DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Field Report
周囲炎予防の見地からインプラントの選択基準を考える
大阪府堺市 医療法人至誠会 深野歯科医院 副院長 深野 秀明/歯科衛生士 藤本 仁美

大阪府堺市 医療法人至誠会 深野歯科医院

  • [写真] 副院長 深野 秀明
    副院長
    深野 秀明
  • [写真] 歯科衛生士 藤本 仁美
    歯科衛生士
    藤本 仁美

<深野 秀明副院長>
これまで複数の現場において様々なインプラントシステムを使用してきた経験から、術者として長く使っていくうえで私が重要と考える要素は「キープコンセプト」=フィクスチャーデザインやコネクション、操作手順などが変わらないこと。そしてテクニカルエラーが起こりにくいシンプルな構造を有していることです。その点において、SPIシステムインプラント(以下SPI)は30年以上にわたって基本的な構造は変わらず、表面性状などブラッシュアップすべき部分は常に最新の技術にアップデートする姿勢に共感を覚えています。さらに、インプラントは口の中で長期間にわたり機能するものですから、定期的なメインテナンスが必須であり、清掃性の高さも大事な選択基準です。SPIはプラットフォームを骨縁上に設定するティッシュレベルタイプのインプラントです。イニセルインプラント エレメントでは、マシンドサーフェス(機械加工面)が0.5mm、1.0mm、2.5mmに設定されているユニークな形態にも実は大事な働きがあります。インプラントの埋入深度は、骨レベルで考えるのがセオリーですが、私はインプラント・アバットメントジャンクション(IAJ)の清掃性を担保するため、歯肉の厚みをもとにカラーの厚みを決めています。IAJが骨縁上にあることでメインテナンス時にアクセスしやすくなるのです。また、上部構造とのコネクションにおいてもインターナル+エクスターナル接続のハイブリッドタイプを採用し、その高い精度は治療後の周囲組織の安定にも大きく寄与します。ご紹介する症例では、抜歯位置への埋入とIOSの活用によって治療期間、回数、外科的侵襲の少ない治療となり、患者さんだけでなく術者にとってもストレスが少ないものとなりました。この良好な状態を引き続き維持していきたいと考えています。

[写真] 深野歯科医院のスタッフ

<藤本 仁美歯科衛生士>
長年多くのインプラント症例を診てきましたが、はっきりと言えることは、メインテナンスに定期的に来院いただいている方は、インプラント埋入後10数年が経過してもトラブルが少ないということです。一方で、定期検診をあまり受診されない方は、埋入から5~10年を過ぎると様々なトラブルが発生してくることがあります。それは患者さん自身がもともと持っているリスクも大きく関わってきます。私たちは「この方はなぜインプラントになったのか」、その原因を把握し処置に臨みます。例えば、歯周病の既往歴があればインプラント周囲炎になりやすいため、定期健診のたびにポケットの深さを入念にチェックします。また、咬合力が強い方や糖尿病を患う方、喫煙される方はさらにリスクが高くなるので、とりわけ注意深く診るようにしています。インプラント周囲の炎症はプラークが原因ですから、清掃性が良いインプラントの上部構造であればリスクも下がり、セルフケアもしやすいので、定期健診の時にも汚れが少なく、口腔内の状況も良好なことが多いです。定期健診時にプラークが付着している方には、インプラント部分の清掃に特化した「DENT.EX Implantcare(OT)」(ライオン歯科材)を使って実際にブラッシングした後、ご自宅での使い方を指導したり、手磨きではどうしてもプラークが残ってしまう方にはソニッケアーを試していただいています。その結果プラークコントロールが上がってくる方も多くいらっしゃいます。炎症が見られる場合、周囲炎の手前のインプラント周囲粘膜炎の状態にとどめておけるかが重要で、その鍵は歯科衛生士が握っているとも言えます。今後は、お口の少しの変化も見逃さず早期発見・早期治療によって患者さんの健康維持に貢献できるよう、さらにスキルを磨きたいと思っています。

  • [写真] レントゲン写真
    図1 患者は70代男性。下顎左側第二小臼歯の疼痛で来院。診査の結果、骨縁下におよぶ歯牙破折にて抜歯と判断した。
  • [写真] 症例検討会
    図2 深野歯科医院では、ほぼ毎日症例検討会を開き、症例ごとの向き合い方をスタッフ全員で共有している。その結果、知識や技術の向上だけでなくスタッフ間の良好なコミュニケーション構築にも寄与している。
  • [写真] 術前の診断
    図3 術前の診断にて頰側骨が残存していること、初期固定に必要な既存骨が存在することから抜歯位置に埋入することとした。(使用CT:株式会社ヨシダ社製)
  • [写真] 治療前の患者説明の際には担当歯科衛生士も同席し、カルテを確認しながら必要事項を記入していく
    図4 治療前の患者説明の際には担当歯科衛生士も同席し、カルテを確認しながら必要事項を記入していく。
    • [写真] 骨補填材およびコラーゲン製剤が漏出しないように縫合
    • [写真] レントゲン写真
    図5、6 周囲骨へのダメージを極力少なくするよう慎重に抜歯し、イニセルインプラントエレメントMC φ4.0×14.0mmを埋入、フィクスチャーと抜歯窩のギャップには骨補填材を填入し、コラーゲン製剤にて抜歯窩を封鎖したのちに骨補填材およびコラーゲン製剤が漏出しないように縫合した。
  • [写真] 術後約1ヵ月後の状態
    図7 術後約1ヵ月後の状態。
  • [写真] CO2レーザーによる歯肉の蒸散にて二次オペを行い、ジンジバルフォーマーを装着した
    図8 CO2レーザーによる歯肉の蒸散にて二次オペを行い、ジンジバルフォーマーを装着した。
  • [写真] 二次オペから約2週後
    図9 二次オペから約2週後。オステルにてISQ値を測定し、良好にインテグレーションしていることを確認している。
  • [写真] 二次オペから約2週でIOSによる印象採得を行った
    図10 二次オペから約2週でIOSによる印象採得を行った。
  • [写真] スクリューリテインの最終上部構造を装着した
    図11 スクリューリテインの最終上部構造を装着した。
  • [写真] ソニッケアーの替ブラシ「センシティブ」
    図12 ソニッケアーの替ブラシ「センシティブ」は毛先が柔らかいため敏感な歯肉へのアプローチに適している。
  • [写真] 通常の歯ブラシでは届きにくい部分にはワンタフトタイプのDENT.EX Implantcare(OT)を使用
    図13 通常の歯ブラシでは届きにくい部分にはワンタフトタイプのDENT.EX Implantcare(OT)を使用。
  • [写真] ワンタフトタイプのDENT.EX Implantcare(OT)を使用
    図14 患者さんのセルフケアグッズとして提案したところ「使いやすい」と継続して使用いただいている。
  • [写真] 患者さんへの説明にも熱が入る
    図15 藤本さんご自身もソニッケアーを長年愛用。患者さんへの説明にも熱が入る。口腔内の状況に応じて替ブラシを提案。

デンタルマガジン 182号 AUTUMN