即決した。
導入後は、軟組織に対しては止血や鎮静作用に優れているNd:YAG Laserを使用し、硬組織の粉砕に対してはEr:YAG Laserを使用するというように適材適所に長所を生かすことを考え治療を行うようになった。
今回、自院で行っている浸潤麻酔を使わない適材適所のレーザー治療についてお話させていただく機会をいただいたので少しの時間お付き合いいただきたい。

Er:YAG Laserの特徴

Er:YAG Laserの波長は2.94μmであり、YAG中の3価エルビウム原子により励起される中・遠赤外線領域のレーザーである。
水に極めてよく反応をする表面吸収型レーザーであり、組織浸透型レーザーであるNd:YAG Laserと比較すると20,000倍の水分吸収率を持つ。
また、この波長はレーザー光を組織に照射をした際には炭化層、凝固層、変性層が生じにくいため、軟組織疾患の治療だけではなく、硬組織疾患にも応用が可能である。
硬組織粉砕のメカニズムは、レーザー光が水や有機成分に吸収され、加えて水蒸気による内圧亢進による微小水蒸気爆発が起こることにより硬組織の粉砕が可能となってくる。
さらに、Er:YAG Laserの波長は歯周病原細菌の菌体外内毒素であるLPS(lipopolysaccharide)の吸収波長2.92μmとほぼ同じであり、LPSの分解を効果的に行うことができると考えられ、歯周病に罹患した根面への消毒にも有効であると考えられる1)

Nd:YAG Laserの特徴

Nd:YAG Laserの波長は1.064μmであり、YAG中の3価ネオジウム原子により励起され近赤外線領域のレーザーであり、吸収、散乱を繰り返しながら減弱していくが、組織深部にまで到達する。そのため熱凝固層が厚く止血等に効果はあるが治癒は遅れるとされている。
水への吸収はほとんどなくヘモグロビンやメラニンといった色素への吸収が大きい(図1)。
組織浸透性レーザーであるNd:YAG Laserは、鎮痛、組織賦活、治癒促進などに効果的だと考えられる2)
ファイバー先端を加工することにおいて、エネルギー密度を上げることにより切開などが可能となるが、熱の集積が生じるため組織に大きな熱障害を生じることとなる。熱の蓄積を防ぐためにパルス波で用いることにより熱影響を極力避ける試みがなされている。
また、 出力Laserであるが出力を下げるかデフォーカスを用いることによりLLLT Low reactive Level Laser Therapy としての作用させることも可能である3)
当院で使用しているSTREAK-1S2(アルテック製®)はtwinタンクによる冷却とエアーによる冷却システムを搭載しているため熱障害を生じることは少ない。

  • 図1
    図1

供覧

症例1> Er:YAG Laserにおける硬組織治療

表面吸収性レーザーであるEr:YAG Laserは、う蝕の中に含まれる水分や有機成分に吸収された光エネルギーが熱エネルギーとなり水蒸気による内圧が亢進され微小水蒸気爆発が起こり硬組織の粉砕が可能となる。
そこで今回は6近心う蝕に対し、Er:YAG Laser「アーウィン アドベールEVO」(モリタ)を用いて処置を行った。C400Fのチップを用いて20pps,50mj Water(+)Air(+)にて処置を行った。
軟化象牙質は健全象牙質に比べ水分量が多く粉砕が容易であるため、Er:YAG Laser単独での処置が可能である。実際には、う蝕が粉砕されると歯質表面が健全歯質の硬さに近づくと表層に白濁層が確認できるようになるため、筆者はレーザー照射終了の目安としている。
また、エアーにて均一な白濁層を確認したのちスプーンエキスカにて歯面に軟化象牙質が残存していないかを確認し、コンポジットレジンによる修復を行い処置終了としている。

  • [写真] 右下第一大臼歯近心隣接面部にう蝕が確認される
    症例1-1 右下第一大臼歯近心隣接面部にう蝕が確認される。
  • [写真] C400Fチップにより20pps 50mjにてう蝕粉砕後、白濁層が確認される
    症例1-2 C400Fチップにより20pps 50mjにてう蝕粉砕後、白濁層が確認される。
  • [写真] 光コンポジットレジンにて充填処置を行った
    症例1-3 スプーンエキスカにて歯面の状態確認後、光コンポジットレジンにて充填処置を行った。

この記事はモリタ友の会会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り 2048 文字

モリタ友の会無料会員に登録する
ログインする

デンタルマガジン 181号 SUMMER