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Case Report

Tiハニカムメンブレン・Tiスクリューピンを用いたGBRの有用性

医療法人社団 奥田歯科医院 奥田 浩規

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キーワード: インプラント周囲硬軟組織の長期安定/三次元的な骨増生

目 次

はじめに

インプラント治療における永続性を達成するには、インプラント周囲硬軟組織の長期安定が重要なkey pointである。
2019年に発表されたAAP(American academy of periodontology)におけるbest evidence consensus statementでは2mm以上がインプラント周囲のThick phenotypeとされ、2mm以下のThin phenotypeでは予知性が低いためGBRによる硬組織増生の治療介入が推奨されている1)
Tanらによる抜歯後約6ヵ月後の硬組織変化の研究では、垂直的骨喪失が1.24mm、水平的骨喪失が3.79mmと報告している2)
特に水平的骨喪失は顕著であり、抜歯後のインプラント治療においては、大半の症例が骨造成処置を必要とすることは周知のことである。
今回、GBRで使用するTiハニカムメンブレン(以下:Ti-HM)は20μmの穿通孔が付与されており、栄養透過性を確保しつつ、軟組織の侵入も防ぐことができるメンブレンである。また20μmの膜厚で操作性に優れ、従来のチタンメッシュに比べ、賦形性の容易さが特徴的である3)
Tiスクリューピン(以下:Ti-SP)においては、チタンピンを掴むセッティングツールがピンを保持しやすく、口腔内での操作性に優れている。また専用ドライバーにてネジを固定することも可能である。
本症例では前歯部におけるTi-HM、Ti-SPを使用した症例を供覧したい。

<症例>

患者は57歳女性。2の動揺を主訴に来院された。コア除去後、歯根破折が確認された(図12)。
審美的な観点から、条件が整えば抜歯後即時埋入を検討するが、本症例においては、唇側骨のインタクトな骨が乏しく、歯根部近遠心に及ぶ大きなサイナストラクトも見られたため、タイプ2の早期埋入にてGBRと同時にインプラント埋入を行う計画とした(図3)。
軟組織の吸収を防ぐ目的で、抜歯窩にはAlveolar ridge preservationを行った。また、GBR前の環境改善として軟組織の厚みを増生するため、結合組織移植を行った後、ソケット部をポンティックにて封鎖し、組織の吸収を最小限にはかった(図454)
軟組織の治癒後、GBRと同時にインプラント埋入を行った。切開線は、遠心部で1歯遠位に設定し縦切開を行い、近心の審美部位では縦切開を行わず2歯遠位に設定した(図6)。歯肉弁を剥離し十分な搔爬を行い、ガイディッドサージェリーにてインプラント埋入を行った。
その後、Ti-HMを設置していく。歯列弓に沿った骨形態の再生を期待し、十分な骨移植材を填入後、賦形をつけTi-SPにて固定した。
本症例では頰舌的な骨量が不足しており、M1サイズを2枚使用し、頰舌から挟み込むように設置した。
Ti-HMが天然歯に接触しないよう、また鋭利な部分が残存しないように配慮した。
その後、Ti-SPにてメンブレンが動かないように固定し、水平マットレス縫合と単純縫合にて閉創した。
術後8ヵ月時、裂開もなく歯肉レベルの維持もできた。さらに2次手術にてTi-HM除去後、十分な骨量の獲得を確認した。

  • [写真] 初診時の前歯部クローズアップ写真
    図1 初診時の前歯部クローズアップ写真。
  • [写真] コア除去時の状態
    図2 コア除去時の状態。唇側に垂直性歯根破折を認める。
  • [写真] 歯根部近遠心に透過像を認める
    図3 歯根部近遠心に透過像を認める。唇側歯槽骨は1mm以下であった。
  • [写真] 抜歯後、Alveolar ridge preservationを行い、ポンティックにて抜歯窩を封鎖
    図4 抜歯後、Alveolar ridge preservationを行い、ポンティックにて抜歯窩を封鎖。
  • [写真] 治癒後8週の状態
    図5 治癒後8週の状態。Alveolar ridge preservationとポンティックの封鎖により組織の温存が達成できた。
  • [写真] 剥離時の状態
    図6 剥離時の状態。水平的骨欠損が著しい状態である。
  • [写真] ガイディッドサージェリーにてインプラントを定位置に埋入
    図7 ガイディッドサージェリーにてインプラントを定位置に埋入。
  • [写真] Ti-HMを2枚使用し、Ti-SPで固定した
    図8 Ti-HMを2枚使用し、Ti-SPで固定した。
  • [写真] 水平マットレス縫合と単純縫合で閉創
    図9 水平マットレス縫合と単純縫合で閉創。
  • [写真] 術後8ヵ月の正面観
    図10 術後8ヵ月の正面観。歯肉レベルも維持できている。
  • [写真] 2次手術時、Ti-HM除去時の状態
    図11 2次手術時、Ti-HM除去時の状態。十分な骨量が獲得できている。

まとめ

本症例ではTi-HMとTi-SPを使用し前歯部骨欠損の三次元的な骨増生が獲得できた。この2つの併用がGBRの成功に大きく寄与すると考えている。
操作性の優れたTi-HMにより裂開のリスクが軽減でき、またメンブレンをTi-SPで固定することによりメンブレンの動揺を防ぐことで確実なGBRが達成できるのではないだろうか。

参考文献
  • 1) American Academy of Periodontology best evidence consensus statement on modifying periodontal phenotype in preparation for orthodontic and restorative treatment Richard T. Kao et alInt J Oral Maxillofac Implants Mar/Apr 2019;34(2):411-422.
  • 2) A Systematic review of post-extractional alveolar hard and soft tissue dimensional changes In Humans. Wah Lay Tan et al Clinical Oral Implants Res 2012 feb;23 suppl 5:1-21.
  • 3) 小田師巳:Tiハニカムメンブレンの特徴と臨床ケース. 日本歯科理工学会誌 Vol.39,No.1.2020.
  • 4) Effect of alveolar ridge preservation interventions following tooth extraction:A systematic review and meta-analysis Gustavo Avila-Ortiz Leandro Chambrone, Fabio Vignoletti J Clin Periodontol. 2019; 46(Suppl. 21):195–223.
  • 5) Vertical Ridge Augmentation With a Honeycomb Structure Titanium Membrane:A Technical Note for a 3-Dimensional Curvature Bending Method Tomohiro Ishikawa , Daisuke Ueno J oral implantol 2021 Oct 1;47(5):411-419.
  • 6) Evaluation of a Newly Designed Microperforated Pure Titanium Membrane for Guided Bone Regeneration Hiroshi Hasagawa et.al Int J Oral Maxillofac Implants Mar/Apr 2019;34(2):411-422.

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